あずさ監査法人はKPMGのメンバーファームとして、複雑な課題を有するクライアントや社会に対して価値ある監査・アドバイザリーサービスを提供しています。今回は、アカウンティング・アドバイザリー・サービス(AAS)事業部の事業部長を務めるパートナーの足立純一様に、同事業部のサービスの魅力や求める人材についてアクシスコンサルティングの坂本、高橋がお聞きしました。この記事は2019年3月時点のものです。
Sarbanes-Oxley法の成立が転機となりアドバイザリーの道へ
坂本
これまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか。
足立様
29歳の時に公認会計士の試験に合格し、その後監査法人に入社しました。入社後はグローバルメーカーを中心に監査をしていました。
その後、Sarbanes-Oxley法が成立し、日本でもアメリカのSECに登録している企業は準拠が必須になったことをきっかけにアドバイザリーの道へ入りました。私自身は監査とアドバイザリーの両方の案件にアサインされていましたが、その後アカウンティング・アドバイザリー・サービス(AAS)事業部の前身であるIFRS事業部の立ち上げに参画しています。
坂本
この業界で長くご活躍されてきて、監査法人での仕事の面白さ、やりがいに関してはどのようにお考えでしょうか。
足立様
正直に話すと、この業界に入って26年目ですが、当初はここまで長く続けたいと強く思っていたわけではありませんでした。ただ、1つのモチベーションが支え続けていて、それは特定のあるひとつの事業会社に入社しただけでは得られない情報・経験を通して成長できるという点です。特に会計士の場合、普通の会社に就職すると部長クラスでも知りえない情報を新人から見ることができます。このような経験は他の業界ではできないアドバンテージだと思います。
坂本
26年目とのことですが、キャリア形成の上で転機となったポイントを教えていただけますか。
足立様
Sarbanes-Oxley法の成立です。当時はKPMG内にSarbanes-Oxleyや内部統制に関してアドバイザリーできる人材がまだ存在していないこともあり、この領域は当時誰もが0からのスタートで、ある意味簡単に日本における第一人者になれました。クライアントも知らないことが多い分「ありがとうございます」と言っていただける機会が多く、アドバイザリーの面白さを実感し、今に至ります。
AAS事業部のミッションは「CFOアジェンダをワンストップで、グローバルにアドバイザリーを提供すること」
坂本
次にチームそしてアカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部の話をお聞きしたいと思います。現時点で何名の組織なのでしょうか。
足立様
アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部は東京と名古屋と大阪に拠点があり、東京で270名、東名阪合わせると約320名おります。
坂本
AAS事業部が設立された背景について教えてください。
足立様
元々はIFRS事業部としてIFRSや純粋会計領域を中心としたサービスを提供していましたが、当時の内閣府特命担当大臣(金融)の「日本はIFRSを強制適用にしない」という発言以来、純粋な会計領域のマーケットがシュリンクした時期があり、その時に会計だけでなく経理に直結するプロセス、システム、ガバナンスなど、会計士のスペシャリティを生かしたアドバイザリーへ領域を広げようとしたことが、今のAAS事業部の基礎です。
坂本
事業部のミッション、他監査法人のアドバイザリーとの違いについて教えていただけますでしょうか。
足立様
我々のチームの特徴ですが、まずAAS事業部のミッションは「CFOアジェンダをワンストップで、グローバルにアドバイザリーを提供する」です。CFOが担当している領域は必ずしも経理に限らず、財務・経営企画の領域など幅広いのですが、この広い領域に対してワンストップでアドバイザリーができる点が他の監査法人やファームにない特徴です。アドバイザリーの世界は「システムはシステムのスペシャリスト」「戦略は戦略のスペシャリスト」と専門に分化しているので、非常にユニークな存在だと思います。
また、監査法人に所属していることもあり3分の2が公認会計士で、会計領域の専門家がCFOアジェンダをワンストップでサポートしている業界では珍しい事業部です。ただ、我々だけではできない仕事も多いので、特定専門のスペシャリティを持つKPMGグループのメンバーと常にコラボレーションしてお客様を支援しています。例えば税務のアドバイスが必要であれば税理士法人と、システムであればKPMGコンサルティングとコラボレーションしています。
さらに、KPMGグループのネットワークを使い、現場が海外だとしてもCFOアジェンダへのアドバイザリーをワンストップで提供することが可能です。
キャリアの観点で考えれば、専門分化してないので、様々な案件に関わるチャンスや、未知のナレッジを享受できる機会が多く、若い方のキャリア形成にとって非常にプラスになると思います。
坂本
KPMGコンサルティング様にも会計のチームがありますが、御社との違いがあれば教えていただけますでしょうか。
足立様
KPMGの場合、具体的なシステム導入、会計プロセスの設計はコンサルティングの専門チームが行います。一方で、我々は会計士中心に構成された組織ということもあり、例えばプロセス設計においても「会計基準への準拠性」「内部統制のテストへの適応性」など、お客様に対してKPMGのサービスを提供する際に、「付加価値を増す」という機能を果たしています。簡単に説明すると、我々の方がフレキシブルで守備範囲が広い一方で、コンサルティングは深く豊かな経験と知識で特定の領域を手がけています。
「我々はKPMG全体の会計領域に関するアドバイザリーサービスのポータルという位置づけです」
坂本
なるほど。AAS事業部が提供できるサービスについて具体的に教えていただけますでしょうか。
足立様
一つ目に「アカウンティング&ストラテジー(A&S)」です。新しい会計基準に対するコンプライアンスのアドバイザリーや、アメリカの会社に買収された結果、米国基準で決算をせざるをえなくなった等の決算支援サポートなどを行なっています。
二つ目は「プロセス&インフォメーション(P&I)」です。会計基準を決めたらいきなり会計ができるわけでなく、そのためのプロセスを組み立てることが求められます。そこで、シェアードサービスや外部アウトソースの利用を含め、「どうすれば効率的に経理決算が可能か」という会計業務プロセスの合理化のアドバイザリーや、マネジメントからの「正しい指標で毎月業績モニタリングを報告したい」といった経営管理に係るアドバイザリーを行っています。
もう1つM&Aに特化した「トランザクション&リストラクチャリング(T&R)」があります。企業買収と企業・事業再生の戦略や財務・業務改善をサポートしています。
3つのサービスごとにA&S、P&I、T&Rとチームが分かれています。
その他にもCFOに管轄されている部門の調査など、CFOが抱える悩みであれば、あらゆるソリューションが提供できます。ITの導入支援など深みのあるサポートが必要であればKPMGグループの専門部隊をレバレッジして、一緒にアサインすることもできます。また、コンサルティング側でニーズがあれば我々のチームの会計士を供給することもあります。
坂本
なるほど。ワンストップのサービスかつOne-KPMGでサービスを提供していくということですね。
足立様
そうです。我々はKPMG全体の会計領域に関するアドバイザリーサービスのポータルという位置づけです。我々に相談していただければ、チームのアレンジも含めて、あらゆるメンバーを動員します。
また、お客様にとっては、「KPMGはKPMG」という意識ですので、お客様先や、電話をかける時は「KPMGの誰々です」と名乗り、また文章を書くときも主語を「KPMG」にしようと取り組んでいます。
坂本
なるほど。他ファームの場合は、「誰が案件を取ってきた」などセリングを重視した結果マネージャークラスでのコンフリクトが起きるといったこともあります。その点に関してはいかがですか。
足立様
もちろん実績で評価される業界ですので競争はあります。ただ、内部で“競合”した結果、コラボレーションすれば良いサービスが提供できるのに、特定のサービス部門のみでアサインし、狭い領域しか提供できず、小さいプロジェクトになってしまうとファームにとっては大きな損失になります。そのため、切磋琢磨は推奨しますが、無駄な競合はしないよう心がけています。
坂本
先ほど「グローバル」というキーワードも出てきましたが、グローバル進出した際のサポートも充実しているのでしょうか。
足立様
グローバルのKPMGオフィスにあるAAS組織とコラボレーションして、新しいレギュレーションや法律への対応も行います。「某国だからできない」ということはほとんどなく、均質なサービスをどこの国に行っても提供できます。また、我々日本人のメンバーを各地に派遣していますので、現地でもお客様は安心したサポートが受けられます。
高橋
デジタルやIoTなど世の中のトレンドも目まぐるしく変化しています。ぜひ会計領域における案件のトレンドについて教えていただけますでしょうか。
足立様
会計領域の規制対応といったレギュレーション案件がメインで、コンサルとは異なり個別のトレンドを追うことはないのですが、やはり「デジタル」が絡んだ案件は我々の中にも相当入ってきています。我々はデジタル化するシステムソリューションを提供しているわけではないですが、例えばプロセスの話をするにしても、デジタルを用いてどのように対応するかという方法論がもちろん出てきます。
あと、効率化の面でも、前まではシェアードサービス、アウトソースといった提案がメインでしたが、平行してデジタルという選択肢が入ってくるようになりました。正直、10年前までは今すぐ使えるソリューションというよりは、「未来のソリューション」という認識でした。一方で、現在は想像以上にテクノロジーの進化が早く、デジタル活用の提案もメインのソリューションとなっています。だからこそ、我々のメンバーには「会計の専門家だとしても、デジタルのことを知らないとマーケットからは相手にされない」と常々伝えています。
正直、私が会計士を始めた頃は蓄積したものだけで一生食べてゆけるイメージでしたが、特に我々のようなアドバイザリーのサービスに従事する立場では、世の中のトレンドに敏感であることも成功の秘訣ですね。
高橋
なるほど、そういったトレンドをキャッチアップする仕組みや、研修などはあるのでしょうか。
足立様
KPMG JAPAN内には先端技術を研究しているチームもありますし、クライアントが我々のデジタルエキスパートとディスカッションして先端技術を用いたソリューションを創発できるKPMGイグニション東京という施設もあります。
また、グローバルを含めたKPMGグループ全体にもデジタルを研究・開発している組織があり、例えばAIを使って契約書を読み込んで会計の基礎データを抽出し、会計処理のベースになるデータを自動で作成するといったものも開発されています。これに関してはすでにお客様に対するソリューションとして提供され始めています。さらに、我々日本のメンバーもグローバルに製品のデモを依頼したり、開発チームと直接コミュニケイトしてどのような仕組みで稼働しているかを理解したりする環境も備わっています。
働く方法は様々ですが、グローバルで今まで蓄積されてきた、もしくは投資している先端領域の情報を触れられるところが我々KPMGのメリットだと思っています。
「最も求めているのは“オープンマインドな人”」
坂本
最後にリクルーティングの話を伺えればと思います。スキルやマインド面でどのような方を求めているのでしょうか。
足立様
最も求めているのは“オープンマインドな人”です。具体的には「いろんなことにチャレンジしよう」という気持ちがある人ですね。
理由としては、一つ目に経験やスキルは研修またはOJTで身につけられますし、それは我々の責務である一方、マインドを変えることは難しいからです。
二つ目は、世の中の変化が早く、業界としてもチャレンジし続けないと縮小してゆくしかないからです。チャレンジがプラスアルファではなく、しないことがマイナスになる状況ですので、例えば安定志向よりも、「駐在の機会があるのであれば行きたい、新しいサービスにアサインされるならやりたい」とチャレンジ志向で、そこに楽しみを覚える人が良いと思います。
また、三つ目の理由として我々は日々成長を志しています。サービスの領域も広げたいと思いますので、新しいことにチャレンジし、ゆくゆくは新しい領域をトップとして担うなど、事業部を引っ張れる方を求めています。