会計士からM&Aコンサル(アドバイザリー)へのキャリアパス(採用ニーズ~業務内容の違い~転職年収事例~選考対策~入社後の注意点まで)

最近、会計士の方から今後のキャリアパスについてご相談いただくことも増えてきました。「AI発展により監査法人の仕事は現在の2割程に縮小する」などのニュースも背景に、より付加価値の高い領域への転職意向が強まっているようです。

今回の記事では、会計士からのキャリアパスとして人気の高い「M&Aコンサル(アドバイザリー)」に着目し、実際にファームのパートナーや会計士から転職した方の生の声を元に、『会計士からM&Aコンサルへのキャリアパス』についてお伝えいたします。

【目次】

  1. コンサルファームにおける会計士の採用ニーズ:M&A部門の「エグゼキュージョン領域」で特に強い
  2. 業務内容の違い:デューデリジェンスはスキルのスライドが可能。一方で「So What」の視点が求められる
  3. 転職年収事例:監査法人からファームへの転職では100万円~年収アップが大半
  4. 面接・選考上の注意点:「To Be」や「答え」を自ら生み出すロジカルシンキング、アドバイザリー・マネジメント経験をアピールしたい
  5. コンサルファーム転職後の注意点:「自ら情報を手に入れる姿勢」と「コンサルの基礎スキル」の習得を
  6. 会計士からM&Aアドバイザリーになった後のキャリアパス:事業会社・ファンド投資ポジションへの道も開ける点が魅力

コンサルファームにおける会計士の採用ニーズ:M&A部門の「エグゼキュージョン領域」で特に強い

近年、事業会社による海外子会社の買収が盛んなことから、コンサルティングファーム/FASにおけるM&Aアドバイザリーチームへの案件引き合いが多く採用も増加しています。
特にファーム/FASのM&A部門の中でも、デューデリジェンス・バリューエーションなどを含むエグゼキューションを手掛ける部門では、会計士のニーズが強いようです。

M&A戦略策定などを手掛けるBig4のFASパートナー曰く、「簿記レベル、決算の仕訳レベルだけではトランザクションに関わる会話についていけない。その点会計士は財務諸表の理論を認識できるためフィット感がある」とのことでした。

現在は案件が豊富なため未経験層も積極的に採用しているM&Aチームが多いですが、よりケイパビリティで順応性の高い会計士は即戦力として採用実績があるとのことでした。 公認会計士だけではなく公認会計士2次試験合格レベルで事業会社経理担当の方、USCPA資格保有者にもチャンスがあるようです。

業務内容の違い:デューデリジェンスはスキルのスライドが可能。一方で「So What」の視点が求められる

ご存知の通り、コンサル、FASのM&Aコンサルティングの業務内容はPreとPostで大きく異なります。

    Preフェーズ
  • M&A戦略の立案支援
  • 財務/財務、ビジネス等のデューデリジェンス など
    Postフェーズ
  • 買収後の統合事務局(IMO)運営
  • 統合後のIT全体構想策定~統合実行
  • M&A後の中長期的なシナジー施策検討・実行支援 など

ファーム/FASでもPreフェーズのデューデリジェンスでは、財務諸表から「不正経理処理の有無」や「債務・負債の範囲が適正かどうか確かめる」ことが求められるため、業務内容は監査法人での財務調査と重なる部分もあるようです。

一方で、ファームやFASの場合は、M&Aを通した売り手・買い手企業のバリューアップ・成長に着眼点が置かれており、財務デューデリジェンスはあくまでも戦略上の一つです。

M&A部門を率いるマネージャークラスからは、「経営戦略上M&Aが果たして有効なのか、どうすれば最大の効果を生み出せるのかなど『So Whatの視点』が求められる」という声をよくお聞きします。

また、戦略~ディール~PMIまで一貫して担うケースが大半であり、Big4などではDDは監査法人のメンバーに任せ、戦略策定やPMI支援に注力するケースも多いようです。
さらに、コンサルティングというビジネスモデル上、タイトルが上がるにつれて課題解決の先に新しい課題を発見し、次の受注へと結び付けるセリングの責務が増します。 そのためにも、ゆくゆくはオペレーションやITなど、財務以外で課題解決や問題発見をするための視野やナレッジの広さも求められてくるようです。

転職年収事例:監査法人からファームへの転職では100万円~年収アップが大半

  • 20代後半・女性:Big4系 監査法人(上場会社の会計監査、内部統制監査) 年収700万円→大手外資系ファーム(Pre M&A) 年収900万円
  • 30代半ば・男性:Big4系 監査法人(日本上場企業、米国上場企業への監査業務) 年収700万円 → 大手外資系FAS(M&Aアドバイザリー) 年収700万円
  • 30代半ば・男性:Big4系 監査法人(財務デューデリジェンス業務、税務アドバイザリー)年収800万円⇒大手外資系ファーム(Pre M&A)年収1,000万円

上記は一例です。監査法人から大手外資系ファームでは年収アップでの転職事例が多いようです。 また、よりM&Aの領域に特化したアドバイザリーを行いたいという志向から、一旦はファームのM&Aを含む戦略組織に入り、その後FASのM&Aアドバイザリー組織に転職されるケースもあります。

面接・選考上の注意点:「To Be」や「答え」を自ら生み出すロジカルシンキング、アドバイザリー・マネジメント経験をアピールしたい

M&Aアドバイザリー組織のパートナーに「会計士の方によくあるお見送り理由」についてお聞きすると、「課題解決の経験がないこと」「監査からコンサルティングに思考の転換をするのが難しそうな方」といった答えをいただくケースが多いです。

監査業務は六法全書などすでに存在する答えから正しいかどうかを判断するケースが多いですが、コンサルティングはあらかじめ答えやソリューションが決まっていないことから、「To Be」を実現するためのソリューションを自ら生み出す「0ベースでの発想」が求められるケースが多く存在します。会計士業務とはこの点で頭の使い方が異なることが、入社後の大きなギャップになるようです。

そのため、歳が若く思考が柔軟な方はポテンシャル採用になるケースが多く、会計監査のスキル以上にM&Aを含む高度な経営戦略を立てられるロジカルシンキングなどに採用判断の重きが置かれるケースが多いようです。 特に、M&A戦略などPreM&Aを専門に手掛けるチームでは論理的思考を問うため、ケース面接を行う場合があります。こちらは事前の対策が必要になるでしょうか。

また、M&Aチームのパートナーからは、「専門性を組み合わせて最適なソリューションを生み出せる方も求めている」というお話がありました。
過去の経歴から、「会計という専門性と何かをかけ合わせ課題を解決してきた」「新しい提案を行った」など意向に沿った事例があればアピールをすると評価されやすいでしょう。

また、マネージャークラスでの採用の場合、監査業務だけではなくその他の業務(アドバイザリー業務や、マネジメント等)に関わっていると、コンサルティングにも通じるケイパビリティや考え方を持っていると判断され、採用を通過するケースがあります。

監査法人内での社内異動でアドバイザリー側の経験を積む、またはマネジメント経験を一旦積んでからのキャリアチェンジなどが現実的に有効と言えるでしょう。

コンサルファーム転職後の注意点:「自ら情報を手に入れる姿勢」と「コンサルの基礎スキル」の習得を

パートナーの方へ「会計士出身のコンサルタントに特に留意して欲しい業務上での重要なポイント」についてお伺いすると、
上記でお伝えした「0ベースの発想力」や「会計以外の知識」に加えて、「コンサルティングやアドバイザリーの場合、監査業務のように義務的にクライアントが情報を自ら出すことがないため、「必要な情報は自ら聞き出す」というより率先的な姿勢が求められる」との回答をいただきました。

また、別のパートナーからも「よりコミュニケーション能力が重要になる」と回答いただき、具体的には、クライアントの経営者やM&Aを担当する経営企画と話をしていく中で、「本当のことを言い、虚偽の説明をしていないか」「必要な情報を開示してもらうにはどうすればよいか」などの交渉力を高める必要があるようです。

そのために、「相手の懐に上手く入るなど、駆け引きや、柔軟性が重要」「短期的な案件が多いものの、大局的に物事を捉えて進めることが求められる」「『あるべき論』を語るだけでは仕事にならない」とのことでした。

その他、監査法人の会計監査業務ではデリバリーでパワーポイントを用いた資料を使用しないため、資料作成スキルやIT導入の際のPMOといった、コンサルの若手が覚えることを経験せずに入社するケースが多いようです。
そのため、入社後は「新卒と同じ気持ちで0から基礎的なコンサルスキルを学ぶ」といった挙動が求められるという意見もよくお聞きします。

会計士からM&Aアドバイザリーになった後のキャリアパス:事業会社・ファンド投資ポジションへの道も開ける点が魅力

Big4のFASパートナー曰く、会計士からM&Aアドバイザリーのキャリアパスのメリットとしては、「メーカー・流通・サービス・運輸・建設等、様々なインダストリーと接点を持った仕事が出来る点」のようです。 M&Aアドバイザリー部門はファンクション組織という位置付け上インダストリーに縛られず案件に関わることが出来るため、様々な業界のナレッジが身につきやすいようです。

実際に、会計士からファームのM&A部門に転職し、その後は事業会社のM&A推進部門に転職された方の生の声として、「エグジットキャリアが豊富です。転職中も、商社・ファンド・事業会社・独立起業など、M&Aコンサルの経験を武器に様々な業界・業種へのパスが開けていると実感しました」といただきました。

M&Aの規模・ニーズは年々拡大していることから、ファームや事業会社に限らずM&A領域の経験を生かせる場が増えていると言えそうです。
エグジットの際に、「御社のフィールドである●●業界でのM&A戦略策定からPMIまで一貫して関わった経験を持っている」と語ることができるのは大きなアドバンテージと言えるでしょう。

また、会計士出身のマネージャーの方曰く、「M&Aコンサルは1か月という限られた時間で最大の効果を出すために、経営視点をもって情報を的確に集めることが求められる」とのことでした。 さらに、「経営陣の意思決定やアドバイザーとして経営陣と対話するためには避けられない『経営に関する数字の基礎』をはじめから叩き込める。M&Aの基礎と経営を数字から判断するスキルが身につくので、エグジット後もM&Aだけでなく経営部門に関わる業務も大抵キャッチアップできる」等の声も多く聞かれました。

事業会社では、経営企画が中長期の経営戦略策定においてM&Aを選ぶケースも増えているといった声もあります。経営視点・M&Aのケイパビリティや知見を持っていることは、経営企画へのキャリアにも有利に働くようです。

なお、経営コンサルなど領域を変える転職の場合は、一度会計知識を生かせる部門でステップアップしたのちに、同領域に転職される方が多いでしょうか。

(例)中小規模の監査法人(中小企業への税務・監査業務)→Big4系 フィナンシャルアドバイザリー(デューデリやフォレンジック、コスト削減)→大手外資系ファーム 戦略部門(官公庁へのコンサルティング)

また、M&Aアドバイザリーにおけるビジネスデューデリジェンスの経験を生かして、ファンド投資部門への転職を果たされる方もいらっしゃいます。

(例)監査法人⇒FAS(デューデリジェンス)→日系投資ファンド(投資部門)

ただし、PEファンドではビジネスデューデリジェンスはコンサルティングファームに依頼するケースも多く見られます。キャリアアップのためには、より一層ソーシングやファンドレイズのためのクライアント折衝力が求められるようです。

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今回の記事では、会計士からM&Aコンサル(アドバイザリー)へのキャリアパス(採用ニーズ~業務内容の違い~転職年収事例~選考対策~入社後の注意点まで)についてお伝えしました。

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