目まぐるしい経済環境の変化や新たなテクノロジーの出現があり、スタートアップの台頭・外資系企業の進出・大企業による事業の多角化などがある中、様々な業界において既存事業のみでは戦えなくなっている企業が急増しています。
それらの壁を乗り越えるために、新規事業の展開を目指している企業も多くあります。
その中で、道半ばで頓挫してしまったり、事業をローンチしてもすぐに撤退してしまったり、という失敗談もよく耳にします。
今回の記事では、自社の強みを活かした競争優位性が高い新規事業立案の支援を行う所謂「新規事業立ち上げ支援コンサルティング」のプロセスをご紹介します。
事業会社で新規事業を立ち上げる際にも参考になるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1st STEP:新規事業のコンセプト設計(目的とターゲットの選定)
まずは、どのような目的で、誰に対して、価値を提供したいのかを整理します。トップライン向上が目的であることは自明ですが、自社の現在の事業や顧客ポートフォリオを鑑みて、何を通してそれを実現したいのかを検討します。
例えば、従来とは異なる顧客層を獲得したいのか、既存顧客へ新たな価値を提供して顧客単価を上げにいきたいのか、CSRに関する取り組み強化を世にアピールしたいのか、などが挙げられます。
このように、新規事業コンセプトの共通認識を最初に社内で構築しておくことで、その後の検討ステップがスムーズに進み、検討すべき論点が明確になります。
2nd STEP:ターゲットが抱える課題・ニーズの把握
1st STEPで定めたターゲットは、どんな課題やニーズを解決したらお金を払ってくれるのかを様々な調査・分析を通して明確化します。
例えば、現場で常に顧客と相対している営業担当者へのインタビュー、想定顧客へのアンケートやインタビュー、などが挙げられます。
インタビューやアンケートを行う際に気を付けたい点は、まずは行動だ、聞いてみよう!と相手に対してオープンクエスチョンだけでインタビューしてしまうことです。これでは相手の本音を聞き出すことが出来ず、誰もが考えうる浅い回答の集約に留まってしまいます。
重要なことは仮説検証のための質問をすることです。想定顧客が抱えているであろう課題やニーズについて、まずは自分/チームで仮説を立て、それを立証するのに必要な質問を設計します(気付けない観点や情報もあるのでオープンクエスチョンも含めますが)。
それらを通して、調査後にはどのような分析を行い、どのようなことを示唆したいのかをイメージしながら質問を設計することが2nd STEPでは非常に重要です。
3rd STEP:自社の強み・弱みの把握
自社の独自性を活かすためには、まずは自社の強み・弱みを整理します。一般的には、この段階でSWOT分析が紹介されることが多いです。
自社の強みといった際にどのようなものを挙げるべきなのかですが、例えば、自社が持っている資産(他社が持っていないような機器、土地、情報など)、顧客性質(顧客層の偏り、ロイヤルカスタマーなど)、チャネル(オンライン/オフラインの独自チャネル、突出したフォロワー数を持つSNSなど)などが挙げられます。
自社が持ち合わせているもの以外を活用する際には、本当にそれは自社がやるべきことなのかを改めて問い直す必要があります。すべてを新たに始める場合は、他に適切な業界や企業があったり、自社で展開しても模倣され抜き去られたりすることも多いです。
スタートアップであれば別ですが、自社が持つ強みを最大限に活かした新規事業は独自性が強いことが多いため、まずはそれを軸に検討することをおすすめします。
4th STEP:新規事業案の導出(ロングリスト作成)
1st STEP~3rd STEPにて整理した内容を照らし合わせ、チームでのブレスト等を通して、新規事業案のロングリストを作成します。この際に重要なことは、実現性や課題・リスクなどは一旦気にせず、アイディアの幅出しを重視して行うことです。そうすることで、ありきたりな案に留まらず、エッジが利いた面白い案も出てくるようになります。
ブレストを行う際の注意点としては、相手の意見を批判しないということです。不明点や懸念点があるアイディアだとしても一旦置いておきます。まずは思考の枠を取り除き、発想力を十分に活かす環境を作ることが重要です。アイディアを出す度に批評するような状況だと、若手層を中心にメンバーの委縮を招き、議論の活性化が見込めなくなってしまいます。
5th STEP:新規事業案の初期絞込み(ロングリスト⇒ショートリスト)
ロングリスト上の案に対して、評価軸を設けて有望な案に絞り込んでいくショートリスト化を行います。ロングリスト上の100案に対して評価を行い、10案程まで絞り込んでいくようなイメージです。
この際に重要な点は、まずは細かい点を気にせず、大まかに振り分けることです。ノックアウトファクターを持つ案は早々に除外しますが、いくつかの評価軸を設定し、〇・△・×の3段階などで評価します。その3段階の区分についても、数値的な振り分けはショートリスト化した後に実施することとし(6th STEP参照)、大まかに振り分けられる定義を設定します。そうすることで、調査・ヒアリングなどは一部発生することはありますが、スピーディに有望な事業候補案の絞り込みを行うことができます。
ロングリスト上の事業候補案の評価軸は、各社によって何を重視するかによって異なりますが、下記がよく用いられる評価軸の例です。
6th STEP:事業性評価・新規事業案の選定(ショートリスト⇒事業選定)
5th STEPで評価した結果に基づいて選定した有望な事業案については、更に詳細な評価を行っていきます。実際に事業を展開する場合のビジネスモデルや収益性、市場展望など、5th STEPからもう一段掘り下げた評価軸を設定して、事業候補案を詳細化し、具体的な実現性の確認や数値での判断を行います。最も有望なものについては、実現に向けたアクション(トライアル)に踏み切っていきます。
選定を行うため、事業案の具体化に向けた調査や分析、インタビュー等を通して、必要な情報収集も行います。各ステップの中で一番時間がかかることになるケースも多いです。
事業候補案の評価軸は、各社によって何を重視するかによって異なりますが、主には下記の様な評価軸を用います。
<評価軸の例>
7th STEP:アクション計画立案
1~6th STEPを通して新規事業案を構築・選定した後は、それを実現するまでのアクション計画を作成します。
まずは重要なマイルストンの検討から行います。例えば、事業ローンチ、社内稟議、プロジェクトの始動/拡大のタイミングを設定します。
そして、それらマイルストンに向けて何をしなければならないのかを洗い出し、アクションの順序性や優先度を考慮して、計画を立てていきます。
その際、第三者(提携候補先等)との調整や交渉事は余裕を持って早めに実施することをおすすめします。自社のみでコントロールできるものではなく、第三者の意思決定や進捗に依存してしまうためです。
それを見越したプランニングをすることでマイルストンの遅延等を防ぐことができます。
8th STEP:体制構築
新規事業プロジェクト指導に向けて、最後にプロジェクト体制を構築します。新規事業の内容についての経験・知見者や新規事業構築の経験者などを中心にメンバーを選定します。
その際、各メンバーの役割・責任を明確化することが必須です。これが不明確だとプロジェクト指導後に工数の過不足が発生することが非常に多く、モチベーション維持が難しくなってしまうメンバーも出てきてしまいます。
また、各メンバーがプロジェクトに参画する意義やメリットの明示もモチベーション維持には効果的です。定性評価ももちろんですが、プロジェクトが成功した際にはインセンティブが入ってくる、その後のキャリアに好影響を与える、など仕組みとして設計できていると更に効果的です。
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>新規事業立ち上げに関する記事
プライマル株式会社/650以上もの新規事業立ち上げを支援してきた特化型ファームの魅力に迫る
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/Primalintv
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新規事業を立案する方法は様々な切り口がありますが、今回の記事ではターゲット顧客に対する提供価値をベースにしつつ、自社の強みを最大限に活かした新規事業を検討するためのステップと考え方をご紹介しました。
各ステップをじっくり丁寧に回していくことも重要かもしれませんが、それ以上にスピード感を重視することがポイントです。そのため、ロングリスト作成からショートリスト化までのプロセス等では、仮説と思い切りの良さを用いて、一定のロジックを持ちつつ、ある程度ざっくりと進めていきます。
これらのプロセスを通して、スピーディかつ強い事業案を構築することが大切です。
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