ビジネス戦略・マーケティング・テクノロジーの各領域のメンバーが集結し、データ活用による企業変革を支援するインキュデータ株式会社。お客さまに最後まで伴走することで、上流支援だけでは終わらない本質的なDX支援や事業変革を追求することを強みとしています。
今回は、ソリューション本部 ビジネスデザイン部の河井健之助様、マーケティングソリューション部の内山瞳様より、同社を選ばれた理由やチームのミッション、コンサルティングのスタイル、具体的なプロジェクト内容などについてお聞きしました。
ソリューション本部 河井様、内山様のご経歴
小林
まずは河井様から、ご経歴をお聞かせいただけますか。
河井様
私は元々データアナリストとして、主に金融業界の課題に対してのソリューションを提供していましたが、より広い領域のデータやビジネス課題を扱いたいという想いから、外資系エージェンシーに移り、データアナリスト兼ストラテジストとしてあらゆる業界のマーケティング戦略の立案や、クリエイティブのプランニングを担当しました。
その後、グローバル企業におけるデータ統合プロジェクトや、具体的なデータを活用したマーケティングのプランニングをリードしていましたが、本質的なビジネス課題を解決するにはマーケティングというイチ手段だけではなく、より多角的な視点を持った上で、手法に囚われない支援をしたいと考え、フレキシブルに本質的な支援を行っている外資系クリエイティブファームに移籍。あくまでお客さまの本質的課題を解決することにフォーカスし、プロダクト開発や顧客・従業員体験設計といった私たちがクリエイティブや戦略のプロフェッショナルとしてアウトプットを行う支援から、大手企業に社員に対する思考プロセスのコーチングやスタートアップへのメンタリングといったクライアント企業のベースとなる人財のチカラを底上げする支援まで、アウトプットには拘らず非常に多岐にわたる支援を行ってきました。
現在は、インキュデータのソリューション本部ビジネスデザイン部で部長をしています。
小林
御社を選ばれた理由について教えていただけますか。
河井様
外資系エージェンシーやファームの日本支社で働くということは、すなわち海外資本のグローバル企業や、日本からグローバルに進出しているトップ企業との仕事がメインになります。無論そのような企業への支援は非常にエキサイティングな課題に向き合うことができ、チャレンジングで面白い一方で、海外進出をしていない多くの日本企業との仕事はほぼ皆無となってしまいます。コロナ禍で価値観の変化が社会全体で起きた際に、私は日本人であることを再認識したと同時に、非常におこがましいですが日本と日本企業への恩返しとして、少しでも自身の経験やスキルを還元したいと考え、日本全国の大小問わず多くの企業とのコネクションを持ち提案が可能な素地を持つインキュデータへの入社を決めました。
日本人は従来アイデアを具現化したり、改良したりすることには長けています。振り返ってみると世界を変えたイノベーティブなものは結構日本人が作ってきたのに、社会変化への対応が追いつかなかったり、無駄な付加価値を切り捨てられず、ある種こだわりなく変化を厭わない企業や資本主義に従順に行動している競合企業に負けてきてしまったのも事実です。これからは、いかに生み出したものを持続可能なビジネスにしていくかが重要だと考えています。そのような考え方がフィットするのがインキュデータでした。昨年、その考え方を社内でも共通認識化する必要があると考え「アイデアが自走できる世界をつくる。」というパーパスも定めました。
小林
では、内山様のご経歴もお聞かせください。
内山様
私は元々大手人材会社で、自社データを活用したマーケティングのプロモーション企画やお客さまの公式SNSアカウントのコンセプト設計から運用、広告プロモーション設計から運用などを担当していました。
お客さまを担当した際に、エンドユーザの生活が分かるようなデータ、例えば、購入履歴や検索、閲覧履歴などに触れ、自分たちが扱うことのできるデータは、実はもっとたくさんあったのだということに気づかされました。そういったさまざまなデータを扱いながら、多くの会社に対して支援や価値提供をしていきたいという想いから、広告代理店や事業会社も含めて転職活動を開始しました。
インキュデータに参画したのは「お客さまが自社のデータをうまく活用できていない」という会社の課題感に共感し、私もエンドユーザにとって最適な情報が与えられる世界を作りたいと考えたからです。 今は河井さんと同じソリューション本部のマーケティングソリューション部でデータマーケティングコンサルタントとして従事しています。
小林
選考前後で御社に対する印象は変わりましたか。
内山様
選考で社員の方とお話させていただく中で、何のためにこれをやってるのか、ということをしっかり考えた上で判断をする社風なのだと強く感じました。
選考前は、人の話を聞いてくれないとか、理詰めで話されそうだとか、勝手に怖がっていたのですが、実際は全く違いました。
全体を俯瞰し、今何をすべきか考える
小林
河井様がビジネスデザイン部を立ち上げられた背景を教えてください。
河井様
時代に即した価値を適切に社会に提供しビジネスを向上していく上で、データ活用は切っても切り離せない時代になりました。ですので、当社もデータ活用の前段階としてのデータ戦略策定や実行に向けたアクションプランの策定などの支援をさせていただいています。ところが、蓋を開けてみると、データ戦略を作っても各部門が戦略に沿ってアクションしなかったり、経験をもとに業務を行うカルチャーや組織のサイロ化だったりと、データ活用をする上でデータに関わらない部分に大きな課題が眠っていたケースが多々見受けられました。
顕在化している課題の対処療法ではなく、本質的な課題から解決する原因療法としての支援を行うべく、プロジェクト自体をお客さまと一緒に作り、伴走していく部門としてビジネスデザイン部を立ち上げました。 会社のミッション、ビジョンを実現するためにはどういったアプローチをするのかを考えたりといった、バックキャスティングのアプローチも必要だと考えました。
初めは私が一人でそういったところをやっていたのですが、もう少し領域を広げていきたいと思い、部を立ち上げました。
小林
「ビジネスデザイン」について、河井様のお考えをお聞かせください。
河井様
ビジネスデザインと言えば、新規事業を考えることに特化している部門なのかと思われる方も多いと思いますが、そのような狭義の意味ではなく、新規・既存含めたビジネス全体を時系列も含めて俯瞰して、目的をどこに設定するのか、目的を達成するにはどんな要素を満たすべきなのか、その上で今何をすべきか、順序も含めた目的達成のためのストーリーをお客さまと一緒に構築していくことが、ビジネスデザインだと考えています。
一般的なコンサルティングファームでは、すでに課題が見えていて、そこに対してどうアプローチし解決していくかについて考えるケースが多いと思いますが、ビジネスデザインでは最終的な目標から逆算した際に、現時点で足りていない要素や変革すべき課題があるかから定義していく必要があります。
時には、いただいたブリーフと180度違うご提案をすることもありますし、本当に何もない状態からヒアリングやディスカッションを重ね、プロジェクト自体をお客さまと一緒に作り、支援していくことも多いです。
小林
プロジェクトを作る側にいらっしゃるとのことですが、場合によっては、コンサルにそのプロジェクトを上げることもあるのでしょうか。
河井様
そうですね。目標達成に向けて必要な要素を実行していく上でのケイパビリティやプロジェクトのマイルストーンなどを私たちの方で整理した上で、ピッチコンサルのような形でブリーフを作り、どこのエージェンシーに依頼するのか、面接や提案をお客さまと共に評価をして一緒に業務を遂行していくケースもあります。
お客さまの伴走者として忖度なく提案する
小林
コンサルティングファームでは、競合や自社のアセットが分かっていて、ある程度アプローチの仕方も決まっていると思うのですが、御社では具体的にどういったアプローチをしながら課題を掘り下げていくのでしょうか。
河井様
もちろん、市場規模やシェア、目標売上など、経営層ときちんと議論してプロジェクトゴールを設定していくのですが、大事なのは、企業視点だけではなく、エンドユーザ側の視点も含めた両軸で設計していくことです。
特に現場のメンバーに対しては、売り上げを良くすることだけを考えるのではなく、会社の、ひいては自分達の存在意義(パーパス)を意識しながら、エンドユーザの求める価値や体験を洗い出してもらえるように配慮しています。
小林
エンドユーザに向かっていく姿勢やマインドセットを醸成しながら進めていらっしゃるのですね。
河井様
はい。今は仮に商品が良くても、売れないものは売れない時代です。そこをきちんと自覚した上で、エンドユーザが本質的に求めている物はなんなのかを把握することは必須ですし、そうしたニーズの把握だけでなく、プロダクトやサービスに関わらず企業が提供する価値を授受した際に、エンドユーザが感じる不満点はもちろん、どこで気分が高まるのかといった、ジョブ理論で言うところのゲインも常に意識しながら戦略や企画の立案をしていく必要があります。
ただそれが必要だから買うのではなく、それを使うことによって気分が上がるといった情緒的な価値もきちんと押さえておくことが、より多様化している時代においては重要なことです。常に多角的な視点を持ち、常識や慣習といったバイアスを排除しながら、常に懐疑的に考えていくことを、特に意識しています。
小林
お客さまから得る評価に関して、総合系のコンサルティングファームとは異なる部分はどこなのでしょうか。
河井様
大手コンサルティングファームにはそれぞれの強みがあり、当然その強みとなるソリューションに帰結させ、大型案件を受注するという意図があります。お客さまにとっては全てをワンストップで対応してくれる方が一貫性もあり、楽だなと思う一方で、逆に出口が決まっていてアウトプットとしてそれが正しかったのか分からないと振り返るお客さまが結構いらっしゃいます。
弊社は歴史が浅い分、良い意味で忖度せずにお客さまに提案ができる点がバリューにつながっていると思います。
もちろん、データは弊社の強みの一つである一方で、弊社が提供する価値とは全く異なるような部分を先にやるべきと判断した場合には「ほかの会社にまずこういったところをやってもらうべきです」と言える立場でもあるので、そこが評価されていると感じますね。
小林
お客さまのパートナーというイメージが近いのでしょうか。
河井様
戦略コンサルも割と近いアプローチをしていると思うのですが、私たちはディベーターとしてフラットな立場で提言や戦略策定だけではなく、実際のアクションまで伴走していく点が大きな違いだと思います。
小林
従来のコンサルティングから視座を変える必要があるというお客さまからのニーズもありそうですね。
河井様
表層課題と、深層の本質課題が大きく異なるケースが増えて、結果としてニーズは増えたと感じています。
例えば、不動産を中心とした多角経営を行っている会社では、各営業メンバーが保有する顧客情報や成約情報などを会社が統合管理し、非成約時に別の商材を扱う部門へ連携するなど、エンドユーザに対してより最適な価値を届け、企業としての売上を最大化することを構想していたのですが、実際には多くの事業部の営業メンバーから拒絶反応がでてプロジェクトが頓挫したというケースがありました。なぜかというと、自分が持っているお客さまのデータを会社に提供することはお客さまを別部門に取られるリスクがあり、メンバー個人としては不利益に繋がります。既存の人事評価制度は何件成約していくら売り上げたかが絶対的な評価基準でしたから、社員としてはできる限りデータは共有したくないんですね。
データのサイロ化が課題として表面上見えていても、会社の人事評価制度やカルチャー課題が深層に控えているように、企業が取り組むべき問題は非常に複雑です。部門を跨いで複雑化しているため、問題が顕在化した際に、視座、視野、視点を変えて語れるビジネスデザイナーが必要とされていると感じています。
小林
内山様はビジネスデザイナーについてどのようにお考えですか。
内山様
コンサルティングには「ここにゴールがあります、最適な道はこれです」というように働きかけるセオリーがあると思います。その道だけ見ていたらもう直進しかないわけですが、本当はもっと枝分かれしている道があって、その道には花が咲いていて、天気は雨でとか、さまざまな要素があります。今までは直進が最速だと思っていたのですが、本当はそうではなかったと気付きました。
ゴールは同じかもしれませんが、そこまでの道のりも考えること、俯瞰して見た中でそれが本当にエンドユーザ、お客さまにとって良いのかどうかを考えることが大切だと、河井さんの仕事を見ていて強く感じます。
お客さまの自走を促すことで良い循環を生む
小林
具体的にどういった案件事例があるのかお教えいただけますか。
河井様
現在、ある化粧品メーカーと一緒に、デジタルを活用した、プロダクト価値を上げるための組織づくりに取り組んでいます。インバウンド需要が激減し、化粧品の売り上げが低迷したコロナ禍の時期に、社長を含めた経営陣と共に、企業としてどこに向かうべきかを討論させていただきました。その結果、ブランドアイデンティティがコモディティ化してしまった中で、企業として社会に対して提供すべき本当の価値を今一度見つめ直すために、従業員のマインドセットを変えていこうということになりました。プロダクトの優位性だけを一方的に押し付けるのではなく、エンドユーザにプロダクトを含めてどのような体験を提供し、どのような状態になってもらうのかといった心情まで含めて、顧客目線で考える専門部署を作り、新しいミッション・マインドセットを持った組織の立ち上げから現在も伴走支援をさせていただいています。
去年から内山さんもプロジェクトに参加していて、現在はそこの部門の方々ができる限り自走ができるよう、自然に受け渡していけるような支援を行っています。
小林
お客さまに自走していただくところも、ビジネスデザイン部の特長だと思います。具体的にどうアプローチをされているのでしょうか。
河井様
最初のフェーズは、私たちがプロとしてその領域を引っ張っていく。結果が出ないとプロジェクトが続かないので、まずはきちんと結果を出すことにコミットします。
次のフェーズは、こちらが進め方などをアドバイスし、お客さまには実際に手を動かしてもらいます。ツーマンセルで動き、どんどんお客さま自身でやっていただく領域を増やしていきます。 よく、「お客さまが自走したら、ビジネスが成り立たないんじゃないか」と言われるんですが、私はそうは思いません。私たちが業務を引き渡すことで、ルーチンワークが効率的に進み、結果が出る。それによって新しいプロジェクトが立ち上がったり、新しいアイデアが生まれた時、それを実現するためにまた私たちにお声がけいただく。そんな風に良い循環が生まれてくることを、実際に支援させていただく中で実感していますし、そういう状態をどんどん作っていきたいと思っています。
自分の世界が広がることで成長を実感できる
小林
内山様にとって、御社はどのような会社ですか。
内山様
多様なバックグラウンドを持った方がいて、それを生かそうとしている会社だと思います。とはいえ、自分がやりたいことだけを極めるのではなく、会話をして何かを一緒に生み出していくこともできます。そういう会話をビジネスデザイン部の方としていると、自分の思考や視野が広がっていくのを感じますね。
小林
具体的に、そのように感じたエピソードはありますか。
内山様
まさに、今やっている化粧品メーカーの案件では、お客さまからのご依頼に合わせてサービスを提供するだけではなく、なぜこのような依頼がきたのか、依頼通りのサービスを提供したら本当に課題は解決されるのか、そういった本質的な課題を探る議論を活発に交わしています。
プロジェクトオーナーでもある河井さんは、お客さまから依頼されたことをそのまま実行するのではなく、本来のあるべき姿に向けて必要な要素を踏まえ、議論や提案をした上で業務遂行することを常に意識できているか?についての確認を全てのメンバーへ徹底されているように感じます。依頼されたことはエンドユーザの顧客体験向上に本当に帰結するのか、+αやらないといけない要素はないか、最終的にお客さまのビジネスにどれだけインパクトを与えられるか、といった業務実行における”Why”と”What”を持った上であれば、それを実現する為の”How”はメンバーに委ねてくれます。
私が「こうしたいです」と言うと「なぜそれがしたいの?」「そうするためには何が必要だと思う?」と問われます。「何のために」「何を」「どう実行するか」を、目的からずれることなくプロとしての自信を持った上で、自分の言葉で語れるまで真摯に考えていきます。そういったところで視野を広げ、思考を深めて一緒に作り上げているのだと強く感じています。
ビジネスデザイン部の方メンバーと仕事をすることで、このような考え方が浸透してきていると思いますし、私自身も自分のスキルを生かしながら成長できていると思います。
個と個が掛け合わさって何倍にもなる、まさにそんな会社です。
個で戦える力とコラボレーションの相乗効果
小林
ビジネスデザイン部はどのような人材を求めているのでしょうか。
河井様
お客さまの今ある課題だけでなく、潜在的な課題に対応できる人材でしょうか。
例えば、お客さまに「月に行きたい」と言われたら「じゃあ行きましょう、どうやりましょうか」と直ちにバックキャスティング思考もできて、そしてなにより難しい課題を楽しいと考えられる人。お客さまの「こうなりたい」を一緒に作っていきたい人が向いていると思います。
小林
大手の縦割り横割りが決まった中では、染み出す要素や白地が少なくもどかしさを感じることがあると聞くのですが、ビジネスデザイン部では本当にやるべきことを模索し、実行していけるのですね。
河井様
まさに。弊社は「With Confidence. Have Confidence. Win Confidence.」を行動指針としています。「Confidence」は自信以外にも大胆さや信頼など多くの意味を持っています。
自分の言葉で語れるまで考え抜き、自信に満ちたプロフェッショナルであると同時に、一定の図々しさや大胆さを持ち合わせ、前例や固定概念に縛られずに個の力を発揮して欲しいですね。そういったものを提供していくと、お客さまからもチームからも自然と信頼が得られると思います。
チームとしても、会社と領域とソリューションで選ばれるだけではなく、個で仕事が取れるように意識をさせながら育てることを意識しています。
無論、個で出来る領域はある程度限られてもいますから、出来る部分と出来ない部分を明確化し、出来ない部分はメンバーと一緒に取り組み、その結果、掛け算のように大きな効果をもたらすことが理想です。そのために会社があると思っていますし、チームがあると思っています。
小林
実際にどのような人材が入社されているのでしょうか。
河井様
今いるのは、元家具デザイナー、元映像作家、元広告代理店営業、元ECの新規事業室といった、バラバラの経歴、バラバラのミッション、バラバラの視点を持ったメンバーです。みなさん何かしらオタクな領域を持っていて、かつ俯瞰して物事を捉えることも出来る、視野を広くしたり狭くしたり、行ったり来たり出来る人が入社しています。
小林
多様な方が集まっていますが、どんなチームを目指されているのでしょうか。
河井様
例えるなら、昔の少年漫画でしょうか。仲が良いけど、たまに殴り合いの喧嘩をして、最終的に土手で笑い合うみたいな、あんなイメージですね。
お互いの強みを認めた上で、よりお互いを高め合うために忖度なくメンバーが議論することで、結果的にソリューションに縛られず、お客さまのパートナーとしてビジネスにコミットできるスキルもマインドセットも醸成できると思っています。