中堅企業・ベンチャー企業への経営コンサルティングを得意とする、株式会社リブ・コンサルティングでは、2020年にDXコンサルティンググループを新設。
今回のインタビューでは同グループをリードする代表取締役CEOの関厳様より、関様の考えるDXの定義、チーム立ち上げの背景、現状の課題感、プロジェクトの内容等についてお聞きしました。
「”DXのためのDX”はやらない」中堅/ベンチャー企業の存続・発展のためのデジタル活用がミッション
田中
まずは関様の考えるDXの定義、考え方について、お話しいただけますでしょうか。
関様
DXをデジタル化という流れで定義すると、「情報技術とデータによって経営を前進させること」がデジタル化だと考えております。「DX」はそれをよりトレンド化したキーワードととらえています。
実際には、経営をテクノロジーとデータによって前進させる際に業態変換を求められる会社だけでなく、シンプルに紙をデータに置き換えるほうが現段階ではちょうど良い会社もあります。我々は、デジタル化には、デジタルを使って業界を転換させる(DX=デジタルトランスフォーメーション)、アナログをデジタルに切り替えていくことで効率化をはかる(デジタイゼーション)という2つの側面があり、どちらも必要だと考えているのです。
しかし、現状、「DX」がバズワード化しています。経営に紐づかない“デジタル化のためのデジタル化”をたくさんの会社がやっています。背景としては、大企業の場合、トレンドに紐づく経営をしないと、株主からいろいろいわれるからDXをやる。デジタルに疎いと見られたくないために、とりあえずDXをやる、というケースが挙げられます。
あらためて言いますが、ビジネスにとって大切なのは「経営を存続・発展させるために、デジタルをどう有効活用するか」です。DXが必要なときもあれば、簡単で基礎的なデジタイゼーションで済む場合もあります。
我々は「DXのためのDXはしない」という考え方に基づき、中堅企業やベンチャー企業向けに、実践的なDXコンサルティングを提供しています。
田中
DXコンサルに関しても、中堅企業やベンチャー企業への支援にこだわる理由はどこにあるのでしょうか。
関様
「DXは、大企業よりも中堅企業やオンリーワン企業の方が取り組みやすい」と気付いたことが、大きなきっかけです。もともと弊社は「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」という理念のもと、中堅企業やベンチャーを支援していました。ただ、大企業にも支援の実績は多数あります。
しかし、大企業は数年単位で社長が変わります。基本的には雇われ社長で、株も持っていません。社長が変われば、求めることも少しずつ変わってしまうため、年単位で取り組むことが難しくなります。
一方で、オーナー企業は10年単位の長いスパンで、同じトップが経営をします。例えば、Softbankは大企業ですが、孫さんのオーナー企業で、これがすごく大事なんですね。ほとんどの会社がデジタル化と叫んでいても、結局今のタイミングでリモートワークすらできないケースも多いですが、Softbankは全社員にiPadを持たせて、データによって意思決定をするなど、一気にアナログからデジタルへシフトしました。
実際に、中堅企業やオンリーワン企業はオーナー企業が多く、一度「これが必要だ」と思えば、年単位でやり続ける体力と信念はあります。細々としたデジタル化は大企業の方が進むかもしれませんが、本当の意味でのDXは5年、10年と在任し、自社の株も持っている人の方が真剣に取り組むという考えを持っているからです。
「新型コロナウイルスや人手不足の影響もあり、ようやく中堅企業にもDXの風が吹き始めた」
田中
今DXコンサルティンググループを立ち上げた背景やミッションをお話しいただけますでしょうか。
関様
実は、我々もコンサルなので、5年以上前からDXの波が来ていることはわかっていました。しかし当時は、取り組むべきタイミングではないと感じたのです。
中堅企業の経営者は、「これからの5年、10年で本当に自社にとって必要なものは何か」をシンプルに考えます。ですから、2015年から2020年の間、大企業ではDXが大流行しましたが、中堅企業、オーナー企業、オンリーワンのビジネスを手掛ける企業の間ではあまり流行しませんでした。「DXがバズっているようだけど、それって実際効果あるのですか?」という反応だったのです。
しかし、2020年に入り、新型コロナウイルスや人手不足などの影響で、中堅企業もDXに興味を持ち始めました。「コストパフォーマンスが高いのではないか」「自社にとって必要ではないか」など、投資対効果があるというイメージが付き始め、中堅企業・ベンチャーの領域も、デジタル化によって経営変革でき、実際の成果も出しやすくなってきました。
実は、1年半前から我々は徐々にPoCを開始し、「どの領域であればDXの需要があるか」を少しずつ探ってきました。そして「いよいよ来たな」という手ごたえを実感し、2020年をDX元年と位置付けることにしました。チームを作り、期初から一気にアクセルを踏み出したのです。
田中
具体的には、御社の主たるクライアントである中堅企業の経営者は、どのような課題感からDXの必要性を感じられているのでしょうか。
関様
新型コロナウイルスといった要因が緊急性を高めたという背景もありますが、根底には大きく2つの背景があります。
1つめは直近の「組織」に関する背景です。地方や中堅企業になればなるほど採用が難しく、優秀な人材が採用しづらいという問題があります。ここの部分をどのようにデジタル化対応するかが課題です。デジタルを活用して、採用、育成、評価、活性化をスピーディーに進める必要性に迫られています。
2つ目は中期的にみた場合の「事業」の背景です。2015年は、インターネットやパソコンに学生の頃から親しんできたデジタルネイティブ世代は労働人口の24パーセントしかいませんでした。しかし2030年は、その割合が51%になります。2030年に向けて、これからの10年でビジネスのデジタルシフトを行わなければ、マーケットから取り残されてしまいます。
実際に、これをクライアントにひとつひとつ説明し、伝わり始めているという感触を得ています。
それでも、まだまだ中堅企業の上位20%ほどの話です。80%はまだまだ「DXってなんですか?」という感じです。ただコンサルティングファームに「このままではGAFAに業態がみんな破壊されますよ」と言われたからとりあえずやる、というのが中堅企業の現状です。
我々はそのように煽ることはせず、クライアント企業の10年後を見据えて提案しています。上位20%がDXで変わることでも、日本は世界一中小企業が存続・発展している国になるはずだと我々は考えており、賛同いただけるクライアントからDXを広げていっています。
自分たちが離れた後も「DXを自力で行える組織」を作るため、クライアント内に最低でも5人のデジタル人材を育てている
田中
現状、中堅企業向けにはどのようなプロジェクトを進めようとしているのでしょうか。
関様
3つテーマがあります。1つ目はやはり「組織」です。人手不足はこの国の慢性的な問題であり、原因は労働人口の減少です。これをどう解決するかというと、やはり外部の人材、そしてデジタルによる代替ですので、そこはかなりクライアントに響きます。
2つ目は「事業継続」です。この大きな転換点において、企業価値を変えずに乗り越えるためのヒントのひとつが、実はデジタル化です。社長の頭に詰まっていたノウハウをデータとして可視化することで、いかに事業承継のタイミングで「社長が変わってしまったら大変だ」という状態から脱却するかがポイントです。
3つ目は「企業価値」です。デジタル化が進んでいる会社の方が、買ったあとにそのバリューをアップさせやすく、今後のM&Aにおいても有利です。
この3つのポイントを説明して、私たちは中堅企業の経営層を説得しています。
田中
御社のDXコンサルティンググループの強みや得意領域は何でしょうか。
関様
1つ目は、特定のSEを抱えない業態を取ることで、他社よりも柔軟な選択肢を取れることです。シンプルなデジタルツールを導入すれば、クライアントの課題が解決する場合もあります。たとえばZoomを提案して解決するのならそれも良いと考えています。
もうひとつは、デジタル人材の育成に対してコミットできることです。多くのコンサルティングファームが現状行っているDXコンサルでは、せっかくコンサルタントが入って企業のデジタル化をやっても、社内にデジタル人材がいない・育たないために、プロジェクトが終わったら何も進まないというケースが起こりがちです。コンサルティングファームは稼げるかもしれませんが、会社の変革は起きません。
我々は中堅企業の中で、コンサルタントが離れた後も企業が生産効率を挙げて発展させられるよう、デジタルを推進する若手や変革の意志があるメンバーを、最低でも5人は育てるようにしています。
特に、私は「日本は若い人が活躍する国になった方が良い」と考えています。今、中堅企業で30代、最年少の役員を生むとしたら、CDO(Chief Data Officer)が一番の近道です。それもあってCDOの育成に取り組んでいます。
田中
実際、どのように育成しているのでしょうか。
関様
それぞれの会社に我々が外注で入り、パッとプロジェクトを進めて帰るのではなく、5人ほど若手リーダーを集めます。そして「あなたたちの会社は、デジタルでこういうことをやろうとしている、その推進役はあなたたちだ」と説明し、そのために何が必要なのかをレクチャーしながら、デジタル人材を育てていきます。組織系のコンサルティングに強い我々だからできることです。
田中
逆に、御社のDXコンサルティンググループの課題としては、どのようなものがありますか。
関様
我々は新しいマーケットを見据えていますが、そのマーケットが育つまでの期間、売上、生産性という点において苦戦しています。
大企業のDX案件を受けて何千万稼ぐのもよいですが、我々はあえて中堅企業のDXをひとつひとつ耕しています。マーケットがきちんと育てばそのリーダーになれますが、現在は立ち上げ期なのでプロジェクトの難易度は高いです。
また、まだDXの成功パターンが確立されていないので、そこにも苦しむ部分がたくさんあります。大企業も含めた日本全体のDXに成功事例が無いということも大きな障壁です。たくさんのコンサルティングファームがDXに取り組んでいますが、寂しいことに成功事例がほぼ無いのです。
さらに、クライアントもまだDXに対して多額の投資をしているわけではないので、事業として成り立たせる上での難しさもあります。我々は中堅企業・オンリーワン企業のデジタル化の市場拡大に向け、その種を植え、耕し、成功に導くことで、マーケットにDXの必要性を喚起していかなければならないのです。
さらに、我々は中小企業から「経営の存続・発展に貢献してくれる」と期待されています。我々のクライアントは「なんとなくお金を使っている人たち」ではありません。そのため、費用対効果を1、2年で見せていく必要があります。我々は経営コンサルタントとして、クライアントプロジェクトの問題点は何かを見抜き、3年単位で得られる成果を見せ、プロジェクト上で実現させないといけません。
ベンチャーは大企業と比較してDXが進んでいますが、中堅企業、たとえば地域の優良企業や特定の業界に特化した企業は、まだこれからどんどん伸びていく流れが来ています。その中で感じる課題の一つは、良くも悪くも「経営層が大企業のようにトレンドワードにそこまで興味を示さないこと」です。これらの企業は、大企業のように社長が数年で交代することはありません。
創業者やオーナーが長くトップを務めます。ですので、本当に意味のある経営改革以外はあまりやりません。株主に一挙一動を監視されているわけではありませんし、短い在任期間の間に、流行を取り入れて結果を出さなければならないわけでもないですから。
DXが進むベンチャー企業には、PoCで終わらない「商品を売るための仕組みづくり」を行っている
田中
中堅企業はZoomの導入など、古いインフラを刷新するプロジェクトのニーズが高そうですが、ベンチャー企業ではすでにインフラが整っていることも多そうですよね。ベンチャー企業向けのDXコンサルティングではどのような案件があるのでしょうか。
関様
ベンチャー向けのDX支援はあまり件数がありませんし、増えないと私は踏んでいます。最近のベンチャーの約8割はIT系の企業なので、ZoomやSlack、クラウド会計は当たり前、SaaSなど20個30個を使いこなしています。自分たちでシステムを開発する会社も普通にありますし、AI技術者を抱える会社もあります。
一方で、技術者ばかりが集まり、実成果に結びついていないところがあるので、我々は経営戦略、組織戦略といったリアルビジネスをサポートしています。
田中
どちらかというと、ベンチャーへのサポートはセールスよりになるということですね。
関様
そうですね。マーケティング&セールスと組織作りが中心です。技術者ばかりが集まっている会社はうまくいきません。ですからそれをグロースさせることが大事です。
ベンチャー企業の中でも、人材系や小売系など、そこまでIT化していない業態はあるので、そこのDXにかかわることはありますが、DXを推進するクライアントの7、8割は中堅企業です。ベンチャーにいる技術者の方が、デジタルの知識はコンサルタントよりも豊富ですし、東大を出てAIをやっている技術者とかがたくさんいますから。どちらかというと彼らに足りていないのはビジネスの支援なのです。
田中
では、具体的にどのようなサポートをしているのでしょうか。
関様
ベンチャー企業がグロースさせるときに組織を拡大していきますよね。そのときに、どう営業管理をやっていくか、オンラインの中でどうやってエンゲージメントを高めていくか、たとえば1on1をどのようにしていくかとか、写真の状況をどうやってデータで把握するか、とかですね。技術者が集まっている会社でも、組織改革にいかにデジタルの要素を取り入れていくかのノウハウがなかったりするので、そこをサポートしています。
田中
なるほど。ベンチャーでも、グロースしないままPoCで終わって今後どうするのかという企業が増えてきているので、そういうところに対して支援をおこなっていくイメージでよろしいでしょうか。
関様
そうですね。マーケティング&セールス、組織作り、新規事業の探索といった、技術だけではできない領域をサポートしています。
田中
それはすごく面白いですね。まさに御社の強みの部分ですね。
「集合天才」で高め合う社風、経営とデジタルを接続し”100年後の世界を良くする会社”を増やすことのできる人材を求めている
田中
組織作りの支援に強みを持つ御社ですが、社内のお話も聞かせていただけますか。組織もどんどん拡大していると思いますが、組織づくりにおいて、どのようなことを意識しているのでしょうか。
関様
我々のカルチャーや仕事、価値が好きな人が集まればいいと考えていますので、よく巷で言われている「働きやすさ」というのは正直なところそんなに意識しておりません。
「理念に基づいて日本を中堅・ベンチャーから変えていく仕事ができる」「経営のリーダークラスの人たちと、責任感ある議論、コンサルティングができる」「コンサルティングに最適な教育プログラムを準備している」「弊社で活躍できれば、通常のコンサルティング会社と同レベルの報酬を獲得できる」
この4つを満たしているだけです。それ以外は、普通の会社とあまり変わりません。我々が果たすべき価値に関心を持ち、そこに対して強みを磨き上げています。
田中
今後どういった組織を作り、拡大していこうとお考えでしょうか。
関様
組織として拡大していくうえで維持すべきことが2つあり、それを失ったら我々も駄目になると考えています。
1つは事業ドメインの話です。我々が大企業で稼ごうと考えると、組織として駄目になるでしょう。 付き合っているお客様によって、会社のカルチャーは変わります。大企業と付き合い出すと、どうしても我々も「大企業っぽく」なってしまいます。
田中
関様の考える「大企業っぽい」というのは、具体的にはどのようなものでしょうか。
関様
組織内で調整する人が偉くなってしまったり、コミュニケーションの腰が重くなってしまったり、少しずつ時代遅れになってしまうということです。我々のメインクライアントは、中堅企業、ベンチャーです。ベンチャー企業の社長は、ほぼ20代、30代です。彼らとやりとりをしている限り、我々は時代の変化に敏感でいる必要があります。若さを保たないと、お客様から失望されてしまうでしょう。
田中
俗に言う「大企業おじさん」になってはいけないということですね。
関様
そうです。その人の人格は、普段会っている人10人の平均値によって形成されると言われます。私たちが中堅企業・ベンチャーをターゲットにしているかぎり、「大企業病」には陥りづらいと考えています。
組織を拡大していくうえで維持すべきことの2つ目は、「集合天才」の発想です。組織が大きくなったときに怖いのは、動きが鈍くなってしまうことと、お互いが無関心になってしまうことです。そうなると、コミュニケーションコストがかかるわりに、シナジーが生まれづらくなります。
そこで我々は、一人ひとりが教え合い、学び合うことを大切にしています。これが「集合天才」です。今はフルオンラインで、リモートワーク率が90%を超えています。それでもオンライン会議は少しうるさいくらい盛り上がっています。一匹狼にならない方が、お客様のためにもなります。事業ドメインの維持と、集合天才の維持を継続できれば、組織の人数が増えてもそこまで問題視するほどではありません。
今は社員数も200名に近づいており、今年1年だけで40人ほど増えていますが、まだまだお互いを高め合う文化は維持できるはずと考えています。
田中
ありがとうございます。最後になりますが、DXコンサルティンググループを中心に、今後どういった方に入社してほしいとお考えでしょうか。候補者へのメッセージをお願いします。
関様
我々は、変革する意欲を持ったリーダーや経営層と一緒に仕事をしています。良い会社を作るための手段として、デジタルは大きな比重を占めています。「経営を前進させ、存続・発展し、社員や顧客により幸せをもたらしたい」と考えているビジネスリーダーと一緒に会社を変えていきたい、そこにデジタルをフル活用していきたいと考える方に向いています。
自分が今いる会社が何を目指しているのか? 何をやりたいのか? この会社の考え方は大丈夫なのか? デジタルのためのデジタルになっていないか? と疑問を持っている方、本当の「経営とデジタルの接続」を具現化していきたいという方に、来ていただきたいです。“100年後の世界を良くする会社”を増やしたいと考える方のご応募をお待ちしています。