今回は、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC) デジタルガバナンス&マネジメント(以下、DGM)チームにおいて、データプラットフォームの構想策定や、AI/MLを活用したビジネス・オペレーション変革、システム構想策定などの支援を行うチームへのインタビュー。同チームをリードする藤田様に、チームの役割や強み、向かい合うマーケットの状況や、コラボレーションに関する取り組みなどについてお聞きしました。
デジタル戦略策定から業務変革まで一気通貫で伴走し、DXの効果を最大化する
堀場
前回のインタビューで、川勝様よりDGMチームの概要についてお話を伺いました。今回はDGMチームのサービスである、デジタルガバナンス構築とDXプロジェクト推進のうち、DXプロジェクト推進を担うチームをリードされる藤田様にお話を伺います。まず、藤田様が率いるチームについてお話しいただけますか。
藤田様
私どものチームは、DXプロジェクト推進におけるシステム導入や、そのためのビジネス、オペレーション変革の実行支援を担っています。DXプロジェクト推進におけるガバナンス面はDGM内の別のチームが担っています。
堀場
前回のインタビューで、川勝様から「デジタルガバナンスの構築に関しては、管理のための管理に陥らないように同時並行的に進めていくことが肝要」というお話を伺いました。藤田様としても、互いの成果をフィードバックしながら進めていくことは重要だとお考えでしょうか。
藤田様
まさにその通りです。実際、組織の戦略やルールといったデジタルガバナンスを構築するにあたり、システム導入やオペレーション変革など、それぞれのフェーズで期待値を最大化しなければ価値は出ません。そこで、一気通貫でプロジェクトの伴走支援をし、効果を最大化するのが私どもの役割です。
AIやMLを活用し、システム導入が及ぼすビジネス面での「投資効果」にまで目を向ける
堀場
具体的な仕事内容をお聞かせください。
藤田様
一番多いのが、システム化構想です。まずは、デジタル戦略を具体的にどうシステム化、デジタル化するかといった構想をつくります。それに加え、その先のシステム導入にあたっての要件を定義します。システム化構想をつくる上で重視しているのは投資効果です。システムを入れると、オペレーションやビジネスそのものを変革する必要性が生まれます。そのため、私どもは役員やプロジェクトオーナーとよく話をして、経営アジェンダをシステム構想に落とし込むことに力を入れています。
堀場
システム化構想や要件定義以前に、ビジネス変革から入っていくということでしょうか。
藤田様
はい。そちらがメインです。そのためにさまざまなシステム、テクノロジーがあるので、どんな効果を出したいのか、この投資で何を実現したいのかという根本的なところから、役員の方々も含めて膝詰めで考えます。
堀場
その後に、システム化構想の策定から機能要件・非機能要件の整理、RFP(提案依頼書)の策定に移っていくということでしょうか。
藤田様
その通りです。目指す方向性に対して足元がどうなっているかという課題をGAPとして整理した上で、取り組むべきことを抽出していくことが、RFPにつながります。
堀場
AIやMLなどの最新技術を活用したコンサルティングも実施していますか。
藤田様
クライアントの新しい要求事項を整理する中で、AIに答えを出させることもありますし、MLを活用して統計的に最適解を出すこともあります。
これまでにもAIによる需要予測の技術はありましたが、精度が高まってきています。そのため、AIを使ってサービス需要を分析し、ビジネス変革につなげていくことが往々にしてあります。最近は生成AIも活用しています。
堀場
システム開発のプロジェクト以降、具体的にどういった伴走支援をしていますか。
藤田様
前提として、私どもはシステムを開発し納品するということはほぼ行っていません。クライアントの立場としてプロジェクト伴走します。ベンダーを選定した後に要件定義の品質向上のための支援をしたり、設計書をクライアントと共にチェックしたりします。そして、ベンダーが開発している工程で、ベンダーのシステム開発品質そのものをチェックします。
なぜそれが可能かと言うと、最初の構想策定、要件定義から伴走しているので、どうあるべきか、システムがどう動かなければならないのかを、すべて知っているからです。開発の品質を上げるための点検や助言、ユーザーテストの計画や実行支援、システム移行計画やリハーサル、本番移行支援まで、すべてのシステム開発ライフサイクルに対応しています。
堀場
大規模なシステムインプリではなく、少人数のプロジェクトが多いのでしょうか。
藤田様
5人程度で取り組むケースが多いです。ベンダーがいる中に私どもが入るので、多くても10人くらいですね。
堀場
昨今、データの利活用も重視されています。データプラットフォームの最適化の支援はどのように行っていますか。
藤田様
システム化構想をつくる中では、システムだけでなく、データ利活用の話ももちろん出てきます。実際にはクライアントがデータを完璧に活用できているケースは珍しく、そういった場合は、データを分析するためのツール導入を支援するケースもあれば、投資予算に見合ったデータ基盤を0からつくるための構想策定を支援するケースもあります。
データを蓄積した後の利活用に一定の方向性を付けるため、まずBIツールやAIにデータを蓄積させ、学習させて示唆を出していく支援もしています。また、システムに蓄積されたデータを活用し、生産性や効率性の向上、経営管理上の評価指標の改善等のデータ分析支援もしています。
ミドルマーケットの「経営と足元のシステムにギャップ」がある会社がメインクライアント
堀場
どのようなクライアントをターゲットとしていますか。
藤田様
私どもは少人数でクライアントの全体像を把握し、全社のビジネスを変革するサービスを提供していることもあり、メインターゲットは売上1000億円程度の会社です。レガシーシステムを刷新できていない、手作業でデータを加工分析している等、デジタイゼーション着手~デジタライゼーション未完了の状態から脱却できていない、デジタルトランスフォーメーションに対して距離感がある状態のクライアントを対象としています。
堀場
なぜ売上1000億円程度の会社をターゲットにしているのですか。
藤田様
売上1000億円程度の会社は、一定の成長率を保っている一方で、経営と足元のオペレーションやシステムにギャップがあるケースが多く、そういったフェーズにわれわれの伴走支援型コンサルのニーズがあると感じているためです。
堀場
そういった規模の会社においてDXが進まない背景や、ネックになっている要因は何でしょうか。
藤田様
2つあります。システム部門やデジタル部門は、経営層からデジタルを活用してビジネスに貢献するように言われますが、急速なDXの波に追い付けず、保守・運用に対応できるケイパビリティしかまだ持ち合わせていないことが理由の1つです。
もう1つは、先ほどの理由にも関連しますが、「データ活用」のケイパビリティやリソースの欠如で、組織としてデータは持っていても、それを連動させて活用できる人がいないことや、そもそもデータ活用の文化がないことが挙げられます。
堀場
日本の99%の企業が中小企業ですから、ミドルマーケットのDX支援は日本の社会課題の解決に通ずると思いますが、その点はどのように考えていますか。
藤田様
「自分たちだけではDXができない」という会社もあり、その中核としてサポートすることは社会貢献度が高いと思っています。
堀場
一定の成長率を保ちながら、これからDXを本格的に進めていこうという会社に対する伴走支援は、候補者様にとってわくわくしますね。具体的に、クライアントからはどのような悩みが寄せられているのでしょうか。
藤田様
一番多いのは「システムを刷新したいけれど、なかなか変えられない。結果的にデータの活用ができない」といったデータ活用を目的にしたご相談です。その他には、「デジタル技術を活用してビジネスを変革したいので、戦略フェーズから考えてほしい」といった戦略策定に関する依頼もあります。DXを自社で進めていたもののうまくいかず、途中から私どもが伴走支援するケースもありますが、基本的にはデジタルを踏まえた戦略策定といった上流から支援に入るケースが多いです。
堀場
カウンターパートはどういったところが多いのでしょうか。
藤田様
CIOやシステム部門から「システム刷新を手伝ってほしい」とシステム起点の依頼をいただくケースもありますが、今は事業部の役員から「デジタル推進を行い、ビジネスの変革をしたい。ただ、今は状態を把握できないからデータの分析から行ってほしい」といった観点での依頼が多いです。
ストラテジー、リスク、パブリックなどさまざまなチームと緊密に連携し、ともにデリバリーを行う
堀場
御社にはコラボレーションの文化が根付いていると伺っています。DGMチーム内の他チームとの間では、どういった連携があるのでしょうか。
藤田様
旧態依然のシステムを採用しているのでDX推進プロジェクトがうまくいかないというケースがあります。そうしたときにDX推進リスク管理サービスのチームと連携し、システム部門のケイパビリティを高め、最新のデジタル技術を活用できる基盤づくりの支援をしています。
クライアントの経営戦略とデジタルがうまくひもづいていない場合や、システムを活用しないといけないプロジェクトだが、そもそも会社として新しいシステムに抵抗感があるという場合は、組織のケイパビリティを高めるチームと連携することもあります。
堀場
他の部門との連携は何かありますか。
藤田様
ストラテジー、リスク、パブリックの部門とも連携することが多いです。AIを活用したコンサルティングの場合、クライアントのAIモデルをつくり、実際にどのようなシミュレーターが必要なのか、どのような計算方法が適切なのか、といったことをEYの中にいるAIのプロフェッショナルと一緒に分析しています。
堀場
セクター部門とはどういった形で連携されているのでしょうか。
藤田様
さまざまなケースがありますが、セクターが持っているクライアントの課題が見えてきたときに、一緒に解決していくケースが多いです。最初のきっかけとしてはセクターとつながりのあるクライアントであっても、私どものチームと一緒に提案するケースもあります。セクターと協力してデリバリーするケースもあります。
また、セクターだけではなく、EYグループの監査法人、税理士法人との連携もしますし、監査法人のアドバイザリー部門と共に会計周辺のコンサルティングを一緒にすることもあります。監査法人のクライアントから声がかかり、支援に入ることも多いです 。
システム開発経験がある方、コラボレーションカルチャーに共鳴する方を歓迎
堀場
チームに参画すると、どういった経験ができるのでしょうか。
藤田様
営業、販売、生産、会計等ビジネスの第一線を改革する支援に取り組んでいるので、システムを専門としている人であればご自身が経験していない領域の経験も積めます。生産や販売といった基幹業務にも携われます。経営層と話し合う機会も多いので、経営感覚を得られるチャンスもあります。
堀場
若手クラスからクライアントの意思決定権者と議論できるのは良い経験になりますね。最後に、藤田様のご担当のチームで求めている人材像について、スキル、志向の2つに分けて伺いたいと思います。まずスキルはいかがでしょうか。
藤田様
基本スキルとしては、システム開発や、システム開発プロジェクトでマネジメントをした経験が必要です。それをベースに、システム開発の要件定義から、ベンダーの精査もできると望ましいです。
その上で、データ分析やデータ活用といったビジネスサイドの要求に応えるソリューションを構想してきた方は特にフィットすると思います。さらにAIに関する経験を積んでいる方だとうれしいですね。
あとは、営業や会計、販売、製造といった基幹業務のシステム開発に携わっている方に来てほしいと思っています。プラスアルファで、専門的なケイパビリティを持っているとより良いですね。
志向は、私どものパーパス(存在意義)「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」に共感していただける方に来ていただきたいです。パーパスをかみ砕くと、私どものデリバリーによってクライアントのビジネスを成長させ、社会に貢献するということです。
そして、私どもはコラボレーションを重視しています。コンサルティングだけでなく、監査法人や税理士法人を含めてチャット1本で情報が集まります。私どもには、売上の取り合いとか縦割りといった概念は一切ありません。コラボレーションカルチャーに共鳴する方に来ていただきたいと思います。