最適な経理/財務オペレーションを確立する為、会計財務および経営管理に関わる様々なサービスを総合的に提供するアビームコンサルティング株式会社 デジタルプロセスビジネスユニット FMCセクター。
今回は、同セクター長である執行役員 プリンシパル 久保田昌紀様に、組織そして手掛ける案件の特徴、今後のビジネス方針、求める人物像などについてお聞きしました。
「CFOアジェンダ」の戦略立案から業務プロセスの変革、IT導入まで「一気通貫」で支援
田中
まずは、久保田様のご経歴を教えてください。
久保田様
2001年に新卒でアビームに入社しました。以来、約20年間、財務会計領域を担当し、戦略立案・構想策定、業務プロセス改善・BPRから、システム構築など弊社で提供しているサービスは一通り経験しました。現在は、デジタルプロセスビジネスユニットのFMCセクター長を務めています。
田中
FMCセクターの特徴や強み、得意領域についてお聞かせください。
久保田様
私たちは、CFOが抱える経営課題を解決するため、財務会計および経営管理に関わるさまざまなサービスを総合的に提供しています。特に会計は、すべてのお客様にとってビジネス上必要なプロセスのため、業種、業態を問わずサービスを提供しているのが特徴です。
また、組織としては現在530名体制で運営しています。FMCセクターは人員リソースが潤沢のため、自前のプロジェクトとして財務会計領域の大型案件を受注でき、かつ常時100件を超える案件が動いている状態です。
田中
他にもBIG4をはじめ、他社の財務会計系のコンサルティングファームと比べて秀でている点はどこだと思いますか。
久保田様
会計・財務・リスク・非財務領域(CSRなど)などさまざまな領域において、戦略立案から業務プロセスの変革、IT導入に至るまで幅広く従事できることです。ただ絵を描くだけでなく、変革の実行、実現まで一貫してコンサルティングができるのが大きな強みになります。
田中
採用候補者のなかには、「アビームはシステム案件が多く、戦略系が少ない」というイメージを抱く方も少なくありません。案件の比率を教えていただけますか。
久保田様
確かにアビームは、「アビーム≒SAP」というイメージがあると思います。しかしSAPを含むシステム導入に関わるメンバーは約半分程度というのが実態です。もう半分は構想策定や業務改革・業務改善、BPO、KPI策定・データ分析、ESG関連などITの導入ではない案件となります。
また、昨今データ活用やDXがますます加速するなか、ITのナレッジを抜きに戦略を策定することはできません。私たちはCFO機能の中核である「会計」のど真ん中で、これまでシステム導入や業務プロセス設計をおこない、会計を軸にクライアント企業のデータの流れを理解してきました。そのため、クライアントに対して経営の意思決定に資する会計情報を精緻に、かつ迅速に提供でき、戦略を交えた提案ができることが強みになります。
田中
FMCセクターの強みを発揮された事例があれば教えていただけますか。
久保田様
公共機関の案件で、構想策定のフェーズからプロジェクトに入り、その後、民営化されたため、業務プロセスを変革していきながら、一方でクライアントに寄り添ってお客様の意識を変革することができたという事例があります。まさに、戦略策定から業務変革、IT導入まで一連でクライアントを支援できたプロジェクトです。
田中
FMCセクターがクライアントから選ばれる理由は何だと思いますか。
久保田様
たとえお客様に言いづらいことでも、膝を突き合わせてディスカッションしたり。また、CFOや経理部長に代わって現場を説得して回ったり。クライアントからは、そういった姿勢を褒めていただくケースが多いですね。
また、ITの導入に強みを持っているという自負もあります。今までは基幹システムとしてERPの導入が進みました。今は必ずしも全てをERPで実現という発想ではなく、業務プロセスによってはSaaS型のソリューションとの組み合わせで業務を設計することが求められています。ITの最適な組み合わせをお客様に提示できることも強みだと考えています。
アビーム海外オフィス社長の8割はFMC出身者、グローバルへのチャレンジが開けた環境
田中
FMCセクターでは、グローバル案件が多いのも特徴ですね。
久保田様
おっしゃる通りFMCセクターではグローバル案件が豊富です。コロナ前は全体の2割ほどでした。
以前は海外の子会社向けに、日本本社と共通のシステム導入をするような大型案件が多くありました。現在は、コロナの影響で直接グローバルへ出向する案件は減少していますが、徐々にコロナ前の状況へと戻りつつあります。また、アジアを中心に拠点を拡大しているため、海外駐在のメンバーは今後さらに増えていくと思います。
田中
グローバルへのキャリアを志向されている方には、最適な環境ですね。
久保田様
そうだと思います。実際に「グローバルにチャレンジしたい」ということで、他のコンサルティングファームからFMCセクターに移籍される方もいます。
その理由としては、日本にヘッドクォーターを置いているアビームだからこそグローバル案件も日本メンバーが中心となっていること、そして国や産業が変わってもすべての企業には必ず「会計」が存在していることが、FMCセクターでグローバルチャレンジを叶えられる大きな要因です。
実はアビームの海外マネージングディレクター、いわゆる海外オフィスの社長の8割はFMCセクター出身です。FMCセクターとしては人材を育て、海外の主要なオフィスにメンバーを派遣し、グローバルで活躍してもらいたいと思っています。
田中
ちなみに、どういったプロセスを経て海外出向が決まるのでしょうか。
久保田様
いくつかケースはありますが、ひとつにはプロジェクトでグローバル案件にアサインされて、出張などで現地で働くなか、駐在への意向が固まって正式に出向されるケースになります。また、自分から「海外出向したい」と手を上げてくるメンバーもいます。
海外駐在メンバーのボリュームゾーンはマネージャークラスになります。これは、単に案件アサインとして行ってもらうのではなく、現地のオフィスをマネージメントする役割も持つために、マネージャー以上の役職が結果として多くなっているということもあります。
そのため、ビジネスレベルで英語を話せるメンバーであれば、コンサルタントとしてのスキルを若いうちに身に付けて、管理職になってから海外で活躍することをイメージするのも良いかもしれません。
昨今、ビジネスマンとして求められる三大スキルとして“会計・IT・英語”と言われますが、FMCセクターであればそのすべてを叶えることができ、市場価値の高いキャリア形成が実現できますね。
DX推進でデータ分析のニーズが拡大、「Digital ESG」など新たなビジネスチャンスにも注力
田中
FMCセクターを取り巻くマーケット状況や、案件のトレンドについて教えていただけますか。
久保田様
昨今ですとDXというキーワードをベースに、会計領域のニーズは高まっていますね。いわゆるリモートワークのための業務プロセス設計やシステム導入などです。昨年も大きなニーズがありましたが、引き続きこのニーズは増加すると考えています。
また、“データ分析”のニーズも高まっています。というのも、これまでは“会計なら会計”、“ロジスティクスならロジスティクス”など基幹システムごとにデータが蓄積されていました。また、ERPシステムでカバーされている業務の範囲は全てではなく、基幹業務をメインとしていました。しかし、今はDX化によってERPではカバーしていなかった業務プロセスについてもDX化されてきており、今までデータ化できていなかった領域もデータ化され、蓄積されるようになっています。そのため、データが活用しやすくなり、クライアントからは「データを使って何か分析できないだろうか」という声が多く上がるようになってきました。
田中
最近では、ESGやSDGsを重要視する企業も増えています。そのあたりはいかがですか。
久保田様
アビームでは、デジタル技術を活用してESG情報を収集・分析し、経営状況を可視化させビジネスを加速させる「Digital ESG」というサービスを展開しており、おかげさまで好調です。
課題解決型から「価値創造型」の組織へ、メンバーの意識変革を推進
田中
ありがとうございます。一方で、今組織として課題になっている部分はありますか。
久保田様
あえて言うならば、経営層への提案力が課題です。私たちは、クライアント企業の業務課題を解決することに関しては、BIG4をはじめ他のコンサルティングファームに負けることはないと自負しております。
一方で、顕在化されている課題以外に、さらにもう一歩踏み出して、「将来こうなるであろう」とアプローチしていくことに対しては努力が必要であると考えています。特にプロジェクトでは、経理部長層に対してアプローチをしていきますが、経営層やCFOに対して満足できるアプローチはもっと鍛えていくべきところだと思っています。
田中
課題解決に向けて、すでに取り組まれていることはありますか。
久保田様
現在、“課題解決型”から“価値創造型”へとシフトする取り組みを始めています。具体的には、従来よりも価値創造型のプロジェクトを増やし、そこへメンバーをアサインし、価値創造型で社会課題を解決できる人材を増やすことを目指しています。
しかしながら、これまで手がけてきた課題解決型のプロジェクトを減らしていくという意味ではありません。パートナー企業と協力しながら課題解決型のプロジェクトに取り組み、一方で価値創造型のプロジェクトには社内のメンバーを中心に据えて取り組んでいきたいと思います。
田中
FMCセクターが今後目指されている姿について教えていただけますか。
久保田様
中途採用で入社される方もマネジメント層で活躍できる仕組みを作っていきます。今は新卒と中途の割合は50:50ですが、管理職以上で、さらにプリンシパルやダイレクターとなると新卒で入社したメンバーが多い状態です。中途の方にも活躍できる環境を作るために、管理職以上も50:50の割合になるように進めていきます。
一番大事なのは“人”、成長が見込めない案件にはアサインメントを止めることも
田中
久保田様がFMCセクターをマネジメントするにあたって大切にしていることは何ですか。
久保田様
FMCセクターは、530人という大規模な組織ですが、明確なピラミッド構造があるわけではありません。どうしても人が多くなると組織化され、縦割りになってしまうので、それを避けるためにも比較的フラットな組織運営を心がけています。おそらくアビームの中でもセクター長までの距離は、かなり近いと思いますよ。
また、最終的には“人”に尽きると考えています。どんなに採算性が高い案件であっても、そこに従事するメンバーやスタッフの成長を考えた際、成長が見込めないと判断した場合は、アサイメントを止めたり、案件自体お断りすることもあります。最終的に“人”を成長させることが自社だけではなく、お客様へのサービスの付加価値を上げることに繋がると考えており、セクター長としての勤めだと思っています。
田中
プロジェクトにアサインする際に、注意していることはありますか。
久保田様
基本的に本人が「やりたい」といった案件であれば、可能な限りアサイメントするようにしています。実際に他社では、転職をされた方で「入社前に提示されていた話と違う」といったトラブルもあると聞きます。弊社では、そういった事態にならないように注意を払っています。
そして、昨今は働き方が多様化していますので、可能な限りメンバー一人ひとりの意思を尊重し、満足感を持って働ける環境を目指しています。
田中
やはり、ワークライフバランスや働き方はかなり意識されているのでしょうか。
久保田様
意識していますね。特に昨今のコロナ禍においては、リモート環境で働ける体制を整えています。案件にもよりますが、ほとんどがリモートで参画する案件となります。他にも男性の育休取得率は、2019年度が16%に対し、2021年度では34%まで向上しています。FMCセクターでは、男性が育休を取ることに対しては「おめでとう」と祝福ムードなので、とてもいい文化だと思います。また、女性の育休後の復帰率は、本人が望んだ場合100%です。
コンサル以外に、経営企画・経理、SIerなどの経験者も重宝
田中
FMCセクターとしては、どういった人物像を求めていますか。
久保田様
スキルやナレッジ面では、もちろんコンサルティング経験やIT導入の経験のある方が望ましいのですが、そこまで業界や業態、システム導入の有無にこだわっているわけではありません。コンサルティングファーム出身者以外にも、事業会社の経理部や経営企画部の経験者、SIer出身者もお待ちしております。
実際にも昨年度の1年間で入社して頂いた方の殆どはコンサルティング経験やIT経験がないメンバーが多いですし、そういったメンバーも1年間プロジェクトでワークすることでコンサルティングスキルやITスキルを付けてもらっており既に一人前のコンサルタントとして活躍してくれています。
田中
パーソナリティ面ではいかがですか。
久保田様
マインド面では、成長意欲が高い方です。変化の激しい今の時代において、コンサルタントも日々成長し続けることが必要不可欠です。特に物事に対して「なぜ」と考える力が一番重要だと考えています。面談ではそこを重視しています。
田中
FMCセクターで経験を積まれた方のキャリアパスについて教えてください。
久保田様
財務・会計領域のメリットは、経験したスキルが次の案件へと横展開しやすいところだと思います。会計は、すべての企業にとってビジネス上必要なプロセスだからこそ、基本的にナレッジもスキルもプロジェクトを経験する度に溜まっていくものなので、それを個人の資産としてキャリアアップに活かしている方は多いです。
ここで得られる経験は、将来のキャリアにおいて、非常に価値のあるものになることは間違いありません。ぜひ、キャリアの選択肢の1つとしてご検討いただけると幸いです。