あずさ監査法人はKPMGのメンバーファームとして、複雑な課題を有するクライアントや社会に対して価値ある監査・アドバイザリーサービスを提供しています。今回は、同法人のアカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部のProcess & Information (P&I)チームを率いるパートナーの濵田克己(ハマダ カツミ)様に、同チームの魅力をアクシスコンサルティングの坂本、高橋がお聞きしました。
この記事は2019年2月時点のものです。
- 目次
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- 32歳でコンサルティング業界へ、現在はProcess & Information (P&I)チームのパートナーに
- CFOに対して経営管理のサービスを提供する組織というのがP&I第一のコンセプト
- サービスラインの間でも、監査事業部とコンサルティング部隊でも流動的な社内異動が可能
- M&Aで買収した海外の子会社管理、スマートデジタルファイナンスに関するサポートがトレンド案件
- 「コンサルタントとしての素養も兼ね備えたバランスの良い方がP&Iでは最も評価されている」
- 働き方改革により格段に残業が減少した分、成果を出す上でタイムマネジメント力が重要なポイントに
- 「今後は時代の流れに応じてテクノロジーのニーズに応じた人材を積極的に採用していく必要がある」
- 有限責任 あずさ監査法人 求人情報
32歳でコンサルティング業界へ、現在はProcess & Information (P&I)チームのパートナーに
坂本
これまでのご経歴を教えていただけますでしょうか。
濵田様
大学卒業後、IT企業で金融機関向けにシステム企画から設計、導入、等々、一連のシステムサービスに6年ほど関わってきました。その後退職して2年ほど海外を放浪していました。当初は社会人経験、海外経験を積んで教職の道に進もうと考えていたのですが、帰国したタイミングで家族が経営する会社を清算することとなり、銀行との資金調整や資産売却といった業務を行う中で、企業に対してアドバイスするビジネスの魅力を感じ、ビジネスコンサルティングという業界に飛び込みました。
1997年にアーサー・アンダーセン(現PwCコンサルティング)に入社した後、多数のコンサルティング経験を経て、2009年にKPMGのコンサルティング部門立ち上げにも関わるなど様々な変遷がありました。そしてKPMGジャパンの再編の中で、あずさ監査法人内にアカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部が立ち上がり、その中に会計基準専門のA&S(Accounting &Strategy)、トランザクション専門のT&R(Transaction & Restructuring)、ビジネスコンサルティング専門のP&I(Process & Information)が設けられ、現在はP&Iの責任者をしています。
坂本
この業界に入られた時の苦労について教えていただけますか。
濱田様
32歳でコンサルティング業界に足を踏み入れたのですが、新卒とタイトルは同じで、本当にゼロからのスタートでした。当時はアーサー・アンダーセンが日本法人のコンサルティング部隊をつくった初年度でしたが、周りは会計士などスキルの高い人ばかりで、そういう方たちの中に会計の知識がない状態で入っていったので、必死に与えられた作業をこなすだけの毎日が3年ほど続きましたね。
今思えば、私の社会人としての最初の経験はITの領域でしたので、企業におけるヒト・モノ・カネ、この三つの流れが理解できていないまま32歳まで過ごしていたのだと思います。しかし、この業界に入ってからの3年間は必死にその流れがどのように企業の中でうごめいているのか、その中でどういう意思決定のもとに物事が進み成果を生み出すのか、といった原理原則を徹底的に学ぼうとしたことが企業のベースを理解するきっかけになったと思います。
あずさ監査法人 濵田克己様
CFOに対して経営管理のサービスを提供する組織というのがP&I第一のコンセプト
高橋
ありがとうございます。次にP&Iチームの話をお聞かせいただきたいと思います。組織の概要について教えていただけますでしょうか。
濱田様
CxOクラス、特にCFOに対して総合的にサービスを提供する組織というのがコンセプトです。具体的に説明すると、CFOへ提案するサービスは四つの領域に分けられます。まずは財務戦略、投資戦略といった戦略パフォーマンスを司る領域。二つ目は取締役会、子会社管理、IRなどガバナンス体制のコントロール機能を抑えてゆく領域。三つ目は規制当局対応、内部統制、リスク管理など、統制とコンプライアンスを司る領域。四つ目はコスト最適化、オペレーション改革など業務パフォーマンスを司る領域。CFO傘下には、経営企画や、財務・経理組織などがありますが、当該四象限を軸に経営課題を探りあるべき姿に導き出していくのが我々のミッションです。
高橋
豊富なサービスのラインナップですね。監査法人のコンサルティングサービスの特徴について知らない方も多いと思います。監査法人だからこそできるコンサルティングや、強み、面白さについて教えていただけますか。
濱田様
確かにKPMG Japanには多様な法人格がありますが、監査法人の中にあるコンサルティング部隊ですので、会計・ファイナンスに特化した形でCFOに対してサービスを提供することができます。
また、チームのメンバーにも特徴があり、我々の組織は半分が会計士、半分がコンサルティング経験者です。コンサルティング経験者でも経営企画・財務・経理などの分野にスペシャリティを持った方を数多く採用しています。同じく、会計士の方々も「実は監査は自分の性に合わないのでは?」「毎回チャレンジングな案件に取り組み、会計のスキルを活用したい!」という方に集まっていただいているので、同様の目的や仕事の価値観を兼ね備えたメンバーが融合して組織ができあがっていると思います。恐らく、ここまで多くの会計士が所属するコンサルティング組織は他ファームにもないと思います。
サービスラインの間でも、監査事業部とコンサルティング部隊でも流動的な社内異動が可能
坂本
監査法人内での異動も比較的簡単にできるのでしょうか。
濱田様
事業部内の3つのサービスラインの間で動くこともできますし、監査事業部からP&Iのサービスを希望して異動してくる方もいます。監査事業部から異動してきた会計士の方々は我々のチームを経験した後に、監査事業部に戻ることもできます。流動的に動けるメリットとしては、例えばコンサルティングを経験した上で監査に戻ると、コンサルティング的な目線からのアドバイスや提案が自然とできるようになるなど自己のスキルの幅が広がり波及効果が期待できます。つまり、同じ法人内で人材を流動化させることにより、監査以外のことも経験して、スキルアップや様々なキャリアパスを描くことができます。また、異動は法人内にとどまらず、本人の適性に応じてKPMGグループ内で人材異動を行った例もあります。
坂本
P&Iのメンバーは何名いるのでしょうか。
濱田様
東京で約80名、東名阪では100名ほどです。東京の案件に大阪や名古屋のメンバーをアサインする、逆に東京のメンバーが大阪、名古屋の支援をするなど流動的にアサインすることもありますし、今後はグローバル派遣するオペレーションも積極的に行います。
坂本
グローバルではどのようなサポートを行うのでしょうか。
濱田様
監査法人ですので、海外進出している現地の子会社を監査する際のサポート役として赴任するケースが多かったのですが、昨今では海外子会社向けのコンサルティングサービスを拡大するという目的で、アジア、ヨーロッパ、アメリカを中心に10人単位で現地に派遣しています。ローテーションは約2年間ですね。シニアやマネジャーの段階からグローバルな経験をできる枠組みがあります。
M&Aで買収した海外の子会社管理、スマートデジタルファイナンスに関するサポートがトレンド案件
坂本
ありがとうございます。組織やサービスについての概要についてお話していただきましたが、次に直近トレンドになっている案件のテーマについて教えていただけますでしょうか。
濱田様
この前もセミナーが盛況でしたが、M&Aで買収した海外の子会社管理が大きな注目を集めています。背景としては海外子会社の不正取引や基準・規定の不徹底などガバナンスを効かせる仕掛けづくり、子会社可視化のためのKPIの設定といったニーズは非常に多いです。 もう一つは、スマートデジタルファイナンスに関するサポートです。従前から日本企業は経理財務の領域に対してシステム投資を抑制していたため、旧態依然のシステムや制限などが存在し時代にそぐわない環境である一方、AIやフィンテックなど革新的技術に取り残されるリスクが高く、また昨今の働き方改革から経営者のITに対する問題意識もかなり高まっています。
「コンサルタントとしての素養も兼ね備えたバランスの良い方がP&Iでは最も評価されている」
高橋
ありがとうございます。次は採用についてお伺いしたいと思います。先ほどコンサルバックグラウンド、会計バックグラウンドの方々など様々な方々がご入社されているとお伺いしましたが、あらためてスキル面・マインド面で求める方について教えていただけますか。
濱田様
コンサルティング経験者をはじめ、財務、経理の実務や経営企画などファイナンスに近い領域で実績を残してきた方々を採用する一方で、組織も徐々に成熟しているのでポテンシャル採用も検討し始めています。特に、ポテンシャル採用においては英語力がキーになります。例えば海外留学や海外でのMBA取得経験があれば、会計の知識が劣後しても採用するケースがあります。
高橋
マインド面ではいかがでしょうか。
濱田様
やはり会計への興味をお持ちの方が良いと思います。また、我々のチームでは経営者と対峙することでビジネス感覚を学び、将来は経営者になりたいという高い志を持つ方も歓迎しますね。特に会計士で将来経営者を目指す方には、監査法人の中にあるコンサルティング部門ですので、馴染みやすい環境も整っており、最適だと思います。
高橋
御社の中でキャリアアップを目指したい方は、「会計士の資格が必須なのではないか」「会計士の資格がないと評価されないのでは」と心配に思われる方もいらっしゃると思います。実際のところいかがでしょうか。
濱田様
U.S.CPAとコンサルティング経験の両方がある方、資格は持っていないけど会計を学びたい方、プロセス・IT改善の経験が豊富な方など、様々な方から我々のチームにご応募いただいています。ただ、チームを束ねてマネージメントできるか、クライアントのニーズをしっかり捉えたうえで成果が出せるか、最終的にクライアントの期待値を超えられるか、といったコンサルタントとしての素養が高い方もP&Iでは重要な素養と位置付けていますので、会計士の資格の有無はそれほど重要ではありません。
高橋
会計士の資格を持っている、持っていないではなく、しっかりとコンサルティングでバリューを出している方を評価するのですね。実際にパートナークラスで会計士の資格を持っている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
濱田様
パートナー、ディレクタークラスはP&Iで17名おりますが、日本・米国の会計士は8名です。実は、ここ数年でディレクター以降のタイトルに昇格しているメンバーのほとんどがNon CPAです。
高橋
候補者には、「会計士とコンサルタントはカルチャーが違う」と心配されている方も多いと思います。チームのカルチャーや雰囲気についてはいかがでしょうか。
濱田様
会計士のマネジャーは指示したことに対して実直且つ正確に作業をこなすメンバーを好む傾向があると思います。一方で、コンサル出身のマネジャーは、「自分で考えて、自分の案を持って来い、そして最終的に何が最適解なのか」を論理的に説明・追究するタイプを好む傾向があります。
我々のチームも当初は価値観の違いもあり噛み合わない部分もありましたが、みんなに「しっかり自分の考えや意見をディスカッションする場を設けてほしい」「仕事のやり方に関してもお互いを尊重し合って、ディスカッションして、マネジャーの意見が正しいのではなく、チームとしてお客様に最高のものを提供しよう」と伝え続けることで、今では同じ価値観で仕事が出来ていると思います。
高橋
なるほど。チーム全体ではどのような性格、マインドを持った方が多いのでしょうか。
濱田様
コンサルティングファームでよく皆さんが連想される「自己主張が強く、前のめり」といったタイプの方はあまりいないですね。非常に誠実で、相手を立てて、お互いを尊重しあえるメンバーが多いと思います。
働き方改革により格段に残業が減少した分、成果を出す上でタイムマネジメント力が重要なポイントに
坂本
働き方を気にされる候補者も多いのですが、ワークライフバランスに関してはいかがでしょうか。
濱田様
数年前までは休日も出勤するなどハードワークすることもありましたが、働き方改革の影響で仕事の環境が大きく変わり、まずPCが朝7時から夜9時までしか使えなくなりました。9時を超えて残業したい場合は残業申請を提出し、承認を得ないとPCの利用時間を延長できません。その結果、格段に職員の残業が少なくなりました。また、昔は休日も徹夜で提案書や報告書を書いていましたが、現在は休日にPCが使えなくなりました。
坂本
それは大きな変化ですね。今の平均の残業時間はどのくらいでしょうか。
濱田様
先月の平均で15時間ぐらいでしょうか。多い月でも20時間から25時間です。ただ、逆に考えると無限に時間が使えない環境でコンサルティングサービスをするのは、今の若いメンバーにとっては辛い部分もあると思います。1日の時間を計画的に使わないと自分の成果につながらないので。だから「そんなに残業しなくて、いいですね」と安易に答える人に対してよく言います。「本当は違う、厳しい環境だよ」と。
坂本
時間が短いからという理由でクライアントに提供するサービスの質は下げられないですからね。メンバークラスの働き方が変わったことで濵田様にも影響はありましたか。
濱田様
メンバーの作業環境が変わったことにより、我々パートナークラスも結果として土日働くケースが少なくなりましたね。
坂本
なるほど。濵田様は休日は何をされて過ごされているのですか。
濱田様
借りた畑で菜園をしています。以前農業をしていたこともあり、今では夫婦で、じゃがいも、大根、キャベツ、ブロッコリー、とうもろこし、トマトなどを収穫して楽しんでいます。これが予想に反して自給自足できていて家計も助かっているんですよ。
坂本
完全にビジネスと切り離して、しっかりリフレッシュをされていますね。
アクシスコンサルティング 高橋、坂本
「今後は時代の流れに応じてテクノロジーのニーズに応じた人材を積極的に採用していく必要がある」
坂本
最後に、今後の話をさせていただきたいのですが、チームとしての方向性や、今後注力すべきことについてお聞かせいただけますでしょうか。
濱田様
我々が掲げるP&Iのサービスは20年前から中身が大きく変わっているとは言えません。昨今の技術革新のスピードには目を瞠るものがありますが、少なくとも従来のサービスに如何にデジタルテクノロジーを組み込んでいくかが重要だと思います。我々の10年後、20年後を考えると、テクノロジーを上手に活用しながら、CFOの役割・機能をスマートにしてゆく必要がありますし、テクノロジーのニーズに応じた人材も積極的に採用してゆく必要があると思っています。
坂本
テクノロジーの動向や情報をキャッチアップする仕組み、研修もあるのでしょうか。
濱田様
グローバルでもAAS事業部と同一のサービスがあります。グローバルで先進的に行われたスマートデジタルファイナンスの事例を、日本に取り入れる活動が始まっています。