今回は、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社でCFO/経理財務部門向けコンサルティングを提供しているファイナンスユニットへのインタビュー。
コロナ禍で顕在化した不確実で複雑で曖昧な世界の変動を背景に、企業ファイナンスにおいても「長期的価値」の視点が求められています。真に経営戦略に寄与する財務会計を目指してCFOのプレゼンス向上を訴える田中雅史様に、同社ファイナンスユニットの強みと魅力、求める人材像などについて伺いました。
※本インタビューは2021年12月時点の内容です
田中様の経歴——社会課題に立ち向かう姿勢に共鳴してEYへ
堀場
田中さんは会計コンサルティングの専門家でいらっしゃいますが、キャリアの出発点はコンピューター業界と伺っています。これまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。
田中様
新卒で外資系のコンピューターメーカーに入社しまして、データベース関連のエンジニアとして情報システムの構築などに携わりました。ただ、4年ほどして、もっとビジネスの上流に身を置きたいという気持ちが強くなり、一念発起でコンサルティングファームの門を叩いたのです。そこで出合ったのが会計の面白さでした。
ですが、今度はより経営に近い世界にも関心が向くようになり、さらには特定のインダストリーの経営課題に向き合う仕事にも惹かれ、自動車業界に照準を定めてしばらくコンサルティング活動を続けることになりました。
EYSC(EYストラテジー・アンド・コンサルティング)に移ったのは2021年のことです。それを契機に、もともとの専門である管理会計や経営管理といった領域に立ち戻り、今はファイナンスユニットのパートナーとして、ビジネスと会計の両面からお客様の経営課題に対処しています。
堀場
EYに転職された理由を伺ってもよろしいですか。
田中様
それまで私が所属していたところも含めて、最近の傾向として多くのファームがITやデジタル、あるいはBPO(Business Process Outsourcing)などの業務委託系にシフトしています。そういう中、EYが向き合い続けているピュアなマネジメント・コンサルティングに惹かれたからです。クライアントの経営課題に愚直に対峙する、その姿勢の潔さといいますか、本当の意味での経営コンサルティングがここにある、と強く感じました。
もう一つ魅力に思えたのは、パーパス経営の先駆者としての筋の通し方でしょうか。パーパスというのは企業の「存在意義」を表す基本理念ですが、EYはBIG 4と呼ばれる世界的ファームの中で最も早くこれを掲げ、「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をグローバル共通のパーパスと定めて、すべての活動の拠り所としてきました。
このパーパスからもわかるように、EYは長期的視野に立った社会課題の解決というものを明確に意識しているファームなんですね。もちろん、我々は経営コンサルタントですから、クライアントである企業や公共機関の利益を最大化することが使命ですが、その先には必ず、経営課題の解決を通じて社会課題の解決をも実現するという目標があります。
また、このパーパスを実現するため、EY Japanコンサルティングでは「経済で社会平和を、日本から。」を独自のビジョンとして設定しました。「社会平和」の捉え方はさまざまだと思いますが、社会課題に真摯に向き合うクライアントの活動が社会から適切に評価され、そのことで組織の成長もまた持続していく、そんな状態であろうと私は理解しています。
EYが全力でサポートする「CFOからCVOへの転身」
堀場
田中さんが牽引しておられるファイナンスユニットのミッションもまた、そうしたパーパスと深いつながりがあるのでしょうか。
田中様
そうですね。そのキーワードとして挙げられるのがLong-term value、すなわち「長期的価値」です。企業のサステナビリティや社会課題に立ち向かうということは、長期的な価値を追求することにほかなりません。
これはファイナンスにもいえることで、組織の財務責任者であるCFOが、短期的発想で経理やコスト管理に終始するのではなく、長期的な視野から非財務的な価値をも導き出すCVO(Chief Value Officer)でもあるべきだと、我々のチームでは提唱しています。いわば、CFOからCVOへの転身です。
本来、CFOとはそうした長期にわたる経営戦略的な役割まで負うものですが、日本の場合、多くの企業では経理部門のトップといった位置づけで、本当の意味でCEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)の参謀役になりきれていないのが実情でしょう。それでは、不確実で複雑なVUCAの時代を生き抜くことはできません。
組織の安定的かつ持続的な発展をサポートするために、長期的かつ非財務の視点から価値創造に向けて一定の役割を果たすCFOを育成する。それが我々が目下、特に意識しているミッションです。
堀場
そのような世界水準のファイナンスでクライアントを支えるために、御社ではどのような体制を組んでおられますか。
田中様
ファイナンスにまつわるサービス領域は実に多岐にわたります。我々は「サービスオファリング」と呼んでいるのですが、改めてそれらを分類整理することで、それぞれの役割や課題を明確化しています。すなわち、次の7領域です。
ファイナンス・トランスフォーメーション・ストラテジー
アジャイル・ファイナンス
ファイナンシャルプランニング&アナリシス(FP&A)
トレジャリー
グローバル・ビジネス・サービス(GBS)
ファイナンスDX(デジタルトランスフォーメーション)
ファイナンス・タレントマネジメント
これらのオファリングごとにメンバー全員を振り分けてサブチームを構成し、各自がどの領域のスペシャリストであるかを明確に意識しながら、サブチーム単位でクライアントの課題解決に臨んでいるわけです。
ファイナンス本来の力で企業のレジリエンスを高める
堀場
特に御社が力を入れてサポートしている領域、求められているサービスは何でしょう。
田中様
クライアントのニーズとしてはどれかに大きく偏ることはなく、バランスよくサービス提供の機会があります。ただ、その中でも目を引くトレンドを挙げるとすれば、ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)があります。その事業に投じた資本によって、どれだけ利益を上げているかを測る経営指標の一つですね。日本では最近になってようやくこのROIC経営が注目される傾向にあるのですが、欧米に比べて30年遅れといった状況です。
これは領域としてはFP&Aの範疇で、先ほどのCVOの重要性とも関係してきます。FP&Aは財務計画と分析、つまり、財務会計の見地から経営状況を分析し、経営戦略の策定に役立つ情報を提供して、経営トップの意思決定をサポートするための業務です。まさにこれからのCFOに求められる役割を、こうした面からも我々がご支援しています。
堀場
そのような価値が重視される傾向というのには、何か理由や背景があるのでしょうか。
田中様
コロナ禍の影響は一つ挙げられるかもしれませんね。このようなディスラプティブ(破壊的)とも言えるような事態に見舞われたとき、いかにして素早く立ち直るか、組織の回復力や弾力性といったものが強く意識されることになりました。いわゆる、レジリエンスですね。無駄を省いたリーンな経営や効率性の重視もいいですが、それだけでは突発的リスクに弱い。もっと柔軟で付加価値の高い経営のあり方が必要だ、そんな意識の高まりが背景にあるように感じています。
繰り返しになりますが、そうした現状に照らしてみても、会計だけのスペシャリストでいてはサステナブルな経営に貢献することはできません。我々会計コンサルタントとしても、クライアントの経営課題はもちろん、その業界全体の課題や事業環境、産業構造、バリューチェーンといったものにまで知見を深め、会計とビジネスの両面からクライアントの競争力強化に寄与することが極めて重要になっているのです。
多彩なバックグラウンドを持つ人材が溶け合う環境
堀場
会計とビジネスのハイブリッドなコンサルティング。そのために必要な人材についてお聞かせください。
田中様
当社の場合、現在もそうなのですが、メンバーのバックグラウンドはできるだけ幅広く、コンサルファーム出身者に限らず多様性を求めていきたいと考えています。例えば、事業会社の財務や経理、経営企画、ビジネスの最前線などで経験を積んだ人、あるいはITファームの出身者や、システム畑を歩んできたSIerもいいでしょう。ファイナンスDXが重視される時代でもありますので、そうした方々のスキルも求められています。
堀場
そうなりますと、コンサル未経験者のための研修やサポート体制も大切ですね。
田中様
はい。EYSCでは中途採用の方々に対して、まず会社全体としての研修を受けていただき、それをベースとして適時eラーニングなどを活用してスキルを磨いていただきます。eラーニングが非常に充実しているのはEYのグローバル全体に共通の特長です。そのうえで、我々のファイナンスユニットとして、会計に特化した独自の教育プログラムを組んでいますし、また、各々のオファリングチームにおいても専門領域ごとのトレーニングを行っています。
入社された方には全員にバディが付き、カウンセラーも常時おりますので、毎日のコミュニケーションやケアの面でも溶け込みやすい環境が整っていると思います。社内の雰囲気は総じて明るくて穏やか、和気あいあいと言っていいでしょう。階層別の教育体制に加えて、このようなカルチャーですから、未経験者の方も安心していただけるはずです。
先ほどお話しした私のユニットのオファリングチームも、メンバーの担当分けをした当初は、専門領域が明確になる反面、ややもすれば狭い世界で閉塞化するのではと危惧したのですが、まったくの杞憂でした。むしろ真逆で、課題やテーマに応じて「これならあの人が詳しい」「彼女に相談してみよう」などと、パスをつなぐ先が明確になりました。
堀場
リモートワークの影響などはありませんか。
田中様
コミュニケーションはより活発になったと感じています。ネットワークを通じたやりとりだけでなく、みんなが意識的に顔を合わせようという意識も働いて、毎週ファイナンスデーを定めて集合するようになりました。
概して風通しはいいですね。最近では若手中心の「タレントハピネス」という取り組みも始まりまして、ユニットの運営に対して若い人から積極的に提言をしたり、逆にベテランは若手の満足度を上げる工夫をしたりといった活動を進めています。上層部だけが何かを決めて組織を動かしている、というタイプの職場ではありません。
若い組織でゼロから価値を生み出す醍醐味
堀場
EYSCならではの働きがい、チームの魅力についてはいかがですか。
田中様
当社は日本のコンサルティングファームの中では比較的若い会社です。ビジネスにしても、社内の仕組みにしても、いろいろなことを精力的に立ち上げ、整理し、ブラッシュアップしている段階です。すでに形が出来上がった安定的な組織で働きたいというよりも、ゼロから作り上げたい、新しいサービスを創造したいというマインドセットのある方が活躍できる場所。それが一番の魅力であり、またやりがいにつながる部分だと思います。
我々がサービスオファリングを再構築したのも、そうした創造的プロセスの一環です。チームの目標としては、まず7つのうちですでにEYが強みを発揮している部分、例えばグローバル・ビジネス・サービス(GBS)やアジャイル・ファイナンスの領域を業界ナンバーワンの位置に引き上げる。これを早期に達成し、中長期的には、FP&Aやトレジャリーのように新しい分野においても頂点に立ち、すべての領域でナンバーワンであり続ける存在を目指す。これをメンバー全員が強烈に意識して、活動しているところです。
堀場
最後に、候補者のみなさんにメッセージをお願いします。
田中様
みなさんがこれまでに培ってきた経験や知識、ノウハウ、考え方、そういった個性のすべてを生かせるだけの土壌が、ここにはあります。EYのパーパスや文化に共鳴し、より良い社会をつくるという志をともにしていただける方であれば、その潜在力を何倍にも高めることができるでしょう。まだ入社1、2年目の若い人もたくさんいる組織です。顧客と社会とあなた自身にとっての「長期的価値」を、一緒に追求していきましょう。