データ分析コンサルティングや、データサイエンティストを育成するスクール事業などを展開する株式会社データミックス。今回は、監査法人やAIベンチャーでデータ分析コンサルとして活躍後、2017年2月に同社を立ち上げたCEO 堅田洋資様に、ご経歴や同社設立の背景、同社の事業の特徴、現在入社される方のバックグラウンドや求める人物像などについてアクシスコンサルティングの江口が伺いました。
データミックス社の主な事業は「データ分析コンサル」「データサイエンティストの教育」「toB向けのデータ研修」等
江口
堅田様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
堅田様
一橋大学でデータサイエンスを専攻し、卒業後はマースジャパンにて経理とマーケティングを経験しました。
その後、KPMG FASに転職し、4年ほどホテルやスキー場の再生案件に携わりました。
ただ、メンバークラスで中々自分のコアスキルが伸ばしにくいという悩みから、中堅の測定会社に転職し、子会社立ち上げを経験しました。ウェアラブルセンサー事業を担当していましたが、アルゴリズムやソフトウェアの作成をしていた際に、データを仕事に生かすことに面白味を感じ、サンフランシスコ大学の修士課程に留学しました。
帰国後は監査法人トーマツに入社しアナリティクスコンサルタントとして働いた後に、AIプリケーション開発を手掛ける白ヤギコーポレーションに転職しました。スタートアップのため目の前の売り上げが必要であり、今まで培ったデータ分析スキルとコンサルティング経験を掛け合わせたデータ分析コンサルとして活動しました。
ただクライアント企業のデータ分析やアプリのユーザー分析をする中で、データ分析を活用するためにはそもそも企業におけるデータを用いる土壌や、データサイエンティストの育成が重要だと感じたこと、また日本にはデータ分析を学べる環境が少なく、「社会的にも意味があるのではないか」と思い、教育事業とデータ分析コンサルティング事業を軸に、3年前にデータミックスを立ち上げました。
江口
ありがとうございます。次に御社のご紹介をお願いします。
堅田様
データサイエンスに関わる教育・研修事業やデータサイエンティスト育成プログラムの運営、スクール事業の卒業生を「データサイエンティスト」として企業へ紹介する人材紹介。また、データ活用に取り組む企業に対して機械学習、統計モデル、最適化手法を組み込んだプロダクト・ソリューションのコンサルティングやクライアント企業内におけるデータ分析組織の立ち上げ等も行っています。
江口
当初から同じビジネスを続けてこられたのでしょうか。
堅田様
前職でAIプロダクト開発に関わっていたため、当初は物流の最適配置化のアルゴリズム開発支援や人材マッチングアルゴリズムなど、AIプロダクト開発やリコメンデーションエンジンを作成する際のアドバイザリーの依頼が多かったです。
ただし、現在は、教育事業や、データ分析コンサル、データサイエンティストチーム立ち上げの支援等の案件の比率を増やしております。 特に、現在売り上げの7割を占める教育事業では毎月50名ほどの受講生がおります。コンサルティングの分野では、データから導き出せる役職別・事業別の人事政略立案、データ分析領域の人材育成・採用戦略などの依頼が増えています。
入社理由は「データを活用できる組織を作り、データ分析による大きなビジネスインパクトを生み出したい」という声が多い
江口
現在の組織体制や、メンバーのバックグラウンドについて教えていただけますか。
堅田様
現在は約20名の組織で、データ分析コンサルタントが約半分。その他は、コーポレート部門やエンジニアです。
半分以上はデータ領域のエンジニアなどIT系の方ですが、直近ではITコンサルに近いバックグラウンドの方や、大手事業会社の経営企画や事業開発の方も次々と入社されています。また、弊社スクール事業の卒業生から直接入社するケースもあります。
江口
直近で入られた方の入社理由について教えていただけますか。
堅田様
特に前職でコンサルティングに関わっていた方は、データ分析を用いたレポーティングを通してクライアントが変わろうとするきかっけを提供しても、プロジェクトが終わると、結局何も変化がないといったジレンマを繰り返し経験している方が多いです。
面接においても、「1個1個の案件でデータ分析をしても結局使われない」、「レポートを出して『面白いアイディアだね』で終わり」、クライアントの利益に結び付かない」というケースが多いです。
その結果、データを用いて会社を変える機運を生み出すためには、単にレポーティングやソリューションを提供するのではなく、データ分析を用いてビジネス化するための組織・体制作り、教育の方面から中長期的にアプローチした方が良いのではないかという思いで入社されます。
確かに、金融系のデータ分析に注力し株に投資する、AIベンチャーでデータ分析のソリューションを開発しお客様に導入する、などデータを使った儲け方は他にもあります。しかし、そのようなことでは社会全体にデータ分析の機運が生まれないことを実感し、「アリババのようにデータ分析を利用して1日に何兆円も儲ける企業に追いつくことはできない」等、日本企業ないし日本社会のことを真剣考えられている方が入社されているケースがほとんどですね。
データ分析の効果は『組織』に左右されるため、直近ではデータサイエンスチームのマネージメントコンサルにも力を入れている
江口
事業の話に戻りますが、AIプロダクトの開発だけでなく、教育事業やデータ分析コンサルティング事業などに注力している理由について教えていただけますか。
堅田様
まず、第一に私がコンサルティングファーム出身であり、データだけでなく財務や戦略、ビジネスサイドも理解しているため、データを使った事業戦略や組織組成、またAIベンチャー投資におけるDDの方がバリューを出せると認識しているからです。
また、この会社を立ち上げた動機にも当てはまりますが、日本企業におけるデータを活用する土壌を育てることで、データビジネスのビジネスインパクトを大きくしたいという思いからです。
江口
データを用いたビジネスのインパクトを大きくしたいとのことですが、現状日本企業における課題は具体的にどこにあるのでしょうか。
堅田様
実際に、ある会社がデータ分析チームを立ち上げて1年ほど経ち、ケイパビリティを伸ばしている最中なのですが、まだデータ分析を通したビジネス変革にはたどり着いていません。
データ分析の効果は、技術やスキルの進歩がフックになるのではなく、「組織の変革」がセットになって初めて起こりえます。まずはデータを見る姿勢を育てなければ、どれだけデータを拾い上げて分析をしても誰も使おうとしないのです。
このことからも、ただデータの結果を出すコンサルティングが結果に結び付くケースは珍しく、それ以前に周りの意識を変えるにはどうすれば良いかを一緒に試行錯誤して伴走するコンサルティングスタイルが求められています。
江口
単純に分析の結果を出すだけのコンサルティングでは意味がないのですね。
堅田様
その通りです。 営業サイドでデータ分析による考察を行うメンバーを組成して、議題を持ち上げてリーダー戦を仕掛けたほうが良いのか、そもそもKPI自体が果たして今の事業課題を捉えていない場合は関係各所と調整してもう一度立て直すなど、データを用いたコンサルティングは結局「組織論」に帰着します。
そのために、我々は個人向けの研修や教育だけでなく、データサイエンスチームをマネジメントする方向けの「ビジネストランスレーター研修」や、経営企画・マーケター向けにデータ分析をビジネスの現場で使っていくための「SQLとExcel/BIツールを使ったデータ分析実務研修」等BtoBの研修事業も開催しています。
そもそも、自社や個人が儲かること優先するのであれば、私もデータ分析を扱った教育事業は大きな収益を得られるビジネスモデルではないと知っているためトライしません。
ただ、人が変われば組織も変わって、最終的に会社も変わり大きなビジネスインパクトが出るという視点から現在のビジネスモデルが生まれています。
今後はデータ分析を用いた買収先企業の経営など、データ分析領域の「総合商社」を目指していく
江口
ソリューション等のお話をしていただきましたが、今後の事業モデルとしてベンチマークしている企業はありますか。
堅田様
ベンチマークは海外のGalvanizeという企業で、データサイエンスのスクール事業とコアワ―キングスペース事業を行っています。 セミナーや教育で人を集め、コワーキングスペースではインキュベーションを行っています。UWORKに学校と投資ファンドが組み合わさったビジネスです。
我々としても今までに500名以上が受講しているため、受講生同士で起業し我々が支援するといった形でビジネスを広げていきたいと思います。 実際に我々もスクール事業が順調であり、受講者のご紹介で法人研修やデータ分析のチーム立ち上げをご依頼いただくケースも増えてきました。
江口
ありがとうございます。御社は今年の1月末に7500万円以上の資金調達をされていますが、今後の事業戦略や方向性をお伺いしてもよろしいですか。
堅田様
スクール事業としては、地方に教室を開講したり、データ分析に興味がなかった人でも気軽に受けられる講座を新規で開いていきたいと思います。
同時に、組織組成などを含めたコンサルティングにもさらに注力することで、よりデータ分析の基盤を日本全体に生み出し、社会全体からデータ分析領域のニーズが増えるアプローチをしようと考えています。
また、国内外や業種に関わらず、企業を買収し、「データドリブン」で経営していく構想も描いています。 大きい方向性として言えるのは、「教育会社」や「研修会社」になろうとはしていないということです。Galvanizeのように、データ分析を軸にしたビジネスを次々と展開することで、データ分析の総合商社になることを目指しています。
江口
キャリアとしても、チャレンジの場が多く魅力的ですね。
堅田様
資金も集まり、新規事業を次々と立ち上げるフェーズですので、自分が描いているビジネスアイディアの実現や、新規ビジネスを推進するチャンスが多いです。
また、教育事業やコンサルティング事業が軌道に乗ってきたことから、現在は既存事業をスケールする必要もあり、戦略立案経験等、コンサルタントとして培ったスキルを生かし、さらにその戦略を実行に移すチャンスもあります。
ベンチャーのため「仮説を立てて自ら動ける人」、またデータを用いたビジネスのため「批判的思考力」のある方が活躍できる
江口
御社で活躍される方の特徴について教えていただけますか。
堅田様
具体例としては、プロジェクトチームに人が足りない場合、ただ不満を述べたりするだけでなく、採用活動を自ら率先して行うような方は活躍しています。自分なりに全体感を持って、仮説を立てて動ける人は活躍できますし、我々としても積極的に後押ししています。
一方で、指示を待って動くタイプの人は、このフェーズのベンチャーで活躍するのは厳しい印象です。
また、弊社はそれぞれが独立した事業ではなく、アップセルで収益を得るスタイルですので、メンバー間の連携プレーが多いです。ラグビーやサッカーと同じで、チームプレーができないと価値が出せない領域ですので、コミュニケーション力なども求められます。
江口
コンサルティングファーム出身の方ではどういった方が活躍できるイメージでしょうか。
堅田様
コンサルティングファームの中でも自分で勝手に営業して案件を取ってきてしまう、ある意味異端の方がマッチすると思います。上司に言われた、またはアサインされたモジュールや分析だけこなして、認めてくださいというタイプの方は活躍するのは難しいです。
ただ、価値を生み出すために自ら動ける方には率先して協力しますし、活躍するチャンスも積極的に提供します。
江口
今後どのようなご経歴の候補者の方に入社していただきたいか、スキル面とマインド面の両方をお話いただいてもよろしいですか。
堅田様
データ分析の領域は「このデータは本当か?それはなぜだろう?」と思わないと価値が出にくいため、批判的思考力や論理的思考力が高いかどうかは非常に重要です。その点で、コンサルティングファームの方は有利に働きます。
また、大学、大学院にて統計分析等の理数系のゼミに所属していた方など、数字を用いた分析などに強い方も即戦力として活躍できるためニーズは高いです。
ただし、正直なところスキル面では最初から統計分析やコンサルティングスキルが必要なわけではありません。
「数字に強い」、「批判的思考力」があればソリューション営業の方なども採用しており、研修等で徐々にキャッチアップしていただいています。一方で、データやAIに可能性を感じられないと成長のモチベーションにならないため、データ活用やAIを用いたビジネスプランや、その可能性を実体験として感じた経験があるか、なども重要視しています。
江口
マインド面ではいかがでしょうか。
堅田様
弊社が教育事業や組織を変革するハンズオン型のコンサルティングを手掛けていますので、「人に興味があること」が重要であり、逆に「人は売り物」のようなトーンの方は採用しても活躍しにくいため見送らせていただくケースが多いです。
江口
ありがとうございます。最後に、御社を志望される候補者様へメッセージいただけますか。
堅田様
今後大学でのデータ分析教育も本格的に始まりますので、一昔前のExcelやWordと同じような位置づけになると思います。 ただし、ExcelやWordでさえ十分に活用できているか疑問が残ります。それと同じことがこの領域にも起こると思います。
そういった背景を踏まえ、データ分析を社会に根付かせることの意義を理解している方とぜひ働きたいと思います。