ベンチャーキャピタル(VC)への転職を検討されている方から、採用や入社後のキャッチアップのために、VCで必要な資格について教えて欲しいという声をよくいただきます。
そこで、実際に働かれている方々の声なども参考に、今回はVCの採用試験や、転職後に活かすことが出来る資格についてお伝えします。
【目次】
活かせる資格①簿記
VCは有望なベンチャー企業の将来の大きな可能性に投資を行い、その企業の成長を応援するビジネスです。なので、ベンチャーキャピタリストとしてまず求められる資質・スキルは財務諸表を読むことが出来る能力です。そのためにまず必要な資格は簿記検定です。
実際にVCに在籍していた方のお話を聞いても、日商簿記を2級まで取得されている方が非常に多い印象でした。1級を取得されている方はその更に上位資格の税理士や公認会計士も取得されている方が多くいらっしゃいました。
しかし「実務では2級までの知識があれば問題ない」という意見も多く、まずは2級までチャレンジし、もっと勉強したいと思った方はその上位資格に挑んでみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、簿記検定は、日商簿記・全経簿記・全商簿記の3種類があります。試験内容は簿記の知識を問うものなのでほとんど変わりませんが、難易度とその用途に若干の違いがあります。まず日商簿記こと日商簿記検定試験は簿記検定の中では最もよく知られているものであり、日本商工会議所と各地の商工会議所が主催している試験です。
難易度は1級・2級・3級・簿記初級・原価計算初級の5種類に分けられます。主な用途としては就活や転職などで活用する資格であり、VC実務においても最も役立てやすい資格です。
合格までの目安勉強時間は3級の勉強時間は50〜100時間で合格率は年度にもよりますが、およそ50%ほど、2級は100〜200時間で25%ほど、そして1級は500〜600時間以上で10%ほどとも言われています。
次に全経簿記こと簿記能力検定は全国経理教育協会が主催する簿記検定試験であり、難易度は上級、1~3級、基礎簿記会計の5種類があります。主な用途及び特徴として、上級に合格すれば税理士試験の受験資格を得られるため、税理士志望の方が多く受験されている印象です。
全経の上級は日商簿記の1級と比べ、難易度は若干ではありますが低いと言われているため全経上級に合格してから日商簿記1級に挑戦する方も多いようです。
最後に全商簿記こと簿記実務検定試験ですが、これは全国商業高等学校協会が主催する検定試験で、主に商業高校の学生を対象とした試験ですので簿記の知識はつくかもしれませんが、転職や採用であまりアピール出来ないという観点からあまりおすすめは出来ません。
活かせる資格②公認会計士・税理士
次は公認会計士及び税理士についてです。まず、税理士についてですが、税理士は公認会計士試験に合格し、申請すれば登録可能な資格、かつVC業務においては公認会計士の知識がより必要とされるため、ここでは公認会計士資格を中心にお伝えします。
財務会計論、管理会計論、会社法、監査論などという試験科目からみても分かるように、VCでの業務に非常に役に立つ資格という意見が多いです。
簿記の知識でも十分ではありますが、公認会計士資格を有していれば、会計、税務の専門家として投資候補先または投資先と話せることから信頼度がかなり上がります。
こういった高度な専門職を有する方は、「転職後いきなり大型案件にアサインされたりする」といった話も聞いたことがあり、即戦力として重宝される可能性は高いでしょうか。
ちなみに、公認会計士は弁護士、医師と並んで三大難関国家資格と言われるほど難易度の高い資格で、合格までの目安勉強時間は2,000時間から3,000時間以上とも言われています。
試験方式は一次試験の短答式と呼ばれるマークシート方式と二次試験の論文式と呼ばれる筆記試験に分かれます。まず担当式についてですが、これは財務会計論、管理会計論、会社法、監査論の4科目の基本的知識を理解しているかを確認する試験となっています。ちなみに先ほどの簿記は財務会計論と管理会計論に該当してきますので、簿記の勉強を進めていた方は頭に入りやすいのではないでしょうか。
次に論文式ですが、必須科目の財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、租税法に加えて、経営学、経済学、民法、統計学 の中から1つ選択して受験します。選択科目は特にこだわりが無ければ経営学を、その他は自身の出身学部に合わせて受験されている方が多いようです。
それぞれ合格率は短答式が20%ほど、論文式が35%ほどと簿記と比較すると合格率は高いように感じますが、受験者のレベルが非常に高いためしっかりと勉強してから臨みたい試験となっています。
活かせる資格③証券アナリスト(CMA)、米国証券アナリスト(CMA)
次に証券アナリスト(CMA)、米国証券アナリスト(CMA)の紹介をしていきたいと思います。これらの資格は、財務分析やコーポレート・ファイナンス、市場経済分析などを学ぶ資格となっており、VCの実務においては「投資候補先分析」においてその効果を発揮しますが、会社のみでなく国債などの債券市場、金やプラチナなど商品先物取引市場の勉強も並行して行うため、VCへの転職やその後の活用におけるという点での優先度はそれほど高くありません。
しかし、投資候補先のビジネスによってはこれらの知識が必要になる可能性もあるため、あくまでも余裕があるのであれば資格取得を目指してみてもいいかもしれません。
活かせる資格④TOEIC・TOEFL
次にTOEIC及びTOEFLについて紹介していきたいたいと思います。近年、外資系VCのみならず、日系VCもシリコンバレーやイスラエルなどのベンチャー先進国への投資が加速している現況において、英語力は特に重要視されてきている能力です。
この英語力に関して実際に求められるレベルですが、ある海外投資先や海外進出支援などを積極的に行なっているVC採用担当者の話だと、転職で採用するのであれば、TOEIC L&R試験であれば800点以上、TOEFL iBT試験であれば90点以上が最低条件という話を聞いたことがあります。ただ、この会社のみならずVCで求められる英語力は様々な方の話を聞いても大体この辺りに落ち着くのではないかと感じています。
その中でもVCへの転職及び採用後に活きる資格はTOEFLではないでしょうか。ではなぜTOEFLの方が活きてくるのかというと、両者の違いとして、TOEIC試験で最も一般的で受験者数が多いTOEIC Listening & Reading(L&R)試験はその名の通り読み聞きの能力を問う試験であり、一方TOEFLと呼ばれるTOEFL iBT試験は先ほどの読む、聞くに加えて話す、書くの全ての言語要素を測定する試験です。なので今回は様々なVCの実務において英語力を活かす幅が広がりやすいという観点からTOEFLの受験をオススメしました。ただ、英語の利活用に関しては会社に依るため事前に調べてから読み聞きだけでなく会話などまで求められているのであればTOEFLを、そうでないのであればTOEICの受験をオススメします。
この英語力に達するまでの勉強目安時間としては両資格共に現在の英語力に大きく依りますので、ご自身の現在の英語力から合格までの目安時間を調べてみてはいかがでしょうか。
活かせる資格⑤MBA
最後にMBA(Master of BusinessAdministration=経営学修士)について紹介したいと思います。MBAは主に事業戦略やマーケティング、会計など大学の経営学で学ぶ内容に加えて、ロジカルシンキングなどの実務において応用可能なスキル、更にAIやIoTなどベンチャーキャピタリストとして知っておくべき最新頻出テクノロジーについての基礎知識も学ぶことが出来ます。
また、英語活用力であったり人脈形成などの観点からも海外MBAはおすすです。
加えて、実際にVCの人事に伺った話なのですが、特に外資系のVCでは特に学歴を重視する傾向があり、その評価の指標の一部となるのが有名海外MBAを出ているかどうかだそうです。
海外MBAでは、もちろん授業は英語で行われるため、海外MBAを取得しているということが英語力の証明に繋がるという点も、VCなどへの転職で資格として評価されやすい一因なのではないでしょうか。
ちなみに、学び方も近年では普通の学生のようにフルタイムで通学する形態のみならず、1年間の短期コースや夜間コース、土日に通うパートタイムコース、インターネット講義を中心としたeラーニングコースなど様々です。
その中でもVC転職の際に最も活かすことが出来るコースはやはりフルタイム、特に海外MBAが主流です。
=================
>ファンドへのキャリアに関する記事
コンサルファーム・ファンド等「ベンチャー支援ポジション」の特徴・転職年収事例・キャリアパス
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/vsupport
“コンサル”と”PE・VCファンド”の違い【年収からキャリアパスまで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consulfundcom
ベンチャーキャピタル(VC)で求められるスキル、知識とは?フェーズ毎(企業発掘、取材、企業分析、投資締結、投資後管理)に解説
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/venturecapital_requiredskill
=================
今回はVCの採用試験や、転職後に活かすことが出来る資格についてお伝えしました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。