「基本情報処理技術者」試験の勉強法から参考書まで解説

IT業界には様々な資格試験が存在しており、エンジニアにとって資格というのは比較的身近な存在です。

しかし、ITエンジニアとして働くために資格は必須条件ではありません。日々の業務に追われる中で、資格取得のための勉強をしていくというのもなかなか大変なことです。

忙しい中でも頑張って勉強するのであれば、自身のキャリアのために効果のある資格を取得したいものです。ここでは、数あるIT資格の中から、基本情報処理技術者試験について紹介していきたいと思います。

【目次】

  1. 情報処理技術者試験制度のスキルレベル2に位置付けられている試験
  2. 基本情報処理技術者試験の勉強の進め方
  3. 基本情報処理技術者の試験でおすすめの参考書・問題集
  4. 基本情報処理技術者を取得すべき人・取らなくても良い人

情報処理技術者試験制度のスキルレベル2に位置付けられている試験

基本情報処理技術者試験は、IT業界で働く人の登竜門的な資格です。IPAが提示する「ITスキル標準(ITSS)」のレベル2に相当します。

情報処理技術者試験の中でも、最も知名度の高い資格でもあります。

IT業界で働く上では、ある意味持っていて当たり前というような言い方をする人もいるかもしれません。ITエンジニアにとっては、持っていて普通、特に誰かにアピールできるような資格ではありません。

しかし、エンジニアを目指す人、もしくはエンジニアになりたての人にとっては、IT業界に向いているかを判断するリトマス紙のような役割も果たします。

試験に合格するためには、否が応でもITに関する基本的な知識を満遍なく勉強する必要があるからです。

情報系の大学や専門学校を出ている人にとっては、簡単に合格できる資格かもしれません。学生のうちに取得してしまうケースも多々見られます。

既にIT業界で業務をこなしている人にとっては、さほど難しい内容ではありませんので、できる限り早めに取得してしまいたいものです。

基本情報処理技術者試験は、午前・午後共に、多肢選択式であり、記述式問題はありません。新型コロナウイルスの影響により、2021年から従来の紙の試験方式からCBT(Computer Based Testing)方式に移行されました。

応用情報処理技術者試験や高度情報処理試験など他の区分の試験と比較すると、試験時間も短かく、難易度も低めになりますが、試験範囲は広めになりますので、一から勉強するのであれば、ある程度長めに勉強期間を確保するようにしましょう。

基本情報処理技術者試験の勉強の進め方

どの情報処理技術者試験区分においても言えることですが、過去問題を繰り返し解く、というのが基本的かつ一番効果が高い勉強方法になります。

しかし、基本情報処理技術者試験を受けたことがない人にとって、やみくもに過去問題を解くのは、ただの苦行です。繰り返し問題を解き続けても、答えだけを丸暗記しただけ、ということになりかねません。

繰り返し過去問題を解ける段階まで辿り着くまでに、いくつかのステップを踏んでいくのが良いでしょう。

効果的な勉強の進め方について、下記に例を示します。

ステップ1 – 参考書を通し読み

まずは参考書をひと通り最後まで読み通し、試験範囲の全体のイメージを得るようにします。
数日程度、長くても1週間ほどで通し読みできれば十分でしょう。

よくありがちなのは、最初から参考書の中身をカラフルなマーカーの線でいっぱいにしたものの、全然頭には入っていないというケースです。確かに、ただ本を読むだけでは、成果が目で見えないため、線を引いていけば勉強しているような気になるのも分かります。

大事な部分を判別する実力がつく前に、マーカーで線を引いてしまうと、本がマーカーだらけになってしまい、どこが本当に大事な部分かわからなくなってしまいます。

最初の通し読みの時点では、マーカーを使わず、大雑把に全体像をつかむために読み進めて下さい。

ステップ2 – 過去問題を1回解いてみる

次に、参考書が1回通し読みできた時点で、直近の過去問題を1回分解いてみます。
参考書をざっと読んだだけでは、まともに問題を解くのは難しいと思われます。単なる当てずっぽうになってしまうかもしれませんが、それでもかまいませんので、最後まで解答してみましょう。

そして、自己採点をしてみます。合格点に辿り着くことは到底難しいと思いますが、それが勉強を始めたスタート地点の点数になります。

情報処理技術者試験は、本番では午前・午後共に60点以上が取得できなければ合格することはできません。

本番で60点以上取るためには、どの過去問題でも80点以上取れるレベルにたどり着いておきたいものです。

一度過去問題を解いてみれば、まったく理解できない苦手な分野、業務などの関係で何となく理解できる分野などが浮かび上がってくると思います。参考書を通し読みしたことにより、うろ覚えの知識で解けた問題もあったかもしれません。

あなたがまったく理解できない分野の知識を獲得すること、何となく理解できる分野の知識を確実にすることが、今後の勉強の進め方になります。

ステップ3 – まとめノートを作る

実質、ここからが本当の意味での勉強の開始になります。

繰り返し参考書を読むだけで必要な知識を吸収できれば良いのですが、参考書はすべての分野が満遍なく網羅されている万人向けの内容になっています。

参考書の中からあなた自身の試験対策に必要なエッセンスを抜き出して、まとめノートを作ることをおすすめします。

まとめノートを作るには、それなりに時間がかかってしまうため、時間がもったいないと思うかもしれません。

しかし、あなたが苦手な分野は内容を手厚く、理解できている分野は内容を薄くしてノートにまとめ、そのノートを繰り返し読んだ方が結果的に勉強の効率は上がります。

また、参考書を読むだけでは、内容を理解したり覚えたりするスピードよりも、目でページを読むスピードの方が早いため、内容が理解できていないままページが進んでいってしまうということも起こり得ます。

あえて理解が追いつくように「読むスピードを落とす」ためにも、自分の手でノートに書き写すことが大切になります。

もちろん、なんでもかんでも、ただ書き写せば良いというものでもありません。

例えば、図表などを手でノートに書き写していたら大変です。時には参考書をコピーし、必要な部分を切り取って貼り付けるなどしながら、効率的に作業を進めましょう。

まとめノートは、余白を多めにして作ることを意識しておきましょう。過去問題を解いていく中で、追記したい内容も出てくるかもしれません。あとで得た知識を追記しやすいように、余白を多めに書いていくのも大切なポイントです。

このまとめノートは、いつも持ち歩き、通勤時間などのスキマ時間を利用して何度も読み返すようにしましょう。

ステップ4 – 過去問題を繰り返し解く

まとめノートが出来上がったら、過去問題を解いていきます。直近に近い過去問題集を一冊用意するようにしましょう。

IPAのホームページから、過去問題と解答をダウンロードすることもできますが、解説が書かれていないため、一冊購入するのをおすすめします。

大抵の過去問題集は3回分程度の内容が含まれていますので、それを繰り返し解くことに集中します。

仮に1日1時間勉強時間が確保できれば、午前問題に1日、午後問題に5日(5問選択するため、1日に1題)かけて、大体1週間で1回分の過去問題を解くことができます(1日は予備日)。1日のうちで問題を解くだけではなく、答え合わせと解説の確認までは可能です。

もし時間が足りなければ、机に向かって問題を解き、通勤などで解説を読むというようにスキマ時間をうまく使いましょう。

そのようにすれば、1週間で1回分、3週間で過去3回分の問題を解き、9週間(約2ヶ月)で過去3回分の過去問を3回繰り返し解く、ということができます。

日々の業務で忙しいため、週末にまとまった勉強時間を確保する、という方法をとる人もいますが、情報処理技術者試験については、少しずつでも毎日勉強を続けることが良いと思います。

大体、事前準備(参考書の流し読み+過去問題を試しに1回解いてみる)と、まとめノートの作成で2ヶ月、過去問題を繰り返し解くのに2ヶ月で、合計4ヶ月程度の勉強期間を準備しておきたいものです。

もちろん、もっと効率的に短期間の勉強で合格することも可能かもしれませんし、週末にまとめて勉強する方が性に合っているという人もいるかもしれません。

しかし、短期間であっても仕事をしながら1日に何時間も勉強するというのも現実的ではありません。週末だけの勉強としたとしても、毎週必ず勉強のために長い時間を確保できるとも限りません。

1日の勉強時間を少なくしてでも、毎日勉強する習慣をつけた方が、結果的にはうまくいくと思われます。

1日1時間机に向かう時間を確保するというよりも、机に向かう時間を30分、通勤時間や昼休みなどスキマ時間を合わせてプラス30分というように、短い勉強時間を積み重ねるという考え方が、社会人の勉強には必要になってきるのではないでしょうか。

基本情報処理技術者の試験でおすすめの参考書・問題集

徹底解説 基本情報技術者 本試験問題

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情報処理技術者試験では、過去問題を繰り返し解くのが基本的な勉強法です。IPAのホームページから過去問はダウンロードできますが、解答解説は載っていません。

問題集によっては、過去何年分にもわたって問題・解説がダウンロードできる特典がついているものもありますが、基本情報処理技術者試験については、過去3回分(1年半分)の問題・解説があれば十分です。

アイテックの過去問題集は、特にダウンロード特典などはついていませんが、解説も詳しくわかりやすいためおすすめです。

本書は毎年新しいものが発売されますので、なるべく最新の問題集を用意するようにしましょう。

なお、予想問題集のような書籍も販売されていますが、情報処理資格試験に関しては予想問題は必要ありません。過去問題を繰り返し解き、確実に理解することに注力しましょう。

基本情報技術者 合格教本

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本書は基本情報処理の試験範囲や内容を把握する、参考書的な位置付けです。まとめノートを作る元となる参考書として利用します。

近年では、解説をわかりやすくするためか、ポップなイラストやマンガを多用する参考書も増えています。

まとめノートを作る際には、必要なポイントを抜き出すのに加え、時には参考書の図表をコピーしてノートに貼り付ける、ということも行います。

そのような使い方をするには、イラストやマンガが多い参考書は時に使いにくくなります。

本書は、わかりやすさを重視したポップな参考書と比較すると、昔ながらの質実剛健といった参考書ですが、解説も詳しく、合格するためには十分な内容を備えています。

コンピュータはなぜ動くのか 知っておきたいハードウエア&ソフトウエアの基礎知識

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本書は、コンピュータ基礎理論のわかりやすい解説書といった位置付けでしょうか。試験対策として読むよりも、勉強の合間の息抜き用コラムという感覚で読むと楽しめます。

CPUやメモリ、ハードディスクなどコンピュータの構成の仕組みから、アルゴリズムとデータ構造、オブジェクト指向やデータベース、ネットワーク、システム開発の流れまで、幅広い内容を網羅しています。

特に、データ構造とアルゴリズムについては、午後問題でも選択必須になっています。ただ参考書で勉強するだけではなく、本書のようなITエンジニアのための読み物もうまく使えれば、息抜きをしながら知識を増やすこともできますので一石二鳥です。

基本情報処理技術者を取得すべき人・取らなくても良い人

取得すべき人

少なくとも、IT業界で働くエンジニアにとっては、誰でも基本情報処理技術者は取得しておくべき資格です。

ITエンジニアにとって一番大切なのは業務経験であり、資格取得は必要ないという意見もあります。ご存知の通り、IT業界で仕事をする上で、資格を持っていないと仕事ができないということはありません。

また、情報処理技術者試験については、資格で得た知識をそのまま業務に生かすことができるかと言えば、必ずしもそうではありません。

それならば、試験勉強に費やす時間があるなら仕事をしていた方が、経験値を早くあげることもできるでしょう。そういった意味では、資格も必要ないという意見にも一理あります。

しかし、基本情報処理技術者については別です。IT業界で働く上での免許のような資格であり、そもそも業務経験を積む前に取得しておきたい資格だからです。

時には、資格の有無によって、システム開発プロジェクトに投入できるレベルなのかどうかを判断されてしまう場合すらあります。

いくら業務経験が大事だからといって、資格があった方が開発プロジェクトに参加しやすいのであれば、どちらが優先度が高いかは明白です。

もちろん、基本情報処理技術者資格を持っていなくとも、開発プロジェクトに参加できるケースもあるかもしれません。しかし、そのまま開発経験を重ねていき、業務が忙しくなってくれば、それこそ試験勉強に時間を割くことも難しくなっていきます。

すると、何年か後に転職しようとした時、システム開発経験が何年もあるにも関わらず、基本情報処理技術者資格を持っていない場合、採用側が「なぜ取得していないのだろうか」と訝しがることも起こり得ます。業務以外では自己研鑽を行わない人物、という評価になってしまう可能性もあります。

近年では、基本情報処理技術者については、学生のうちに取得してしまっているエンジニアも多くいます。そのため、なるべく若いうちに取得しておくのが理想であると言えるでしょう。

取らなくても良い人

何度も述べているように、ITエンジニアとして働くのであれば、基本情報処理技術者は皆取得すべき類の資格です。しかし、基本情報処理技術者は情報処理技術者試験スキルレベル2であり、さらに上位の資格が存在します。

当然、基本情報処理〜応用情報処理〜高度情報処理と、レベルに合わせて順番に取得していくのが近道です。しかし、豊富なシステム開発経験があるエンジニアは、最初から高度試験に挑戦して合格できるケースもあります。

上位の資格を持っていれば、基本情報処理技術者を改めて取得する必要はまったくありません。

また、情報処理技術者試験は国内資格のため、国内企業では高い知名度がありますが、海外ではまったく知られていない資格です。

そのため、外資系企業においてはそもそも評価の対象にすらならない可能性もあります。

Oracle MasterやAWS認定資格、Java認定試験など、グローバルでの知名度・評価がある資格は他に多数あります。

外資系企業への就職・転職を考えていたり、既に外資系企業に所属しているのであれば、基本情報処理技術者試験の勉強に時間を割くより、別の資格試験のために時間を使う方が、あなたのキャリアにとっては有効でしょう。

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>プライベートエクイティファンドへのキャリアに関する記事

ITストラテジスト資格は「役に立たない」は本当か?取得後の「実情」と「メリット・デメリット」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/itstrategistexamination

システムアーキテクト資格取得の「転職・キャリア」上のメリット&デメリット
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/systemarchitectcertification

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ただ単に試験に合格だけできれば良いというのであれば、もっと効率の良い勉強法というのも存在するかもしれません。

しかし、情報処理技術者試験は基本情報処理技術者だけではありません。上位の資格になるに従い、合格さえできれば良いという考え方は次第に通用しなくなってきます。

回り道に思えるかもしれませんが、自分なりの勉強のプロセスを確立するために、基本情報処理技術者試験の機会を生かしましょう。自分なりの勉強法が確立できれば、続けて上位の資格試験にも挑戦していけます。

せっかく基本情報処理技術者試験に合格できても、そこで勉強をやめてしまうのは非常にもったいないことです。

そのまま勉強を続け、難易度の高い資格を取得することで、取り組んだ勉強があなたのキャリアに生きてきます。

また、ITエンジニアにとって、勉強する機会というのは資格試験だけではありません。新しいプログラミング言語を覚えるなど、未経験の技術を身につけるためにも勉強は必要になります。

そういった意味では、ITエンジニアはずっと勉強し続ける必要があります。その習慣を早いうちに身につけるために、基本情報処理技術者は有効に活用できる資格試験です。

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