今回お訪ねしたのは、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社のテクノロジー・コンサルティング部門に属する、テクノロジーストラテジー&トランスフォーメーション(TS&T)のチームです。「CIO(最高情報責任者)と共にテクノロジーを活用して社会・ビジネス課題を解決する」を理念に掲げ、業界ごとの知見に通じた「セクターフォーカス」を強みとするTS&Tチーム。その魅力と求める人材像とは。パートナーの忽那桂三様、マネージャーの高坂亜希子様にお話しいただきました。
課題解決に真っ向から挑む、コンサルタントの本領へ
堀場
本日はパートナーの忽那様、マネージャーの高坂様にお越しいただきました。まず、お二人のご経歴から教えていただけますでしょうか。
忽那様
新卒で入った会社はベンチャー系のSIerでした。いろいろなことに挑戦できるイメージに惹かれたんですね。実際その通りで、営業からシステム開発、フォローアップ、販路拡大まで幅広く経験できたのですが、次第に金融に特化したシステムに興味を持ち始めて最初の転職を決意します。そこは金融系オンライントレードシステムの最先端を走る会社で、国債や商品先物、証券などの取引システムを担当させてもらい、米国勤務を通じてシリコンバレーの優秀なエンジニアと仕事を共にすることもできました。20年以上も前のことですが、僕自身のアーキテクトとしての能力や、PM(プロジェクトマネジメント)のスキルといった、今につながる土台を築くことができたのはあの頃だったと思います。
ただ、そうした技能や知見もさることながら、本当の意味でテクノロジーコンサルタントに必要と思える意識が芽生えたのは、その少し後のことでした。小さな事業部を任せてもらえる立場になり、自ら案件を取ろうとセールスにも力を入れ始めたのですが、空振りばかりで成果が出ない。意気消沈のまま暗中模索の日々を過ごしていました。ところがある時、年配の業務系スペシャリストと組んで一緒に行動してみると、お客さまの反応が一変し、急にこちらの話をよく聞いてくれるようになったのです。
理由は明白でした。自分たちの技術力やシステムの優位性ばかりを強調する僕の話に対して、その方は業務の話、例えば業績を上げるための道筋や、業務プロセスの改善といった経営課題に寄ったアプローチをされていたんですね。それでハッとしました。お客さまの課題解決に直結するのは、その業界・業務に関する深い理解と知見であって、テクノロジーは1つの手段に過ぎないのだと。
堀場
なるほど、その気付きがコンサルタントという仕事に惹かれるきっかけでもあったのですね。EYを選ばれたのはなぜでしょう?
忽那様
グローバルに展開していることが第一の魅力でした。それに加えて、EYの監査やファイナンスや人事、リスクといった、各サービスラインと連携してプロジェクトが作れること。そうしたコラボレーションの強さは当時からEYの特色だったんですね。2011年のことです。
高坂様
私も出身はSIerです。システム開発と保守、運用を手掛ける会社に新卒で入り、アプリケーション開発を中心にいろいろな経験を積むことができました。ただ、大きな開発案件が一段落した後は保守の業務がメインになってしまい、このままだと自分の成長が止まってしまうように感じたのが転職のきっかけでした。早くPMになりたいと思って選んだのが、IT系のコンサルティングファームです。
そこではニアショア開発のサポートや、システム統合の大規模案件などに関わりながら、プロジェクト管理のスキルを磨くことができました。それはとても貴重な経験だったのですが、何年か勤めて出産した後が問題でした。私はそれまでと同じように全力で働きたいのに、無理に働かなくてもいいよとか言われたりして、急に居心地が悪くなったのです。ああ、この会社は出産したら終わりなんだな、と。それが二度目の転職の理由です。
その後、外資系のITソリューションベンダーに移ってその点は解消されたものの、コロナ禍で案件がストップしたのを機に改めて自分自身のキャリアを見つめ直してみました。本当は何がやりたいのか。そこで見えてきたのが、お客さまと伴走しながらプロジェクトを動かし、共に課題解決に向かうというコンサルタントの仕事でした。
EYを選んだ決め手は、人間力です。面接でも話しやすく、オープンな社風が感じられ、働いている人の姿が想像できるような印象を持ちました。他の会社とはまったく違っていたんですね。同じ時期に応募した知人からも似たような感想を持ったと聞かされ、迷わず入社を決めました。
セクターフォーカスを基軸に、社会平和を希求する
堀場
お二人の所属されているチーム、テクノロジーストラテジー&トランスフォーメーション(TS&T)の役割についてお聞かせください。
忽那様
テクノロジーを活用して企業変革を推し進める。役割としては文字通りなのですが、われわれが他の企業と違うのは、その先に社会への貢献という大きな目標を見ている点です。すなわち、EYが世界共通のパーパス(存在意義)として掲げている「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」との整合性を常に意識しながら、お客さまの課題解決に当たっているということです。日本のTS&Tチームは特にその傾向が強く、「CIO(最高情報責任者)と共にテクノロジーを活用して社会・ビジネス課題を解決する」という、より具体的な独自のパーパスのもとに活動しています。
従って、テクノロジーありきで解決策を探るような本末転倒な業務のやり方はいたしません。先ほど申し上げたように、ITの実装それ自体は課題解決の目的ではなく、道具でしかないからです。また、そうした思想を根底にしなければ、社会課題はおろか個社の経営課題さえ解決はおぼつかないでしょう。
高坂様
パーパスの重要性は私もEYに入社して改めて実感しました。難しい課題に直面して行き詰まった時、ふとパーパスを思い出すと気持ちが切り替わるというか、お客さまの先には社会があるんだと、気を引き締め直すことができます。
最近のコンサルティングファームに見られる傾向ですが、後ろに控えるシステム開発部隊に案件をつなげることを前提に話を進めるケースがよくあります。そのほうが話が早く、提案しやすいですし、利益も上がる。私も前職在籍時はそのことに疑問すら感じなかったのですが、お客さまのことを本気で考えたらそうはなりませんよね。目的と手段をはき違えないこと。パーパスがその良き道標になっています。
忽那様
そうですね。その上でわれわれが真の強みを発揮できるポイントが、業界ごとの専門力を高めてお客さまと相対するセクターフォーカスの考え方です。この点もおそらく、他社のテクノロジーコンサルティングにはあまり見られないEY独自の特色と言っていいと思います。
実際、お客さまからのご相談も、単にテクノロジーの知見をお求めになるのではなく、その業界に特有の事情を知らないとお役に立てないような複雑度の高い課題が増えています。既存のお客さまの場合は特に、セクターフォーカスであるというわれわれの特色をよくご存知なんですね。ですから業務委任系のご依頼が多くなりますし、われわれもまたそこに寄り添ったご支援を意識しています。
堀場
得意とされている業界や領域にはどんなところが挙げられますか。
忽那様
主だったところで自動車、製薬、公共セクターなどが挙げられますが、チームの成長に沿ってどんどん広がりを見せています。最近では組織統合などのトランザクションを専門に手掛けるユニットとの連携で、M&Aプロセスの中でもIT領域にフォーカスした案件の引き合いも増えているところです。
領域を超えたコラボレーションで総合力を発揮
堀場
コラボレーションが盛んなことは御社ならではの強みといえますね。
忽那様
はい。カルチャーとしてそうした土壌があることに加えて、コラボレーションによって成果を上げることをきちんと評価する仕組みが根付いているのも大きいですね。どんなに小さな案件でも、複数のサービスライン・チームが手を取り合って相乗効果を高めています。
高坂様
私はEYに入社して約2年になりますが、この間に関わったほぼすべての案件が他チームとの連携プロジェクトでした。現在も、私自身が別のチームから来て参画し、案件が進んでいます。一概には言えませんが、コンサル会社の場合、中心となる上司がスタッフを引き連れてプロジェクトを形成する例が目立ち、組織構造も縦割りになりがちだと思います。そうすると、新しく入ったメンバーがなじむのにも時間がかかってしまいます。
EYの場合、コラボレーションが前提ですから、まったく初対面のメンバーが一緒になっても違和感はありません。イチからコミュニケーションを創り上げていくのが当たり前のカルチャーがあるので、気まずさはありませんし、チームづくりも素早くできます。
堀場
チーム連携を生かした最近の特徴的なプロジェクトをご紹介いただけますか。
忽那様
昨年10月にプレス発表した案件で、「こども見守りAIプラットフォーム(Child Protection Intelligence Platform:CPIP)」の日本における導入コンサルティングと、実証検証サービスがあります。CPIPは、虐待や不登校、いじめといった子どもを取り巻く社会課題を解決するための情報を分析するプラットフォームで、EYではすでにオーストラリアや英国で実装しているものです。これを日本向けにローカライズして、地方自治体や公的機関向けに提供することになりました。
子どもに関する情報は自治体や学校、保育・福祉施設、医療機関などが別々に保有しているため、データを横断的に活用することが容易ではなかったのですね。これを一元的に収集し、AIが分析することでリスクを予見し、支援や対応が必要な場合は直ちに関係機関に警告を出したり、対応策を示したりできるようにしようという取り組みです。
ローカライズに際してわれわれが特に意識したのは、問題が発生しそうな家庭を探し出して対処するという減点方式ではなく、ウェルビーイングが損なわれている家庭を見つけて幸福度を高めるための手を打つという加点方式の考え方です。例えば、家計が苦しい世帯に対して雇用を促すような支援を行政がもたらすことで、幸福度が高まる結果として虐待が妨げられるというように。
この取り組みにはわれわれのTS&Tチームだけでなく、デジタル&エマージングテクノロジーのチームや、公共・社会インフラユニット、監査法人などから多様なメンバーが参画しています。デジタル庁やこども家庭庁とも連携していますし、領域を超えた総合力で社会課題に立ち向かうという、まさにEYらしいプロジェクトだといえます。
WillとWell-beingで会社と自分、社会を元気に
堀場
先ほどカルチャーのお話もありましたが、チームの雰囲気はいかがですか。
高坂様
コミュニケーションに満ちた環境と言いますか、どんなに忙しくてもきちんと対話をしながら仕事を進める、乱暴に投げっぱなしにしない、相手に伝えようとする気持ちが見える、そんな光景が日常化している職場です。総じて言うと、みな親切ですね。
忽那様
管理職の立場から言うと、メンバーの成長をしっかり見守り、ウェルビーイングを高めることを意識しているつもりです。入社して間もないメンバーに早くなじんでもらえるようコミュニケーションを増やすことは当然ですが、その後も自分が望んだキャリアを歩めているか、いつでも居場所となるコミュニティを持てているか、そして健康状態を良好に保てているか、といったポイントには目を配っています。
リモートワークが増えて以降、こうしたケアの必要性が高まりましたね。悩みがある時にすぐに相談できる人がいるのはすごく大切なことで、特に若手のコミュニティづくりは高坂にも協力してもらって強化しています。
高坂様
若い世代にとって、横のつながりは大きな支えになります。悩みの相談もそうですし、こんな仕事をやりたいとか、いつまでにマネージャーになりたいなどの希望の話、遊びや飲み会のお誘いも、何でも気軽に語れて仲良くなれる機会を、できるだけたくさん作りたいと思っています。若手が元気でいると、会社も元気になれる。みんなにとって楽しい場所でありたいですね。
堀場
新人や未経験者の方に対するキャッチアップ体制もしっかり作っておられる。
忽那様
そうですね。研修制度としては、EYのグローバル共通の講座に加えてEYSC独自のものがありますが、僕が最も重視しているのはOJTです。実際のプロジェクトを通じて、お客さまや一緒に働く外部のベンダーさん、チームの面々の声を聞き、表情を見ながら五感フル回転で学んでいくのが一番良いと思っています。
TS&Tチームの場合、コンサル未経験者の6〜7割がSIer出身で、残りが事業会社のIT部門などといった内訳です。いずれの方にもまずはプロジェクト管理の仕事から始めていただくことが多いですね。システム開発を経験していれば慣れるのも早いはずですが、とはいえSIerやIT部門のPMとコンサル会社のPMは立ち位置や視点がまったく異なるので、そこは無理せず段階を追ってと考えています。
堀場
TS&Tチームが求めている人物像についてお聞かせください。
忽那様
ポイントは2つあります。まず、仕事を楽しめること。誰にでも壁はあるし、悩みもあります。それでも、その先に自分のありたい姿を見つけ、いつかブレイクスルーすることを楽しみにできるようなポジティブなマインドを持つ方を望みます。
もう1つは、ウィルがあること。熱量と言ってもいいでしょう。キャリアチェンジという人生の大きなチャレンジを成功させるには、「自分はこうなりたい」と願う強い想いが絶対に必要です。そのウィルがあれば、今の自分と目指す自分の間にあるギャップが見えて、何が足りないのか、どうすべきかがわかってきます。これが見えている人とそうでない人とでは成長スピードに圧倒的な差が出るのです。
高坂様
私からもう1点、考え抜ける人であってほしいと思います。困難に直面したとき、考えれば必ず突破口は開けます。そのことを忘れずに、諦めないで壁を打破してほしい。そういうメンバーが集まると、互いに刺激し合ってシナジー効果が一層高まるものです。ぜひ一緒に考えましょう。
共に「ナンバーワンファーム」を目指すメンバーを歓迎
堀場
では最後に、TS&Tチームのこれからの展開を踏まえて、候補者の方へのメッセージをお願いします。
忽那様
われわれの目標は明確で、ナンバーワンファームになることです。そのためになすべきことは3つあります。1つはグローバル化。日本企業の海外展開をご支援することについてはすでに実績を積み重ねていますので、逆に海外のお客さまから直接お声が掛かる存在を目指したい。そしてEYの他のグローバルファームと縦横無尽にタッグを組み、世界中のどこでも活躍できる真のグローバル人材の集団でありたいですね。
2つ目に、クロスセクターのオファリングを拡充すること。EYの強みであるコラボレーションの力をこれまで以上に高め、先ほどのCPIPのような領域を超えた連携を加速していきます。実際、医療業界と地方自治体が保有する医療ビッグデータを融合し、新しい薬剤や治療法を生み出すプロジェクトなど、取り組みは次々に広がりつつあります。
そして最後が、高い成長率の維持。既存のサービス領域を強化するのは当然として、新しい領域への挑戦、新しいオファリングの創出に全力を挙げて臨みます。日本のEYは今、破竹の勢いで成長しています。その一員として、これら3つの課題を共に乗り越えながら一緒に成長していきましょう。
高坂様
実は私も今、新しいサービスオファリングを立ち上げようと準備をしているところです。これまでに積み上げたプロジェクト運営に関する知見とノウハウ、すなわち「IT-PMO」としてのスキルをベースとして、M&A領域におけるPMI(統合プロセス)推進や、業務効率化に向けた支援など、プラスαの強みを発揮できるチームを作りたいと考えています。
そのためには、あらゆるセクターにフォーカスできる人材が必要ですし、いろいろな人たちや領域との接点を楽しみ、その中で自ら成長していけるような方が必要です。ぜひお力を貸していただけたらと思います。
忽那様
自らサービスを創り、自分の世界を広げていく。コンサルタントという仕事の醍醐味ですよね。高坂さんにも、これから来ていただけるメンバーにも期待しています。