「Real Partner」を理念に掲げるアビームコンサルティング株式会社。今回は、その中でも、戦略立案から新規事業のローンチまで支援を行う戦略ビジネスユニットへのインタビュー。同組織でご活躍されるダイレクター 武藤彰宏様、シニアマネージャー 平井誠様に、「ビジネスインパクト」を確実に出すためにどのような支援を行い、また組織においてどのようなカルチャーを醸成しているのかについて伺いました。
「普通」というスタイルで、お客様との距離を縮め、信頼を勝ち取る
遠藤
お二人のご経歴についてお聞かせください。まずは武藤様からお願い致します。
武藤様
私は新卒で、外資系総合ファームに入社し、戦略チームに配属されました。その後、外資系戦略ファーム、ベンチャーファームを経験し、アビームに参画しています。コンサルタントとしてのキャリアも、もう20年ほどになりますね。
遠藤
アビームに入社された決め手をお教えください。
武藤様
実は、外資系ファームにいた時、アビームにいる方達はすごく”良い意味“でコンサルタントっぽくないのに、どうして業界で勝ち続けられるのかとても不思議に思っていました。ちょうど転職を考えていた頃に、アビームのパートナーの方と食事に行く機会があり、「自分達は新しいビジネスコンサルティングをやっていきたい」と熱く語っていて、お話がとにかく面白くて。こういうところなのだろうなと。
当然、お客様のビジネスにインパクトを出していくことが我々コンサルタントの仕事の中心ですから、そこに向き合っていきたいと考えましたが、私としては、お客様が自分達自身でインパクトを出し続けていけるまで支援できたとき初めてバリューを与えられると考えていました。パートナーの話や人柄に触れ、アビームでなら、お客様の信頼を勝ち取り、本当にお客様と一緒に戦っていけるだろうと考え、転職を決めました。
遠藤
実際に入社してみて、イメージとのギャップはありましたか。
武藤様
ほぼイメージ通りでした。提供しているサービスやお客様との距離の近さ、お客様と一緒に価値を作っていくんだという丁寧な姿勢など、ポジティブなものをたくさん感じています。
前々社長は、アビームの掲げる「Real Partner」は文化であり戦略でもあると言っていました。「Real Partner」は我々が進む指針であり、他社との差別化要因でもあり、人材育成の観点にもなっている、戦略そのものだということを、最近ようやく理解できるようになりました。
遠藤
続いて平井様、お願い致します。
平井様
私は新卒でアビームに入社し、それから約20年、ずっと弊社でキャリアを積んできました。最初はERPの導入に従事し、そこからもう少し上流のプロジェクトをやっていました。その間に6ヶ月間の育休を頂いたり、子どもが小さいうちはバランスを取りながら仕事をさせてもらいました。
戦略ビジネスユニットには2年前に異動してきました。育児も少し落ち着いてきたので、自分の中で「新たなチャレンジをしたい」という想いがあり、異動を決めました。
遠藤
平井様は新卒からアビーム一筋でいらっしゃいますが、御社の魅力は何だとお考えですか。
平井様
やはり人の良さですね。武藤さんのお話にもあったように、物腰が柔らかい人が多く、人を認め合う姿勢や文化が根づいているところが魅力だと思います。
「お客様が自分たちの言葉で戦略について語れるようにすること」が大事
遠藤
アビーム内における戦略ビジネスユニットの役割についてお話しいただけますか。
武藤様
弊社は今、「Build Beyond As One.」を1つのキーワードにしています。そして、我々のユニットはこのキーワードを全社の中でリードしていくことが期待されており、「Lead the Beyond」を掲げています。
遠藤
戦略系ファームや、他ファームの戦略組織と比較した際に、アビームの戦略組織が評価されている点はどこだとお考えですか。
武藤様
他のファームとはプロセスが大きく違います。
我々が大切にしているのは、お客様が自分たちの言葉で戦略について話せるようにすることです。実行のためには、戦略が自分のものになっていないと意味がありませんから。戦略は実行の中で、状況の変化に合わせて常にアップデートしていく必要がありますので、なぜこの戦略にしたのかという思考プロセスや、何を優先しているのかという判断基準・優先順位といったことを、戦略を実行するお客様自身がご自身の言葉として理解している必要があります。そのために、お客様には戦略立案のプロセス自体に入ってきてもらいます。
また、戦略実行のためであれば、お客様に我々のスキルを積極的にトランスファーしています。必要なケイパビリティを身に付けてもらう。そこまで伴走する。これが我々の基本的なスタイルです。ただ戦略を作るのではなく、その先まで見据えて行動していくことが、他社との違いだと思います。
遠藤
戦略コンサルタントは、3ヶ月単位で細かくプロジェクトを回していくイメージがあるのですが、アビームの実行まで伴走していくスタイルでは、もっと期間が長くなるということでしょうか。
武藤様
我々のプロジェクトは基本的には長く続きます。ただ、例えば2年間のプロジェクトにずっと入りっぱなしということはなくて、基本的にはフェーズが変わるタイミングでもある3ヶ月間ごとにアサインを決めています。
様々なプロジェクトを経験することで、コンサルタントとして多様なケイパビリティを身に付けて、成長してほしいと考えています。ですから、そのタイミングで別のプロジェクトに入ってもらうこともありますし、次のフェーズもその方の成長に必要な場合は継続していただいています。ですから、短期で多くの経験を積みたいという方に対しても、オポチュニティをご用意できると思います。
遠藤
平井様は、組織の強みについてどうお考えでしょうか。
平井様
私はオペレーション変革を中心にやっているのですが、その中で感じる我々の強みは、「この人と一緒にこのプロジェクトをやりたい」とお客様に思ってもらえる泥臭さです。一緒に様々な困難を乗り越え、何とかゴールに向かっていくパートナーとして選んでいただけるのは、一緒に汗を流して最後までお客様と伴走しリードしていく姿勢を評価していただいているのだと思います。
その根本にあるのは、深く浸透した「Real Partner」という弊社のカルチャー、お客様に貢献したいという皆の強い思いですね。つい先日も、お客様から「アビームさんって、本当に自分たちのためにやってくれそうだって思わせてくれる」と言われました。そういった意味でも、我々のカルチャーは他社とは違う強みを生み出す根源になっていると思います。
遠藤
「Real Partner」のカルチャーを根づかせるために、ユニット内で取り組まれていることはあるのでしょうか。
平井様
日々仕事を一緒にしていく中で、我々がどうしたいかとか、我々の会社にとってどうかということよりも、「お客様にとってこれが本当に良いのか」、「お客様はこれでハッピーになれるのか」といったことを自然に話し合っています。元々、そういう志向の方が集まっているとは思うのですが、こうした日々の業務の中でカルチャーが根づいてきたんだろうなと感じています。
遠藤
コンペでは外資系ファームとバッティングすることも多いと思いますが、”日系”ファームの戦略組織であることの強みは何だとお考えですか。
武藤様
我々がヘッドクォーターだからかもしれませんが、視点が短期的ではないところでしょうか。我々は長いスパンでプロジェクトを進めるので、プロジェクト単位の採算性では良い時もあれば悪い時もどうしても出てきます。短期的だと、悪い時期に契約を打ち切ることもできますが、アビームはそういったことはしません。我々が「採算が取れないので辞めさせてください」と言ったら、お客様はたまったものじゃないですよね。一度お客様との信頼関係を失えば、噂は業界中に広まりますよ。短期的な視点だけでPJを判断しないのは日本がヘッドクォーターならではだと思います。
また、日本企業は外資系企業と比較すると意思決定に時間を要したり、ドロドロしたところもありますが、我々は日系企業だけにそういったこともしっかり理解した上で議論できるので、これもお客様に支持していただける要因の一つだと思います。
遠藤
平井様はどのようにお考えでしょうか。
平井様
外資系ファームでは欧米の本社で開発したソリューションの型にはめに行くスタンスが多いと思っています。これはマーケットを立ち上げるフェーズでは良いと思いますが、真にお客様に寄り添えていないことも多いと思います。
アビームでは、お客様が今悩んでいる課題は何なのか、お客様がしたいことは何なのかを大切にして、それぞれのお客様に合った戦略を提案しています。
新会社設立支援では、戦略立案からトライアル営業、スキルトランスファーまでサポート
遠藤
続いて、戦略ビジネスユニットのプロジェクト事例についてお聞かせいただければと思います。
武藤様
NTT HumanEXの立ち上げ支援プロジェクトについてお話しさせていただきます。
NTT HumanEXは、NTTグループの人事関係を担っていた2つの子会社を合併して出来た、人的資本領域のコンサルティングファームです。この会社がNTTグループだけではなく、外に向かってもビジネスを展開していきたいとのことで、我々が新会社設立時の戦略策定のご支援を行いました。営業戦略と製品戦略を策定する際には、「実際にお客様の声を聞きながら作りたい」というマネジメント層の意向を汲んで、トライアルという形で一緒に何社か営業に回りました。そこでCHROの方達の悩みを聞きながら、コンサルタントとして提案していくためにどんなテーマがあるかなどを議論しました。
前半のフェーズは会社の立ち上げや戦略立案がメインでしたが、後半のフェーズではトライアル営業に重きを置き、現場の方々と一緒に動くことが多くなりました。ただ、これだと一緒に行った方しかコンサルティング営業について理解できないので、我々がノウハウを文章に起こし、スキルトランスファーという形でトレーニングをおこないました。これには、弊社の人的資本経営チームのメンバーにもアドバイザーとして入ってもらいました。
加えて、デジタル系のソリューションを構えるために、弊社のその分野のチームと協業して、ベンチャーの動向を調べつつ、教えてもらいながら支援を行いました。
参考:https://www.abeam.com/jp/ja/case_study/CS146
遠藤
続いて、平井様からもお聞かせいただけますか。
平井様
私は先日まで、化学品メーカーで全社の業務改革、改革テーマ出しというプロジェクトに携わっていました。まずは様々な情報を考慮して仮説を構築し、そこから各部長クラス、最後に役員クラスとディスカッションしてまとめる形です。
このプロジェクトは、他部署との連携がキーだったと思っています。改革テーマ出しの段階で、カーボンフットプリントや人的資本、ESG経営、ROIC(ロイック)経営など、多様なテーマが上がってきたので、それぞれの領域の有識者の力を借りつつ、お客様とのディスカッションを行いました。 弊社はメンバー同士で気軽に相談し合えるカルチャーがあるので、ストラテジー内はもちろん、他部署でも全く抵抗なく気軽にチャットでやり取りしていました。ざっくばらんに相談でき、協力し合えるいい会社だと改めて実感したプロジェクトでした。
遠藤
プロジェクトの中で、マネージャーやシニアコンサルタントクラスの方々はどんな役割を担われているかという質問をよく候補者からいただくのですが、こちらについてはいかがでしょうか。
武藤様
お客様の中でも、部長や課長クラス、現場で業務を遂行している方々との議論が多いですね。一番大事なのは現場なので、そこはマネージャーやシニアコンサルタントクラスのメンバーがしっかり守ってくれと伝えています。一般的に流布されている、「戦略コンサルは経営と話せるからかっこいい」というイメージ自体が間違っていると思います。そもそも、我々が支援する企業の部長や課長は世間的に十分高いレイヤーの方ですから。そういった方々と対峙するためには、我々コンサルタントも1つ2つ上の視点を持っている必要があります。それが多分、30歳前後のマネージャーやシニアコンサルタントの上位層に求められていることだと思いますね。
遠藤
扱われていらっしゃるプロジェクトは、CxOアジェンダから入ることが多いのでしょうか。もう少しレイヤーの低い1部署の業務改革みたいな案件もあるのでしょうか。
平井様
CxOアジェンダから入る案件ももちろん多いですが、1つの部署の業務改革から入ることもあります。ただ、その時はこの取組を他の事業部、カンパニーに展開できる様にしていこうという思いを持って提案をおこなっていました。そうすることで、お客様に更なる価値を提供できますし、我々が求められているのはそういったところだと思っています。レイヤーが低めのプロジェクトでも、視座を1つ上げるような取り組みを一緒にやっていけば良いのだと思います。
武藤様
基本的には、高いレイヤー発信の案件になると考えていただいて良いと思いますよ。 今手掛けている案件もCEOイシューなので、COOクラスの方と週3、4回ぐらい話しているんじゃないですかね。
組織にReal Partnerのカルチャーが根付いており、やりたいことを発信・具現化できる
遠藤
武藤様から見た戦略ビジネスユニットの雰囲気についてなど、お聞かせいただけますか。
武藤様
お客様に対してだけでなく、メンバー同士でもReal Partnerのカルチャーが根付いていて、人との距離の近さは強く感じています。それは、上位層との関係でも変わりません。
というのも、ユニット長の斎藤岳が非常にアビームらしいチームを作る人物なんですよ。平井さんとはゴルフ仲間だし、若手にも慕われていて飲みに連れていったり、とにかく人が良い。ユニットのコアにいるメンバーも岳さんと一緒に育ってきた人達なので、「お客様に真摯に向き合い、1つのチームとして固まっていこう」という雰囲気が醸成されています。
遠藤
情景が浮かぶようですね。
武藤様
岳さん自体が自分のやりたいことをやってきている人なんですね。
今はどのファームも新規事業に参入してますが、十数年前はコンサルティングファームが新規事業をやるなんて考えられませんでした。実は、アビームはその頃から新規事業に取り組んでいるんですけど、これをやり始めたのが岳さんです。この間、岳さんと飲みに行ったときに「よくあのタイミングで新規事業が来ると分かりましたね」と言ったら、「いや、全然分からなかった。けどやりたいからやったんだ」と言われました。彼は自分でビジネスを作っていく、ヘッドクォーターのリーダーという意識がすごく強いです。
あと、彼は大学時代にアメフトをやっていてスポーツが大好きなんですけど、その延長でスポーツの部門を作ったんです。今は、うちのユニット長なので他の人に引き継いでいますけど、あれも元々岳さんなんです。
遠藤
スポーツ&エンターテインメントユニットですね。本当に、色々と実現してきた方なのですね。
武藤様
我々はそういうユニット長の姿を見てきているので、自分がやりたいことを発信して、具現化していくことに積極的です。
実際に、仕事以外のところでサステナビリティにずっと取り組んできたシニアマネージャーがいるのですが、これを本業でやりたいと持ち込んできました。そうするうちにサステナビリティユニットが出来ました。
そういうことを、「やってみなよ」と言ってくれるマネジメント層のおおらかさ、懐の深さ。これがうちのユニットというか、アビームの雰囲気の特徴だと思います。
遠藤
平井様から見たユニットの雰囲気はいかがですか。
平井様
プロフェッショナリズムが強いと感じますね。
私は20年アビームにいて、色々とコンサルティングをやってきました。戦略ビジネスユニットには新たな刺激を求めて入ってきましたが、実際に入ってきて痛感しました。皆の向上心とか、お客様のために考えを突き詰めていくとか、そういうところがもう一段違う。皆で頑張っていこうというチームの仲の良さと同時に、仕事に対する真摯な姿勢や厳しさ、誇りがあるというのが、このユニットの雰囲気だと思います。
遠藤
メンバーのキャリア支援について、取り組まれていることがあればお教えください。
平井様
武藤さんがリードして取り組まれているんですが、コンサルマインドを伝えるユニット独自の勉強会があります。もちろんコンサルスキル/プロマネスキルの研修や教育は全社的にもありますし、ユニット個別のものもありますが、コンサルマインドの研修はすごく新鮮ですよ。戦略コンサルタントとしてお客様に対してどういう姿勢で臨むべきかなど、経験豊富なメンバーがこれまでの経験談を交え、深く考えてきた内容をしっかり伝えてくれるんです。こういったマインドの部分も含め、自分の中でしっかり咀嚼する時間と機会があることが、この組織の強みだと思っています。
遠藤
武藤さんは企画をされている側ですが、どういった思いで立ち上げられたのでしょうか。
武藤様
弊社は相当な覚悟を持って、40年前に外資からスピンアウトしました。外資のベストプラクティスを移植するのではなく、日本の企業に合わせた日系企業としての支援の仕方がある。そういう創業者たちの志を我々もちゃんと受け継いでいきたいと思っています。
また、あまり関わりがない人から伝えられても、なかなか頭に入りませんから、日々接しているマネージャーが自分の言葉でメンバーに伝え続けることを大切にしています。私はマネージャーやシニアマネージャーに伝える立場ではありますが、マネージャー達がメンバーに伝えることを大事に、目的にしてやっています。
遠藤
最後に、ユニットに興味をお持ちの方にメッセージをいただけますか。
武藤様
我々は「Real Partner」の理念を一番大事にしているので、そこに共感できる方に来ていただきたいです。逆に言うと、お金を儲けたいとか、出世したいとか、自分を主語にした意志で来ると多分、難しいと思います。Real Partnerとして、お客様を主語にして一生懸命になれる、そうしたマインドを大事にしてほしいですね。
お客様の成功に寄り添い、インパクトを出すことで、お客様の人生を豊かにしたいと思っている方と、ぜひ一緒に仕事がしたいです。
平井様
お客様にしっかり伴走するのはもちろんですが、先ほどのユニット長の話のように、何かやりたいことや想いを持っている方に、ぜひ集まっていただきたいと私は思います。
我々は日本がヘッドクォーターですから、他のファームと比べても、自分のやりたいことができる、自分のやりたいことでインパクトを与えていくチャンスは多くあります。どんなことでもいいので、何か「やりたい」という意志を持っている方に集まってもらって、互いに認め合い、輝いてもらいながら一緒にもっともっと強い組織にしていきたいですね。