ベンチャーキャピタル(VC)の採用時に必要なスキル・経験【経験者や採用担当に訊く】

今回はファンド未経験者の方々向けに、ベンチャーキャピタル(VC)への転職採用時で求められるスキルや経験について実例を踏まえてご紹介していきます。

VCの採用に関して言えば、新卒採用をほとんど行っておらず、VCで働かれている方の数も少ないことから、なかなか内部の情報や求人情報が出回っていないことが多いでしょうか。
かつその業務性質から投資銀行やコンサルティングファームなどVCに適したスキルを持ち合わせた方々が目指されるため、採用の門戸は狭い業種となっています。そのため採用されるためには自分の中での大きな強みやスキルの明確化が必要になります。

そこで、今回はVCの採用シーンで求められるスキルや経験を、採用担当者の声や実例を踏まえながらご紹介します。

【目次】

  1. 必要なスキル・経験①会計知識
  2. 必要なスキル・経験②英語力
  3. 必要なスキル・経験③事業分析及び投資経験
  4. 必要なスキル・経験④事業会社において会社を大きく成長させた経験
  5. 必要なスキル・経験⑤コミュニケーション能力

必要なスキル・経験①会計知識

VCのビジネスモデルは一般的に、有望な若い企業に投資して株式を取得し、その会社の成長を売却や上場まで支援し、その際に株式の当時の購入額と売却時の額の差額を利益として計上出来るものとなっています。

そのため、業務全般に渡って会計知識が求められます。例えば、有望企業を発見した際に、その会社の貸借対照表からみる流動比率、固定比率、当座比率、株主資本比率、インスタント・カバレッジ・レシオなど会社の安全性はどうなのか。損益計算書からみる売上高利益率、総資本利益率、自己資本利益率、財務レバレッジ効果などの収益性はどうなのか。そしてVCにとって最も重要だとも言われている売上高増加率、経常利益増加率、営業利益増加率、新規顧客増加率、顧客単価推移などの成長性分析はどうなのかなど、これらの企業財務分析知識が現場では問われるため、これらに関連する会計知識・業務経験が採用においても有利に働きます。

この会計知識の有無に関して実際にVC採用の現場マネージャーに話を聞いたところ、「やはり会計知識は業務の根幹であるため必須」だそうです。

銀行や証券会社など金融機関での経験があればこの知識・スキルが得られる環境に身を置きやすいですが、そうでない方に関しては簿記や公認会計士のような会計系資格で会計知識を身に付けることも手でしょうか。
安定性分析、収益性分析、成長性分析は簿記2級ほどの知識があれば、その知識の応用で分析していくことは可能ですが、そもそもVCの採用枠は狭いことが多く、かつ競争者のスキルレベルは高いことから会計知識に関してはもはや理解していて当然のレベルが求められることが多いです。そのため、実務においては十分ではあるものの、採用に関して言えば簿記2級という資格に関しては他の受験者との差別化にはなりません。
もし会計知識のみで差別化を図るのであれば、より難易度の高い公認会計士(CPA)がベストです。その他、米国公認会計士(USCPA)や証券アナリスト(CMA)、米国証券アナリスト(CFA)の資格なども尚可といったところでしょうか。

必要なスキル・経験②英語力

近年、特にインキュベート系VCに多く見られる傾向ですが、多くの有望ベンチャー企業が集積するシリコンバレーを始め、IT先進国であるイスラエルやインドといったIT先進国で投資を行い、その企業と日本の大企業と繋ぐことで成長を加速させていくなど海外進出に力を入れているVCが多くなっているように感じます。
加えて、潤沢な資産を持ち合わせているVCがシリコンバレーや中国を中心に集まっており、これらVCとの交渉等も考えられることから、VCの採用シーンにおいてはビジネスレベルの英語力が求められることも少なくありません。
実際にシリコンバレーに赴いて直接企業へ取材を行なったり、海外VCと出資比率に関してディスカッションを複数回行いながらその比率を調整をしていった、といった事例もあります。

英語力に関して、海外投資先や海外進出支援などを積極的に行なっているVC採用担当者の話では、「中途で採用するのであればTOEICは800点以上、TOEFLなら90点以上が最低条件」と話しており、「このVCだけでなく海外関連案件に力を入れているVCであれば大体がこのあたりのスコアを求めている」とのことでした。

必要なスキル・経験③事業分析及び投資経験

事業分析及び投資経験は当然ながら採用時に高く評価されます。第三者の目線で有望な企業を発見し、その会社を大きくさせる、価値を高めるというVCの業務と共通する点が非常に多くあります。コンサルティングファームや投資銀行、PEファンドなどを経験された方に特有の経験とも言えます。
採用時にはその経験について深く聞かれやすいため、面接に挑まれる際にはその時の状況や数字など出来るだけ細かく話せるようにしておくことをおすすめします。

一般的な総合系コンサルティングファームにおいては企業分析に留まることも多く、財務的な観点においては投資銀行やPEファンドと比較して弱くなってしまうことが多いので、VCへの転職の際にはコンサルティングファームよりも投資銀行やPEファンドの方が有利になりやすい傾向にあります。そのため、コンサルティングファームから投資銀行などを経由してチェレンジするといった方も中にはいらっしゃいます。

必要なスキル・経験④事業会社において会社を大きく成長させた経験

先ほどの経験は分析やコンサルティングといった第三者からの目線での経験でしたが、当事者目線、つまり事業会社で会社を大きく成長させた経験も評価されやすいです。
小さな会社を大きくする際の組織内の方針についての齟齬や人材流出など、どうしても事業会社いないと理解出来ないような様々な問題が投資先にはありがちです。これは先ほどコミュニケーションの話にも関わってくるのですが、ベンチャーキャピタリスト自身がそういった経験をしていることで出来るアドバイスには投資先若しくは投資候補先にとっては非常に価値のあるものになってきます。
そのため、そういった内容について話せる、理解出来るということはただ単なるコミュニケーションに留まらず、信頼感向上などにも繋がるといったメリットがあり、採用においても重要視される経験になります。

実際に、競合VCの方がより良い額な内容での提案をしたのにも関わらず「金融出身者が作成した資料よりもこちらの方がより事業や所属している人間への理解が深い」として事業会社出身者の提案が採用されたという話もあるほど、この経験を重要視している企業も少なくないようです。

必要なスキル・経験⑤コミュニケーション能力

今まではハードスキルについて紹介してきましたが、VCにおいてはソフトスキルも要求されます。その代表がコミュニケーション能力です。
また、VCの主な業務はフェーズとして有望企業発掘、企業への取材、企業分析、投資契約締結、投資後管理の5段階に分かれます。小規模VCではこれらを一気通貫で1人の担当者が行うこともありますが、大規模VCですと、これら業務を分担して行う場合もあります。
そのほぼ全ての段階で社内外との密なコミュニケーションが必要になります。例えば取材の際には、どんなに有望な企業への投資を行いたいと考えていても、うまく相手企業とのコミュニケーションが取れず不信感を募らせてしまい、そのまま相手企業と連絡が取れなくなってしまったり、企業分析にこだわるあまり投資判断等に時間がかかり「レスポンスの早いVCとお付き合いしていきたい」と案件が流れてしまったり、といったような話は耳にしたことがあります。

そのため、優れた会計スキルや堪能な英語力をもってしても、このコミュニケーション能力が無ければ採用されない確率は非常に高まります。逆に、先述のハードスキルを持ち合わせた上で、このスキルを有している人材はVC業界では非常に重宝されます。

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>ベンチャーキャピタル(VC)へのキャリアに関する記事

“コンサル”と”PE・VCファンド”の違い【年収からキャリアパスまで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulfundcom

コンサルファーム・ファンド等「ベンチャー支援ポジション」の特徴・転職年収事例・キャリアパス
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/vsupport

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今回はVCの採用シーンで求められるスキルや経験についてご紹介しました。

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