急激なデジタル化の潮流の中で、日本国内の官公庁のデジタル変革を成功に導くデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC) Government & Public Service Digitalチーム(以下、GPSDチーム)。「デジタルテクノロジーの活用」と「データマネジメント」にアーキテクチャーの観点を加え、「デジタル社会の実現」や「データ流通の実現」を目指します。
今回は、成長著しいパブリック市場におけるDXを担当する、同チームの橋本様(執行役員)、藤田様(執行役員)、小坂様(シニアマネージャー)、生井様(シニアコンサルタント)より、ご経歴や同社への転職理由、チームのミッションや特徴、マーケットの環境、チャレンジングな取り組みなどについてお聞きしました。
GPSDチーム橋本様、藤田様、小坂様、生井様のご経歴
梅本
まずは、皆様のご経歴からお聞かせいただけますか。橋本様からお願いいたします。
橋本様
私は新卒からコンサルティングファームでキャリアを積み、2015年にDTCに参画しました。DTCでは、福島の復興支援の仕事を6年程、その後は復興に加え、行政×DXのお仕事に3年程携わらせていただいています。
現在は藤田さんと一緒に、チームマネジメントをおこなっています。私のチームは主にSalesforce及びServiceNowといったSaaSを活用し、中央省庁及び自治体の業務変革の構想策定・導入を行っています。
梅本
御社に転職された理由についてもお聞かせいただけますか。
橋本様
私はコンサル業界に入ってもう19年になるのですが、DTCに転職したのが9年目ぐらいでした。前職ではプロジェクトマネージャーとして基幹業務導入構想から運用までのend-to-endプロジェクトを経験できました。一区切りついたタイミングで、さらに自分のスキルの幅を広げたいなと思うようになりました。
以前いたファームは国内ファームでグローバルにて連動することが少なったので、今度はコンサル以外の監査などのビジネスもやっていて、かつグローバルで連携できるファームで働きたいという意図でDTCを選びました。
梅本
続いて藤田様、お願いいたします。
藤田様
私は、トラステッドデータ、つまり「信頼できるデータとは何か」をビジネステーマとして、25年程コンサルティング業界でキャリアを積んできました。その間に幾つかのファームでオファリングサイド、例えばデータのマネジメントとガバナンス 、AIやアナリティクスを展開するための基盤はどうするのか、といったことに携わってきました。大手のエンジニアリング会社や建築、建設会社などですね。
実は、DTCには今回が3度目の参画になります。
梅本
藤田様はDTCへの参画が3度目とのことですが、その辺りの経緯も含めてお聞かせください。
藤田様
今回はビジネステーマのデータを中心に、「新しいことをやりたい」とDTCに戻ってきました。データが整っていてこそ、AIやアナリティクスの話ができるので、ガバナンスやマネジメントをしっかり組み上げていかなければなりません。それはデータ流通のあり方など 民間だけでなく、国家戦略として世界に打ち出していく動きになっています。DTCは政府との繋がりも強く、そうしたことをトータルで取り組めるのです。
また、私は前職でデータアナリティクスチームをゼロから作り上げた経験もあるので、そうした知見を活かしてほしいとオファーがあったのも大きな理由です。
梅本
続いて小坂様、お願いいたします。
小坂様
私は20年程、外資系ITサービスベンダーのSEとして、ITソリューショニングやITアーキテクトなど、製造業を主軸に仕事をしてきました。DTCには2年程前にジョインし、今年GPSDチームに異動してきました。システム畑出身なので、クライアントの業務改革からシステム構想、システムに係る要件定義などを主に担当しつつ、ご一緒している藤田さんの影響もあり、データに興味を持って日々勉強しつつデータ利活用に関するご支援にも携わらせていただいています。
梅本
小坂様は、どのような背景で転職されたのでしょうか。
小坂様
私は前職でシステム開発をメインに経験していたのですが、ある時ポジションチェンジでマネジメントの立場になりました。自分がお客様の前に出て何かを作り上げるということがなくなり、本社でパソコンを叩いて、上に言われた予算を達成するためにExcelと格闘するのみの日々が続き、もっと手を動かしたいと思ったのが転職のきっかけです。
DTCには、前職で一緒に仕事をしていたとても信頼の置ける方が先に転職していて、その方に「DTCはこれからシステム導入にも力を入れるから、自分の右腕になってくれ」と声をかけていただき、この人に言われたならチャレンジしてみようと思いました。
梅本
では最後に生井様、お願いいたします。
生井様
私は新卒で通信系の会社に3年間勤め、その後DTCに入社しました。今年で4年目になります。最初はベーススキルをしっかり身に付けたかったので、プールユニットという、特定の部門に属さない組織から始めて、シニアコンサルタントに昇格したタイミングで今の組織に異動してきました。基本的には、橋本さんと同じくSalesforceを活用した地方自治体の住民サービス向上の案件に従事させていただいております。
梅本
生井様は、どのような背景で転職されたのでしょうか。
生井様
私は前職から地方公共団体や自治体のお客様を担当する営業をしていました。しかし、自分のビジネスパーソンとしてのスキルに自信が持てず、もっと社会の役に立てるひとになるには?などと考え、転職を考えるようになりました。
ドキュメンテーションや構想策定などのスキルを身に付けるため、コンサルティング業界を目指したのですが、その中でもDTCは、公共のお客様を専門とするユニットがあること、人材育成が手厚いこと、様々な専門性を持った方と一緒にプロジェクトを進められることの3点が魅力的でした。
実際にご入社されて、その3点はご想像通りでしたか。
生井様
はい。自治体の業務の中身やシステム構築に対する知識が溜まってきています。また、入社後の1カ月研修の他、都度スキルの見直しができる研修プログラムもしっかり提供されていますし、四半期に1回はしっかりパフォーマンスやスキルのフィードバック面談もあって、上司とコミュニケーションを取る機会もすごく充実していると思います。
プロジェクトも、別のユニットの方たちと一緒に、それぞれの知見を活かして取り組むことができ、本当に想像していた通りでしたね。
行政DXにおけるセンターオブエクセレンス
梅本
GPSDチームの概要や、ユニット立ち上げの背景をご紹介いただけますか。
橋本様
当社の公共向け部門には、地方自治体、中央省庁、公共交通などお客さまの分類単位でユニットがあり、私達GPSDチームはデジタルをキーワードに横串で入っているのが特徴です。
昨今、デジタル庁の設立や、自治体システムの標準化、コロナ禍で非接触での行政サービスの需要が高まったりしている中で、我々もデジタル知見の向上がより必要とされています。公共の仕事は非常に特殊なものですから、そうした知見や人材を集積し、いわば、センターオブエクセレンスとして機能することをミッションに、2023年6月に立ち上げました。
梅本
行政DXとデータという2つの観点に立った時、マーケットが抱えている課題をどのように感じていらっしゃいますか。
橋本様
まず行政の観点からお話しすると、先程の非接触社会や、日本の労働生産人口が減少する中でいかに行政サービスを維持していくのか、といったところも課題ですね。加えて、住民の方々が抱える課題も複雑化していると思います。
しかし、貧困家庭や高齢化など、いわゆる行政の縦割りの中で対応していくことが難しい問題も、SalesforceならCRMの仕組みでデータを360度で取得し、質の高い住民サービスを提供できます。人手不足のために職員の負荷を上げるのではなく、むしろ楽にするという形でユーザーフレンドリーな仕組みを作っていかなければならない。複雑化した課題に対して、いかに少ないリソースでやっていくのか、いかに職員や住民が使いやすいインフラを提供するのか。そういったことを構想から導入までアジャイルでダイナックに変革の支援をさせてもらうのが、いまの我々の取り組みです。
梅本
データの観点ではいかがでしょうか。
藤田様
端的に代表的なものを言うと予算ですね。予算って、「去年はこうだったから」、「今年はこれをやりたいから」と1年に1回作る。途中で何か起きても特別予算や調整予算の中で何とか調整する。そうして1年経ったらもう1回って。これ、データを使っていないんですよ、実績を経年でみて、前例に倣うという、使っている風 なだけで。
例えば、災害が起きた時に調整費から予算を取りますけど、本当の意味で今必要なことを今やろうという全体を俯瞰し、先々を見通した動きはできていない。データを流通させて何をしたいかと言うと、今を捕まえて、見えるようにして、そこから何かがわかって、わかったことをもとに決める。決めたならば動く。動いた結果の今を捕まえる。このサイクルを回していきたいのです。日本人はPDCAが大好きだから、1年間のプランという形で予算を作ってしまうけれど、そこから離れて、少しでもスピードを上げていかないといけないし、スピードを上げるお手伝いをすることが絶対的に必要なのです。
民間では予算という一時一括処理から脱却する取り組みがはじまっています。もちろんすべて置き換えるという話ではないですが、そういうことができることを知らない。データを使う意味が集計し、比較するにとどまっている。だから我々がデータでできることやデータを使う意味をもっと知らしめていかないといけないし、それが一番大きな課題ですね。
梅本
わからないことがわかっていない、それが実態ということなのですね。
藤田様
そうですね。実際、オープンデータについても、「うちはデータに取り組んでいる」と回答している公共体は多く、オープンデータを使っていると回答する企業もある。だから自分達はちゃんとやっている。民間も満足していると思っている。実態は数年前の数値が公開されているだけで、公開主体毎にバラバラ。軸や粒度が年毎にバラバラだったりするのですが。
インフラ保全の話で、3カ月前に撮った写真を見て「これは直さないといけないですね」と言って何か月後かの年度予算編成に入れて、着工は3年後ですなどとやっていたら 遅いですよね。これとは逆に、前もって計画して先に直してしまおうという場合も多くて、事故が起こるよりは未然に修繕できてよかったねとする例も多い。 今やればいいことを何年も前からやって、その横で今やらなくてもいいことに お金を使っている。今わかって、今から手を打つというように、時間を考慮にいれ、 合わせられるようになっただけで、俄然効率が上がるし、お金の使い方の効率も上がるのですが。そういうところを如何に実装していくかですね。
梅本
こうした課題感がある中で、小坂様はどのようなテーマでプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか。
小坂様
インフラの話は、まさに私も一緒にやらせていただいています。お客様もこうした課題に気付いてくださっていて、実現するためのプラットフォームやルールを如何に作っていくのか、そういったところに今、取り組んでいます。
一方で、「省庁からのガイドラインを受け、データを見えるようにしたい・データを扱えるようにしたい」と言うご要望をいただくことがありますが、先ほどの話の通り、「課題が見えていないことが課題」の状態となっていると考えられます。データを取り扱える環境があることがデータを利活用しているとは言い切れず、”クライアント自身が何を目指しているのか”に伴走していくことはもちろん、その先にどのようなことが目指せるのか、繋がっていくのか、また、一過性ではなく使われるシステムとするにはどうすればよいのか、などを提言し、形になることを意識しています。
梅本
根本から意識を変えていくお手伝いをされているのですね。
小坂様
そうですね。やはりAIとかキラキラしているところにお客様は目をつけやすいのですが、それをやるための順番とか、そういったところもしっかりお話しさせていただいています。
梅本
生井様はいかがでしょうか。
生井様
子育て支援を主力にしたプロジェクトで、自治体にSalesforceをプラットフォームにしたCRM、つまり住民ポータルのようなものを導入しています。
基本的にカウンターパートになるのは、デジタル化を進めたい、ポータルサイトや住民CRMの管理をしていきたいという主幹の課の方々です。当然、その方々がやりたいだけでは実現できず、具体的に住民の窓口をやられている各所の方とも調整をしていかなければならないので、それを含めて私たちが入って様々な交渉をさせていただいています。
end-to-endのプロセスを着実に作っていくための組織、体制、ケイパビリティがある
梅本
GPSDチームがマーケットから評価されている理由について教えていただけますか。
橋本様
何か仕組みを作っていく際に、前提となるあるべき姿を描き、現状を正しく理解して、それを実際に決められた期限の中で質高く作っていく。end-to-endのプロセスを着実に作っていくための組織、体制、ケイパビリティがあり、軸になっていく組織として我々が位置づけられています。そこは長年、中央省庁・地方自治体向けの調査・アドバイザリー案件をやってきた知見があるからこそですね。
あと、我々はグローバルファームなので、各国のアセットや知見を学習して日本版にアレンジすることもできますし、そういったことも競争力に繋がっていると思います。
あとは、住民の機微な情報を扱っていくことに対してのサイバーセキュリティのケイパビリティも我々のグループにはあります。ユーザーエクスペリエンスを高めていく専門の方もいます。また、監査法人の事務所も日本各所にあるので、それぞれの地域の特徴の把握や強固な地場のリレーションも強みだと思います。
梅本
グローバルを含め、横の連携が強みになっているのですね。
加藤様
日本でいい事例ができたら、他国に展開する取り組みもあります。DTCでの公共向け部門の仕事というと国内のみの仕事と見られがちですが、特にデジタル領域ではどんどんグローバルとの連携が進んでいます。
梅本
データという観点では、御社の強みはどこにあるとお考えですか。
藤田様
日本はData Free Flow with Trustという、世界的に見ても独自路線の戦略を打ち出し データを扱っていこうとしています。 データは自由に流通しよう。でも信頼関係は必要だよねという、バランスを取ったことをやるよと打ち出した。そして今は、それをアジアに広めようとしています。
国をまたがって思想や思考、思惑、その発露としての規制やその時期といった情報 をやり取りするのはなかなか大変なのですが、我々はグローバルに情報を集めてくることもできますし、実際にそれぞれがやっていることでかち合わないように、もしくは戦ってきちんとあるところに落としていくこともできるので、そこがお客様からは評価されていると思っています。
「何をする」を定めたならば、必然的に「どうする」という手段をもって実現し、運用していく中で次の問題、課題の発見、解決に繫がっていく。必ず実現、実働する。動かしたことによって出てくる新しい問題、課題に対してきちんと対応していく。ただ絵を描くのではなく、よりよいものにしていく。時にはこれまでの澱を一掃する新しい絵も描く。これらの サイクルを早く回せることが、我々が選ばれる大きな理由です。
梅本
国家戦略、国それぞれの違いという話がありましたが、自治体というよりは中央省庁向けに仕掛けていくこともあるのでしょうか。
藤田様
そうですね。私も中央省庁とお話しさせていただいていますし、これは魅力の一つでもあると思います。
ニュースを見て、「何やっているんだよ」で終わるのではなくて、「こうすればいいのに」と考えるのがコンサルタントの提案の原動力ですよね。その「こうすればいいのに」を持ってきたら、DTCでは誰かが「あぁ、そうだね。できそうだから考えてみようか」と言ってくれる。それが我々の良いところだと思います。思い付きを否定することは絶対にありません。
「なぜ今そうなっているのか」を理解した上で、新しいことに挑戦する原動力が必要
梅本
求める人物像についてお聞かせください。
橋本様
ご経験的には、デジタルテクノロジーを使った行政業務変革の経験をお持ちの行政職員の方や、もしくは行政をお客様にされていた方はご活躍いただけると思います。
私自身としては、様々な社会的な不条理、不合理を自分事として考え、それを案件化していく企画力と粘り強さを持っている方に来てほしいですね。新しいテクノロジーを使って課題を解決することにワクワクできる方と、是非一緒に働きたいなと思っています。
藤田様
私はやっぱり、「こうすればいいのに」と常に思っている方に来ていただきたいですね。コンサルタントの提案の源泉、モチベーションの原動力を持っていることが第一。
もう1つは、とにかく何かをやってみた、乗り越えてみたという経験のある方。壁にぶつかりながら達成したというプロセスを1度でも踏んだことのある方に来ていただきたいですし、口だけでなく、実際に取り組む力のある方をお待ちしています。
ただ、何でもかんでも新しくすればいいわけじゃなくて、うまくいっていることは変えてはいけませんし、なぜ今そうなっているのかという歴史を知っていることを大前提に、議論した上で変える必要があります。教科書的な あるべき でも、成り行きの あるがまま でもなく、また、理想的すぎる ありたき姿でもない。ありたい様を探っていく、 そうしたプロセスをきちんと踏まなければなりません。特に公共はそれが強いので、そういう意識がちゃんとある方でないと厳しいですね。
梅本
最後に、GPSDチームに興味をお持ちの方に向けてメッセージをお願いします。
生井様
今の社会や環境を変えることは、すごくパワーがいることだと思います。ただ、ちょっとでも変えたいとか、やりたいことがあれば、その時にチャレンジしないと、どんどんできなくなってしまうとも思います。もし我々の取り組みに興味を持っているのなら、チャレンジしていただけると嬉しいです。
小坂様
今、若い方と一緒に仕事をしていると、社会アジェンダや社会課題の解決に興味を持たれている方が多いと感じます。今の時代は、そうした課題解決のためにデジタルという武器が必要不可欠であり、その武器をワクワクした気持ちで取り扱える方に、是非来ていただきたいです。
橋本様
GPSDチームは幅広くトライしていただける環境が整っています。例えば、グローバルはもちろん、コロナ禍における陽性者の管理やその他の大規模なオペレーションの垂直立ち上げなど、我々の会社じゃないとできないことです。生井さんがやっている地方自治体のアプリもそうですが、日本の大きな社会課題や不便に対して、我々はグループを上げて取り組んでいます。こうした、やりがいと社会的意義のある仕事に興味のある方に是非来てほしいですね。
藤田様
一緒に新しい組織を組み上げていける方を心から求めています。我々は、新しい技術、新しい考え方を持っている新しい組織です。相手にすべき問題は大きく、多様 ですが、一緒に新しいサービス、新しい仕事を作っていくぞ、という気持ちを持ってくれる方に、是非チャレンジしていただきたいです。