顧客戦略の策定から、顧客接点業務の改革、さらにはシステムソリューション開発・導入・定着化、チェンジマネジメントまで、一貫したCRM領域のコンサルティングサービスを提供しているアビームコンサルティングCRMセクター。今回は同セクター長を務める執行役員プリンシパルの水野美歩様、ダイレクターを務める財部透様に、CRMセクターの特徴や、CRM領域のトレンド、同セクターで求めている人物像などについてアクシスコンサルティングの福原、江口が伺いました。
CRMセクターの概要、インタビュイーの経歴について
江口
まずは水野様、財部様のご経歴からお伺いしてもよろしいでしょうか。
水野様
私は新卒で総合商社に勤め、機械部門で輸出や事業会社管理を担当しました。関わっていた業務改革や経営改革に興味を持ち、同領域のスペシャリストになりたいという思いで2000年にアビームコンサルティングに転職いたしました。
キャリアの前半は商社の業務経験を活かした業務改革がメインでした。キャリアの中盤から新規事業立ち上げ支援や、営業戦略立案、それを支える営業・マーケティング情報の管理基盤構築など、いわゆるCRM関連のプロジェクト経験を積む中で、営業・マーケティング領域の改革に成長性を感じ、CRMセクターに異動し、現在はセクター長を務めています。
水野美歩様(CRMセクター長)
財部様
私は米国系クレジットカード決済企業で開発などに従事し、2002年にアビームコンサルティングに転職しました。入社後は公共・製造業・商社・小売り・流通とあらゆる業種の基幹システム開発案件をアーキテクトやプロジェクトマネージャーとして支援してきました。
昨今のCRM領域ではデジタルを活用した新規事業開発に対する関心が高いこともあり、システム開発での経験を活かして、現在はCRMセクターのダイレクターを務めています。
財部透 様(ダイレクター)
江口
CRMセクターの特徴についてご紹介いただけますでしょうか。
水野様
顧客戦略の策定から、マーケティング、セールス、カスタマーサービスを含む顧客接点の業務改革、実現の為のシステムソリューション開発・導入まで、CRM領域の一貫したコンサルティングサービスを提供しています。
戦略~IT導入、チェンジマネジメントまで幅広いサービスラインナップを持ち合わせ、それら全てを同一のチーム内に揃えている点が他社との違いでしょうか。昨今、クライアントから求められていることは、ビジネスモデルそのものの変革であり、リアルからデジタルまで含めた全体の改革支援をOne Teamで行っています。
また、キャリアの特徴としてオープンアサイン制を敷いております。一人のコンサルタントが戦略立案からソリューション開発・導入まで様々なフェーズをプロジェクトごとに経験します。システム開発の分野で活躍してきた人材が領域を広げ、マーケティング戦略立案に携わるようなケースもあり得ます。
CRMセクターの特徴はソリューションを「自分たちで創り上げる」こと
福原
ありがとうございます。他ファームの方が御社を志望される理由として、先ほど水野様が仰っていた「ソリューション開発」に携われる点を挙げるケースが多いです。CRMセクターのソリューション開発の具体的な事例や、そこに関わった方の生の声についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
水野様
既に実績のある決まったソリューションを提案するのではなく、我々は自分たちでソリューションを企画・開発して提案しています。出発点は常にクライアントの課題で、それを解決するために必要なアプローチ方法を考え、ソリューションを適宜生み出しています。
最近では、顧客接点から蓄積されたデーについてをAIを用いて分析できる基盤や、製造業のデジタル販売に特化したCRMソリューション、VR、ARを活用した新しい形の顧客体験提供サービス、NPO団体向けの活動支援ソリューションなどを開発し提供しています。いずれもサービスをコンサルタント自身が企画して、最適なツールを組み合わせ、社内外を巻き込んで形に仕上げていきます。
また、ソリューション開発は管理職以上の発案だけではなく、スタッフクラス起点でも行っており、年間5~6個程度リリースしています。キャリアの早い段階から、このような事業開発も経験できるのがアビームの魅力だと思います。
他社ファームから転職された方は、アビームに入社して「クライアントに本当に必要なものを、自由に考えて提案できるチャンスが多い」と驚かれることが多いです。当社は「リアルパートナー戦略」を打ち出しており、常にクライアントの課題起点で考える文化があることに加え、日本にヘッドクオーターがあるため投資の意思決定が迅速である点も特長です。
組織体制に左右されず、幅広い課題解決スキルが習得可能
福原
マネージャー以上ではどのような理由で御社のCRMセクターに入られる方が多いでしょうか。
財部様
マネージャー以上で活躍するためにはシニアコンサルタントとは異なり顧客のニーズを深堀りしていくための業界全体の知識やマーケット情報、戦略から開発フェーズまでの理解が求められます。つまり得意領域を持ったうえで幅広い視野を持つT字型のキャリアを築いていくことが大切になります。しかし、実際には得意領域を持てても幅が広げられないという悩みを抱えている方が多く、そういった方が入社されることが多いですね。
背景を聞くと、チームごとに細かく採算が分割されていて、決められた範囲で売り上げ立てることが使命になっていたケースが多いです。市場のニーズとそのミッションが合っているかよりも、限られた自分の範囲に苦しみながら範囲を出ないように工夫してやっていくことが求められるので、限られた領域におけるソリューションの知識や経験は積めても、クライアントが抱える課題に対する幅広い解決策を提供するスキルが身につきづらいのでしょう。
福原
そのような経緯で入られた方から、御社のCRMセクターに入られた後どのような声を聞くことが多いでしょうか。
財部様
他ファームから入られる方からは入社後に「今では組織体制に左右されることなくソリューションを考えられるため、伸び伸びとできている。」「本当の意味でクライアントの為にコンサルティングができているので、今までに感じたことのないやりがいがある」といったコメントを聞くケースが多いです。
顧客接点の多様化に伴う難易度の高いテーマが増えている
福原
CRMではセクター内で戦略立案から開発、導入フェーズまで幅広く経験させる、所謂ジェネラリスト寄りのキャリアパスを提供していますが、そのキャリアパスがCRM領域において有利に働く理由についてマーケットの状況を踏まえて詳しく教えていただけますか。
水野様
CRMの起点となる顧客接点のバリエーションは、以前と比べ格段に豊かになりました。得られるデータが圧倒的に増え、各企業が「いかに顧客接点から生まれるデータを活用して、新しいビジネスモデルに挑戦するか」というステージにきています。
そういった背景もあり、我々も個別の業務・チャネル・組織の業務改善・効率化といった局所的な改革ではなく、新規事業系や新チャネルの立ち上げなど、ビジネスモデルそのものの変革を通してエンドユーザーに新しい価値を提供したいといった難易度の高いテーマに挑む機会が非常に多くなっています。
そのため、一人一人のコンサルタントに求められる知見・経験の幅も格段に広いものが求められ、そこにしっかりと対応することが、我々総合ファームに求められているのです。
また、激しく変動するマーケットの中で、クライアントの求める変革スピードに対応するためには、細分化された専門家とそれぞれ個別に討議を重ねるのではなく、1~2回のセッションで素早く道筋を示していく必要があります。アビームの場合は、一人ひとりの経験の幅が広く、その人がある程度相談に応えきることができるため、その点についてもクライアントから評価を受けることが多いです。
スピーディかつ実現可能なソリューションが生み出せることが強み
江口
ありがとうございます。今仰っていただいた「一段上の要望」をクライアントから求められる中で、御社のCRMセクターだからこそできること、またCRMセクターの強みをお伺いしてもよろしいでしょうか。
水野様
ひとつは、サービスの圧倒的な幅と深さです。まず、CRMセクターとしてマーケティング・セールス・カスタマーサービスの3領域に加え、データの蓄積・利活用、業務・チャネルを跨いだインテグレーションの5つの領域をサポートしており、総合的なコンサルティングができると自負しております。さらには、アビーム全体では、例えば人事・SCM等も絡めた改革や、AI、IoT、RPAといったテクノロジーの活用も含めトータルでサポート可能です。
二つ目は、サービス領域の幅に加え、戦略立案・企画といったフェーズからITの開発・導入、運用・保守さらに定着化やトレーニングなど、プロジェクトのライフサイクル全体をカバーできることです。
また、三つ目として、グローバルでのサポート体制も強化しています。日系企業の海外進出や海外子会社支援の際には、日本と密に連携しながらも、現地のコンサルタントがカウンターパートとなり現場に密着した支援を行います。グローバルで一体感のあるサポートはクライアントからも高く評価されており、こういった安心を提供できる点も当社独自の特徴だと思います。
江口
ありがとうございます。以前に財部様から、プロジェクトにおける「戦略:要件定義:開発」に割く時間の比率が「2:3:5」であり、それが適切な数値であるというお話をいただきましたが、その理由についてお聞かせいただけますか。
財部様
CRMプロジェクトで特に重要なことは「しっかりと実現して世に出していくこと」です。戦略や要件定義だけで終わるCRMに価値はありません。クライアントからも、実現可能なCRMソリューションを求められています。
ただ、同時にクライアントはスピーディーさを求めるため、方向性を決めるための戦略策定に与えられる時間的猶予は極めて短く2か月程度です。そこから要件定義が始まりますが、長くても3~4か月です。そのあとに我々は開発までしっかりと手掛けます。
また、当社には戦略、要件定義、開発など限られたフェーズだけを担当する人はいません。すべてのフェーズを一通り経験するので、チームそして個人が事業の戦略から実現までを回すことができるようになるのです。
江口
戦略から実現までを回せることが現状のCRMマーケットにおいてどういった価値に繋がるのか教えていただけますか。
財部様
CRM領域の課題はコンセプトばかり先走っていることです。コンサルティングファームに依頼してもなかなか実現しないという点にクライアントのフラストレーションがあります。我々は戦略から開発まで手掛けることでコンセプトを実現するところまでを支援することができます。その点が、CRMマーケットでの評価につながっていると考えています。
ベストプラクティス、テンプレート、グローバルロールアウトなどの「事例の幅」がものを言った時代から、今はマーケットの流れの速さ、テクノロジーの進歩に伴って、適切なソリューションをいち早く世に出していくことが求められる時代になりました。オープンアサインにより、戦略から開発まで関われる、個人の経験の幅を広げることで、あらゆるクライアントの課題に対応できるメンバーが揃う。まさに当社のカルチャーが真価を発揮する時代になったと思います。
事業会社で活躍するために必要な「つくりきる力」も身に付きやすい
江口
戦略からソリューション開発を含めた幅広い経験ができる点がCRMセクターないし御社の魅力だと思いますが、CRMセクターで得られる経験を通して新しいキャリアパスを築けたキャリア事例などございますか。
財部様
当社の特徴として、じっくりとキャリアを積む方が多いですが、培った経験を活かして新しいキャリアに進まれる方も当然います。
新しいキャリアとしては、事業会社の新規事業担当や、大手企業の事業企画ポジションに進まれる方が多い印象です。アビームのコンサルタントは戦略から開発における全工程を経験するため、事業会社に転職した際も新しい事業を創出し、必要となるシステムを開発するスキルを生かして活躍できるのだと思います。
また、オープンアサインにより幅広い業務経験を積むことができ、その結果、顧客戦略から営業の業務改革まで組織全体のメカニズムを理解することができるため、視野の広さを活かして経営企画などのポジションで活躍される方も多い印象です。
さらに、起業されて長く続けられている方もいます。戦略から実現まで幅広く支援した経験があるため、事業を立ち上げようとした時に、これまでの経験を活かして着実に積み上げていけるのだと思います。
今述べたキャリアや職種に共通して必要な「つくりきる能力」が身に付くのがアビームのCRMセクターです。
自由度が高く、「想像力」「向上心」「好奇心」のある方が活躍できる風土
江口
CRMセクターや、現在のマーケットで、活躍できる人物の特徴などについて教えていただけますか。
財部様
サプライチェーンや会計領域では「ベストプラクティス」と言われるテンプレートの良し悪しが競争優位を左右します。そこで業務知識を高めて、どうすることが一番効率的で適切なのか、その知識量、経験量がものを言います。
一方で、CRM領域では、過去の事例を「ベストプラクティス」として持ってきても成功できません。勿論CRMの知識体系を元に作ったフレームワークに従って提案することが基本ですが、それに加えて、市場環境に即した工夫、独自のソリューションをその時々で提供していかなければ競争優位を獲得できません。
このようなCRMの特長を理解し、幅広い視野で想像力を発揮して主体的に動ける人材が活躍しています。
江口
そうなると必ずしもコンサルタントの経験があったとしても、一つのソリューションに閉じているとパフォームしにくいということでしょうか。
財部様
その通りです。採用においても、特定の技術だけを極めたいのであればパッケージベンダーやSIerに転職した方が良いですし、上流だけをやりたいなら上流に特化したファームのほうが良いと素直に伝えています。
CRMセクターはオープンアサインの仕組みの中で、毎回違う刺激があるプロジェクトにアサインするので、職種やスキルの幅は格段に広がります。この人材育成戦略はCRM市場で力を発揮する人材を育成するためには最適ですが、人材育成に時間がかかります。しっかりと長期的に社員のキャリアパスと向き合う方針がある会社でなければ実現できません。
短期的な業績やグローバルの方針で組織や人材育成方針が変化しやすい業界の中で、長期的な視点からキャリアの広がりを提供しているファームがアビームです。その育成方針、キャリアパスに同意していただける方にフィットしている会社だと思います。
江口
ソフトスキルやマインドセット面で活躍される方の特徴についても教えていただけますか。
水野様
「常に向上心を持って挑戦できる人」です。技術は日進月歩ですし、日々新しい宿題がクライアントから与えられる中で、昨日と同じ自分では通用しません。未知の領域でもチャレンジして自分のものにする姿勢がないとCRM領域で成功することは難しいと思います。
財部様
去年の提案書をクライアントに持って行くと「ずいぶん古い提案書ですね」と言われる世界です。過去の事例を横展開する思考ではなく、真っ白なところから自分で考えた提案を組み立てる能力がいつも求められます。
自分自身で何かを生み出すためにはインプットが必要で、そのインプットがなぜ手に入るかというと「好奇心」を持っているからです。この「好奇心」がコンサルタントとして成長できるかどうかを左右する重要な素養だと言えます。 入社時のレベルは様々ですが、一つの領域を確保してそこを守るというよりも、様々な領域に興味の対象を移して自分のスキルセットを伸ばせる人が活躍しています。
江口
実際に、現在求められている人物像についても教えていただけますでしょうか。
財部様
我々は戦略から実現まで幅の広いサポートを強みとしているので、これまでのご経験は無駄にはなりません。様々な業種や職種の方を集めて多様性を高めた組織づくりを目指しており、実際に、営業企画からSIerまでメンバーの出身企業は様々です。
江口
採用において重視されるスキルについても教えていただけますか。
財部様
CRMの市場環境を見ると、一つ目にデジタルを活用したビジネスモデル変革ができること。二つ目にそれをグローバルに展開して世界の市場で戦えることが求められています。 それに対応していくためには、CRMセクターの採用条件として「IT」と「英語力」、このどちらかを持っていることが非常に重要です。いずれのスキルも育成に時間を要するため採用段階ではこの二つのスキルを重視しています。
CRMセクターの理念は「The best blend for customer success」
江口
最後に、御社のCRMセクターのビジョン・方向性、また候補者へのメッセージを伺ってもよろしいでしょうか。
水野様
CRMでは「The best blend for customer success」という理念を掲げています。我々はクライアントもしくはクライアントの延長線上にいるお客様のために仕事をしています。些末な改善ではなく、マーケットを変えるような大きな変革を通してクライアントを成長させたいと思っています。そのためには、様々なバックグラウンドを持つメンバーをブレンドさせることが必要です。
新しいことに取り組む意志のある人、クライアントの成功のために自分も成長していきたい人には惜しみなくチャンスを提供したいと思っていますので、ぜひお待ちしております。