三菱UFJ信託銀行のHR戦略コンサルティング部から独立して生まれたコーポレートガバナンスに特化したベンチャーファームHRガバナンス・リーダーズ株式会社(以下、HRGL)。コーポレートガバナンスの“かかりつけ医”を標榜し、HR起点にサステナビリティ経営の実現を支援されています。
今回は、指名・人財ガバナンス部の古川拓馬様、河野翔太様より、ご経歴や、同組織のミッション、市場環境の変化、求める人物像などについてお聞きしました。
「HRGL Way」のミッション・ビジョン・バリューに共感して入社を決意
庄村
では、はじめにご経歴を教えていただけますか。
古川様
私はこれまで人事や組織に関するコンサルティングサービスに従事してきました。まず、新卒で教育研修をメインとした会社に入社し、約5年間法人向けの企画営業を経験しました。その後、研修以外に人事のコンサルティング領域を広げていきたいと考え、国内独立系のコンサルティングファームに転職し、人事系のコンサルティングに約12年間従事しました。そして、2022年12月にHRガバナンス・リーダーズに参画し今に至ります。
庄村
御社に入社しようと思ったきっかけは何でしたか。
古川様
昨今、人事業界に対して求められるものが大きく変わってきたという時代背景が前提としてあります。具体的に言うと、2022年は人的資本経営元年と言われる年で、各企業では人的資本経営の開示が求められるようになりました。つまり、人事業界では、単に社内の人事施策“だけ”を扱うのではなく、経営戦略を実行する上で「どういった人財にどんな投資や施策をおこなっているか」といった人財戦略を明確に定義し、発信していかなければならなくなったのです。前職では社内研修や制度設計、組織風土の改革といった個別施策への支援がメインでしたが、それよりもさらに上流から人的資本経営や人財戦略といった領域に携わりたいと思い転職を考えました。
HRGLに入社した理由は、大きく3つあります。1つはクライアントのレイヤーが経営層であり、ダイレクトに経営層にアプローチできる点です。人的資本経営や人財戦略、人事戦略は経営そのものであり、人事部長や人事課長のレイヤーだけで考えられるものではないからです。次に、HRGLは組織規模が大き過ぎないため、一体感が感じられる組織であること。さらに、HRGLは「HRGL Way」というパーパスを起点としたミッション、ビジョン、バリューを打ち出しており、そうした企業の姿勢に共感したためHRGLへの入社を決意しました。
※参考:HRGL Wayとは(HRガバナンス・リーダーズ 公式HP)
庄村
続いて、河野様のご経歴を教えていただけますか。
河野様
私は、新卒で非鉄金属の素材メーカーに入社し、2年半自動車部品の営業に従事しておりました。同時に、プライベートでは就活生のキャリア相談や支援をしていたこともあり、それがきっかけで人に携わる仕事がしたいと考え、社内の人事ポジションに手を挙げて異動しました。そこから2年半、採用や育成、組織開発を中心に業務をおこないながら、パーパスを意識した研修や経営戦略と連動した人財育成なども積極的に取り組んでいました。しかし、社内の人事業務に対しやりがいや楽しさを感じる一方で、採用や育成だけにとらわれず、より人事の専門性を高めたいという思いが芽生えるようになり、転職を志しました。
HRGLに決めた理由は、HRGLが掲げる「『ヒト』が輝く社会の“未来設計図”を創造する」というビジョンや、「企業の成長ストーリーを描くコーポレートガバナンスの“かかりつけ医”」というパーパスに共感したからです。自身の専門領域を広げる上でも、ミッションドリブンのこの会社で、志の高いメンバーと共に切磋琢磨していくことがとても有意義であると思い、HRGLに入社しました。
経営と人事をどう繋ぐか?HRGLが進めるチャレンジングな案件
庄村
古川様にとってチャレンジングだったプロジェクトを教えていただけますか。
古川様
非財務情報のESG経営の推進プロジェクトです。2023年1月に有価証券報告書内でサステナビリティ情報の開示が義務化されたことに伴い、人的資本情報についても開示が必要になりました。具体的には、人財育成方針や社内環境整備方針、ダイバーシティの指標などです。新たに人事施策を考えるわけではないのですが、有価証券報告書内で人的資本情報をどのように開示していくかといった観点では今回が初めてでしたので、最初のフェーズでは試行錯誤の連続でした。
また、経営と人財戦略が連動するというお話をしましたが、具体的にその2つがどのように連動しているのかが見えなければ投資家には伝わりません。例えば「研修をしています」「女性管理職比率が高いです」だけでは、それが経営戦略とどのような関係があり、どのように企業価値が上がっていくのかが見えないからです。そのためにはストーリーを持ってナラティブに語らなければなりません。それをどう可視化し、概念化するのか。それがこの仕事の醍醐味であり、非常に難しいところだと感じています。
庄村
最初のフェーズでは、実際にどのように進めていったのでしょうか。
古川様
経営戦略と人財戦略をどのように繋げてナラティブに語られているかについては、当初、他社の開示事例を参考にしました。とはいえ、各社によってストーリーは異なるため、クライアントにとって最適なストーリーを展開しなければなりません。クライアントからご納得いただけるまで、何度も修正を重ねながら、経営戦略と人財戦略を繋ぐストーリーを考えていきました。我々は、経営と人事を繋ぐことがメインの仕事になるため、このようにパッケージ化されていない上段の部分から入っていくのが強みになります。
庄村
河野様は、入社後はどういったプロジェクトからスタートされたのですか。
河野様
最初にアサインされたのが、行政機関向け労務管理システムの導入支援です。半年間の常駐プロジェクトで、マネージャーを含めて4名で対応しました。我々はPMOとしてシステム会社を支援する立場で入ったのですが、その時点でプロジェクト自体が2年延伸している状況でした。我々はシステム会社と行政機関との間に入り、両者間の課題を整理しつつ「何ができて、何ができないのか」を明確にしてプロジェクトを推進していきました。行政機関の人事制度やその運用、そしてシステムの仕組みを理解することに苦労しましたが、コンサルタントとして初のプロジェクトでしたので、コンサルタントとして求められる立場や意識について身をもって学ぶことができました。
庄村
入社当初からかなりチャレンジングな案件だったのですね。その後、入社されて1年ほど経たれていますが、現在はどのようなプロジェクトに携わられていますか。
河野様
人事制度の構築や評価者研修の企画運営をはじめ、統合報告書をどのようにステークホルダーに向けて開示をしていくか、といった内容をクライアントの経営層や人事責任者と共に議論しています。クライアント企業の経営課題やミッション、ビジョンを実現していく中で、どのように人的資本を連動させていくか。人事の問題だけで解決するのではなく、経営という観点から考えていかなければならないのですが、答えがないからこそ人事の奥深さを実感しますね。
取締役会の運営や、人財マネジメントの実践支援を行う指名・人財ガバナンス部
庄村
改めて、指名・人財ガバナンス部の役割・ミッションについて教えていただけますでしょうか。
古川様
我々は、三菱UFJ信託銀行のHR(ヒューマンリソース)戦略コンサルティング部から独立して生まれたベンチャーファームです。まず、当社のサービスからお話をすると、次の4つの部門「指名・人財ガバナンス部」「指名・報酬ガバナンス部」「戦略・リスク・監査ガバナンス部」「サステナビリティガバナンス部」から構成されています。その中でも指名・人財領域をご支援するのが当部のミッションです。
庄村
ちなみに、「指名・人財ガバナンス部」と「指名・報酬ガバナンス部」部門においては、どういった違いがあるのでしょうか。
古川様
簡単に説明すると、取締役会には、取締役の選任や解任を決める「指名委員会」と、役員報酬を決める「報酬委員会」があります。その中で、指名委員会の運営は、「指名・人財ガバナンス部」が担い、報酬委員会の運営は「指名・報酬ガバナンス部」が担うようになっています。つまり「指名委員会」と「報酬委員会」それぞれによってサービスが切り分けられているのです。
ところが、クライアント企業によっては「指名報酬委員会」と1つになっているケースもありますので、その場合は「指名・人財ガバナンス部」と「指名・報酬ガバナンス部」が共同でクライアント企業をご支援していきます。
また、統合報告者や有価証券報告書では、人的資本経営の開示が義務化されましたが、元々はサステナビリティ情報の開示にあたるため、我々はサステナビリティガバナンス部門と一緒にご支援するケースもあります。コーポレートガバナンスは、それぞれ切り分けられているわけではなく、ガバナンス全体が有機的に繫がっていますので、我々は各部門とも常に連動しながらクライアント企業のご支援をしていきます。
庄村
4つの部門は垣根を超えて連携しながらクライアント企業をご支援されているのですね。
河野様
そうですね。我々は、クライアントとなる経営者が企業を成長させていく上で、骨太の成長ストーリーを実現する「執行」体制の確立と、強靭な取締役会を実現する「監督」の体制構築が必要不可欠だと考えています。つまり、経営の執行と監督を両輪で回していくことです。そのため、1つのパッケージでクライアントに対峙するのではなく、経営者としっかりと関係構築し、“かかりつけ医”として価値提供できるかがカギとなります。そのためにはHRGLがOne Teamとなってクライアントのご支援をしていくことが重要であり、そこがビジネスとしての難しさでもあるかと思いますね。
庄村
他社と比較した際に、どういった点でクライアントから御社が選ばれるのでしょうか。
古川様
くり返しになりますが、やはり統合的なご支援ができる点だと思います。部門間の垣根がないからこそ、しっかりと連携した上でサービス提供ができます。クライアントからは、「型にハマった提案ではなく、自社に寄り添って支援してもらえる」といった評価をいただくことが少なくありません。なぜ、それが実現できるのかというと、我々自身が利益重視ではなく、ビジョン達成に向けてコンサルティングを提供しているからこそだと思いますね。
庄村
大手総合系コンサルティングファームから御社に入られる方もいらっしゃるかと思います。御社の魅力はどういった点だと思いますか。
河野様
HRテックやタレントマネジメントシステムの導入などデジタル領域がビジネスの主流となる中で、我々はそこを売りにしていないというのが1つのポイントだと思います。また、一回のプロジェクトで終わらせるのではなく、クライアントのサステナブルな成長を実現するために常に経営目線で取り組むべき課題は何かを考えるようにしています。
労働市場から「資本市場」へ、人的資本経営の流れを受けて変化するマーケット
庄村
続いて、現在のマーケットについてお尋ねしたいのですが、古川様が転職される前と比べてマーケットの変化を感じることはありますか。
古川様
大きな変化を感じています。人的資本経営を背景に人事領域は、社員を対象とする労働市場へのアピールに加えて、資本市場へもアピールしていくように変化することが求められています。資本市場では、人財への投資が自社の企業価値にどうやって繫がっていくのかを考えなければなりません。これは、これまで人事部門ではあまり重視されてこなかった点だと思います。
庄村
今後の人的資本経営の流れとして、ある程度、形式化されていくのか、それとも多様化していくのか、古川様はどのようにお考えですか。
古川様
私は両方だと思いますね。まず、形式化される部分においてですが。人的資本経営においては、経済産業省から発表された「人材版伊藤レポート」がフレームワークとして広く知られています。こうしたフレームワークを活用して、各企業では人的資本経営の在り方を考えているのが現状です。ですから、2024年以降はさらに汎用性のある精度の高いフレームワークができ上がっていくと思います。
一方で、くり返しになりますが、企業はフレームワークに当てはめることが目的ではなく、投資家に向けて自社独自の人財戦略ストーリーを語る必要があります。なぜなら、投資家は経営戦略の実現に蓋然性を感じなければ投資をしないからです。そのため今後はフレームワークの精度が上がりつつも、同時に各企業の独自性が高まっていくと思いますね。
さらに、日本の資本市場の特徴として一般的に言われていることですが、さまざまなダイバーシティや人権の問題がある欧米と比べて、日本ではジェンダーダイバーシティを除いて他社との比較はほとんどできません。そういった点からも日本では、人財戦略ストーリーにおいて“独自性”の重要度が高いのです。
庄村
この領域は日本にとって先進的なテーマだと思うのですが、今後コンサルティング組織としてマーケットの中でどういった役割や立ち位置を目指していますか。
河野様
弊社のミッションでもありますが、「企業の『サステナビリティガバナンス』のエコシステムを構築する」ことですね。先ほども申した通り、我々は今、4つの部門に分かれていますが、クライアントニーズに対応していくためには組織の在り方やサービスに柔軟性を持って支援していきます。
庄村
それは素晴らしいですね。一方で、指名・人財ガバナンス部が抱えている課題や、これからチャレンジしていきたいことはありますか。
古川様
当部の課題は、マンパワーがまだまだ足りていないところですね。クライアントに寄り添える質を担保するためにもメンバーを増やしていくことが喫緊の課題です。
また、今後のチャレンジについてはご支援したサービスの実証までおこないたいと考えています。先ほど「経営戦略の蓋然性を高めていく」というお話をしました。そのために、我々は各企業が人的資本経営を進める上でストーリーづくりのご支援をしていますが、それだけではなく、実現できているか実証も合わせておこなっていく必要性を感じています。なぜなら、実証性を高めていくことが、結局はクライアント企業の価値向上に繫がるからです。
庄村
実際、経営戦略の蓋然性を上げていくためにクライアントの経営戦略にまで踏み込んでご支援されることもあるのでしょうか。
古川様
もちろん踏み込んだ支援をします。クライアントが掲げている経営戦略をベースに、人財ポートフォリオをどうするか、経営戦略を実行するために社員の方たちにどうやって動いてもらうのか、どういった環境を整備するか、といった観点で経営戦略に踏み込んでいきます。一方、クライアントの経営戦略そのものにタッチする場合は、当社の戦略・リスクガバナンス部門がメインで受け持つことがあります。
「社会を良くしたい」探求心を持って貪欲に突き進める人を求めている
庄村
指名・人財ガバナンス部では、どういったバックグラウンドの方がご入社されているのですか。
古川様
当部は、現在20名弱が在籍しておりまして、そのうち人事系コンサルティングファームや事業会社での人事経験のある人たちや、証券会社をはじめとした金融経験のある人たちで構成されています。当部では、人事もしくは金融のどちらかのバックグラウンドがある人がより活躍できる環境だと思いますね。
庄村
実際、指名・人財ガバナンス部ではどういったマインド面やお人柄の方が活躍されていますか。
古川様
一概には言えないのですが、チャレンジ精神が旺盛な方が活躍されていますね。先ほども申した通り、我々のサービスは型があるわけではないため、「これを試してみよう」「こうした方がもっと良くなるのでは」と自分からどんどん良いサービスを追求していく姿勢が重要です。ですから、社内においても自分から貪欲に意見を発信していける方が望まれていますね。
河野様
そうですね。我々は三菱UFJ信託銀行発のベンチャー企業なので、起業家精神としての「アニマルスピリッツを持って事業を推進してほしい」とHRGL・代表の内ヶ崎は常々話しています。
庄村
では、具体的にどういった方と一緒に働きたいと思いますか。
古川様
私個人としては、「社会を良くしたい」という高い志のある方です。コンサルティング業界の中には、企業や社会を良くしようという想いのある人がいる一方で、単純にキャリアに箔をつけたいと考える人たちも少なくない印象です。もちろん、そうしたキャリアの選び方を否定するわけではありません。しかし、我々が目指しているのは、クライアントにとって持続可能な企業経営の力になることです。そうした強い使命を我々は持っているからこそ、大きな志を持つ方と一緒に社会を良くしていきたいです。
河野様
私も同じです。我々のビジネスは、セオリーがなく、経営者が答えを持っているわけではありません。そのため、ある程度、自分の中で「どういう社会を実現したいのか」という軸を持っておく必要があると思っています。そして、決まった答えがないからこそ、一緒に考えていける探求心のある方と一緒に働きたいです。
庄村
組織の雰囲気やワークライフバランスについてもお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
古川様
HRGLは、基本的にリモートワークで、かつ個人に裁量が委ねられているため、客観的に見るとドライな印象を受ける方もいるかもしれません。なので、物理的な空気感を言い表すことは難しいですね(笑)。ただ週次で開催する全社オンライン会議や、社内勉強会、ランチ会など社員間のコミュニケーションを後押しする企画は多くあります。プロジェクトメンバー同士では、思ったことを素直に言い合える風通しの良い雰囲気ですね。
ワークライフバランスについては、プロジェクトの状況によりますが、繁忙期を除くと、自分のペースで業務に区切りをつけ、プライベートな用事や自己研鑽など、自由に過ごすことができます。
庄村
改めて、HRGLだからこそできる業務ややりがいについても教えていただけますか。
河野様
ゼロから自分たちで施策を考えられることです。基本的にまっさらな状態からすべてスタートするため、決められたレールはありません。クライアントに対し、既存の答えを提示することもないのですね。自分たちで考えてクライアントにとって一番いいサービスを提供していくため、泥臭くもあり、客観的に見れば非効率だと感じてしまうかもしれません。しかし、答えがない中で自分で考えるからこそ、自身の成長にもつながるものです。HRGLの環境だからこそ味わえるやりがいだと思いますね。
古川様
そうですね。我々は「これを売ってください」といった決められたサービスを提供することはありません。クライアントが実現したいことに親身になり寄り添った支援ができるのがHRGLならではの良さだと思います。
庄村
では最後に、御社に興味をお持ちの方にメッセージをお願いいたします。
古川様
当社は、創業4年目のまだまだ発展途上なベンチャーファームです。一緒に組織をつくっていきたい、成長していきたいという気概のある方に来ていただきたいです。
河野様
我々が目指す「『ヒト』が輝く社会の“未来設計図”を創造する」というビジョンに共感していただける方に、ぜひ門戸を叩いていただけたらと思います。カジュアル面談も随時おこなっていますので、ぜひ一度お話をしましょう。