株式会社日立コンサルティング イノベーション&ストラテジードメインは、日立グループ各社と連携して、クライアントの事業やサービスにおける企画・開発からリリースまでの支援や、事業・業務の変革に向けた構想策定から実行までの支援を行っております。今回は、同ドメイン長であるマネージングディレクター 金本禎寛様より、ドメインが提供できるサービスの特徴や、向かい合うマーケットの状況、実際の案件事例、そして組織の方向性などについて伺いました。
業種・業界を越えた横串の組織であるイノベーション&ストラテジードメイン
野口
はじめに、金本様のご経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
金本様
新卒で外資系のIT企業に入社し、主に大手通信キャリアの大規模システム開発プロジェクトに従事していました。その後、もっとビジネスの幅を広げたいと考え、業種や業界を越えて幅広くビジネスができるコンサルティング業界に興味を持ちました。
当時、大手コンサルティングファームへのキャリアチェンジも考えましたが、大規模な組織の中で1つの役割を担うことで成長するよりも、小規模な組織で裁量を与えられることで成長する方が私には合っているのではないかと考え、当時はまだ30人ほどだった日立コンサルティングに転職しました。
日立コンサルティングへ入社以降、事業企画、業務改革、組織改革など多岐にわたるテーマでプロジェクトのリードを行ってきました。現在は、イノベーション&ストラテジードメイン、そしてドメイン内にあるイノベーション&ストラテジーディビジョンのリードを担っております。
野口
イノベーション&ストラテジードメインは、どのような組織で構成されているのでしょうか。
金本様
イノベーション&ストラテジードメインは、Strategy、Design、Technology、Transformationの4グループで構成されています。
各グループの役割ですが、
Strategyグループは、パーパスやビジョン、中期経営計画策定、M&Aなど、重要テーマの戦略や構想の策定
Designグループは、ビジネス/サービスの企画・計画策定から事業を支える組織・プロセスなどの仕組みづくり
Technologyグループは、生成AIやメタバースなど、先端テクノロジーを活用した事業創生や業務拡張
Transformationグループは、既存事業におけるビジネスモデルの見直しや業務プロセス、ルール、および組織などの変革の実現を担っております。
そして、2024年4月より、これらのグループは大きく2つのディビジョンに分かれました。
「イノベーション&ストラテジーディビジョン」がStrategyグループとDesignグループ、
「テクノロジー&トランスフォーメーションディビジョン」がTechnologyグループとTransformationグループです。
この2つのディビジョンの違いを簡単に説明すると次のようになります。
イノベーション&ストラテジーディビジョンは、イシュードリブンでのアプローチで、いわゆる「入口側」です。
一方、テクノロジー&トランスフォーメーションディビジョンは、ソリューションドリブンでのアプローチで、いわゆる「出口側」にあたります。
この2つのディビジョンが同じ組織内にあることで、クライアントへの提案やサービス提供時に双方向からのアプローチが可能です。
野口
金本様はイノベーション&ストラテジーディビジョンもリードされていますが、組織の特徴について詳しく教えていただけますか。
金本様
特定の業種・業界に依存していないため、より広範なテーマに対応できます。一見すると「何でもやる」と思うかもしれませんが、実際には自分たちの得意分野を掘り下げ、高い専門性を身につけられるため、コンサルタントとしての強みを磨くのに適した環境だと感じます。
また、特定の業種・業界に依存していないことから、さまざまなお客さまとの接点を持つことが可能です。当然ながら、多様なビジネスニーズに応えていくために常にスキルを向上させていく必要がありますが、こうした環境もコンサルタントとしての成長につながっていると思います。
「日立グループの技術」を活用した新規ビジネス立案~実行まで伴走支援を行う
野口
具体的なマーケットのトレンドを教えていただけますか。
金本様
トレンドとして大きく2つ挙げられます。今あるものを変革するプロジェクトと新たに何かを創り出すようなプロジェクトです。
まず、今あるものを変革するプロジェクトと言えば、DXです。われわれは「DX2周目」と呼んでいるのですが、DXが叫ばれた初期の頃にDXの導入がうまくいかなかった企業が改めて戦略的にDXに取り組み直そうとしている状況ですね。こうした相談は、Designグループに寄せられることが多いです。
一方、Transformationグループでは、たとえば、オフィスの移転を機にペーパーレス化を推進し、業務におけるプロセス・仕組みのデジタル化やデータの利活用を行い、DXへつなげていくというプロジェクトを多数手掛けています。
野口
もう1つの新たに何かを創り出すようなプロジェクトとしてはどういった事例がありますか。
金本様
東武鉄道様×日立製作所が取り組んでいる生体認証を活用した新たなサービスの事業創生プロジェクトが挙げられます。東武鉄道様は鉄道事業だけではなく、不動産やスーパーマーケットなどの事業も展開しており、生体認証を利用した決済システムの導入などを通じて、新しい顧客体験の提供に向けたサービスを始めようとしていまして、このプロジェクトはTechnologyグループのメンバーが初期のフェーズから長らくご支援しております。
※参考:東武鉄道と日立は、生体認証を活用したデジタルアイデンティティーの共有プラットホーム立ち上げに合意
ニュースリリース:2023年8月29日:日立 (hitachi.co.jp)
また、Strategyグループでは、中核事業が成熟期を迎えつつあるクライアントから、新しい事業の柱を検討してほしいという依頼を受け、業界に対する調査・分析を行い、既存のリソースや強みを生かせる成長領域を見極めるようなプロジェクト等も行っております。
このようにクライアント企業のさまざまなニーズに対するご支援を行っております。
野口
トップラインを伸ばしたいという声に応えられていると思うのですが、こういった昨今のマーケット変化にはどういった背景があると考えていますか。
金本様
私がコンサルティング業界に足を踏み入れてから20年近くたちますが、マーケットの変化は大きく感じていますね。以前は、コスト削減を目的としておりBPRを行って、その後にパッケージシステムを導入するプロジェクトが大半でした。しかし、最近では事業のトップラインを伸ばすことを目的としたプロジェクトが増えています。
その理由として、日本の人口減少などの影響により、多くの企業では既存のビジネスだけでは将来の成長が見込めないだろうという認識が広がっているからです。そのため、既存のビジネスに付加価値を加える、もしくは新しいビジネスやサービスの開発を行う必要があり、そうした戦略や企画立案を求める声が上がるようになっています。
しかし、自社だけの力で新たな分野に挑戦することは難しいと感じているクライアントが多く、そこに日立コンサルティングの介在価値、ビジネスチャンスがあると捉えています。
というのも、今の時代はどの分野でもデジタルテクノロジーの活用が切っても切り離せない要素となっているからです。実際、クライアントからは「日立グループの先端技術を活用して事業を始めたい」「デジタルを組み合わせた事業に一緒にチャレンジしたい」など、すでに世の中で成果を出している日立グループのデジタルテクノロジーをベースとしたビジネスの立ち上げから実行までの伴走支援を希望されるご相談も増えてきています。
ただし、必ずしも日立グループ内の技術やソリューションを活用しなければならないわけではありません。日立グループの一員として、グループのビジネスにつなげたいと考えることは自然なことですが、クライアントにとっての最適解を提供することが重要だと考えていますので、クライアントのニーズをしっかりと把握しながら何を活用すべきかをフラットに考えながら支援を進めています。
事業会社出身が多数在籍、専門性をリスペクトし合うカルチャーがある
野口
イノベーション&ストラテジードメインにはどのようなバックグラウンドの方が多いのでしょうか。
金本様
事業会社出身の方が多く在籍していますね。われわれは幅広い業界にアプローチするため、さまざまな業界の経験者がいることが大事だと考えています。以前はSE出身者が多かったのですが、今は事業会社で自らビジネスを立ち上げてリードしてきた経験がある方や、専門性を持って取り組んできた方などが多いです。
野口
社内の雰囲気はいかがですか。
金本様
非常に良い雰囲気だと感じています。各自が特定の業界や分野における専門知識があるため、お互いを尊重しながら協力し合える環境が整っていると思います。
またコンサル業界はピラミッド型で縦割りの組織構造が強いイメージがあると言われることもありますが、われわれはそうした構造はほとんどありません。組織内では、年齢やクラスが上でも遠慮なく自由に意見を交わせるフラットな環境になっています。
野口
メンバーのアサインはどのような工夫をされていますか。
金本様
各メンバーの希望やキャリアプランを理解した上で決定するように努めています。
たとえば、単に「これをやってください」と命じるのではなく、上位者は「あなたのスキルを伸ばすために、この案件を担当してみてはどうか」と提案し、メンバーの意向を伺います。一方メンバーからも「私はこういうことがやりたい」という意見を出してもらいます。もちろんビジネス上すべての希望をかなえることはできませんが、可能な限りメンバーの意見や希望を聞き、次のステップを見据えてアサインを検討するようにしています。
野口
働く環境についてお伺いしたいのですが、リモートワークも可能な状況でしょうか。
金本様
はい。現在メンバーは出社とリモートを組み合わせながら働いています。家庭の事情等もありますので、ある程度はメンバー自身で裁量を持って選択できるようになっています。私個人としてもまだ子どもが小さいため、子どもの体調次第で急遽リモートワークに切り替えることも少なくありません。そうした柔軟な働き方ができることも魅力の1つです。
野口
出社とリモートのハイブリッドとのことですが、コミュニケーション面で工夫されていることはありますか。
金本様
プロジェクトやグループごとに定期的に顔を合わせてコミュニケーションを取る場を持つようにしています。また、グループやディビジョンを超えてコミュニケーションを取る機会も促進しています。メンバーもそうした場に積極的に顔を出してくれますし、メンバー同士お互いどのような活動をしているのか共有し合うことを活発に行っています。
野口
リモートワークも含め、柔軟な働き方を推進されているとのことですが、女性の活躍という観点ではいかがでしょうか。
金本様
2024年4月から、イノベーション&ストラテジードメイン所属の女性のシニアディレクターがテクノロジー&トランスフォーメーションディビジョンのリードへ就任しました。
私は性別に関わらず、すべてのメンバーが同じように活躍できる機会を持てるように努めております。というのも、以前は女性メンバーが管理職になる前に、子育ての負担で仕事と両立ができず辞めてしまうケースが少なくありませんでしたが、今では私のドメインでは女性の管理職が5人ほどおり、性別問わず活躍できる環境が整ってきた証拠だと思います。
組織拡大のフェーズ。アンテナを立てて自ら情報を取りに行ける姿勢を重視
野口
イノベーション&ストラテジードメインが求める人物像について教えていただけますか。
金本様
スキルや知識に関しては、入社後に身につけられるため、特別なものは必要ありません。チームのメンバーやクライアントとしっかりコミュニケーション積極的に取り、チームとしてパフォーマンスを出すためにどうすべきかを考えられる人を求めています。
また、責任感の強さも重視しています。われわれコンサルタントは、クライアントと共に責任を持ってプロジェクトを推進していかなければなりません。すべての問題を他責にせず、自分事として捉えられるかどうか、そして責任を持って解決に尽力できるかどうかは非常に重要です。こうしたマインドがあるかどうかは面接で特によく見ていますね。
他にも、われわれは多様な業界のクライアントが相手となるため、知的好奇心が強く、常に新しい情報をキャッチアップしながら積極的に学ぶ姿勢があるとなお良いです。
野口
組織の今後の展望や目指している方向性について教えていただけますでしょうか。
金本様
特に27年中期経営計画の終わりまでは、組織の拡大を目指しています。目標としては現在の人員数を倍にする予定です。ただし、単に規模を拡大させて「何でもやります」ということではなく、特定の注力テーマを掲げて組織を拡大させていきたいです。
注力テーマは、クライアントの先にいる生活者や社会全体を意識したコンサルティングサービスの展開をしていきたく、具体的には、ヘルスケアやファイナンス、モビリティといった生活者に密着した分野を想定していす。
これらの分野に専門性を持つ経験者の方を積極的に採用し、皆さんの経験とノウハウによって新たなソリューション開発や案件の質を向上していきたいと考えていますので、該当分野のテーマに知見や経験のある方の参画を強くお待ちしております。
野口
最後にイノベーション&ストラテジードメインへ興味をお持ちの方にメッセージをお願いいたします。
金本様
ここからの数年は組織として大きく成長していくタイミングであり、エキサイティングな時期を過ごせると思いますので、組織が拡大していく醍醐味を味わってみたいと考えている人はぜひ参画いただきたいです。また、組織を拡大するためには、メンバー一人ひとりの個人的な成長も欠かせません。コンサルティング業界で自己成長を望んでいる方にもぜひお会いしたいですね。