今回は、会計システムの構想策定や、経理業務プロセスの効率化などCFO領域のコンサルティングを手掛けるKPMGコンサルティングのFinance Strategy & Transformation(以下FST)チームを率いる、パートナー後藤友彰様、立川智也様へのインタビュー。同社に入社された背景や、今のマーケットにおけるFSTの案件状況や求める人物像の変化、また同チームの強みや魅力などについてお聞きしました。※2020年12月時点での情報です
「KPMGの、ローカルを尊重するカルチャーに惹かれた」
田中
まずはお二人のご経歴を教えていただいてもよろしいでしょうか?
後藤様
私は大学卒業後、電機メーカーに就職し、経理財務の現場を幅広く経験させていただきました。当時はどの企業もITの進展は道半ばで経理財務部門も多くの非効率な業務運営を強いられている中で、社内若手塾活動を通じて将来のあるべき経理財務部門の姿や重点対応すべき業務などについて、当時の役員に対して提言したことはありましたが、自分は何が問題かという「WHAT」は伝えられても、ではどう解決するのかという「HOW」を示せなかったのです。その後、世の中には「HOW」を担うコンサルタントという仕事があることを知りました。
他の経理担当者も、自分と同じような悩みを抱えているのではないか、もし自分が「HOW」を提供できるようになれば、多くの日本企業の経理財務部門の役に立てるのではないかと考え、コンサルタントに転身しました。外資系のコンサルティングファームに在籍した後、2016年よりKPMGコンサルティングで仕事をしています。
後藤友彰様
立川様
私は早い段階でマネジメント層と直接対話できる仕事をして、自分の視野を広げたいと考えて、コンサルティングファームへの就職を志望し、新卒で外資系コンサルティングファームに入社しました。その後、学生時代から興味のあった会計領域の上流工程の案件にチャレンジできる環境を求めて、監査法人系コンサルティングファームに移り、現在に至るまで財務会計・管理会計領域の業務改革やシステム導入を支援するコンサルタントとしてキャリアを積んできました。同じ業務領域でも、1つとして同じ内容のプロジェクトはなく、クライアントが抱えている悩みも様々です。毎回知恵を絞って、クライアントの課題解決のために創意工夫を重ねていくところに、この仕事の魅力を感じています。
立川智也様
田中
お二人ともありがとうございます。そもそも、なぜKPMGを選ばれたのでしょうか。
後藤様
KPMGには、言語も文化もバラバラな複数の国が、お互いを尊重し合いながら共同体として組織を運営する、そのような文化があります。日本についても、グローバル共通の価値観を持って運営していくことと、日本固有の事情を勘案し、ローカルを尊重してくれるといった両面を備えています。一時期「グローカル」という言葉が流行りましたが、まさにこの「グローカル」を体現しているのがKPMGだと思ったのです。
立川様
私の場合、KPMGコンサルティングの設立に向けて準備をしていた元上司の方から声をかけていただいたのがきっかけでした。グローバルプロフェッショナルファームでありながら日本独自のオペレーションを尊重してもらえることや、売上至上主義ではなく、品質を大切にし、クライアントとの中長期的な信頼関係を築いていくことを重視する価値観に共感して、入社を決めました。
後藤様
確かにそれは重要なポイントですね。私も参画する前からそのことは知っていて、「大切な価値観だな」と感じていました。
リモート決算対応やグローバル案件の増加などで、コロナ禍にあっても引き続き好調
田中
続いて御社のFSTチームの現状についてお伺いします。合わせて、会計領域で現在トレンドとなっている案件についてもお伺いできればと思います。
後藤様
会計周りはこの20年をとってみても、会計ビッグバン、J-SOX法など常に大きな動きがあり、今はIFRS®基準(国際財務報告基準)の導入がデファクトスタンダードになっています。会社の経理財務部門や経営企画部門は、そのようなイベントに絶えず追従していかなければならないので、我々FSTに対する期待は昔も今も変わらず大きなものとなっています。
さらに新型コロナウイルス感染症の流行により、デジタル化やリモート化が加速しています。リモートワークで出社を避けなければいけない状況でも、会社の決算は締めないといけませんよね。そのような、リモートワークで制約が大きい中で、いかに決算回りを中心とした会計情報を統制管理していくか、というニーズが特に高いですね。
立川様
加えて、現行の会計システムの保守期限切れを契機として、経理財務部門の将来像を描きたいというニーズも増えていて、デジタルテクノロジーを活用した業務の自動化や、経営意思決定支援のためのデータ活用に関する相談も多くなっています。
また、コロナ禍で海外渡航に制約がある中、海外のグループ会社の経営状況を可視化して、リモートでガバナンスやリスク管理を強化したいというニーズも高まっています。
田中
グローバルの案件は以前と比較して少なくなっているのでしょうか?
立川様
コロナ禍で予想もしていなかった業績悪化を経験したため、グローバル・グループレベルで経営管理を強化したいと考える企業が増えていますので、むしろグローバルに絡んだ依頼は以前よりも多くなっています。
後藤様
新型コロナが拡大する前は、実際に現地法人に足を運び現場の実態や業績を確認することができました。今はそれがなかなか難しいので、リモートパソコン上で経営実績や業務をモニタリングできるようにすることで、変化の予兆を日々把握できるようにする必要があるなど、ハード面・ソフト面の双方でニーズは非常に高まっていますね。
田中
皆さん「このコロナ禍で案件が激減しているのではないか」ということを心配しています。御社の場合はいかがでしょうか?
後藤様
先に申し上げたような案件が多数ありますので、おかげさまでビジネスは順調に推移しています。もちろん、新型コロナの影響でプロジェクトの開始時期がずれてしまう、といったことはありましたが、多くのクライアントのニーズに応えるためには、優秀な人材がこれまで以上に必要です。
立川様
その通りですね。人員は足りていない状況です。実際に、同時期に複数の引き合いを頂いたため、こちらからプロジェクトの開始時期や進め方を調整させて頂くケースも出てきています。
田中
御社の引き合いがこの状況でも増えている理由は何でしょうか?
後藤様
もともとのキャリアで培ってきたクライアントとの信頼関係ももちろんありますし、クライアント側もコロナ禍の状況に合わせて依頼の規模感や、フェーズを変更せざるを得ない中、我々なら幅広く柔軟に対応してもらえる、という期待感があるのだと思います。
よくクライアントからは、「コンサルティング会社はすぐITの提案に結びつけようとする」「構想策定や変革に関する提案はするけど、新しい仕組みの定着化に代表されるその後の面倒を見てくれない」といった悩みを話されるケースもあります。
その点、我々は、構想策定から新業務・システムの定着化まで一貫したサービス提供に加えて、グローバル運営と日本独自の運営の双方のバランスの取れた柔軟なサービス提供が可能です。
また、先ほど申し上げた通りクライアントとの長期的な信頼関係を最優先にしていますので、目先の組織論理や数値目標ありきではなく、何よりもクライアントの成功のために監査法人をはじめとするグループ内でのコラボレーションを促し、結果的に税務面からガバナンス、ITまで包括的、全方位的な支援ができています。
柔軟な対応によるクライアントへのコミット力や、「クライアントとともに汗をかく姿勢」に期待していただいているというのが、この時期でも案件が途絶えない理由の一つだと考えています。
田中
会社の仕組みというハード面も案件を獲得できている理由ということですね。あらためてFSTチームの概要、また特徴や強みについても教えていただけますか?
後藤様
CFO領域の様々な課題について、高度な会計知識とグローバルの最新のソリューションをもとに解決策を提示し、クライアントとともに改革を推進していくのがFSTです。
立川様
経理財務部門の将来のあり方に向けた変革を検討するためのフレームワークや、目指すべきオペレーションモデルなど、KPMG グローバルの方法論やナレッジを活用することで、より付加価値の高いサービスをクライアントに提供できることも、我々の大きな強みの1つだと思っています。
後藤様
世の中には、会計システムの導入を得意とするSIerもたくさんいます。システム導入だけではなく、その後のオペレーション管理、内部統制などのリスク管理の強化、経営管理情報を司るダッシュボードの運用管理も含めて、包括的に支援できるというのが、我々の強みですね。
田中
あえて現状の弱みや課題をあげるとすればどのようなことでしょうか?
後藤様
我々は立ち上げから急成長していますが、先の通り人員不足の状況ですので、大規模なトランスフォーメーション案件など、体力勝負の部分がある仕事の対応には課題があります。ですので、我々はクライアントの規模や期待値によって体制や進め方を変え、我々が責任を持って遂行できるかどうかを見極める必要があります。
立川様
我々は、コンサルティングファーム出身者、事業会社の経理財務・経営企画の出身者、SIer出身者など、多様なバックグラウンドを持つメンバーから構成されていますので、一人ひとりの強みを考慮して、アサイン先のプロジェクトを決めるよう心がけています。 メンバーのスキルの底上げは、我々にとって最も重要な課題の1つであり、FST固有の研修プログラムの提供や、ナレッジシェアに取り組んでいます。
海外案件に対応できるグローバル人材の採用・育成が急務
田中
先程、コロナ禍によってリモート決算などのニーズが新たに生まれているというお話を聞きましたが、コロナ禍で採用の要件や求める人物像に変化はありますか?
立川様
論理的思考力やコミュニケーション能力といった、コンサルタントに不可欠なベーシックスキルに加えて、会計領域の制度・業務・システムに関するスキル・経験があることという要件は、従来から特に変わっていません。先ほどお話した通り、コロナ禍を背景としてグローバル案件が増加していますので、英語力の重要性は高まっています。
後藤様
変わるとまではいきませんが、これからの企業活動のありようはデジタルテクノロジーなくては語れないことは間違いないので、そういった技術に携わった経験のある方なら、より活躍できるタイミングではないでしょうか。「今までの業務の仕方がこうだったから」という固定概念にとらわれることなく、「新しい技術でできますよ」と提案できるのは大事だと思いますし。
田中
やはり、今一番必要なスキルは英語力でしょうか?
後藤様
これだけ企業のグローバル化が進んでいますので英語力は極めて重要ですね。また、コンサルティング業界経験を持っている方であれば、即戦力になるのでありがたいですね。事業会社出身の方でも、コンサルタントとともに社内プロジェクトを経験し、プロジェクト管理の考え方や、外部コンサルタントはどのような動きをするのか、どのようにコラボレーションしていくのかを知っている方であれば、コンサルティング業界にも馴染みやすいと思いますので歓迎します。
田中
FSTの人数構成上、特に求めているタイトルなどはありますか?
後藤様
FSTは今、90名位の組織ですが、そのうち約5割近くがマネジャー以上ですが、その比率を40%くらいにもっていきたいですね。ジュニアや中堅の人にどんどん活躍の場を提供する必要がありますし、提供できると思っています。ですから中堅層、その中でもグローバル案件にきちっと対応できる人が必要です。
田中
FSTに転職された方は、どのような点がチームの魅力だと語っていますか?
立川様
チームのメンバーからは、日々のプロジェクトワークだけでなく、自分のキャリアプランに沿った興味のあるサービス開発の企画・実行に関われることが、大きな魅力の一つだと聞いています。サービス開発は、普段接することのないメンバーとのネットワーキングの場にもなっていて、その点も魅力に感じているようです。
後藤様
良いアイデアがあれば、若手にもどんどん手を挙げてもらっています。「若いから」「経験がないから」という理由だけで拒絶することはありません。以前、ある若いコンサルタントから「自分がよい信頼関係を構築しているクライアントから提案依頼を受けたのですが、引き受けてよいか」という相談をもらいました。
私はクライアントのことを誰よりも理解し、核心を突いた提案ができるのであれば、ランクに拘らずチャレンジすべきだと考えていますので、組織としてはきちんとサポートするのでチャレンジしてほしいと伝え、実際の案件につながったケースもあります。これはコンサルタントとしてご本人のためにも良い経験ですが、当然会社への業績貢献にもつながりますので、双方にとって良いエピソードだと思います。
我々の会社では、どんどん皆さんにチャレンジしていただきたいなと思っています。
田中
起業家精神気質も持ち合わせているということですね。
後藤様
そうですね。もちろん、我々はクライアントから認められ対価を頂くビジネスですので、やみくもにビジネスニーズがあるかわからないことを提案やサポートはできないわけですが、クライアントのニーズが確実に存在し、かつ組織的にも対応可能な提案であれば歓迎します。
田中
御社のワークライフバランスのお話も伺えればと思います。御社は平均残業時間が非常に少ない会社であると、マーケットからも認知されています。FSTのチームはいかがでしょうか?
立川様
ワークライフバランスは大切ですね。日々のエンゲージメントワークについては、過度な残業が発生しないよう、週次でモニタリングしています。また、チームの育児休業の取得状況をご紹介すると、最近では定常的に数名が育休や産休を取得しています。ワークライフバランスについて、周囲のメンバーの理解と協力が得やすい、育休や産休を取得しやすい環境が整ってきていると思います。
後藤様
週次レポートなどで誰かの月の残業時間が増えそうだという予兆をつかんだら、プロジェクトの状況や、その人自身の状況を確認して、一時的に人員を増やしたり追加でサポートしたりして、全体で負荷分散できるような取組みを推進しています。コンサルティングという職能の特性上、現実的に残業ゼロというのは難しいですが、コンサルタント一人ひとりが健全なかたちでサービス提供できることが最優先なので、組織全体でカバーできる工夫は常に考えています。
田中
ありがとうございます。最後に候補者の方に一言ずついただけますか?
後藤様
FSTは、まだまだ少人数の組織ゆえ、パートナーからジュニアの皆さんまで本当に風通しがよく、創意工夫をしながら自由闊達に仕事ができる環境ですし、皆がプロフェッショナルとして価値を最大限発揮できる場を提供できると思っています。これまで転職してきた人たちは皆そう言っており、けっして上辺だけではありません。一人でも多くの人たちに、KPMGやFSTの良さを感じて欲しいですし、ぜひためらわずにチャレンジしてください。我々はいつでもお待ちしています。
立川様
その通りですね。我々は大きな組織ではありませんので、一人ひとりが自分の役割をしっかり持って、やりたいことにチャレンジできる、成長できる環境を提供することが可能です。
最後に、我々はこれまで中途採用を前提とした組織運営をしてきており、候補者の皆さんがスムーズに新しいキャリアをスタートできるよう、様々な仕組みやサポート体制を用意していますので、安心してKPMGコンサルティング・FSTの門を叩いてください。