今なぜ「サスティナビリティコンサル」のニーズが高まっているのか?サービス提供前に知っておきたい背景・基礎知識

昨今、サスティナビリティというキーワードが世間の注目を集める中、多くの大手コンサルティングファームが、サスティナビリティに関するサービスを展開するようになりました。こうしたコンサルティングファームの活躍は、サスティナブルな社会を目指す上での、ひとつの強力な原動力として、期待をされています。

フリーのコンサルタントとして活躍されている方の中には、新規事業としてのサスティナビリティに関するコンサルティングに関心を持っている方、サスティナビリティに関してクライアントから相談を受けている方も多いのではないでしょうか。

しかし、サスティナビリティに関するコンサルティングサービスを提供するには、なぜサスティナビリティが重要なのか、そしてなぜコンサルティングサービスへと繋がるのか、といった大局的な視点を備えておくことが重要です。

今回は、サスティナビリティというコンセプトの成り立ちと、サスティナビリティに関するコンサルティングサービスが生まれた背景の解説を行います。

【目次】

  1. サスティナビリティというコンセプトの成り立ち
  2. サスティナビリティの背景①:経済格差・搾取構造の解消を目指して
  3. サスティナビリティの背景②:環境の保護を目指して
  4. サスティナビリティの背景③:SDGsの誕生
  5. サスティナビリティに関するコンサルティングサービスが生まれた背景
  6. サスティナビリティに関するコンサルティングサービスの実施にあたって重要な視点

サスティナビリティというコンセプトの成り立ち

サスティナビリティという言葉が人口に膾炙したのは最近のことですが、そのコンセプトとしての歴史は決して短いものではありません。サスティナビリティとは、直訳すると単に「持続可能性」を指す言葉です。

しかしサスティナビリティというコンセプトは、南北問題(※1)の解消や環境保護、その他広く公正な社会を目指す活動など、これまでの多くの国際的な議論や取り組みが絡み合った延長線上にあります。

現在ではこうした文脈を踏まえ、より広い意味での社会の持続性を指す言葉として、「サスティナビリティ」が使われています。

※1:いわゆる先進国(主に北半球に位置する)と開発途上国(主に南半球に位置する)との経済格差から生じる、政治経済的問題のこと

サスティナビリティの背景①:経済格差・搾取構造の解消を目指して

まずは、サスティナビリティの系譜のひとつ、南北問題の歴史を簡単に振り返ってみましょう。多くのアフリカ諸国が独立を達成した1960年は、「アフリカ独立の年」と呼ばれます。これに伴い国家の数がいっきに増加したわけですが、新しく生まれた国家たちには、政治経済的に不安定な国家も少なくありませんでした。この背景には、現在先進国とされる国々が行ってきた、植民地支配をはじめとする、現在も尾を引く長い搾取の歴史があります。

独立は、これまで抑圧されてきた地域が、いくつもの国家として発言力を持つようになることを意味していました。アフリカに限らず、いわゆる先進国と途上国との経済格差、開発途上国の生活水準の向上は、国際社会が協力して解決しなければならない、喫緊の課題となりました。

南北問題の解決を目指し、さまざまな国際組織や取り組みが立ち上がります。しかしその当初は、経済的な指標を改善させることだけに注目した開発政策や、地元社会の成熟につながらない支援など、問題のある取り組みも多く散見されました。また、複合的な問題が重なり、国内紛争を経験した国家も少なくありません。

近年ではその反省を生かし、経済成長の成果の公正な分配などができるよう、公正な社会を目指す「グッド・ガバナンス」や、地元社会自らの成長する力を育てる「キャパシティ・ビルディング」などの考え方が重要視されています。SDGsの前身である15年計画MDGs(ミレニアム開発目標)も、ジェンダー平等や教育、環境保護など、より広い意味での開発をターゲットに掲げていました。

こうした取り組みのおかげか、世界の貧困率は1990年代の36%から、現在は10%へと減少しました。しかしこの10%というのは、いまだ世界の約7億人が、国際貧困ラインである1日1.9ドル以下で生活をしているということを意味します。

また、経済のグローバル化が進むに伴い、途上国の工場における過酷な低賃金労働に、グローバル企業の活動が支えられているなど、現在も残る搾取構造が問題視されるようになりました。今後も現状に合わせた取り組みが欠かせないと言えるでしょう。

参考:https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

サスティナビリティの背景②:環境の保護を目指して

つぎに、環境保護活動の歴史を見てみましょう。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』やバックミンスター・フラーによる『宇宙船地球号操縦マニュアル』に代表されるように、1960年代には環境問題への関心が高まっていました。

1972年にローマ・クラブ(※2)が発表した、『成長の限界』と題されたレポートは、国際的な議論の発端のひとつと言えるでしょう。同レポートは、人口・工業化・環境汚染・食糧生産・資源消費量の5変数をもってシミュレーションを行い、このままのペースで成長を続けると、今後100年以内に成長が限界に達すると予測し、世界に衝撃を与えました。

同じく1972年には、国連人間環境会議がストックホルムで開催され、国連環境計画が設立されます。経済成長は環境保護とトレードオフであり、現在の社会のあり方を変えていこうという声と、今後も変わらぬ経済成長を望む論者や途上国らの声との間で、激しい議論が展開されました。

一方1980年代に入ると、経済成長と環境保護を両立する道を探ろうという、「サスティナブル・デベロップメント(持続可能な開発)」に係る考え方が現れます。1987年には、国連が設置した環境と開発に関する世界委員会が、その報告書で「持続可能な開発」を人類の課題として取り上げ、これをきっかけとしてサスティナビリティというコンセプトが世界に知られるようになります。環境保護をめぐってはいまだ対立的な議論も尽きないですが、この報告書には、対立の構図をやわらげ、国際社会が一丸となって課題に取り組めるように、という狙いがあったと言われています。

その後1992年には、リオデジャネイロで開かれた地球サミット(環境と開発に関する国連会議)において、持続可能な開発を掲げた行動計画「アジェンダ21」が採択されました。この他、生物多様性条約の発効や、京都議定書の採択など、現在に至るまで環境保護に関する多くの取り組みが展開されてきました。しかし取り組みに消極的な国家も多く、課題は今も山積です。

※2:グローバルな課題を検討するために、世界から科学者、経済学者、教育者、経営者などが集った民間組織

参考:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/2040-3.php
参考:https://www.daiwahouse.com/sustainable/sustainable_journey/about/

サスティナビリティの背景③:SDGsの誕生

ここまで見てきたように、格差解消と環境保護の二つの議論は、どちらも重要な課題でありつつ、相互に関係する話題でありました。2000年代にはいると、それらを総合的に捉える考え方が生まれてきます。2002年の地球サミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)では、「アジェンダ21」の取り組みには、環境保護だけでなく、南北問題の解消といったアプローチも必要である旨、認識が共有されました。

そして先に紹介したMDGsの期限が訪れた2015年、ニューヨークの国連本部で開かれた国連持続可能な開発サミットにおいて、SDGsをその内容に含んだ「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されます。

途上国の貧困などの課題に対する公的機関の取り組み目標であったMDGsと違い、SDGsは先進国の課題やより深い環境保全上の課題を含み、さらに企業や市民も取り組み主体として捉えています。国際機関や各国政府、企業やNGOが盛んに活動することで、SDGsは多くの人が知るところとなりました。

参考:https://sdgs.city.sagamihara.kanagawa.jp/mdgs-sdgs/

サスティナビリティに関するコンサルティングサービスが生まれた背景

SDGsにおいて企業は、持続可能な開発に向けた取り組みの主体のひとつとして定義されました。しかし企業は、これよりはるか以前から、社会的責任を果たすべき主体だとして、議論の対象となってきました。

近年、社会で企業の活躍する領域が拡大し、その経済活動が多くの人々の生活を支え、豊かな社会の構築に貢献してきたことは言うまでもありません。しかしその一方で、南北問題に係る解説でも少し触れましたが、過酷な低賃金労働や、児童労働、環境破壊、違法な取引など、企業の活動がもたらす負の側面に対しては、長らく批判が繰り返されてきました。

1990年代には、大手スポーツメーカーの商品が、東南アジアの児童労働によって製造されているとスクープされ、世界的な不買運動に発展するなど、企業の社会的責任(CSR)といったコンセプトに注目が集まりました。

しかし、CSRという考え方が広まったとはいえど、実際の取り組みは経済活動の抜本的改革とは程遠い、「企業によるボランティア」の域を出ませんでした。国内の公害問題や労働争議と比較して、国も違い、下請けの下請けといった関係性である途上国の工場で起こる搾取の問題について、グローバル企業に実質的な責任を負わせることは、より法的に困難なのです。

この課題を克服するため、2011年に「国連ビジネスと人権指導原則」が国連人権理事会で採択されました。この指導原則では、活動する地域を問わず、企業は関わる人々の人権を尊重する責任があるとされています。企業活動を通じて人権を侵害することがないよう確認し対策をとる、人権デューディリジェンスを実施することが求められており、欧州を中心に人権デューディリジェンスを国内で義務化する政府も出ています。

このような、グローバルに活動する企業を統制することを目的とした国内法は、その国の企業と取引を行う外国企業にも影響を及ぼします。現在、多くの日本企業が、取引相手国の法律に準拠すべく、対応に追われています。

これ以外にも、環境・社会・ガバナンスという観点から投資先を選ぶESG投資や、倫理的な行動をとる企業の商品を選んで購入するエシカル消費など、企業を取り巻く様々な方面から、サスティナビリティへの要求が高まっています。もはや企業にとって、サスティナビリティというコンセプトは無視できないものになっているのです。

このように、企業に対するサスティナビリティへの要求が高まる中、多くの企業がその対応に頭を悩ませています。サスティビリティというコンセプトは、多くの企業にとって馴染みがないものであり、さらにその対応には地道な業務改善作業が必要とされるためです。しかし何も対応をとらないと、大事な顧客や取引先を失いかねないという状況にも置かれています。

また、コンセプトを理解せずに付け焼刃な対応をとると、「グリーンウォッシュ」「SDGsウォッシュ」と言われるように、「やっているふり」をしている悪質な事例としてみなされる可能性があります。

そのような現実を反映し、現在では多くのコンサルティングファームが、 企業のサスティナビリティへの対応について、支援を提供しています。

サスティナビリティに関するコンサルティングサービスの実施にあたって重要な視点

以上のように、サスティナビリティというコンセプトには長く複雑な背景があり、その中で、企業も重要な取り組み主体として捉えられています。こうした企業を支援するにあたっては、コンサルタントも、サスティナビリティというコンセプトを十分に理解している必要があります。

サスティナビリティに関するコンサルティングサービスを実施するにあたっては、リスクマネジメント・ビジネスチャンスなど、経営中心的な考えにとらわれすぎないことが重要です。通常、企業を相手にコンサルティングをしていると、「経営」が考え方の中心になります。経営目線で見れば、サスティナビリティ対応をとることはリスクマネジメントの一貫であり、他企業よりも積極的にアピールすれば、サスティナビリティ対応はビジネスチャンスにもなりえるでしょう。これらはもちろん事実ではありますが、経営の視点だけでは、から回った活動をしてしまう危険があります。

サスティナビリティというコンセプトが、大局的に見てどういう社会を目指すものなのか、きちんと理解して企業支援をしなければ、社会の期待と企業がやっていることにズレが生じ、かえってクライアント企業に損失をもたらしかねません。効果的な活動ができないばかりか、「ウォッシュ」とみなされる可能性も高まります。決して派手で華やかではありませんが、既に世の中に豊富にあるガイドラインや指針等と業務内容を照らし合わせて、地道に業務を改革していく支援をすることが、コンサルタントには求められています。

また、コンサルティングファームやコンサルタント自身にも、サスティナビリティ対応が要求されていることを忘れないことも重要です。他の企業と同様、コンサルティングファームやコンサルタントも、社会的責任を果たすことが期待されています。サスティナビリティという観点から、企業への提案内容や普段の業務内容に問題はないか、何か改善できることはないかなど、日々自分を振り返ることも必要になってきます。

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>持続可能な社会の実現に関する記事

社会課題の解決(ソーシャルビジネス)に取り組む企業一覧【厳選20社】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/socialbusiness

PwCコンサルティング合同会社/「経済成長と社会課題解決が両立するビジネスモデルの構築支援を目指す」PwCコンサルティング合同会社 Social Impact Initiative(SII)インタビュー
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/PwC_SII

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今回は、サスティナビリティというコンセプトの成り立ちと、サスティナビリティに関するコンサルティングサービスが生まれた背景の解説を行いました。

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