医療データの分析やテクノロジーに関する豊富な知識を武器に、製薬会社や医療機関へのコンサルティング、製品導入支援などを行うIQVIAソリューションズ ジャパン合同会社。今回のインタビューでは、昨年発足したInnovative hub & DX consultingチームのチームリード 遠藤 祐也様、アソシエイトプリンシパル 許 楽様、ITコンサルタント 櫻内 華恵様に、チームの特徴や取り組みについてお聞きしました。※2024年7月時点での情報です
Innovative hub & DX consultingチーム 遠藤様、許様、櫻内様のご経歴
小野
皆様のご経歴や、御社に入社した理由についてお聞かせください。
遠藤様
私は大学卒業後、複数の会社で約20年間コンサルタントとして活動してきました。その間に海外に駐在で行ったり、製薬会社内のコンサルティングチームを作ったりと、いくつかの業界軸、サービス軸で活動してきました。
IQVIAはテクノロジー事業やマネジメントコンサルティング事業だけではなく、リアルワールドデータを活用する事業や、コントラクトMRを派遣するCSO事業など、多様な事業を展開しています。これらの事業の価値を最大限に生かし新しいテクノロジー領域でのサービスを提供できると確信し、昨年2月にジョインしました。入社後はInnovative hub & DX consultingチームを1名体制で立ち上げました。このチームは現在、15名体制になっています。
許様
私は中国の大学を卒業した後、グローバルIT企業に入社しました。その後、日本支社に派遣されて1年ほど仕事をした後、日本の大学院に進学しました。大学院修了後、通信キャリア、日系コンサルティングファーム、外資系コンサルティングファームに勤務し、昨年9月にIQVIAにジョインしました。
入社した理由は、コンサルティング業界の中で2つの軸の強みを持てる人材になりたいと考えたからです。ドキュメンテーションやファシリテーションなどのコンサルティングスキルに加え、業界の軸やファンクションキー軸の強みを作りたいと考えていました。
もともと製薬業界に関するプロジェクトは経験したこともあり、面白さを感じていました。さらに入社前、Technology Solutions事業を率いる西や遠藤と面談し、チームの良い雰囲気や自身が成長できる環境にも魅力を感じ、ジョインしました。
櫻内様
私は大学院を卒業後、コンサルティングファームで4年ほど働き、昨年の6月頃にIQVIAにジョインしました。
もともと大学院で製薬や神経科学の研究をしていたこともあり、製薬分野とコンサルティングを掛け合わせた仕事を探していました。そんな中、遠藤との面接で、IQVIAにはコンサルティングだけではなくデータに強い人もいるほか、別の企業や大学などともさまざまなソリューションを生み出していると聞きました。そのような環境で自身のコンサル力を高め、活躍していきたいと思いました。
「コンサルティング」「生成AI・マシンラーニング」「グローバルプロダクト調査」の3つのサブチームが連携
小野
IQVIAにおけるInnovative hub & DX consultingチームの役割やミッション、立ち上げの背景を教えていただけますでしょうか。
遠藤様
私が昨年2月にチームを立ち上げたときの最大の課題が、製薬会社の中に導入したITツールの持つポテンシャルを十分発揮されていないお客様 いらっしゃるということでした。こういったお客様には往々にして、ツールの導入ありきでITを取り入れたが、それがユーザーに届かない、あるいはユーザーが期待していたものとギャップがある、といった課題がありました。そのため、なぜツールが必要なのか、ツール以外で必要なものは何かを顕在化するためにツールとお客様の課題をブリッジする役割を担うチームを立ち上げました。
さらに、今年からはこのチームで、新しいテクノロジーの価値をいかにお客様業務の中で最大化するかを追求しています。多種多様なテクノロジーのなか中で、本当にお客様の課題解決に必要なテクノロジーは何で、どのように使えば価値が出せるのか。こういった観点は、IQVIAが保有していたツールでも、新しいツールでも、他社様のツールでも同じことが言えると思います。
小野
経営とシステムを結びつけるため、チームを立ち上げたということですね。現在のチームの規模や、メンバーの経歴を教えていただけますか。
許様
チーム内には、コンサルティングチーム、生成AIを中心とした新規テクノロジーをソリューション化する開発チーム、マシンラーニングを中心としたIQVIAグローバルプロダクトの日本展開を推進するチームの3つのサブチームがあります。
コンサルティングチームの5人は、1人は新卒社員、それ以外の4人は他のコンサルティングファーム出身、残り2チームのメンバーはエンジニアとしての経験がある社員が中心です。
小野
3チームの特徴や強みは何でしょうか。
遠藤様
コンサルティングビジネスは、私がジョインした20年前に比べて巨大化しており、特にシニアコンサルタントやアソシエイトマネジャー、マネジャーレベルの方々は、新しいことを始める余地を感じられないかもしれません。ですが、弊社のテクノロジーコンサルティングチームはまさにゼロから立ち上がっているため、シニアコンサルタント層の方が主体的に新しいビジネスやサービスを作っていける環境です。
新規ソリューション・マシンラーニングチームの最大の特徴は、データからアプリケーションまでの一貫した技術を持っている点です。
生成AIは爆発的に需要が伸びていますが、多くのお客様が活用方法について手探り状態だと思います。こうした生成AIの活用に向けて、技術者とコンサルタントがタッグを組んで提案できる体制になっていることが2点目の特徴です。マシンラーニングは、MRの行動を推奨するリコメンデーションエンジンも、医師に情報提供するためのシナリオもすでに多くのお客様に採用されています。そのため、マシンラーニングチームでは、こうしたものをより早く正確に入れてお客様に価値を届けられるよう、改良を重ねています。
3点目は、他部門の知見も得て、一緒に提案しているということです。たとえば、MRの方々に対して生成AIやマシンラーニングの利用を提案することが多いですが、弊社はコントラクトMRの事業を展開しているので、社内にMRがいます。そのため、MRとともにシステムを検証した上で、提案をしています。
グローバルで作っているプロダクトを新しく導入するチームでは、海外とのコミュニケーションの機会が頻繁にありますが、その際に必要な英語力や技術力も持ち合わせています。ちなみに、社内では英語ベースでのコミュニケーションをライティング、ミーティングで7割ほど取り入れています。15人ほどのチームに7カ国ほどのメンバーが集結しているという背景もあり、英語の活用機会は多いです。
社内の連携と、お客様からの信頼を武器に、スピード感あるコンサルティングができる
小野
チームが取り組んでいる直近の案件をお話しいただけますか。
許様
ある医療機器メーカーのお客様のケースでは、今までフォローできてない医師をどうフォローし、アプローチしていくかを試行錯誤していました。
ワークショップを通じて、これまでの医師に対するアプローチに加え、これからは患者さんが「このメーカーの製品を使いたい」といった決定権を持つようになってくると考え、医師へのアプローチに加え、該当の疾患を持つ患者さんにもアプローチすべきという共通認識が醸成されました。
ではどのように患者さんにアプローチすべきなのか。今は患者さんもインターネットで自主的に病気に関する知識を収集しているため、疾患の知識を普及するサイトを立ち上げ、お客様の製品と結びつく導線を作りたいと考えました。お互いにアイデアを出してまとめ、最終的には疾患の知識を普及するサイトを立ち上げて、お客様のサイトや、お客様の製品を使っている医師を紹介するホームページへの導線を作りました。
さらに患者さんからの問い合わせに対し、営業の方がアフターフォローする仕組みも作りました。
小野
櫻内様はいかがでしょうか。
櫻内様
別のコンサルティングファームと何年か契約をしていた製薬会社様から、コンサルティングファームが何をしているのかを見えるようにし、必要がない部分は取り除いてほしいという要望をいただき、その課題に取り組みました。
お客様に対しては最初に「われわれの提案ですべては解決しないと思います。そのコンサルティングファームも極めて優秀なので、取り組んでいることはそれほど的外れではないでしょう。ただ、今もやもやしている部分の解像度が上がると思います」とお伝えしました。するとお客様からは「それがずっとできなくて、やりたいところなので、ぜひ協力してください」と言っていただきました。まさに、お客様の困りごとに対してご提案できたのだと思います。
このお客様はもともと、弊社の別の事業を高く評価してくださり、このメンバーに対して「何かできないか」と声をかけてくださいました。そして翌日には私どものチームが直接お客様に会い、その日その日のうちにほぼプロジェクトの実施が決まりました。そのくらい私たち私どもInnovative hub & DX consultingチームは社内での横の連携ができていた上に、お客様からの信頼もあったからこそ結実したものでした。
過渡期を迎えるヘルスケア市場では、「面」でできるかが求められている
小野
市場環境の変化についてお聞きします。生成AIやマシンランニングの発展に加え、ヘルスケア業界では規制などの外的要因への対応も求められます。御社はこうした変化にどうあたっていくのでしょうか。
遠藤様
日本における医薬品事業、ヘルスケア全体の環境は現在、過渡期を迎えています。
薬価改定のサイクルが変わり、医師の働き方改革が始まるという状況の中、さまざまな会社が大きな変革をしています。製薬会社によるMRの削減のニュースを皆様も耳にしたことがあると思います。
一方で、解かなければならない課題は、いかに適切なお薬を患者さんに届けていくか、いかに世の中の方々が健康を維持できるのかということです。こうしたミッションを実現するためのサポートを、事業環境が変わっても続けていく必要があります。
外部環境は複雑化し、お客様の課題は多岐にわたっています。その中で、1つのコンサルティングファームが1つの課題を解決するだけではもはや足りなくなっています。コンサルティングファームとして総力戦で挑み、一見シンプルな「お薬を届ける」ということをいかに高度化していくかが重要です。
そういった中で私どものような総合ヘルスケアサービスプロバイダーは、コンサルティングやIT、データ、人などの「面」でのサポートで、確かな価値を届けていけると考えています。私ども単体でできない部分についても、他のパートナー企業や、自治体などとも協力してサポートします。
また、私たち私どもIQVIAではそういった協力や連携、コラボレーションを戦略的に推進してもいます。それは社内外を問いません。社内であれば様々さまざまな英知、スキル、ケイパビリティを部門間で繋ぎつなぎ、社外では多くのステークホルダーの皆様との連携を図っています。そうした繋がいつながりや連携によって総合力を発揮するアプローチを、IQVIAでは私たちならではの強みとしており、私たちわれわれはこれを「Connected Intelligence」と称しています。「Connected Intelligence」のコンセプトの下、多角的なアプローチで社内外のインテリジェンスを有機的に繋ぎ合わせるつなぎ合わせることで、お客様の課題の解決に向けた最適なソリューションの創出に尽力しています。
小野
コラボレーションが非常に重要ですね。
遠藤様
はい、この「Connected Intelligence」のアプローチは、とても非常に大事です。これは私たちIQVIAの主要なお客様である製薬業界の中に限らず、IQVIAではライフサイエンス業界や社会を見据えています。例えばたとえばその重要なステークホルダーとなるのが、IQVIAがグローバル全体で重要視しており、日本でもトップにより定められたプライオリティの下で取り組みを進めている「PPG=Payer(保険者)、Provider(医療機関)、Government(政府)」です。PPGとしっかり連携や協働をしつつ、事業としてヘルスケアの進展に貢献していくということをミッションとして掲げています。
小野
特に最近増えてきている案件はどのようなものが多いのでしょうか。
許様
私が感じているのは、案件の二極化です。
日本への進出が活発化している大手外資系製薬会社は潤沢な資金を持っています。社内にいろいろなシステムが導入されていますが、どのシステムがどんな役割を果たしていて、本当にそのシステムで自分たちの経営目標を達成できるのかを把握し、社内システムの整理整頓をすることはトレンドだと思います。
一方で内資系製薬会社には、まだテクノロジーで価値をもたらす余地が多く存在しています。その場合は、その会社の規模やビジネスモデルに合わせ、システム導入が必要なのかを見極める必要があります。たとえば、日本市場で戦う製薬会社はMRの採用を課題として抱えています。システムでMRのスキルをカバーして、システムとMRとの連携や協調体制を検討します。
ヘルスケア業界への思いとオーナーシップを持った人材に来てほしい
小野
どのような人材に入社してほしいですか。
遠藤様
まず絶対的に必要なのは、ヘルスケア業界に対しての思いです。薬学部出身の方や、別のファームで製薬会社を支援してきた人、あるいは医療従事者が家族にいる人など、さまざまなバックグラウンドのメンバーがいますが、共通しているのはヘルスケアビジネスに貢献したいという思いです。
その上でぜひオーナーシップも持っていてほしいと思います。オーナーシップという言うと、シニア向けの言葉に聞こえるかもしれませんが、ジュニアや中間層であったとしても発揮できるはずです。
お客様の課題を最も理解しているのは、現場にいる最前線の若手メンバーです。こうしたメンバーが主体的に事象を把握していくことが、マネジャー層と正しい解決策を導くことに必要ですので 、オーナーシップをもち、プロアクティブに動いていきたいという人は歓迎します。
逆に言うと、マネジメント層に言われたことをやっていればいいという考えの方は苦しくなると思います。JD(ジョブディスクリプション)が明確に切られているわけでもなく、新しい組織のため、主流となるサービスメニューも何度か変わっており、その中で求められる役割もかわって変わっています。こうした中でも、「こんなサービスをやりたい」と声をあげる人は活躍できるはずです。
小野
求めるスキルはありますか。
遠藤様
コアコンサルティングスキルと、それを周囲に伝播する力です。たとえば言葉の使い方や、「1スライド1メッセージ」という考え方など、コアコンサルティングスキルをもった上で、その考えを周囲に広げていけるようなマネジャーレベルの人を求めています。IQVIAは全員がコンサルティング出身ではなく、様々な専門家の集まりで構成されています。そのため、自分とは全く違うバックグラウンドやスキルを持った方といかに効果的にコミュニケーションをとり、物事を進めていくかなど、学べることがたくさんあります。
小野
これからヘルスケア領域にチャレンジしたい方も対象になるのでしょうか。
遠藤様
理想はヘルスケア領域の経験をもつ持つ方ですが、これからチャレンジしたい方に対してもオープンです。経験のある方は特に優遇しますが、職位によるところがあります。
ヘルスケアスタートアップCxOへのキャリアパスも
小野
御社だからこそできることは何でしょうか。それによってどんなキャリアが広がっていくのでしょうか。
遠藤様
新しい組織となるのでキャリアの幅もこれから作られていく部門になります。
Technology Solutions事業で見ると、テクノロジー事業の一部ソリューションや、コマーシャル領域中心で運用している事業の幅を拡大し、その領域を担う責任者の立場などが考えられます。また、IQVIA全体でみると、リアルワールドデータの事業やCSMSの事業など、コンサルティングスキルとテクノロジースキルの両面が必要な場面は多くあります。社内のこうした事業で中核を担う人材になるというキャリアパスが考えられます。
一方で、技術的なバックグラウンドが強く、これからコンサルティングにチャレンジしていきたい方は、システム導入のPMからコンサルティングにシフトしていくキャリアも考えられます。
小野
採用したいマネジャー層の方の中には、セリングについて気にされる方もいらっしゃいます。御社の場合、新規に飛び込みで案件を獲得する場合が多いのでしょうか。それとも他のグループやチームから案件が舞い込んでくるのでしょうか。
遠藤様
両方あります。ただInnovative hub & DX consultingチームとしては、新規獲得案件も作っていかなくてはいけないと考えています。その際には、社内の営業組織と連携しながら提案を持っていきます。ですから、マネジャーが飛び込み営業をするというケースはありません。ある程度、アカウントや営業担当、あるいは私やTechnology Solutions事業を率いる西がディテールチェックを終えた段階で、提案の初期ディスカッションからメンバーが入ってくるイメージです。
ただ、セリングに挑戦したい人の余地は常にあります。もちろん、SME的に突き詰めていきたいという方、あるいはコンサルスキルを社内で多くの人に伝えていきたいという方がいれば、そちらに注力するキャリアパスも考えられます。
許様
製薬業界やヘルスケア業界の中で、IQVIAは知名度が高いです。IQVIAだと知るとお時間を割いてくださるケースが多い印象です。それだけ、お客様の期待も高いのでリサーチや事前準備が求められます。
遠藤様
IQVIAはフォーチュン誌の「世界で最も賞賛される企業2024 」で3年連続ヘルスケア部門ランキング1位を獲得しています。そういった点からもこの業界におけるお客様からの認知度と信頼は圧倒的です。
年次に関係なく意見を言える雰囲気が魅力
小野
実際に働く中で、チームや人の雰囲気について、どんなところに魅力を感じていますか。
許様
私は複数の日系外資系ファームを経験してきました。あくまで私自身の経験ですが、これまでは上司からの厳格なトップダウン型のオペレーションでした。もちろんコンサルティングの基本指導は重要ですが、現場の視点をもつことがとても重要です。その点、IQVIAは自分の意見を自由に言える会社です。遠藤やTechnology Solutions事業を率いる西の傾聴を大事にするコミュニケーションスタイルを尊敬しています。
櫻内様
コンサルティングファームはトップダウン型で、「駄目、やり直し」というトライアンドエラーを繰り返して鍛えていくというイメージがありました。しかしですが、IQVIAは皆チームとして話し合い、年次に関係なく意見を言える雰囲気があります。話しやすく働きやすい環境だと思います。
小野
出社やリモートの割合はどれくらいですか。
許様
お客様の希望に合わせます。今のお客様にはそれほど強く出社を求められていないので、リモートが多いです。
小野
コミュニケーションはどのようにとっていますか。
許様
Teamsで連絡をとり合い、定期的な1on1、チーム内でのミーティングも実施しています。
遠藤様
Teamsで「今から5分話せる?」と連絡して、話すことが多いです。
許様
メールを書く時間と読む時間を考えると、話した方が早いですね。
遠藤様
私はお客様次第で、出社することが多いです。出社すると別の部門の人と顔を合わせて話し込むという偶発的なコミュニケーションもありますね。