「運ぶを最適化する」をミッションに掲げ、物流業界向けSaaSアプリケーション『MOVO』を提供する株式会社Hacobu。持続可能な物流をいかに確保していくかが企業の喫緊の課題となっています。顧客の経営課題に対し、物流の戦略から変革、実装まで一貫したソリューションを提示すべく2021年に起ち上がったHacobu Strategy。同社独自の知見、ビッグデータ、テクノロジーを駆使して、顧客企業と社会課題の解決に挑んでいます。
今回は、株式会社西友/Walmartの元物流責任者であり、Hacobu執行役員 CSO 佐藤健次様と、ディレクター 重成学様より、Hacobu Strategy独自の強みや、クライアントとのプロジェクト事例、価値提供について語っていただきました。
物流・サプライチェーン領域における「経営戦略×ビッグデータ×テクノロジー」視点でのコンサルティングがHacobu Strategyの強み
江頭
まず、Hacobu Strategyのミッションや役割についてお聞かせください。
佐藤様
「運ぶを最適化する」をミッションに、企業のDXを推進するSaaS型アプリケーション『MOVO』やそこに蓄積されたビッグデータを活用しながら、物流業界の課題解決につながるコンサルティングを行っています。
『MOVO』は、既にメーカーや小売など業界を問わず多くの方にご利用いただいているサービスです。例えば『MOVO Berth』については既にTopシェアを誇り、現在の利用拠点は約9,000拠点を超える数字になっています。日本国内のトラックドライバーの、実に3人に1人が利用するシステムへと成長しています。(2022年5月現在)
こうして『MOVO』に蓄積された膨大なデータを活用し、山積する物流業界の課題解決にあたっているのが我々のチームです。
江頭
物流業界の課題はどのようなものがありますか。
佐藤様
従来、物流の問題は現場レベルのイシューとみなされがちでした。そのため物流危機と言われる大きな環境変化の中でも、多くの大企業のマネジメントは課題解決への適切なアプローチが分からず困惑しているのが実態です。
そこで、Hacobu Strategyは、物流を経営イシューとして再定義しました。中長期的な物流戦略策定といった上流工程から、SaaS導入プランニングやシステム連携・導入の支援まで行っています。また現場レベルでは、実際のコスト削減や業務効率化につなげるため、オペレーション改革支援の4PLサービスを展開しています。
※4PL:ノンアセット型の3PLサービス(ロジスティクス戦略の企画・推進を行う)
その中で自社サービスに蓄積されたデータとテクノロジーを活用したコンサルティングを展開しているのが、我々Hacobu Strategyという訳です。
江頭
具体的なサービス内容については、どのようなものですか。
佐藤様
我々の具体的なサービスは、主に2つです。
1つ目は、自社アプリケーションMOVOを活用したコンサルティングです。MOVOを導入することで、今まで見えていなかったものをデータとして可視化します。売上や利益、コストへのインパクトだけでなく、将来何が起こるのか、ネットワークはどのように活用するかなどを含めて現状を正しく理解し、経営側にロジカルに説明します。
2つ目は、クライアント企業の内製化の支援と、日本の物流自体の底上げです。ただし内製化支援と言っても、複数メンバーを常駐させて、システム開発に繋ぐような大型プロジェクトを仕掛けることではありません。我々はクライアント先へ2週間に1〜2回のペースで訪問し、クライアントに主体性を持っていただき、彼らと共に業務やサービスを変革していきます。
クライアントがレベルアップすれば、自社事業に長期的に貢献できる。そういったサスティナブルな世界を作らなければ日本の物流は変わっていきません。自分たちの利益だけを追求するのではなく、日本の物流自体の底上げを狙ってコンサルティングを行っていきます。
執行役員CSO 佐藤健次 様
クライアントの利益追求よりも、物流業界全体の最適化を優先
江頭
コンサルティングファームとの違いを教えてください。
佐藤様
我々が提供している物流・サプライチェーン領域における「経営戦略×ビッグデータ×テクノロジー」という3点が絡んだ領域は、ホワイトスペースなのでバッティングすることはありません。また、大手サプライチェーンやコンサルティングファームのロジスティクスチームは、クライアント企業の利益追求がメインミッションになるのが一般的です。一方、我々は物流という社会課題の解決を目指していますので、その観点からも競合しません。
逆に、コンサルティングファームとの関係性は良好なので、「輸配送だったらHacobuに協力してもらおう」と引き合いも多いのが実際のところです。
重成様
さらに、コンサルタントでありながら事業開発の仕事ができる点は大きな違いです。「自社プロダクトを持っている事業会社へ行きたいけれど、職種は変えたくない」という方にとっても最適な環境だと思います。
また、当社はSaaSのアプリケーションが屋台骨なので、必ずしもコンサル事業での利益率を求めているわけではありません。まず重視しているのは、社会課題解決への貢献。そういった点も、大手コンサルティングファームとの差別化になると思いますね。
また、『MOVO』への蓄積データを活かした「Data-Driven Logistics?」という考え方も、当社独自のものです。これまで「気合」や「勘」、「度胸」などで解決しようとしていた物流の現場にデータ収集や分析を持ち込んだことは、当社のコンサルの強みですね。
江頭
御社では、SaaSのプロダクト開発に携われるのも大きな魅力なのですね。
佐藤様
そうですね。やはり現場と開発が連携しなければ、世の中に変化を起こすアプリケーションはできませんから。開発側と話し合いながらアプリケーションの開発を進めていくことも我々のミッションの1つです。
江頭
クライアントはどういった方が多いのですか。
重成様
荷主と言われるメーカーや小売りの方が多いですね。
物流業界では、2024年4月から働き方改革によるドライバーの残業時間の規制がスタートします。それに伴いさまざまな問題が生じることから「物流の2024年問題」と呼ばれているんです。今はテレビをつけても新聞を開いても、2024問題は話題となっています。「業界にメスを入れないといけない」と考えるメーカーや小売の人たちが増えているため、我々はそういった方たちのサポートをしています。
ディレクター 重成学 様
業界を問わず、既に幅広い分野で物流改革を実施
江頭
続きまして、実際に手がけられている案件を教えてください。
佐藤様
私からは秋田県の農業DXプロジェクトについてお話しさせてください。これまで秋田県では、青果物を首都圏に届ける際に、1台の大型トラックが出荷先を周って首都圏の市場へ向かっていました。そのため、ドライバー1人当たりの平均拘束時間が15時間以上かかっていたのです。
それに対し『MOVO』を導入し、トラックやバックヤードの効率化をすることでドライバー拘束時間を平均2時間短縮。トラックを手配する人の業務量は平均30%以上削減することができました。今回は秋田県と実証実験を行いましたが、今後は他県でも展開していく予定です。
これは、ほんの一例です。いずれにおいてもまずは物流の課題をヒアリングし、『MOVO』などのアプリケーションで解決できるかどうかを考えます。アプリケーションだけで解決できない場合は、Hacobu Strategyが入りクライアントの課題を踏まえて業務プロセスなどから解決していきます。
「社会に対して働きかけていきたい」という強い意志がある方を求めている
江頭
それではここからは、組織体制についてお伺いしたいと思います。現在、Hacobu Strategyに所属されているメンバー数と、それぞれのバックグラウンドについてお教えいただけますか。
佐藤様
2022年5月現在で5名です。もともと私はアクセンチュアや西友/Walmartの物流の責任者を務めており、同じく西友/Walmartで輸送部門の責任者を務めていたメンバーや、物流業界の知見のあるコンサルタントもいます。また、大学時代から物流や交通に興味を持ち、「物流を変えたい」という高い志を持って入社してくれたメンバーなどさまざまです。
江頭
重成様は前職がコンサルティングファームですが、Hacobuへの入社を決めた理由はどういったものだったのでしょうか。
重成様
これまでのキャリアの棚卸をした時に、物流やサプライチェーンの強みを高められるところに転職したいと思ったのがきっかけです。またわかりやすく社会貢献に繋がる仕事がいいなという気持ちもありました。Hacobuは決してきれいごとではなく、本気で物流の最適化を目指して取り組んでいるので、まさに私が望んでいた仕事ができています。また経営層と一緒に組織開発、事業開発できるという環境にも惹かれて入社を決めました。
江頭
重成様からご覧になった、職場の雰囲気についても教えていただけますか。
重成様
職場はとてもフラットな雰囲気ですね。また、物流改革・社会課題解決に向けて情熱のある方が多いです。Hacobu Strategyにはプロダクトがあるからこそ、熱い思いだけでなく具体的な解決策を持って顧客価値創出や社会課題解決に寄与できる職場になっています。
江頭
他社のコンサルティングファームと比べて、1人当たりの業務量は多いのでしょうか。
重成様
残業時間は少ないと思います。我々は、クライアントに伴走しながら支援を行います。ただ、主体的にクライアントが取り組めるよう、マネージャーやディレクターからメンバークラスまで、現場に訪れるのは週に1~2回程度です。
クライアントに最終報告をする月はどうしても残業時間が増えますが、それでも20〜30時間程度です。やりがいのある仕事で、働くと大変そうという印象を持つかもしれませんが、他のコンサルティングファームと比べて、断然少ないはずです。その理由として、メンバークラスのプロジェクトアサインも特徴があります。単一プロジェクトに週5日のフルタイムアサイン(1.0稼働)ではなく、週1~3日程度のパートタイム稼働(0.2~0.5程度の稼働)での契約を基本形として複数プロジェクトを担当しています。
ベンチャーらしいスピード感とワークライフバランスを保った働き方が両立できる点は、Hacobu Strategyにしかない魅力です。
江頭
今後、Hacobu Strategyではどれくらいのメンバーを採用しようとお考えですか。
佐藤様
現在、案件のニーズは増えております。2023年度末には10人体制を目指し、2024年度末には30人まで増やしていきたいと思います。
江頭
今後は、どのような方を採用していきたいとお考えですか。
佐藤様
「日本の社会問題を解決していきたい」という強い想いを持っている方と一緒に働きたいです。社会課題を解決したい想いと弊社のバリューにもある「Get Things Done(目的を完遂する、やりきる)」に向けて戦略及び実行スキルを兼ね備えた人材が、理想とする人物像だと思います。
スタートアップの本質である「社会を変えたい」「世の中を変えたい」という想いのある方に来ていただきたいです。あとは、主体的に動けることも大事です。社会の一員として、「自分はこれをやらねばならない」という強い使命感を持っている人ですね。
江頭
今後チャレンジしたい案件や、取組みがあれば教えていただけますか。
佐藤様
運ぶを最適化するために、物流を経営アジェンダ化していくことです。 また欧米では、CLO(Chief Logistics Officer)というポジションがあり、ロジスティクス管理の重要性は広く知られているものの、日本ではそのようなポジションはありません。そのため、物流にいる人たちのポジションを引き上げ、経営の考え方をロジスティクスに取り入れていく支援もしていきたいと考えています。