関西クライアントに根差したサービスを展開するデロイト トーマツ コンサルティング合同会社関西拠点。戦略策定等の上流案件に強みを持つ一方で、関西にはIoT/Digitalと組み合わせやすいセンサー/デバイスを製品・サービスとして扱っているクライアントが多く、直近では「デジタル系新規事業の構想策定」など、同領域のプロジェクトも増えています。
そこで今回は、同社関西拠点の統括パートナー 田中昭二様より、組織の概要や、関西クライアントの特徴、また直近のマーケット状況や求める人物像の変化などについてお聞きしました。
デロイト トーマツ コンサルティング関西拠点統括パートナー
田中様のご経歴と、組織の概要
洲脇
これまでの田中様のご経歴をお伺いします。
田中様
理系大学院を卒業し、新卒ではメーカーの研究所でエンジニアをしておりました。
3年半ほど勤めた後、外資系コンサルティング会社で10年、現職に移って10年で今に至ります。
洲脇
なぜエンジニアからコンサルタントにキャリアチェンジされたのでしょうか。
田中様
経営と研究に壁を感じたことがきっかけです。
メーカーで研究していた当時、技術重視に寄りすぎた部署で、アカデミックに技術を追求できる環境である一方、技術をビジネスと紐づけて考えられていませんでした。研究発表の最後にとってつけたように「我々の研究はビジネスのこういうところに役立つ」と締めくくっても、技術が作りたいものを作る為に現場からは受け入れられない。研究したものが活用されない。そのようなことが続く中で、「私のやっていることは会社の役に立っていない」という挫折感を募らせました。
そういったタイミングで、経営に直接役立てる「コンサルティング」という仕事を知り、チャレンジしました。
洲脇
前職ではどのようなプロジェクトを経験されたのでしょうか。
田中様
入社して4~5年は、戦略案件もあれば経理のBPRもあり、IT導入のPMOもありました。
未経験で入社した分、どんなプロジェクトもとにかくチャレンジしなければと思っていました。
その後は何かしらの専門性を持たなければいけないため、当時最も関心があったサプライチェーンを中心にキャリアを積んでいます。
洲脇
サプライチェーンに惹かれたポイントはどのようなところでしょうか。
田中様
効果が目に見えてわかることです。在庫削減やリードタイムの短縮、納期遵守率の向上等、目標に対して我々がアイディアを出し、その効果=クライアントへの貢献がわかりやすいことが一番面白いです。
洲脇
その後、現職に転職されています。なぜデロイト トーマツ コンサルティング(デロイト)様だったのでしょうか。
田中様
一番の理由は、大阪へのコミットメントの強さです。
当時、他のファームの大阪事務所の選択肢もありましたが、東京組織の出先機関・営業拠点のような位置づけのところばかりでした。東京と関西とではマーケット感が異なる部分も大きいので、東京からの指示待ち・お伺いでは最適な価値提供が難しいです。
そのような中、大阪ですべてを完結させても良いと権限を与えてくれるのはデロイトだけでした。 また、グループとして監査・FAS・TAXとすべてのケイパビリティで一定以上のものを保有し、本当の意味でワンストップで経営者の悩みに向き合える体制だったことも大きかったです。
洲脇
御社の関西拠点のミッションを教えてください。
田中様
一番はクライアントフェイシングです。
コンサルティングファームの組織は、インダストリー軸とオファリング軸で分けられますが、弊社関西拠点はインダストリー的な意味合いが強いです。
デロイトにはグローバル全体で重要クライアントとさせて頂いている企業様がおり、関西にも何社もいらっしゃいます。そういったクライアント含め、クライアントと長くお付き合いをさせて頂き、しっかりと価値提供をしていくことが最大のミッションです。
洲脇
クライアントと長くお付き合いする、についてもう少し詳しくお聞かせください。
田中様
弊社の特徴として、一度コミットしたお客様とは、長いお付き合いをさせていただいています。「長いお付き合い」というのは、大きな仕事を頂くときだけでなく、仕事がないときも、ということです。
ビジネスなので大きな仕事を頂けるクライアントを優先するのは正しい意思決定だと思いますが、ビジネス環境が日々変化する中ですと、深く長くお付き合いをするからこそ提供できる価値もあると考えています。
また、数百万円で請け負ったプロジェクトが、結果そのクライアントの今後の大きな方向性を決めるようなプロジェクトのインプットになるケースもあります。金額の大小よりも、プロジェクトの意義、将来的な貢献度の方がよほど大切です。
田中昭二様
クライアントはグローバルシェア1、2位のトップランナー、「「金額に見合う価値は何なのか」とシビアに問われる」
洲脇
関西のクライアントの特徴はありますか。
田中様
ご支援しているクライアントをみると、業界の中でグローバルシェア1位や2位、もしくは特定製品はグローバルシェア1位など、トップランナーのクライアントが多いです。
それ故にチャレンジングな取り組みを志向されるクライアントが多いと思います。
国内ではなく、最初からグローバルへのベンチマークや戦略立案をされております。
洲脇
最近相談が多いテーマはありますか。
田中様
デジタルトランスフォメーションに関するご相談は多いです。
デジタルを活用した新規ビジネス立案もあれば、オペレーション変革など、幅広くご相談頂きます。
十把一絡げにはできませんが、感覚的に関西のクライアントの方が新しい取り組みに積極的な印象があります。その分、コンサルタントとして提案し甲斐があると思います。
洲脇
デジタルの観点だと、PoCで終わってしまい価値創造につながらない、という声をよく聞きます。
田中様
関西のクライアントは結果へのこだわりが非常に強いです。我々が頂くフィーに対しても、「金額に見合う価値は何なのか」とシビアに問われます。
ただ、納得したものには攻めの投資を厭いません。
数億円かけてAIを活用した実証実験を進めた事例もありますが、実証実験だけでは絶対に終わらせない。結果を出そうとする執念といいますか、意気込みが非常に強いです。
洲脇
御社のコンサルティングの特徴を教えてください。
田中様
戦略から会社全体のあるべき姿を描くことは大切にしています。
ビジネス的にはBPRの領域で2億、3億の案件に注力した方が会社として大きくなりやすいのですが、数百万円、数千万円の仕事でも絶対にやり続ける。実行の一部分を強化しすぎるとクライアント全体として歪みが生じてしまう可能性もあります。CxOクラスの悩みに向き合い、会社全体の最適図を描いた上で実行まで落とし込むことを重視しています。
洲脇
デジタルの観点ですと、テクノロジーベンダーの方がクイックに対応できるイメージがあります。
田中様
テクノロジーベンダーですと、どうしても自社製品を売ることが前提になってしまいます。
弊社は、あくまでも「経営コンサルタント」です。
クライアントの経営課題に寄り添うというスタンスを徹底しているため、決まった製品・売り物を売りに行くということはやりません。
「やり切る」ことがクライアントから求められている。今後は、得意分野の戦略だけでなくEnd to End で支援できる体制を目指す
洲脇
今後の方向性について、お考えをお聞かせください。
田中様
よりEnd to Endでクライアントをご支援できる体制を目指しています。
クライアントからテクノロジー面も求められるケースが増えてきており、「デロイトに最後までお任せしたい」と明確に言われるようになりました。
これは、関西だけでなく会社全体として目指すところです。
洲脇
これまでは、大まかに戦略~BPR~IT戦略を御社が担当し、その先はSIerが担当するイメージでした。
なぜそのような変化が出てきているのでしょうか。
田中様
デジタルトランスフォメーションの拡大により、テクノロジーと経営の距離が非常に近くなったことは大きな要素だと思います。
デジタルの推進はアジャイル型で推進していく分、戦略を理解したテクノロジー構築、テクノロジーを理解した戦略立案が不可欠です。これまでは戦略が得意領域だったので、テクノロジー面もご支援できるようにするのが、弊社のこれからのチャレンジです。
洲脇
今後のコンサルティングビジネスそのものも変わっていきそうですね。
田中様
コンサルティングファームとしてもコンサルタントとしても、より「やり切る」ことが求められていくと思います。
計画だけ立てて終わり、というコンサルティングはなくなり、結果が出るまで付き合っていく。
洲脇
将来求められるコンサルタント像はどのように変わりますか。
田中様
コンサルタント個人としてクライアントから求められる「人間力」や「総合力」が求められる気がしています。ある意味、クライアント課題の解決のトータルプロデュースを、個人がよりクイックにしていく必要があります。
それほどまでにビジネスのスピード感は早まっているのです。
一方、だからこそ明確な専門性をもつエッジが効いた人財も輝きを増していきます。
プロデュース力を持つ人材と専門性を持つ人材、両方が求められていくと思います。
「今までの関西拠点ではジェネラリストを求めていたが、今後はテクノロジー領域のスペシャリストを積極的に採用していく」
洲脇
どのような方に御社に来てほしいですか。
田中様
様々なご経歴の方に来て頂きたいですが、特にテクノロジーの知見を持つ方を求めています。
先ほど申し上げた通りEnd to Endのサービスを提供する上で、戦略からオペレーション改革、テクノロジーとなった時に、最もクライアントが求めているのはテクノロジーの領域になります。
ITやデジタルといった知見を持つ方を今後は積極的に受け入れていかなければいけません。
洲脇
御社の関西オフィスは特にジェネラルなコンサルタントになることを求められている印象でした。今後は少し変わっていきそうですね。
田中様
そうです。
例えば、「AIについて知見をもっていて、今後もそこに特化してやっていきたい」という方に対して、これまでは「それ以外もやりたくないですか?」という面接をしていました。
今後は「是非経験を活かして頂きたい」という面接をして、間口を広げていきます。
洲脇
スキル以外だと、選考ではどのような観点で面接をされるのでしょうか。
田中様
デロイトに入って頂く以上は、少なくても10年、もしくは定年まで頑張ってもらいたいという気持ちはあります。
ですので、自分が10年、20年責任をもって面倒を見られるかという覚悟を持って面接をしています。
洲脇
ある意味転職が当たり前なコンサル業界では、長い時間軸ですね。
御社の「長くクライアントと付き合う」という姿勢がベースになっているからでしょうか。
田中様
それもあります。
加えて、ご自身のキャリアの志向性があったとしても、デロイトはそれを受け止められる組織ですので、長く続けられる環境は用意できていると思っております。
育児・介護を含めたライフプランニング面ももちろん、グループ法人間の異動や事業会社への出向を含めた多様なキャリアパスも提供してきています。会社としても私としても、本当の意味でのダイバーシティに力を入れています。
候補者へのメッセージ
洲脇
田中様にとっての、コンサルティングの面白さを教えてください。
田中様
クライアントの顔が見えることが一番楽しいです。
今は拠点のリーダーという立場ではありますが、一日に少なくとも一つのクライアント先には絶対に行くようにしています。
行けば役員の方はもちろん、そうでない方にもお会いしてお話させて頂きます。
現行のプロジェクト状況だけでなく、それ以外のお悩み含めてお伺いできることがとても楽しい。
正直、「それを私に言われても・・・」というケースもありますが、ある意味それは究極の関係性だと思います。そういったお付き合いを目指していますし、大切にしていきたいです。
洲脇
最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
田中様
一緒に関西を盛り上げていきましょう。
デロイト トーマツ コンサルティングは働く皆さんにとって、最高の場であると信じています。
関西のクライアントのために、そして皆さんの成長のために、ともに切磋琢磨できることを楽しみにしています。