共同利用可能なビジネスプラットフォーム「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」を通じて、リース業界、そして社会全体に対してイノベーションをもたらすことを目指すAsset & Finance Cloud Solutions(A&F)セクター。
今回は、セクターをリードされるプリンシパル 佐藤剛様より、同セクターが推進するビジネスの概要や、ミッション、プロジェクト事例などについてお聞きしました。
多様化するリース業界のビジネスに革新をもたらす
遠藤
まず、初めに佐藤様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
佐藤様
新卒で旧デロイト トーマツ コンサルティング(現アビーム)に入社し、主に金融業界に携わってきました。具体的には、リース含む総合金融サービス、銀行や保険業、また不動産関連のファンド向けに、ビジネスコンサルティングの領域からシステムの実装、運用保守に至るまで、一連の流れをトータルで手がけてきました。現在は、総合金融のサービスを主軸としたコンサルティングを行っています。
遠藤
佐藤様がリードされているA&Fセクターの概要をお聞かせください。
佐藤様
A&Fセクターは、インダストリアルプラットフォームビジネスユニット内の1つの組織であり、2023年度に立ち上げられました。当セクターは、「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」という、共同で利用可能なビジネスプラットフォームを通じて、リース企業、リース業界、そして社会全体に対してイノベーションをもたらすことを目指しています。
現在、A&Fセクター内の社員数は約80名ですが、大規模プロジェクトのため外部協力者を含めると300名を超えています。
遠藤
どのようなバックグラウンドのメンバーで構成されていますか。
佐藤様
A&Fセクターの半数は、ITベースのスキルを持っていますね。例えばプロジェクトマネジメントを主軸とするメンバーやシステムの実装を得意とするメンバーなどです。一方で、残り半分は、金融業界の知見や業務知見を持つメンバーです。そうした異なる専門性を持ったメンバーたちが組み合わせて価値提供に取り組んでいます。
遠藤
A&Fセクターは社内的にどのような期待をされている組織なのでしょうか。
佐藤様
他のインダストリアルプラットフォームビジネスユニットのチームはSAPをベースとしてアドオンで価値を提供するのに対し、A&Fセクターは唯一、ゼロベースから作っているため、このアセットを活用して他の業界でも新しいソリューションを提供できないか、といった期待が社内にあります。さらに、A&Fセクターのビジネスモデルは従来の人月ベースではなく、ライセンスベースで運営されています。このビジネスモデルを他でも適用できないか、といった点も社内からの期待としてあります。
遠藤
リース業界においてアビームやA&Fセクターがプレゼンスを発揮できる点はどこにあるのでしょうか。
佐藤様
創業以来、アビームは過去40年以上に渡ってリース業界向けの基幹システムの開発に携わり、多くのリース会社にシステムを提供してきたため、リース業界に関して深いナレッジを蓄積しているからだと思います。その結果、インダストリアルプラットフォームビジネスユニット内でもA&Fセクターは最大の組織の1つとなっています。私たちは他社と比べても、リース業界に関する知見や専門性においては際立った強みを持っていると自負しております。
遠藤
リース業界の現状も教えていただけますか。
佐藤様
まずリースだけで見ると、リーマン・ショック以降、一時的に低迷し、以降、横ばいの状態が続いています。この背景としては、リース以外の手段が多様化していることに加え、会計基準の変更によりリースのメリットが減少したことも要因としてあります。その結果、リース業界は過去15年ほどあまり大きく伸びていないというのが現状です。では、この期間リース会社は何をしていたのかというと、リース事業に留まらず、例えばエネルギー、不動産関連などビジネスの領域を広げてきました。それが近年のリース業界におけるトレンドになっています。
遠藤
リースの企業が抱えている課題感についても教えてください。
佐藤様
主にシステムの課題ですね。先にも述べたように、リース業界では既存の事業に留まらず、ビジネス領域を広げています。しかしその結果、以前のシステムが適合しなくなるケースも増えています。また、事業の規模が拡大するにつれて管理も複雑になり、既存システムを拡張することが難しくなっています。
さらに、システムを一新する場合、既に多様なビジネスを支えているため、莫大なコストがかかってしまう。具体的には1社あたり数百億円規模になるケースも少なくありません。そうしたコストの壁によって、システムの更新に踏み切れずに、なかなか前に進めないというのがお客様の共通課題としてあります。
プラットフォーム導入でデータ活用が進展、目指すは顧客共創
遠藤
実際、貴社のプラットフォームを導入するとクライアントや業界にどのような変化・メリットが期待できますか。
佐藤様
大きく5つあります。
1つ目は、イニシャルコストの削減です。通常、各社が独自にシステムを導入する場合、数百億円という高額なコストが発生しますが、クラウド上で共同利用できるプラットフォームを活用することで初期投資の課題を解消できます。
2つ目は、業務の標準化です。当プラットフォームは、既存のビジネスプロセスを標準化し、効率化することで業務の無駄を削減でき、よりお客様がビジネスに注力できる土台を提供できるからです。これにより効率的に業務を遂行することが可能となります。
3つ目は、新しいビジネスが発生した際、迅速にかつ臨機応変に対応できる点です。システムのアドオンがしやすいため、システム構築のハードルが下がります。
4つ目は、プラットフォームに蓄積されるデータの活用が挙げられます。データの活用方法においては私たちからも積極的に提案を行っていきます。それによりアイデアが加速されるため、お客様の将来のビジネスにも大きなメリットが広がっていくと思いますね。
5つ目は、プラットフォーム内で顧客同士の交流が生まれることです。最終的には、アビームがハブとなり共創関係を構築し新しい取組みが生まれることが理想です。
遠藤
プラットフォームビジネスは、従来のコンサルティングファームに多い「人月商売」とはかなり異なりますね。
佐藤様
確かに、従来のコンサルティングファームに見られる「人月商売」というアプローチとは大きく異なります。特にビジネスコンサルティングでは、3ヶ月など短期間なプロジェクトをくり返していくのが一般的です。しかし、プラットフォームのアプローチでは、お客様のビジネスと一心同体となるわけですから、当然ながら私たちにも責任が生じてきます。アビームが掲げる「リアルパートナー」として、お客様と一緒に成長しながら課題を解決し、持続的にサービスを提供していけることが私たちの強みであり、アビーム全体としても目指すところです。
そして他社との違いとしては、私たちが以前からABeam Cloud®を展開しているという実績があり、そのブランディングが確立できていた点が大きいかと思います。
遠藤
プラットフォームビジネスの今後の方向性や、将来像について教えていただけますか。
佐藤様
A&Fセクターなので、総合金融業界に対する課題解決と変革を推進することが主なミッションです。現在、私たちのプラットフォームは3社で展開を進めていますが、それぞれ規模が大きいため、プロジェクトの進行に時間を要してしまうことは否めません。次のステージとしては、2025年から2030年にかけて、さらに2〜3社の展開を計画しており、最終的には業界全体へと広げていきたいと考えています。また海外に関してもリーチを拡大しながらグローバルなビジネス展開も視野に入れています。
遠藤
海外の経験も積めるチャンスがあるということですね。
佐藤様
そうですね。海外という意味では既にシンガポール・インドを拠点とする関連会社がオフショアでプロジェクトに参画しています。そのチームとは英語でコミュニケーションを取っており、メンバーが現地へ赴くケースもあります。将来展望としては海外市場へのプラットフォーム展開です。特にインドネシア市場においては、人口増加に伴って自動車やバイクの需要が増加しており、商社中心に販売金融を現地で展開しているんです。キャプティブ・ファイナンス中心に、システムを導入・更改需要があると考えています。
企画の構想から開発、実装、保守運用まで一気通貫で携われる
遠藤
プラットフォームビジネスのプロジェクト事例について教えていただけますか。
佐藤様
現在、私たちはNECキャピタルソリューションと協同で、「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」の開発を進めており、2025年のリリースを目標としています。また同時並行でNECキャピタルソシューションと共に開発したプラットフォームのベースとなるアセットを2社で横展開しており、各社固有の要件を加えながら開発を進めている状況です。
遠藤
プロジェクトを推進する上で、課題や困難な点はありますか。
佐藤様
お客様と要件を擦り合わせて内容を詰めていくのですが、お客様は既存の使い慣れた方法から離れ、標準化されたアプローチに合わせる際に、最初はどうしても壁にぶつかる場面があります。こうした状況を乗り越えるために、お客様と議論を重ねながら進めていきます。
遠藤
実際、プロジェクト内でメンバーの方たちは具体的にどのように働かれているのでしょうか。候補者の方の中には、SIerに近い仕事が多いのでは?というイメージを持たれる方も少なくありません。
佐藤様
もちろん、プロジェクトのフェーズによってSIer的な要素はあります。しかし、A&Fセクターでは、全ての領域に渡って取り組んでいます。具体的にはITにおけるシステムの企画段階から開発、実装、導入後の保守運用までと。さらにクライアントから「A&Fを導入したい」といったご要望があれば、それに向けて構想策定や戦略策定も行います。例えば、ビジネスコンサルティングの場合、特定の分野に限定されることが多いのですが、A&Fでは、あらゆるテーマにおいて一気通貫で携わることができるのが特徴だと思いますね。
さらに、A&Fセクターでは、ローコード開発や多様なクラウドソリューションなど最新技術に触れる機会も多いです。そのため、現在「レガシーな技術ばかりで新しい技術に触れる機会がない」「SIerで同じプロジェクトに留まっている」といった方にとって、A&Fセクターは新しいことにチャレンジできる環境だと思います。
遠藤
様々なテーマや新しい領域に関わっていくことができるのですね。その中でメンバーが自身のやりたいことにチャレンジできる仕組みはあるのでしょうか。
佐藤様
はい、A&Fセクターではメンバーが「やりたい」と思うことに対してチャレンジできる環境です。私たちのスタンスとしては意欲的な人にはどんどん新しいことに挑戦してもらいたいと考えていますので、プロジェクトでは様々なチャレンジの機会を提供していきます。またカウンセリング制度が仕組みとして設けられており、メンバー一人ひとりにカウンセラーが付いておりますので、そこで今後のキャリア相談ができるようになっています。
金融業界の多様なビジネスを根本から理解し、かつ最先端なビジネスが味わえる
遠藤
リース業界に関わることの面白さややりがいについてどのようにお考えですか。
佐藤様
一見、「リース」というキーワードだけで見ると地味な印象を受けるかもしれませんが、実際は非常にダイナミックな業界です。前述の通り、リース会社ではリース以外にも不動産や航空機のリース、レンタル、融資、発電ビジネス、業務BPOなど幅広いビジネスを手がけているため、ある意味、金融商社と呼ぶに相応しいかもしれません。
そういう意味で、金融業界の多様なビジネスを根本から深く理解でき、かつ最先端のビジネスに取り組むことができます。非常にやりがいのある世界だと私は思います。
遠藤
リース業界が未経験の方でも、銀行や証券などの金融業界での経験があればそれを活かせるチャンスはあるのでしょうか。
佐藤様
そうですね。金融業界はとても親和性が高いと感じます。リース業界は金利商売が中心のため、金利の基礎を理解していると業界に入りやすいと思います。私たちのチームは、先ほどもお伝えした通り、ITベースのスキルを持つメンバーと金融業界出身のメンバーが集まっています。そのため金融業界の知見を持つ方はもちろん、大規模なプロジェクトマネジメント経験も非常に重要な要素になります。
A&Fセクターが求める人物像は、「システムを作りたい」がコアにある方
遠藤
A&Fセクターではどういった人材を求めていますか。
佐藤様
スキル面では、まずベースとしてIT・システム構築に関して基本的な理解がある方、もしくはシステム開発への抵抗がない方です。そこをベースにビジネスやテクノロジーの専門性をさらに強化する方向へのピボットができると思いますし、大規模なプロジェクトマネジメントの経験も獲得できることになるかと思います。そのような人材は希少性があり、より市場価値が高い人材になりますので、そのように成長していきたいという意欲があるかたを求めています。
マインド面では、提案型の思考を持ち、積極的に自らの理想像をアピールができる方を求めています。このような志向の方は、チーム内でも非常に重宝されますし、高く評価される傾向にあります。
遠藤
佐藤様から見たA&Fセクター全体の雰囲気を教えていただけますか。
佐藤様
A&Fセクターは組織として、綺麗なピラミッド型の構造をしており、若手が多いため活気ある雰囲気が特徴です。私としてもメンバーが成長しやすい環境を提供していくことが非常に重要だと感じています。
遠藤
具体的にどのように成長を支援されているのでしょうか。
佐藤様
アビーム全体の研修以外にも、A&Fセクターにはプロジェクト活動以外にもコミュニケーショングループがあります。このグループでは、様々なテーマに対してメンバーが研究し、その成果を他のメンバーの前で発表したり、共有したりすることで新たな知見を得る機会となっています。通常のプロジェクトでは気づけない知見を得ることができ、かつビジネスに活かすことができる。このようにメンバーが成長できる機会を積極的に提供しています。
遠藤
A&Fセクターの働き方、ワークライフバランスについても教えてください。
佐藤様
働き方について最大の利点は、リモートで勤務をしているメンバーも多く、時間に融通ができる点です。例えば、小さなお子さんがいる家庭の場合、日中に仕事を進めた後に、一時的に仕事を離れ、子どもを保育園に迎えに行き、夕飯を終え、子どもが就寝したのちに仕事を再開するといったように個々の状況に合わせて働き方を調整している方は多いです。またメンバーの希望に応じて役割を調整するなども柔軟に対応しています。
遠藤
最後に、A&Fセクターに興味をお持ちの方へ向けてメッセージをお願いします。
佐藤様
現在、私たちは2025年のリリースに向けてプラットフォームサービスの構築に取り組んでいる段階です。新たな事業を一緒に作りたいという方は歓迎です。また、今まで培ってきたスキルを活用して、お客様に喜んでいただけるサービスを提供したいと考えている方と一緒に働けることを楽しみにしています。