今回は、デジタルを活用した新規事業の構想・企画から立ち上げやデジタルマーケティングの戦略・計画策定から実行支援等、今日のデジタル社会で企業が抱えるビジネス課題を総合的に支援するCoum株式会社へのインタビュー。
代表取締役の廣瀬真彦様より、創業の背景、同社の強み、大手ファームとの違いなどについてお聞きしました。
「スモールスタート」のデジタル支援ニーズに着目し、2019年に独立・起業
安形
廣瀬様のご経歴についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。
廣瀬様
新卒でアクセンチュアに入社し、通信ハイテク産業向けのビジネスコンサルティングサービスに約2年間従事したのちに、タワーレコード株式会社に転職。当時先駆けだった定額制音楽配信の新規事業の立ち上げに参画し、事業拡大に携わりました。その後、約2年間フリーのコンサルタントをしながらMBAに通い、ご縁のあったスカイライトコンサルティング株式会社に転職しました。
スカイライトコンサルティングでは約10年間コンサルタントとして、新規事業の構想や立ち上げ、デジタルマーケティングの戦略・企画、ECの海外展開などデジタル領域のプロジェクトに従事し、その後当時のメンバーを中心に2019年にCoum株式会社を創業しました。
安形
Coum株式会社を創業されるに至った背景を教えていただけますか。
廣瀬様
前職のスカイライトコンサルティングでは、デジタル領域の新規事業やマーケティングの売上に関わるプロジェクトを多数行っていましたが、その中で徐々にお客様のニーズが変化していくのを実感していました。デジタルの企画プロジェクトの場合、コンサルタントを何人もアサインするような大規模なプロジェクトではなく、「スモールスタートで始めたい」というお客様が増えており、そういったニーズに対して、機動力のある2〜3人のチームで柔軟に軌道修正しながらスピード感のあるコンサルティングをすることが求められていました。
それに加えて、事業の立ち上げやマーケティング施策の企画をご支援していると、その後のプロモーションやSNSマーケティングのご相談を受けることも多くありました。デジタルの領域でお客様のニーズに応えていくためには、デザインやエンジニアリングといったクリエイティブの必要性も実感していました。
また個人の働き方にも時代の変化を感じていました。組織の中でいかに早く昇進するかを目的に、朝から晩まで仕事に追われながら短距離勝負のような働き方ではなく、長期的な視点でキャリアを捉えて、長く働き続けていくためのキャリア形成やもっと柔軟に働ける組織の在り方など、優秀な人たちが活躍できる組織・環境作りを考えるようになっていったのです。
そうした経緯から今クライアントが求めているものにどうやって応えていくか、また優秀な人材が活躍できる環境をどう創るかを考えた結果、当時のメンバーと一緒にCoum株式会社を立ち上げるに至りました。スカイライトコンサルティングには一部資本を出資してもらいました。新たなチャレンジに背中を押してくれた前職の役員の方々には、とても感謝しています。
「デジタルを活用した新規事業の構想・企画」から「デジタルマーケティング施策の実行支援」まで、デジタルが絡むあらゆるビジネスの支援が可能
安形
御社のコンサルティングについてご紹介いただいてもよろしいでしょうか。
廣瀬様
デジタルを活用した新規事業の構想・企画から立ち上げ、その後の事業拡大、ビックデータを用いたサービス企画や仕組みづくり、デジタルマーケティングの戦略策定といったお客様企業の新しい価値創造や売上を伸ばす支援を行っています。具体的なサービスをお客様と一緒に企画・実行するだけでなく、実行フェーズの一環として、クリエイティブ制作やツール導入・利活用も含めてデジタルの絡む面を総合的にご支援できるファームです。クライアントは通信やメディア、インターネット系などの大手企業が多く、業界は多岐に渡ります。
今後はメイン事業のコンサルティングに加えて、顧客接点のデジタル化や業務プロセスのデジタル化、位置情報等のビックデータを活用した分析など、新しいサービスの提供も強化していきたいと考えています。
安形
より具体的な案件があれば教えていただけますか。
廣瀬様
例えば大手メディアのお客様に対して、VR(仮想現実)内に現実と同等の世界を構築し、各社が経済活動を行うという新サービスの立ち上げを支援しています。他にも大手通信会社に対して、エリアマーケティングを支援している企業との協業を支援したという実績もあります。ビックデータを活用した新サービスであり、構想から立ち上げ、事業の拡大まで一気通貫でお手伝いしました。新規事業においては、昨今1社だけで立ち上げることは難しく、異なる業界の企業が協業するケースが増えています。その分難易度も高く、そういった案件において、企画や協業スキームの整理、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを促すプロジェクト推進など支援しています。
コンサルタント1人ひとりがお客様と近い距離で対話をしながら、お客様のニーズに合ったサービスを提供
安形
大手ファームとの違いや御社の特徴を教えていただけますか。
廣瀬様
デジタル領域の新たな取り組みに対して、クライアントがいきなり大規模な投資をすることは稀なケースです。正しい戦略を立てることに時間とお金をかけるよりも、企画をクイックに立てて、軌道修正しながら進めていけるスピード感と機動力が求められます。また、デジタルの領域では業界の垣根がなくなっていることもあり、インダストリーやテーマが複数にまたがり横断的な対応が求められます。そのため弊社では、大手ファームのようにマトリックス型組織でインダストリーやテーマを区切ることなく、また、チーム規模も小さくすることで、柔軟性とスピード感をもって横断的に取り組むことができます。その結果、コンサルタント1人ひとりがお客様と近い距離で対話をしながら、お客様のニーズに合ったサービスを提供できるのが特徴です。
安形
まさに「顧客とよりよい明日を共創する」というミッションに通じるわけですね。
廣瀬様
そうですね。
私たちはお客様に対していきなり大風呂敷を広げるのではなく、企業が時代の変化に適応しながら将来にわたって事業を継続していくために、今よりもよい未来を一緒に創り上げていくことを大事にしています。 また、弊社はセールスとデリバリーを一体化させており、基本的にはプロジェクトマネジャーが営業・提案も行っています。そのため、お客様との期待値にギャップが生じることがなく、無理やり辻褄を合わせるハードワークも必要ありません。クライアントにきちんと向き合うことを重視し、良い関係構築することを大事にしています。その結果、複数の相談がくるようになり、クライアントごとの継続率も高くなっているのだと思います。
さらに、弊社ではクライアントと対話をしながら共に進めていくため、プロフェッショナル個々人の力量がサービス品質に大きく影響します。よいサービスを提供するためには、プロフェッショナルが仕事にやりがいを感じ、働きやすいと思える環境も重要であり、そのためにはキャリア設計も含めて、組織がプロフェッショナルにとって最高の場所となることが大事なミッションであると考えています。
横のつながりを重視する組織運営を心掛けている
安形
先ほど、やりがいや働きやすさが重要だというお話がありましたが、具体的にどういった取り組みをされていますか。
廣瀬様
コロナ前からオンラインでの仕事が定着していて、個々人に応じて働く場所と時間を自由に調整できるようになっています。一方で、社員同士の対話やつながりも組織の働きやすさにつながると考えさまざまな施策を行っています。
例えば「FIKA(フィーカ)」という制度があり、週2回、業務時間中にみんなで一度仕事の手を止めて、オンライン・オフライン問わず30分間雑談をする時間を作っています。また、Monthly Updateという近況報告会のような制度では、普段接点の少ない人同士で小さなチームをつくり、月に1回その月の振り返りと来月の予定、今の課題感などを共有し、解決ではなく共感を行うという時間を設けています。こうした施策を通じてお互いを理解し、信頼関係を築くことで、チームワークを醸成し、組織全体のコミュニケーションの円滑化を図っています。
安形
チームビルディングを重視するようになった背景を教えてください。
廣瀬様
コンサルティングファームは仕事の特性上、社内の関係性が希薄になりがちなことにずっと課題感をもっていました。前職では上司の立場として、プロジェクトチーム内でのチームビルディングに力を入れてきました。しかしせっかく関係性が築けても、プロジェクトが終わったら距離ができてしまい、個人の力だけで関係性を維持していくことに限界を感じていました。クライアント先の方が居心地がよいと感じていたり、社内の人間関係が構築できず悩んで辞めていく人たちもいて、とても寂しい思いをしました。
規模感にもよりますが、例えば上下関係といった構造だけではなく、横の関係でも知見・経験を共有しあうことで、より高い価値をクライアントに対して提供できる組織になっていくのではないかと考え、それを今、試行錯誤している最中です。
安形
今後のビジョンについても教えてください。
廣瀬様
デジタル領域はポテンシャルのある領域であり、かつ日本の労働生産性への課題感も相まって変化の機運が高まっている状況です。今はまだ小さな組織ですが、デジタル領域や日本の労働生産性の課題に対して貢献できる量と質をあげていき、しっかりと着実に事業を大きくしていきたいと思います。 またDXを推進していく中で、大企業だけでなく中堅中小を含めテーマや業界に共通の課題があると思います。コンサルティングだけでなく、共通課題の解決策をサービス化・ソリューション化して提供し、世の中に貢献できる度合いを増やしていきたいと思います。
そのためにこれからも様々なバックグラウンドやスキルを持った人材を採用し、さらに組織の多様性を高めていきたいと考えています。
安形
ありがとうございます。では最後に、メッセージをお願いします。
廣瀬様
プロジェクトの中にはVRのような先進的なテーマもあれば、次の柱となるような事業を創るといった難易度が高くやりがいがあるテーマもあります。クライアントはこの変化の時代に常に挑戦を強いられており、我々もクライアントと一緒になって挑戦し続けたいと思っています。
また弊社はティール組織の考え方を取り入れて従来のヒエラルキーの組織を排除し、非常にフラットな環境で横のつながりを大事にしたビジネスコミュニティのような会社でもあります。コンサルとして肩書きや収入をあげることだけをキャリアのゴールとするのではなく、チームとして世の中に貢献できる度合いを高めていくことを重視しています。デジタル領域の案件を積み重ねながら、キャリアの構築と充実度の向上をしたいという方は、ぜひ興味を持っていただき一緒に働く機会があればうれしく思います。