今回は、株式会社KPMG FAS内に新しく立ち上がったオペレーション人材チームGreater Operation Practice(以下GOP)を率いるパートナー岡本晋様、稲垣雅久様へのインタビュー。なぜ今オペレーション人材を統合したチームを立ち上げたのか、その背景やGOPの特徴、また同チームが求める人物像などについてお聞きしました。
「事業戦略=オペレーション戦略」と考える企業の増加から、オペレーション人材を統合したGOPチームを立ち上げ
田中
まずは、お二人のこれまでのご経歴について教えていただけますか。
岡本様
私は銀行でキャリアをスタートし、その後コンサルタントに転身しました。最初は大手ERPベンダーで会計モジュールのコンサルタントとして従事しましたが、結果としての会計だけでなく、その結果を導くオペレーションについても突き詰めたいという希望からサプライチェーン領域のコンサルティングにも関わるようになりました。その後は国内及び外資系のコンサルティングファームにて、サプライチェーンマネジメント改革のコンサルティングを多数経験したのち、KPMG FASに入社しました。
当時、当社ではPMI領域を強化する方針がある中で、M&A後のサプライチェーンオペレーションの統合やシナジー創出の支援ができる人材を募集していました。それまで培ってきたオペレーション改革の知見を、PMIという領域にストレッチしてクライアント企業に貢献したいと考え、当社にジョインすることにしました。
岡本晋様
稲垣様
私は大学卒業後、すぐに外資系コンサルティングファームに入社しました。そこでは製造・小売・流通など、いろいろな業界を経験しましたが、そのベースとなるのはサプライチェーンです。例えば経営陣直下のグローバルなサプライチェーン改革など、大きなプロジェクトもあれば、コスト改革や直接材の調達改革など、直接現場に携わることもありました。そのファームに28年在籍したあと、KPMG FASに移り、2021年5月で4年になります。
当社の面白いところは、ただクライアントの仕組みづくりをお手伝いするだけではなく、ビジネスにおけるディールの部分まで踏み込んだ「外科手術」までを請け負えるというところです。ここなら、経営者や株主の視点に立った大きなビジネスができると確信し、当社を選びました。
稲垣雅久様
田中
今回、御社内にGOPチームを立ち上げた経緯について教えていただけますか。
稲垣様
世の中でオペレーションが経営に直結するケースが増えていることが大きな理由です。今までは、事業戦略が最上位にあって、その次の層でオペレーションの議論が出てくるといったように、「あくまでオペレーションは2階層目」と考える企業が多くを占めていました。
しかし現在は、「事業戦略=オペレーション戦略」と考える企業が増えています。
田中
マーケットの状況の変化により、オペレーション領域に新しいニーズが生まれているということでしょうか。
岡本様
例えば、今まではサプライチェーンの領域ではQCD(品質・コスト・納期)のパフォーマンス向上や効率化に関する相談が多数を占めていました。最近ではサステナビリティ、コンプライアンスの部分を経営層が重視し始めています。
ここ数年、私が支援しているグローバルサプライチェーン改革では、国際貿易における関税規制や各国におけるサステナビリティ関連の規制へのコンプライアンスに関して、グローバルでガバナンスを強化するというテーマが新しく立ち上がっています。クライアントのマネジメントと話をする中でも、「攻めのサステナビリティ」というキーワードも聞かれるようになり、サステナビリティが会社の重要アジェンダになっていることが伝わってきます。我々も、既存のサプライチェーンで取り扱ってきた範疇を見直し、拡大していかなければならないと感じています。
稲垣様
つまり、これまでは世界中の企業が「効率化」「コスト」を最優先にして、ボーダーレスにオペレーションを構築していました。しかしBCP(事業持続計画)を考慮すると、むしろボーダーフルでないといけなかったり、効率化やコストより、持続性を重視して構築する必要が出てきたりしています。
また、今回のコロナ禍により、企業がもともと潜在的に抱えていたリスクが一気に噴出しました。前々から業績が伸び悩んでいた企業が一気に倒産に追い込まれるなど、本来は5年でゆっくり起こることが、5か月で一気に起こっています。
我々が問題視しているのは、バリューチェーンの連鎖の中において、良い技術を持っている会社や組織が、業績が悪い自分たちのクライアントと一緒に沈みつつある点です。その地盤沈下状態からどうターンアラウンドしていくかという、再生局面の案件が増えています。そのような場合、財務面のリストラクチャリングだけでなく、オペレーションも含めて見直さなければなりません。このようなオペレーション重視の状況に合わせ、今回GOPというオペレーション人材を統合したチームを当社内に立ち上げました。
田中
その中でも、特にGOPとしてどういう人材を強化していきたいでしょうか。
岡本様
いろいろありますが、一つ挙げるとすれば「再編」を扱える人材です。例えば欧州のビジネスを見直すといった大規模な再編レベルの領域がありますが、これはは絶対に強化したいと考えています。
「バリューチェーンをどう組んでいくのか」が骨格であり、そこに対して「ビジネスモデルはこれで良いのか」と問いかける。例えば、「過去に作った拠点や法人が、今でも本当に必要なのか?」「この国から物を運んでいるけど、それは正しいことなのか?」「こんなに物流コストがかかるのであれば、物を作らずにライセンスビジネスをやったほうが良いのでは?」といった問いです。
バリューチェーンのノウハウを、事業モデルのレベルにまで高めて勝負したい。そこには当然オペレーションの知識が必要ですし、勿論ビジネスモデルを考えるための経営管理・財務会計の専門家と語れるだけの知識も必要になります。オペレーションを軸に自らをどんどん高度化させ、当社内の専門家、さらにオールKPMGとしての取組みをリードできるような人材を育成していきたいと考えています。
GOPチームは、税理士法人、監査法人、コンサルティングを繋げ、あらゆるオペレーションの課題解決に導く
田中
今回新しくGOPという組織を立ち上げるにあたり、こだわった点などお聞かせいただけますか。
稲垣様
我々が一番こだわったのが、「人材」という切り口・軸です。組織の枠組みと人材の枠組みは、必ずしもぴったりと当てはまるわけではありません。コンサルティングファームにおいて、オペレーション人材は複数の組織にまたがり、分散して配属されているケースが多くあります。当社でも基本的な組織はサービス軸で構成されているので、オペレーション人材が複数の組織に分散しています。今後、人材をどう育成するか、どこにアサインして、どう成長してもらうかという視点で見たときに、これからは既存の組織の枠組みではなく、もっと「人」に焦点を当てた組織設計が必要だと考えました。
これらを通じて、一人一人がオペレーションの専門家として様々な局面で価値を提供し、成長できるという点で、個人にとっての大きなメリットがあります。
田中
立ち上げから間もないGOPですが、今後どのような強みを打ち出していきたいとお考えですか。
稲垣様
「大局観・現場感・スピード感」の3つが、他の総合コンサルティングファームとの違いであり、我々が今後打ち出そうとしている強みです。クライアントの課題を短い期間で的確に捉え、重点的に施策を展開し、企業のパフォーマンス向上に直結するような成果を出せる人材を育てていきたいと考えています。
田中
クライアント企業は、GOPチームにどのような期待をかけていますか。
岡本様
オペレーションを取り巻く状況については先ほどお伝えしましたが、事業再編も含めた複雑な経営課題をどう具体的な戦略に落とし込み、さらにそれを動かすオペレーションにどう落とし込むか。オペレーションの問題はオペレーション以外の知見もないと解決できません。税務、リスク・ガバナンス、デジタル技術活用など、さまざまな分野の専門家とコラボレーションしながらデリバリーする、そういったところが当社におけるオペレーション人材の強みであり、クライアントからの大きな期待ですね。
「チーム育成」「アーキテクト」の視点や経験を持つマネージャー層を求めている
田中
クライアントから求められていることに対して、「ここがまだ足りていない」「ここがチームの課題」というのはありますか。
岡本様
我々のチームには、コンサルティングファーム出身者だけでなく事業会社で需給調整や調達の実務を経験した人など様々な専門家が所属しています。彼らはモチベーションが高く、自分の専門分野を広げたいと、プロジェクト内外で日々努力してスキルアップしており大変助かっています。しかし、まだ人数が足りていません。特に事業再編など高い視座が必要となるプロジェクトを全体感を持ってデリバリーできる人材、ランク的にはマネージャー、シニアマネージャー、ディレクターに当たる人材が不足しています。
稲垣様
アーキテクトとしての視点を持つ方が求められています。現場感を持っている人材は集まりつつありますし、日々の仕事でも鍛えられています。アーキテクト的な視点を持つ人材を、どう育てていくかが課題ですね。
田中
現在、御社におけるオペレーション人材は何人位いるのでしょうか。
稲垣様
約30名ですが、非常に需要が多い領域ですので、これから拡大していきたいと考えています。
田中
案件を作りつつ、かつ人材育成もできる人材が必要ということでしょうか。
稲垣様
そうですね。社内の若手をとにかく早く引き上げていくことも考えていますが、是非外部からも、高い志の方に入ってきてほしいですね。
田中
御社に転職後、チームで活躍できている人の特徴を教えて下さい。
稲垣様
オペレーション人材に限りませんが、「素直な人」が圧倒的に伸びます。クライアントのことを素直に考えられる人です。
我々のクライアントは、ステークホルダーが多いのが特徴です。M&Aであれば、対象の会社があり、売りたい株主と、買いたい株主がいます。誰が何を思っているかをフェアに考えないと、良いディールにはなりません。融資元の金融機関であればメインがあって、さらにサブメインなど複数の金融機関があり、対象会社があり、顧客があり、仕入先があり……さまざまな人たちの思惑が複雑に絡み合う中で、我々はフェアに考えなければいけません。それを実践しようとすると、素直に色眼鏡なく物事を見なければいけません。
田中
ありがとうございます。最後に、御社を志望する候補者について、一言ずついただけますでしょうか。
岡本様
当社は本当に面白い会社です。仕事のバラエティが豊富で、多様性があり、成長できる環境です。私自身、まだまだ勉強することがたくさんあります。学ぶことをエンジョイできる方に是非ジョインしていただいて、一緒にエキサイティングなプロジェクトにチャレンジしていきましょう。
稲垣様
私も当社に入ってから、勉強することばかりです。コンサルタントとして長く活躍して来られた方でも新たに学ぶことは多く、もしかしたら自信を失ってしまうことがあるかもしれません。むしろそれくらいの環境に身を置きたいというスピリットのある方に、是非挑戦してほしいです。本当に成長機会にあふれた面白い会社です。