CFOとは、「Chief Financial Officer」の略であり、 日本語では「最高財務責任者」と訳します。 企業の資金調達や運用など、財務面と経理面を担当する事は当然の中、CEOの補佐役として企業戦略の立案を担うケースが多く、欧米の企業ではナンバー2の立場にある経営者として位置づけられることが多いようです。
日本においては、管理部長の延長戦で財務担当取締役の役職を担うケースが大企業を中心に多かったことから、真のCFOとしてのポジションが根付いていないのが現状です。
昨今、プロ意識をもった経営者、CFO人材が浸透してきた事に加えて、IPOを目指すベンチャー企業や事業承継フェーズにあり、第二の創業を求める中小企業において、CFOの役割・重要性がクローズアップされ、注目を集めるようになってきました。
そこで、今回は、ベンチャー・中小企業のCFO就任にあたり、求められる要件とCFO候補となり得る職種経験がある人材がCFO職についた場合に長く活躍するために補うべきスキルおよび経験についてお伝えします。
【目次】
ベンチャー企業CFOに求められる要件
今回は、創業間もないような比較的若い会社であり、IPOを目指すベンチャー企業と、歴史が長く安定した利益を稼いでいる伝統的な中小企業では、CFO就任にあたり求められる要件が異なりますので、分けて記載を致します。
ベンチャー企業におけるCFOの仕事は、管理部門がない状態から会社の仕組み構築に取り掛かるところから始まります。そのため、ゼロからイチを作り出すという意味では、新規事業を立ち上げる事に近いのではないでしょうか。ベンチャー企業は成長スピードが速いため、従業員も拡大を続けますし、管理面も次から次へとアップデートをして拡大をしていかなければならないという面では業務量が落ち着くということはなく、モチベーションを高く維持する必要があります。
また、人材も採用ができるまでは不足するため、自身も手を動かしていく必要性があり、労働時間も長くなることに直面するため、自分で手を動かして仕事ができるタフなプレイングマネージャーのポジションが担えないと適合しにくい職種であると言えます。一方、ゼロからイチを作りやすいという観点では、伝統的な中小企業よりは実行力が現場へ反映させやすく、やりがいを感じられる方も多いような気がします。
とりわけ、IPOに向けて動いていく事が多くなる職種でもあり、人材の不足も恒常的に発生するため、会計・財務・労務・法務全ての面でマルチに整備対応できることが求められてきます。特に、監査法人の公認会計士対応や証券会社の対応、ベンチャーキャピタルからの資金調達の対応まで外部の専門家に対する高度な説明力や交渉力が必要となってくるため、高いコミュニケーション能力が必要であることに加えて、スピード感とハードな仕事量が求められることになります。
中小企業CFOに求められる要件
伝統的な中小企業においては、代替わりやM&Aによる事業承継がなされた際に、前オーナー経営者時代の一時代前の古い管理体制を刷新することが求められる傾向にあります。例えば、経理システムがなく、紙の伝票や帳簿を用いて管理をしている状態を電子化、システム化を進める業務から始まり、違法な労務管理の状態を適切な状態に直したりすることが求められます。また、中期計画や予算さえも作成していない会社も多いため、CEOの右腕として、数値計画をはじめ、経営戦略を絵にして、実際にPDCAが回るような施策の仕組み作りまで補佐していく事が求められるケースがあります。
公認会計士
さて、上記のCFOに求められる要件を踏まえて、CFO職に就こうとする人材が補わなければならないスキルや経験を4つの職種別に分けて解説をしたいと思います。
CFOとしての基礎素養を最も兼ね備えているのが公認会計士です。公認会計士になるための試験科目において、財務会計、管理会計、税務、会社法、経営学その他、幅広く会社経営を網羅的に学んでいることに加えて、実務上も監査法人や会計事務所にて管理部門業務を全般的に理解、場合によっては経験をしているため、管理部門の業務を一通り対応できるものと思います。
一方、監査法人や会計事務所のみの経験の場合、FASやコンサルを経由しておらず、実際に事業運営に携わった経験が乏しいことや、経営企画のようなポジションを経験していない方が多いため、事業計画の策定経験がない方が多いように思われます。
加えて、自身で銀行対応や投資家からの資金調達対応を実施したことがないケースが多いため、ファイナンス面の実務経験や判断能力が備わっていないケースが多いように思います。
ゆえに、監査法人や会計事務所のみしか経験がない公認会計士の方は、是非一度、FASや投資銀行などの金融機関に転職をして、ファイナンスの知見と経験をアップデートするとともに、対外的なステークホルダーを説得するための事業計画の策定ノウハウと経験を身につけることがCFOとして成就する秘訣ではないかと思われます。
FAS出身者
FAS出身者については、財務デューデリジェンスを基本として、事業再生業務において事業計画策定や銀行交渉、バリュエーションチームにおける財務モデリングスキルや企業価値の把握能力、M&AのファイナンシャルアドバイザーとしてのM&A業務の経験があると思われます。
CFOとして求められる能力は高く、事業運営においては大きな力を発揮することと思われますが、FAS出身者においても、現在はチーム分けがなされているFASが多いと思いますので、上記の全てを経験している方は少ないのではないかと思います。ゆえに、チーム移動や他のFASへの転職により、一通りの知見を身につけることができれば尚良いでしょうか。
また、公認会計士資格を保有していない場合、経理業務、すなわち会計や税務面の経験が乏しい可能性が高いため、事業会社の管理部門を経験などで補う必要があるのではないかと思われます。特に上場準備企業においては、高度な会計や税務スキルを求められるため、会計・税務の高度化は必須であると言えるでしょう。
コンサルティングファーム出身者
コンサルティング会社出身者は、主に会計や管理周りのコンサルティングを担ってきた方がCFOとして対象となってきます。多くは前職で事業会社の管理部門を経験しており、会計や労務、法務を経験してきた方が転職をされていると思われます。コンサルティング会社で培った課題解決力と実行力がCFOとして現場をマネジメントしてプロジェクトを動かしていくことに大変役に立つものと思われます。
一方、専門知識に関しては公認会計士に比べると劣るため、外部で均衡する専門家と同等レベルで交渉ができるような知見の獲得に向けた努力が常に求められることになります。また、FAS出身者と異なり、ファイナンスの知見や経験が不足しているケースも多いため、企業価値に対する知見を深めるためにFASや投資銀行に転職を検討することはCFOになるための早道であるかもしれません。
金融機関(銀行・証券会社・投資銀行)出身者
銀行・証券会社・投資銀行出身者が、CFOに転身するケースも多く見られます。金融機関出身者は企業の財務担当者や経営企画室と仕事をしてきたことから、決算書を読み込み外部から会社に対してアドバイスを実施してきた経験を豊富に有しているため、企業のCFOとなったとしても業務で生きる経験が多くございます。特に、投資銀行出身者は、ファイナンス面においては、FAS出身者以上の経験を積んでいることが多いため、CFOとしての適性は高いものと思われます。また、近年は、銀行出身の50代の方々が出向や退職となった後、もう一度、キャリアを広げたいという要望で、中小企業のCFOや管理部長の案件に応募されるケースが増えているように思えます。
一方、FAS出身者と同様に、会計や税務の実務を経験していなかったり、事業そのものを運営した経験がないため、事業領域における戦略策定などが苦手であるケースが多いように思えます。CFOとして転身する前に、事業会社の経営企画室などのポジションで事業や現場の会計・税務実務の温度感に触れることで、CFOにステップアップしていく事ができるのではないかと思われます。
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>CFOへのキャリアに関する記事
コンサルからベンチャーCFOへ。よくある見送り理由とその対策
https://www.axc.ne.jp/column/media/change-jobs-knowhow/ctcfo
「CFOとして経営者を支援し、日本を支える経営者を輩出したい」
株式会社エスネットワークス
経営支援第1事業本部
副本部長 園田裕輔様、橋本卓也様 インタビュー
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/esnet
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総じて、CFOになるためには、上述したキャリアの掛け算が必須であり、一つの管理系の専門性だけではなく、複合的な専門性と実務力を備えることが、長くCFOとして勤務して、事業の成功に力を添えることに繋がるものと思われます。
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