EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC)でITリスク管理やガバナンス支援、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する支援業務を担うエンタープライズリスク部門を訪問。デジタルガバナンスのリーダーを務める川勝健司様に、DXの成否を分けるデジタルガバナンスの重要性とその構築支援の醍醐味、EYならではのチームの魅力、そして求める人材像についてお聞きしました。
自身のパフォーマンスを最大限に発揮できる場所へ
堀場
川勝さんは事業会社とコンサルティングファームの両方をご経験されていますね。これまでの簡単なご経歴をお願いいたします。
川勝様
事業会社には6年ほどおりました。大学を出て製造業に就職し、システムエンジニアとして会計・生産管理などの基幹システムを担当しまして、設計・開発・運用・保守といった業務をひととおり経験しました。EYにジョインする前のコンサルティングファームでは2社通算で16年ほど在籍しましたが、様々な業種のお客様に対してITガバナンス、ITリスクマネジメント、あるいはサイバーセキュリティなどテクノロジーリスクに関するサービスを提供してきました。
堀場
他のファームからEYに転職された理由をお聞きしてよろしいでしょうか。
川勝様
主に2つあります。1つは、担当していた業務領域に限界があったこと。前職では銀行や保険・証券などの金融分野のお客様が中心でしたので、まず業種が限られていました。一方で、私の強みはITガバナンス・ITリスクですので、サービス面でも範囲が限られていました。私としては、業種の壁やサービスの枠を超えて、自分の持てるパフォーマンスをもっとフルに生かせる場所があるのではないかと、ジレンマを感じていた部分がありました。
もう1つは、所属していたリスクアドバイザリーの部門が別会社として独立していたこともあり、ビジネスコンサルティングの部門や監査法人との連携がしづらいといいますか、法人間の壁のようなものが感じられました。最近のコンサルティングサービスは、領域の垣根を越えた連携がとても重要です。このことを考えると、法人やサービスライン間の壁は課題として感じていました。
堀場
そうしたお悩みは今、御社の中では解消されていますか?
川勝様
そうですね、EYSCで働くことの利点はまさに、前述の2つの課題の裏返しといっていいでしょう。現在の私のポジションでは、様々な業種のお客様に対して自分自身のITやデジタルの知見・経験を使ったアドバイザリーを提供できるので、常に新しい発見に出会えます。知的好奇心を触発してもらえる環境はうれしいですね。
また、EYSCにはビジネスコンサルティングやテクノロジーコンサルティングといったコンサルティング部門と並列して、M&Aなどを担当するSaT(ストラテジー・アンド・トランザクション)部門、さらに業界別のセクターや、社会課題専門チームなどのクロスセクター部門もありますから、横の連携が極めてスムーズに行われています。
もっとも、業種が異なれば、当然のように抱えている課題も異なりますし、組織の成り立ちやガバナンスの方法もまったく違ってきます。コンサルタントとして幅広く業種を横断できる面白みが得られる一方、あらゆる方面に常にアンテナを張らなければならない厳しさもあって気が抜けません。そこがまた、チャレンジングな魅力でもありますね。
「成功するDX」を担うデジタルガバナンスの最前線
堀場
川勝さんが所属されている「エンタープライズリスク-デジタルガバナンス」チームについてご紹介ください。
川勝様
企業・団体様におけるデジタルガバナンスの構築をご支援することが、私たちのミッションです。デジタルガバナンスというのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導くために欠かせないケイパビリティを備えることをいいます。
少子高齢化に伴い変貌する市場や社会への対応、生産性の見直し、あるいはコロナ禍によって加速する非対面化・無人化の必要性など、そういった状況下でデジタルによる組織変革・事業変革が企業や自治体にとって喫緊の課題となっていることは周知のとおりです。しかしながら、その波にうまく乗れている事業体は多くありません。現状でDXに係る十分な成果を享受していると言われる企業は1~2割程度と言われています。
では、なぜDXが進まないのか。その主な阻害要因としては、人材不足や硬直化した組織体制、IT環境の未整備、制度や方法論の不備などが挙げられます。私たちの使命は、お客様に対してそうした要因を一つひとつ検証して取り除き、DXに必要なスキルや能力を備えるためのサポートを提供することにあります。
単なるIT環境の導入コンサルではありません。DXの成否には組織の文化や成り立ち、経営陣の認識、管理体制などが色濃く関係しますから、お客様のガバナンス全体をよく理解したうえで成功要因を探る必要があります。したがって、デジタルガバナンスだけでなく、コーポレートガバナンスにも踏み込んだコンサルティングを行うこと、それも私たちEYの特長、強みといえるところだと思っています。
堀場
そうしたサービスを提供される中でも、最近のプロジェクトに顕著な特色、傾向といったものはあるのでしょうか。
川勝様
戦略や意思決定に客観的データを利活用する経営、いわゆるデータドリブン経営に関する案件はこのところ大きく伸びてきています。データは「21世紀の石油」などといわれるように、自社内外のさまざまなデータを取得し、統合したり分析したりしながら新しい価値を見いだす作業の重要性が非常に高まっています。AIに代表される先端技術の導入もあるでしょう。それらを踏まえて、単にITを活用した業務効率化というのではない、戦略的な取り組みに支援を求められるケースが増えています。
そのためには、データの管理体制をどう構築するかが大きな課題となります。また、データの集中化と分散化のバランスをどう考えるかも重要です。以前であれば、データはIT部門などで集中的に管理するのが定石でしたが、最近では現場部門にコントロールの権限を分散し、顧客により近いところで迅速かつ的確に分析判断する流れになりつつあります。最近は、そうした組織横断的なデータ利活用を目的とした、データの配置や権限を含む品質管理のあり方をサポートするような案件が増えてきています。そのためにはデータベースやデータウェアハウス等技術的な知識はもとより、各種規制・レギュレーションの知識、そしてデータマネジメントに係る責任をどのように組織の役割に紐付けるのかという「ガバナンス」の知見が求められます。
領域を超え、サービスを超えてコネクトする力
堀場
チームの雰囲気、御社のカルチャーといったところはいかがでしょうか。
川勝様
グローバルも含めてEY全体にいえることですが、チーム同士、ユニット同士の横の連携が極めてスムーズで、非常にコネクトが強い組織であると感じます。具体的に申し上げると、1つには業界ごとに分かれているセクターユニットと、私たちのようにコンピテンシーごとに組織されているサービスユニットとの連携があります。お客様のニーズや潜在的な課題を引き出すことがセクターの役割とすれば、それに対して適切なサービスデリバリーを行うことが私たちの役目です。ここがうまくつながらなければ、プロジェクトは実効性を失います。
もう1つは、サービスライン間における連携です。デジタル化はIT部門だけで対処できる課題ではありません。ITと経理、ITとコンプライアンス、ITとマーケティングというように、社内のさまざまな部署や機能と結びつけ、それらを一体化して取り組まなければトランスフォーメーションは実現しません。そうであれば、それをご支援する私たち自身にこそ、領域横断的な動きが求められるのだと考えています。
そうしたコラボレーションを実効性のあるものにしている土台として、EYが掲げる世界共通のパーパス(存在意義)を各人が共有していることは、非常に大きな意味があります。Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)。自分のため、隣人のため、多くの人たちのために世の中をもっと良いものにしていきたい。そういう意識が、メンバー一人ひとりの奥底に染みこんでいるからこそ、どんなときでも強くつながれるのだと思います。
堀場
コラボレーションが盛んな組織であれば、多様な方々が活躍されているのでしょうね。チームメンバーのバックグラウンドについて教えてください。
川勝様
職域ごとにそれぞれ特色があります。例えば、マネージャーやシニアマネージャーなどの管理職クラスですと、他のコンサルファームから移ってきたケースが多いですね。コンサルタントとしての経験はもとより、お客様とのコミュニケーションやサービスデリバリーの方法論に関して、安心感、信頼感が求められるからです。
一方、コンサルタントやシニアコンサルタントになると、コンサル未経験の人も大勢いますし、最近では増えている傾向にあります。SIer出身者も多いですね。そうしたメンバーは、基幹システムやBI(ビジネスインテリジェンス)、データレイクなどの企画・構築・運用・保守に携わった経験を軸に、デジタル戦略やDXの方法論を肉付けしてくれていると思っています。
いずれにしましても、ファームやSIerの出身であれば、お客様と伴走しながらシステム構築を成し遂げた、あるいはDXを構想したような経験、事業会社の出身であれば、当事者として現場でDXを推進した経験、そうしたものが生かされる職場であることは間違いありません。
EYとテクノロジーの未来をひらくプロフェッショナル
堀場
一緒に働く方に求めるスキルや資質についてはいかがでしょうか。
川勝様
先ほどのお話と関連しますが、IT・デジタルに関するなんらかのバッググラウンドはあったほうが望ましいですが、それが条件ということではありません。むしろパーソナルな姿勢として、どのような作業であれプロジェクトであれ、いったん関わったからには自分事化する、我が事として考えられる方を重視したいと思っています。
例えば、シニアコンサルタントやコンサルタントの立場でマネージャーから指示を受けて動くような場合であっても、自分自身のポリシーや判断基準がなければいい成果を上げることはできないと思います。
特に事業会社から移ってこられる方にはいつも申し上げているのですが、コンサルティング業界の職域というのは一応、階層構造にはなっているものの、他の業界に比べてより個人が立っているところがあります。つまり、一人ひとりがプロフェッショナルとして自立して動くことを求められ、またそれが尊重される環境にあります。その反面、自分の身は自分で守る、自分の仕事に対しては最後まで自分が責任を持つ、そうした意識を持たなければなりません。
堀場
では最後に、採用候補者へのメッセージをこめて、デジタルガバナンスという領域で働くことの魅力についてお聞かせください。
川勝様
私たちはデジタルガバナンスを軸として、多種多様な業界・業種をまたぎ、さまざまなお客様に対して価値を提供するチームであり続けたいと考えています。どのような分野においてもデジタルの果たす役割が増している今、業界や部門を隔てる壁は低くなりつつあり、サービスの種類を区別する境界線も薄くなってきています。
そうした中で、私たちEYのように領域横断的に業務を提供することができるチームの存在価値は、これからますます高まってくることと思います。お客様に対しても、組織の中においても、コネクトすることの重要性を意識し、楽しむことができる方々にとって、ここは非常に魅力的な場所であると自信を持って申し上げます。
また、日本におけるEYの歴史はまだ浅く、会社としてもチームとしても今が拡大成長の真っ只中にあります。デジタルガバナンスという成長分野においても、優秀な人員を拡充し、戦略・計画・実行・評価の各方面でよりいっそうサービスの力を強化していきます。ぜひ一緒に、そのプロセスを楽しみましょう。