今回はシンクタンクへの転職を目指す方向けに、シンクタンクで研究員として働く際の仕事内容やKPIなどの評価基準、必要なスキルについてご紹介します。
シンクタンクはコンサル業界の中でも少し特殊な位置であり、文化や仕事内容などに特徴があります。この記事では、実際にシンクタンクで研究員として勤務していた方の生の声なども含め、実際の働き方や業務内容についてお伝えします。
【目次】
シンクタンク研究員の仕事内容
シンクタンク研究員の仕事として最もイメージされるのは政府向けの政策提言の作成などではないでしょうか。しかし、実はシンクタンクと一口に言ってもその仕事内容は多岐にわたります。
シンクタンクでは以下のとおり、官公庁をはじめとした様々な業界において、エネルギーやヘルスケアなど多様な分野をターゲットとして仕事を行っています。そして、各業界・分野を舞台にレポーティングや調査分析、政策提言、コンサルティング、デジタル化など様々な価値を提供しています。
以下では、よりシンクタンクでの仕事内容がイメージしやすいように、いくつか具体例を挙げたいと思います。
例① 二国間クレジット制度の制度設計
京都議定書で定められたクリーン開発メカニズム(CDM)は、画期的な取り組みではありましたがメカニズムの管理を世界全体で行っていたことやその複雑な処理方法、対象範囲が限定的であることなどから、実効性に課題がありました。折しも、2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)にて、画期的な温室効果ガス削減目標を定めたパリ協定が締結されます。このような状況の中で、日本はCDMに代わる新しい取り組みとして、日本とパートナー国の二国間で協力して脱炭素化を進めることを国際的に宣言します。これを、二国間クレジット制度といいます。
政策方針は定まったものの、具体的な制度設計については他国の事例などを参考にして検討していかなければなりません。ここに、シンクタンクの役割があります。官公庁と連携し、ヨーロッパをはじめとして他国の温室効果ガスの削減事例を調査し、また日本独自の提案なども含めながら、二国間クレジット制度を組み立てていきます。温室効果ガスの削減量はクレジットとして金銭価値を持つものとなり、市場で取引することができますが、このクレジットの発行基準をどうするか、またその市場の形成方法、クレジットの取り扱いで必要なセキュリティ面など、様々な観点から制度設計を実施していくのです。
例② 原発廃炉プロジェクト
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本全体に深刻な被害をもたらしました。さらに、福島第一原発の水素爆発など、原子力発電所への影響も甚大なものとなりました。
このような状況の中で、安定性を確保しながら原子力発電所を廃炉していく作業が必要となりました。しかし、当然ながら過去に同様の事例はなく、廃炉は手探りで始まることになります。このように、未知の問題に遭遇した際にもシンクタンクの役割があります。
シンクタンク研究員として、廃炉の全体計画を検討していくために、どのような技術を用いれば作業が進むのかを調査します。世界中の技術を調査し、先進的なロボティクス技術による遠隔作業や、高度なセンサを用いた状況のリアルタイム認識方法など、可能性がある技術をピックアップします。有望な技術があれば、現場と共同して導入検証を実施し、利用可否を判断していきます。
プロジェクトの流れ
一般的に、シンクタンクでの仕事はプロジェクトベースで行われます。以下では、一般的なプロジェクトの流れについて解説します。
案件獲得(営業)
シンクタンクであっても、案件を獲得するためには営業活動が必要です。しかしながら、シンクタンク業界はどちらかというと個人の付き合いで成り立っており、顔見知りの官僚から相談を受けるケースや、過去の案件の実績を買われてリピート指名されるケースを中心として案件を獲得します。
プロジェクト計画
案件を獲得したら、まずはプロジェクトの実施方法を計画します。プロジェクトは計画が命であり、この計画フェーズが良い仕事となるかどうかの分水嶺となるといってもよいでしょう。
プロジェクト計画においては、課題を解決するためには何を調査し、誰にヒアリングする必要があるかなどを整理します。また、場合によってはシステムを調達したり、アンケート調査を外注したりといったように外部委託を検討することもあります。
プロジェクト遂行・納品
プロジェクト計画を立案後、プロジェクトを遂行します。計画に合わせて調査やヒアリングなどを行い、エビデンスを精査していきます。
調査方法は様々ですが、よくあるのが海外の事例調査です。日本の政策は海外の事例を参考にするケースが多いため、海外での調査は貴重な情報源となります。現地に足を運び視察を行ったり、現地の担当者にヒアリングをしたりすることで、情報収集を行います。
一般的に、シンクタンクでの納品物は報告書が主となります。プロジェクトの実施結果は、最終的に報告書としてまとめ上げます。報告書の分量は、修士論文ほどをイメージするとよいでしょう。なので、忙しい時期には毎週修士論文を執筆しているような状況になり、シンクタンク研究員には高い文章能力が求められます。
シンクタンク研究員のランクと評価基準
シンクタンク研究員のランク
シンクタンク研究員のランクは、年次や実績に応じて大まかに以下の通りの区分けが存在します。
l 研究員:主に若手のランクであり、主任研究員の指示によって仕事を遂行する役割となる。
l 主任研究員:主に中堅層のランクであり、案件を獲得し研究員とともにプロジェクトを完遂する役割となる。
l 主席研究員:最上位のランクであり、主任研究員のうち特に優れた業績を上げた場合に指名されるもの。
一般的に、研究員として10年程度実務を行う中で業界知識や仕事の進め方を身につけ、人脈を形成していくことで主任研究員に昇格するといった流れとなります。さらに10年程度主任研究員として仕事を行い、その中でも専門分野を代表するような実績をあげた場合には主席研究員に昇格します。
シンクタンク研究員の評価基準
シンクタンク研究員の評価基準については、ランクごとに異なります。
ランクが研究員である場合は、主に仕事をこなす能力が問われます。よって、評価のKPIとしては、仕事の遂行数や主任研究員・取引先からの評価などが中心となります。さらに、研究員の評価基準の中には自己啓発が含まれることも多く、分野に応じた資格の取得や業界団体への参加なども評価基準となります。
また、主任研究員以上であれば、案件受注数や売上が主要なKPIとなります。シンクタンクも営利企業ですので、売上は重要な指標です。主任研究員・主席研究員の役割は仕事を獲得してプロジェクトを遂行することですので、自社の売上への貢献によって評価されることになります。
シンクタンク研究員に必要なスキル
それでは、シンクタンク研究員に必要となるスキルは何なのでしょうか。以下では、シンクタンク研究員を目指すうえで必要な5つのスキルについて解説します。
文章作成能力
やはり、シンクタンク研究員に最も重要な能力は文章作成能力でしょう。シンクタンクでの仕事の最終的なアウトプットは報告書となるケースが多く、どれだけ深く調査したとしても報告書の内容が不十分であっては価値がありません。
従来はWord形式が主であった官公庁の報告書も、近年ではPPTなどのプレゼンテーション形式となるケースが増えてきました。単にロジカルな文章を作成するだけではなく、図表も活用しながら読んだ人が理解しやすく、かつ価値が分かる内容になるように整理する能力も求められます。
プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力もシンクタンク研究員に必須の能力といえるでしょう。研究員として、提案書や報告書のプレゼンをする機会はたびたび存在します。せっかくよい報告書をまとめても、最終報告会でその内容を伝えられなければ意味がありません。調査内容のキーポイントはどこなのか、単的に説明する力が重要です。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力もまた重要な能力の一つです。シンクタンクの仕事は、発注者が求めているリクエストを理解し、問題定義して解決策を考えることから始まります。そもそも発注者の意図と違う仕事をしてしまっては、何のために仕事をしているのかわかりません。 また、シンクタンク研究員として仕事をする中でヒアリングを行う機会も多数あります。ヒアリングでは相手の話したいこととこちらが聞きたいことをうまく擦り合わせる必要があり、高いコミュニケーション能力が求められる仕事と言えます。
専門分野に関する深い知見
当然ながら、自分の専門分野に関する深い知見がなければ仕事はできません。研究員として仕事をする以上は、少なくとも日本でトップクラス、できれば1番の知識を持っていなければなりません。
シンクタンク研究員として日々学習を継続し、最新の技術や業界動向を学ぶ必要があります。
体力・精神力
最後にものをいうのが、体力と精神力です。少し前時代的な部分ではありますが、深い調査分析を行い、価値のある仕事を提供するためにはやはり体力と精神力が大切です。
膨大な文献を目にしてめげずに立ち向かい、また誰もやったことがない困難な仕事を前にしても諦めずに解決に向かって進める力が、シンクタンク研究員として働くうえでは大切です。
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https://www.axc.ne.jp/column/axis-column/2015/0915/2679.html
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