今回は、テクノロジーを活用した医療プラットフォーム事業を手掛ける株式会社メドレーへのインタビュー。コーポレートチームをリードする執行役員の兼松孝行様より、プロジェクト事例を通して、同社コーポレートITチームの特徴や、チームを取り巻くメドレー社のカルチャー、また今後手掛けるプロジェクトや求める人物像などについてお聞きしました。
コーポレートITは、常に数年後を見据えた組織課題に向き合っている
庄村
まず初めに、兼松様がリードするコーポレートITについてご紹介いただけますでしょうか。
兼松様
コーポレートITは、全社視点で組織や事業の競争力を高めるべく、テクノロジーを活用して「組織パフォーマンスの最大化」を追求するポジションです。
庄村
兼松様がこれまでコーポレートITとして取り組まれてきた中でも、最も印象的だったプロジェクトについてお聞かせいただけますでしょうか。
兼松様
社内の情報流通を加速させ、コラボレーションを自然発生させるために導入した社内WikiであるConfluenceの事例についてお伝えします。
Confluenceを導入した際は、従業員数は200人程度。当時から毎年従業員が100人以上増えていく状況でしたので、3年後には3倍、4倍の組織になるという事業の拡大を見通していました。 それまで全従業員がすぐ近くにいてオフィス全体を見渡せていたのが、フロアが拡大し複数フロアにもなり、組織フェーズの変化を肌で感じるようになったタイミングでした。
将来的には個々人の業務も細分化されていき、指揮命令系統もどんどん階層化していく。すると、サイロ化が進み、どこに何の情報があるのか、誰が何をしているのかがわからず、コラボレーションも生まれず、意思決定の質もスピードも悪化していってしまう可能性がある。そうした大企業病への第一歩を未然に防ぎたいという思いから発足したプロジェクトでした。
このプロジェクトでは、すべての情報を一元化し、かつ情報を秩序立てて格納して、オープンにタイムラインで情報が流れる状態を作ることで、離れていても誰が何をやっているかがわかり、どこに何があるのかを明確にしようと考えました。その構想実現に向け検討を重ね、Confluenceを導入しました。
庄村
Confluence導入時、すでに何か問題が明るみになってから取り組んだというわけではないんですね。
兼松様
そうですね。問題が顕在化する前に着手をしました。
庄村
Confluenceを導入したことでどのようなメリットがありましたか。
兼松様
例えばマーケティングチームの取り組みなども、こういうことをやっているんだなというのがセールスやカスタマーサクセスチームなど他の関連部門のメンバーからもセルフキャッチアップできるようになったことです。
また、新入社員のオンボーディングにも役立っています。マニュアルはどこにあるのか、この質問は誰に聞けば良いのか、こういう事象が発生した場合はどのように対応すればいいのか。それらの情報が全てConfluenceに集約されているので、新しく入ってくるメンバーからは「過去の企画背景なども含めて、あらゆる情報が蓄積され、一元化されているので、スムーズにキャッチアップできた」とみんな言ってくれますね。
安易なシステム導入はせず、徹底的に合理性を追求している
庄村
こうした社内wikiやタレントマネジメントツールは導入においては成功するものの、入力する手間が面倒だと思われ、結局使われずシステムが形骸化されるケースも多いです。
Confluenceが御社にとって欠かせないシステムとして運用されるために、兼松様やコーポレートITとして心がけたことについて教えていただけますか。
兼松様
勢いでツールを導入せずに、経営や事業にとってどのような価値があるか、従業員にとってどんなメリットがあるか、使いやすいか、そういったことを具体化するように徹底的に考え抜き、全員が腹落ちすることが大事だと思います。結局、インセンティブが感じられなければ続かず、浸透しません。
メドレーでは「情報の私物化」を禁止し、業務に関するログはConfluenceないしはSlackに残すことを心がけています。個々人が業務で生み出した情報や得た情報はすべて会社の資産とし、周囲の人も再利用して組織運営に活かすべきだと考えているからです。
あと、1つの目的に対して1つのツールだけを導入し、徹底的に活用しています。例えば、社内Wikiやチャットシステムは複数のツールを導入して、複数使い分けている企業も世の中にはあると思うのですが、当社ではそういうことはありません。
このように、合理性を追求する社内文化があり、無駄は徹底的に省いてオペレーションエクセレンスを目指しています。
システム導入等の全社横断的な活動は「経営者の意思」、かつ「合理性を議論」して進められる
庄村
経営陣の方々も同じ課題感を持っていたのでしょうか。他社のIT部門ではなかなか経営陣の理解や協力を得られずに、プロジェクトが頓挫してしまうケースも見られるのですが。
兼松様
はい、経営陣も課題感を持っていました。これまでのキャリアで、急成長企業で数百人から数千人への拡大過程を経験してきた者がいたこともあり、従業員が増えてサイロ化が進んできてから手を打つのでは遅いと感じていました。実際、Confluenceの取り組みは私1人ではなく、代表やCTOと共に進め、全社横断でプロジェクト体制を敷いて実行しました。
一般的に1つのツールを導入する際、情報システム部門などから「来週からこれを使っていきます。マニュアルはこちらです。」という感じでリリースされることが多いものですが、Confluence導入においては、導入の背景や狙い、目指す組織の姿などを全社員に説明会を設けて伝えました。合計20回ほどの説明会を行いましたが、経営陣や各部門長の注力もあり構想からリリースまで8カ月とかなり早いスピードで進められました。
庄村
想像以上にリリースまで早いですね。
なかなか経営者の一言が浸透しない会社も結構あると思うんですが、御社ではどのような工夫をされているのでしょうか。
兼松様
私は2つあると思います。1つはしっかり理解を深めること。なぜこれを行うのか、背景や狙い、思想から説明し、しっかりと理解いただくことです。2つ目は、メドレーの行動原則、コンピテンシーを体現できると判断できる仲間を採用していること。
また立場に関係なく、しっかり自身の意見を持ってフラットに話し合えるカルチャーがあるので、理解できていない時は議論して、それぞれが納得感を持って進められるため、中断したり、停滞したりすることがないのだと思います。
数年前はマルチな人を求めていたが、現在は「専門性」を追求できるコンサル・IT人材のニーズが高まっている
庄村
今コーポレートITで求める人物像についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。
兼松様
自分またはメンバーと共に考え抜いたものを自ら作り上げたいと思う人、部門や職種を超えた様々なメンバーとコラボレーションしながら未来志向で一緒に同じ方向を向いてやっていきたい人というのは以前から変わりません。さらに今は数千人規模の組織を目指すような成長フェーズに入り、やるべきこと、やりたいことが幅広くなってきています。
幅広い技術領域や業務経験を持ったマルチな方はもちろんのこと、何かしらの領域に強みを持つ方で今後広げていきたい、と考えている人も活躍できる状況になってきました。
庄村
入社したコンサル経験者にどのようなミッション・業務をお任せしたいとお考えですか。
兼松様
その方のスキルや志向を踏まえてお任せしたいと考えていますが、例えば、人事基幹システムの導入による人事関連情報の集約・分析基盤の整備や、経営数値管理におけるテクノロジーを活用したプロセスの合理化などがあります。また、従業員の増加や積極的なM&Aなどにより、オフィス移転・拡張、地方拠点設立などに伴うワークプレイス設計やプロジェクトマネジメントなどもあります。
その方の適正に応じて、既存チームのマネージャを担ってもらったり、新たな組織機能を発案してチームをつくっていただくなどもあると思います。
庄村
兼松様自身から見られて、今のメドレーに元コンサルタントの人が入る魅力はどのような点だと思いますか。
兼松様
クライアントワークの中で、ベストプラクティスの提供や構想立案など様々な組織課題に向き合ってこられた経験を活かし、より自分ごととして長期的な視点で企画から運用まで担うことで自分で理想を追求できることが、事業会社に入る最大の魅力だと考えています。
またメドレーでは情報がオープンであり、その中で合理性を追求して考え抜くことを重視しているため、組織における様々な一次情報に自ら触れ、未来志向で企画・設計できることや、契約上のプロジェクト期間やフィーに縛られることなく、経営にとって本当に価値の高い意思決定は何かを自ら考え抜ける環境が魅力だと思います。
また、導入して終わり、ではなく、その後の効果を自ら測定し、社内の反応を捉えて改善しながら磨き続けていくことができることも事業会社ならではの楽しさだと考えています。
プロフェッショナルマインドをもとに、理想とする組織や環境を仲間と一緒につくりあげていきたい、と考える方とぜひ一緒に働きたいです。