今回は、A.T. カーニー株式会社 デジタルプラクティスへのインタビュー。
同チームをリードするパートナー 松尾公大様、マネージャー山本大輔様より、
同社を選ばれた理由、プラクティスが提供しているサービスの特徴や、組織の運営方針。今後の目指す姿などについてお聞きしました。
松尾様、山本様のご経歴とA.T. カーニーを選んだ理由
小野
まずはお二人のご経歴からお伺い出来ますでしょうか。
松尾様
理系大学院で宇宙物理を専攻していましたが、新卒でコンサルティング業界に入りました。その後も総合系や戦略系のコンサルティングファームを経て、A.T. カーニーへは2020年9月にジョインし、東京オフィスのデジタルプラクティスを担当しています。デジタルに関する全社戦略や新規事業開発を専門に15年以上のコンサルティング経験があります。
山本様
私は新卒でDeNAに入社し、3年程ソーシャルゲームの事業企画をしていました。A.T. カーニーには2016年にジョインし、消費財プラクティスとデジタルのチームに所属しています。
小野
ご自身のキャリアの中で、A.T. カーニーを選んだ理由と、前職との違いなどがありましたらお聞かせください。
松尾様
前職ではR&D系技術に強みを持つ外資戦略系ファームで、東京オフィスのデジタルプラクティスの立ち上げに従事し、非常に有意義な経験をさせて頂きました。しかし、より本質的かつ現実的なデジタル変革に踏み出すためには、やはりトップマネジメントへのアプローチと現場への落とし込みが肝要で、そうした面に特徴を持つA.T. カーニーへの移籍を意思決定した次第です。また、A.T. カーニーでは圧倒的に他の同僚とのコラボレーションの機会が多く、移籍前からもパートナーの方々から聞いていたのですが、この点も弊社の大きな魅力の一つです。
山本様
私は日本発の世界を代表する企業を増やしたいとの思いで、前職にDeNAを選びました。A.T. カーニーへの転職も、この思いが大きな判断基準となっています。
インダストリーへのこだわりはあまりなかったので、ジェネラルにできるコンサルティングファームを、その中でも一番日本企業にフォーカスを当てていると感じたA.T. カーニーを選びました。入社して最初のプロジェクトで現代表の関灘と仕事をすることができたのですが、そういった社内の近さ、距離感といった魅力を面接の中でも感じられたことも決め手になりました。
前職は事業会社だったので、かなりギャップはありましたね。大きな違いは、やはり関わるメンバーの数です。前職ではコアな関りのあるメンバーは10人程でしたが、プロジェクトごとにメンバーが変わる現職では50人以上にのぼります。
オンデマンドのサービスを提供するため、常にネットワーキングし、コラボレーションで戦っていく
小野
お二人が所属するデジタルプラクティスチームの特徴をお教えください。
松尾様
近年の日本企業のデジタル課題はより戦略的なものになっています。デジタル元年と呼ばれる2015年前後の日本企業の課題の典型は、デジタル事業開発におけるアジャイルやデジタルシンキング等の手法に関するものが殆どでしたが、最近は投資や組織・人材等の戦略課題についての相談が多くなってきています。我々のチームはこのような戦略課題に対するアプローチに強みを持っています。例えば、デジタルサービスやデータプラットフォームの開発へ投資する場合、既存の“モノ”売りビジネスに比べて短期的な期待収益が見劣りするケースが多いため、大きな利益を享受するためには比較的長期な視点で事業成長を評価する必要があります。そのため、短期的な経済性のみならず長期的な戦略性も判断できる投資評価を考えなければなりません。
最近は、このような中・長期的なデジタル戦略をトップマネジメントやコーポレート部門で推進することが増えており、A.T. カーニーはデジタル事業創出に限らず、戦略的な全社の方向性に係るデジタル案件の経験が、戦略系ファームの中でも最も豊富なのではないでしょうか。
小野
御チームが社内で担っている役割についても教えてください。
松尾様
近年のコンサルティングファームでは、インダストリー組織に十分なデジタルナレッジが蓄積されてきており、ホリゾンタルなデジタル組織の役割は以前と比べて変化してきています。もちろん各インダストリー組織と事業開発などを共創していますが、先述のようにトップマネジメントやコーポレート部門において、デジタルに関する投資評価や最適な組織・人材設計などの、より戦略的な思考が必要でかつ豊富なプロジェクト経験が強みになる案件を担っていくことも我々の重要な役割だと思っています。
また、デジタルネイティブのクライアントとお付き合いしていくことも当プラクティスの大きなミッションの一つになります。日本を代表するようなメガベンチャーからユニコーンを目指すスタートアップまで、我々のチームで開拓しリードしていきます。
小野
ビジネスコンペに参加されることもあるかと思いますが、御チームがクライアントから選ばれるポイントや、他社とどう差別化しているのかについてもお聞かせください。
松尾様
弊社は、デジタル技術の導入は目的ではなく経営変革の手段であるという思想を崩していないため、頑なに経営課題からアプローチしているところが差別化の一つでしょうか。そのため、マネジメント層への提案機会が多く、自ずと全社で並行して多くのデジタルプロジェクトが推進されるラージスケールのプログラムが醸成されます。更には、各構想を胆力を持って現場のオペレーションまで落とし込むコミットメントが、クライアントから高く評価頂いております。
また、現況のデジタルコンサル案件は、多くの人員を投入して規模をスケールさせる傾向にあります。但し、我々はインハウスリソースの活用だけではなく、最適な外部リソースとエコシステムを形成することにより、クライアントへ最適なコンテンツを提供することを実現しています。テック・ベンチャーも含む多方面にわたるネットワーキングが、よりオンデマンドな対応を可能としているわけです。
更には、クライアントが多くのバジェットを費やすエグゼキューションフェーズにおいて、デジタル技術によって人員工数をいかに最適化するかを構想フェーズから念頭に置いて設計しています。このようなエグゼキューションフェーズで人員を投下して工数ビジネスを仕掛ける旧来モデルに対抗するアプローチが、クライアントから評価されることも少なくありません。
小野
そうした戦略を取る背景や要因についてもう少し詳しく教えていただけますか。
山本様
我々はデザインファームともよく組ませてもらっていますが、一級のデザインファームの方を取り込み、スケールを目指してトップ・オブ・トップにはなるのではなくて、実はコラボレーションしていく方が賢いんだと、現代表の関灘や前代表の岸田がよく言っていました。また、案件の課題感が変わってきており、デジタルネイティブな企業とコラボレーションしていくことも増えています。
松尾様
デジタル領域ではオンデマンドのクライアントからのご依頼が更に増えていくでしょうし、その中で活用すべき技術や必要となる人材のコンピテンシーはフラグメント化していくでしょう。我々は、ネットワーキングとコラボレーションを活性化することで、クライアントニーズに継続性をもって柔軟な対応ができるよう心がけています。
全社戦略に紐づく形で、ノーコンペで最先端のデジタル案件をクライアントと共創する
小野
ここからは、実際の案件についてお聞かせください。まず、どのように案件が始まるケースが多いのでしょうか。
松尾様
案件の始まり方は、A.T. カーニーとしてのオファリングを展開する場合と、クライアントからのご依頼にお応えしてご提案する場合の二通りがあります。まず前者は、弊社は世界中のデジタル環境変化をグローバルチームで継続的に共有しており、パラダイムなクライアントインパクトを達成するイノベーションの種を常に探しています。これまでは常識とされていない技術や多様な人材に常にアンテナを立てながら、各クライアント向けにカスタマイズされたオファリングを持ち込み討議する。こうした活動の末にクライアントと案件を始めることが多くあります。
次に後者の一例として、クライアント内で、「何とか“デジタル”を推進しなければいけない…という理由でデジタル組織を醸成したが、思うように進まなかったため“デジタル”を推進するためにコンサルティングを依頼する」、といったケースも近年は散見されます。しかし、多くの場合は“デジタル”が目的化され、その時点ではクライアントインパクトを達成すべき論点が明確化されていないのが典型です。我々は、クライアントのご依頼をそのまま鵜呑みにするのではなく、クライアントが理解して納得するまで、幾度となく討議を続けて解くべきポイントと初期仮説を共有してから案件を開始しています。こうした姿勢からか、ノーコンペのラージスケールのデジタルプロジェクトが多いのが弊社の特徴です。
山本様
コンペから始まる案件というのは、私が携わっているものではあまりありませんね。A.T. カーニーにはCEOなどCxOクラスと深いリレーションがあるので、全社アジェンダを見ていく中でデジタルの扱いはどうするかという課題が当然出てきます。その中で松尾や関灘のようなデジタルの知見がある者が話をし、お客様に「A.T. カーニーはデジタルの信頼も置けるのか」と理解してもらって案件が始まることが多いです。
既にリレーションを深めている企業に対しては、コンペにならないような案件で交渉、提案を行うこともあります。最近、私はある企業にWeb3.0の提案に行きました。A.T. カーニーは一人一人が好きなことをやっている側面が強いので、まずWeb3に興味のある者がライトに提案に行き、話が進んでいくということもよくありますね。
小野
案件事例についてもお教えいただけますか。
山本様
例えば、製薬会社向けのサービスを提供するクライアントは、従来のMRでの営業から、デジタルを交えたセールス&マーケティングに移行にしていかないといけないのは、製薬会社の中でコンセンサスとしてあるものの、どれだけ徹底的にやっていいのかわからないという課題を抱えていらっしゃいました。
これに対して我々はまずPoCを3ヶ月程実行し、ヘルスケアインダストリーのパートナーにも入ってもらってデジタルヘルスケアの先端的取り組みの実態をアメリカとの比較などを交えて話していただきました。このように柔軟に体制を組めるのはA.T. カーニーの特徴です。
結果として、新薬のポートフォリオから考えると今後どんどん希少疾患が増えていくだろうと。しかし、1億2000万人の中から2000人ほどの希少疾患患者を見つけるとなると、どう頑張ってもMRの力だけでは無理なので、デジタルツールやto C向けのサービスとどうコラボレーションしていくかというのが重要になるというお話をして、そこに向けてどう予算を立てていくのかといった、製薬会社にとっても論点を一つ深められるような関与ができたことはよい事例だったと思いますね。
大手企業20社プラス、200社のスタートアップベンチャーを育て、日本社会へ貢献する
小野
2030年問題など、様々な課題を抱えている昨今の日本において、今後貴社がマーケットやクライアントに対してどのように価値を提供していくのか、お考えをお聞かせください。
山本様
A.T. カーニーは2050年を目標に「20+200」を掲げています。いわゆる日本の大手企業全てにサーブするのではなく、20社と決めているんですね。これに加えて、ベンチャーや成長企業は200社とし、お付き合いするところを絞って日本社会に貢献していこうと考えています。
小野
その背景についても教えていただけますか。
松尾様
現在、時価総額で世界のトップ50に入っている日本企業は多くありません。世界に対抗できる強い日本企業を作っていくために、我々はまず20社にフォーカスしてグローバルをリードできる力をクライアントと共創していきたいと考えています。
また、西海岸や中国などではグローバルで通用する数多くのデジタル企業が成長を遂げていますが、日本でユニコーン企業といってもなかなか名前が浮かんでこないのが現状です。こうした背景の中、200社のポテンシャル企業に注目してグローバルに羽ばたくユニコーン企業を創出していくことも日本の国力を強くする大きな要因になると考えています。日本から数多くのイノベーションを起こして世界をリードするという目標に向かって、我々は更に邁進していきたいと考えています。
山本様
我々は、A.T. カーニーで育ったコンサルタントがこの20社や200社に行って活躍し、またA.T. カーニーに戻ってくるということに抵抗がありません。実際、20プラス200の200社のところでコンサルタントをしている者や、A.T. カーニー出身者が起業した会社もあります。人材輩出企業というとありていな言葉ですけど、これも日本社会への貢献の仕方だと考えています。
それぞれの抱えるアジェンダを追求できる環境がA.T. カーニーにはある
小野
続いて、御チームの雰囲気や人材についてお聞かせください。どのようなバックグラウンドを持つ方が参加されているのでしょうか。
松尾様
ファーム・トゥー・ファームで移籍してくる方もいれば、事業会社からくる方もいます。皆さん非常に優秀です。私は15年以上コンサルタントをしていて、様々なファームを経験しましたが、当社はコンサルタントとしてのプロフェショナリズムの高さは業界でも群を抜きます。それに加え、思ったよりダイバーシティがありますね。パーソナリティや得意分野が違うコンサルタントが有機的なシナジー生み出しており、そこは入社前のイメージとかなり違っていて面白かったです。
また、外から見るA.T. カーニーは、個人プレイによるパフォーマンスベースのアップ・オア・アウトのイメージだったのですが、入社してみるとそんなことは全く無く、コラボレーションの質の高さに驚きました。複層的なサポート体制があり、またそれが文化にもなっていて、アップ・オア・プログレッシングを実現出来ている数少ないプロフェッショナルファームだと思います。
小野
特に山本様のような未経験の方だと、キャッチアップの悩みなどで足踏みをしてしまう候補者の方もいらっしゃると思うのですが、貴社はどのようなフォローアップを行っているのでしょうか。
山本様
ジュニアの頃のキャッチアップは、ロジカルシンキングやピラミッドストラクチャーで考えるといった、コンサルタントとしての様式を身に付けることが優先されます。ですから、例えばデジタルの知識などはジュニアではそこまで求められていません。むしろ大事なのはシニアからどう引き出していくかだと思います。
A.T. カーニーはシニアとの距離が非常に近いので、やりやすさというのはすごく感じています。プロジェクトの期間中は、パートナーと週2回4時間くらいインターナルを行うので、パートナーの知識や経験をダウンロードする時間がたくさんもらえました。
小野
御チームの雰囲気についてもお聞かせいただけますか。
山本様
メンバーの抱えるアジェンダが様々で、例えば松尾のようにデジタル投資をやっている人もいれば、Web3.0をやっている人、デジタルヘルスをやっている人もいます。チームはこうあるべき、といったことは特に定まっていないんです。ですから、毎年チームで「来年どうするか?」というミーティングをして、デジタルを使って変革していきたいと考えている企業について、我々は何ができるかを話し合い、その企業に一番合う方法を探っていきます。この際、アソシエイトやマネージャーなどもシニアと対等に意見できるというのが雰囲気としては珍しいのではないでしょうか。ミーティングでリードするパートナーが決まって、発言したアソシエイトに後日パートナーから「一緒にやりましょう」と声がかかる感じです。
興味のある案件だったら積極的に発言すればいいですし、そうでない場合は黙っていてもいいので、私としては居心地がいい環境ですね。
日本企業の世界進出に情熱を注げられる方が活躍できる
小野
スキル面やパーソナル面において、どんな方に入社してほしいとお考えでしょうか。
松尾様
スキル面の話でいうと、コンサルティング能力を持ってテクノロジーに興味を持ってくれる方か、テクノロジーを持ってコンサルティングスキルを高めたい方にチャレンジして頂きたい。要は両方備わっていなくても大丈夫です。どちらかを起点していれば我々が責任を持って育成しますので、コンサルマーケットにおいて自らのバリュエーションを高めたい方は是非ともアプライして欲しいです。A.T. カーニーには、そういった方の背中を押し、アドバイスをしてくれるメンバーがたくさんいます。
山本様
A.T. カーニーのメンバーは、当然ですがコンサルタントとして活躍できる能力があると期待されて採用された方たちです。ですから、コンサルティング能力は非常に大切なんですが、テクノロジーにバックグラウンドがありチャレンジ精神を持っている方も、このデジタルプラクティスチームで活躍できる人材だと思っていますから、是非挑戦していただきたいですね。
パーソナル面では、今言ったようにチャレンジ精神を持った方。プロジェクトの中で、上手くいくかいかないか分からないようなことにも勇気をもってダイブできる方に来ていただきたいです。シニアに安心して身を預けられる環境ですので、臆することなくダイブしてほしいです。
小野
それでは最後に、貴社に興味をお持ちの方々にメッセージをお願いします。
松尾様
A.T. カーニーが非常に魅力的な会社であることは自信を持って断言できます。異質を受け入れる勇気を持っていますし、入社が決まった際には、責任を持ってサポートするのが弊社の特徴でもありますから、まずは一歩踏み出していただければと思います。
山本様
A.T. カーニーは代表が関灘になり、ファームの目指す姿が言語化され、カルチャーがしっかりと形成されているタイミングです。こうした言語化によって、日本から世界を変えていくということが明確なカルチャーの一つとして標榜されました。なんとなく優秀になりたいからコンサルティングファームに行きたいとか、給与が良いからとかではなくて、日本企業を世界に進出させていくんだ、世界で勝っていくんだというマインドを持っている方に入っていただけると、フィット感を持って働いていけると思いますし、是非そういう方に来ていただきたいです。
※本インタビューは2022年9月時点での情報です