契約業務のDXという社会課題に挑むMNTSQ株式会社。長島・大野・常松法律事務所で培われた契約のベストプラクティスを、テクノロジーの力で広く社会に展開することを目指して創業されました。
「未来の社会インフラとなるリーガルテクノロジー」の実現に向け、単なるシステム導入にとどまらない、企業の契約業務改革を推進しています。
今回は、カスタマーサクセスドメイン Customer Consultingチームで活躍する藤岡美季彦様、藤井のど佳様に、異なるバックグラウンドからリーガルテックに挑戦した理由、企業の法務DXを支えるカスタマーサクセスの役割、そして目指す未来についてお話を伺いました。
※インタビューの内容は2024年11月時点のものです
異なる専門性を持つ2名がリーガルテック、成長市場を選んだ理由
高嶋
お2人のキャリアについて、藤岡様からお聞かせください。
藤岡様
私の前職はワークスアプリケーションズで、社名が途中で分社してワークスヒューマンインテリジェンスとなりました。大企業向けの人事給与勤怠パッケージシステムの導入を担当し、特にシステム間のデータ連携やデータ移行などのインテグレーション部分を得意領域としてきました。最終的にはプレイングマネージャーとして数多くのプロジェクトをリードし、一定の評価をいただいていました。
高嶋
MNTSQへの入社を決めた理由をお聞かせください。
藤岡様
培ってきたスキルが他の領域でも通用するのか、試してみたいという思いが強くなっていました。必ずしもリーガルテックにこだわっていたわけではありませんが、カジュアル面談を通じて事業としての将来性とビジョンの明確さに強く共感しました。社長との最終面接でも、プロダクトが現在の市場に存在していない価値を提供できると確信しました。
高嶋
藤井様は異なるバックグラウンドをお持ちですね。
藤井様
私は少し転職回数が多く、今が4社目になります。最初はイベントマーケティングの代理店で2年弱、その後ビズリーチで4年間働きました。ビズリーチでは新卒向けのOB・OG訪問マッチングサービスの部署で、後半2年はカスタマーサクセスとして日系大手企業100社ほどを担当していました。その後、Beatrustというスタートアップで社内版LinkedInのようなサービスのカスタマーサクセスを2年経験し、2023年12月にMNTSQに入社しました。
高嶋
MNTSQへの入社を決めた理由をお聞かせください。
藤井様
実は私、前職でカスタマーサクセスの採用を担当していた時に、現在の上司の採用面接を担当していたのです。その時にMNTSQという会社を初めて知りました。自分が転職を考え始めた時、エージェントさんからMNTSQを紹介されて、そのご縁に驚きました。最初は法務に興味がなく、経験もなかったので志望度は低かったのですが、ビジネスの将来性を感じ、決断しました。
契約書作成のベストプラクティスを全ての企業へ、法務ナレッジとテクノロジーの革新的融合
高嶋
御社の事業について、詳しくお聞かせください。
藤岡様
MNTSQは、エンタープライズ向けSaaSプロダクトの開発・提供を行い、「未来の社会インフラとなるリーガルテクノロジーを形にする」ことを目指しています。トップクオリティーのリーガルナレッジと、自然言語処理・機械学習技術を中心とするテクノロジーを融合させ、大企業や法律事務所の契約関連業務を変革していきたいと考えています。
当社の強みは、日本四大法律事務所の長島・大野・常松法律事務所(NO&T)との資本業務提携を実現していること、トップレベルの自然言語処理・機械学習技術を有していることです。今年6月には大手企業様のCVC3社から総額10億円の資金調達も実施し、市場で極めてユニークな立ち位置を築いています。
藤井様
スタートアップは最初、信用を得るのが難しいものですが、長島・大野・常松法律事務所が支援をしてくださっていることは、大きな強みになっています。最近では西村あさひ法律事務所とも提携を開始し、その提携の先にある世界へ、お客様からの期待がますます高まっています。
高嶋
具体的なプロダクトについて教えていただけますか。
藤岡様
主力プロダクトである「MNTSQ CLM」は、契約業務全体のデジタル化を推進する大企業向けプロダクトです。法務相談や契約審査などを円滑化する「案件管理」、契約締結後の「契約管理」、基本機能として提供している「データベース」などの機能を通じて、契約業務全体の効率化と高度化を同時に実現します。初期の頃からコマツ、大阪ガス、トヨタ自動車などにご利用いただいており、「法務力の高い企業」ランキングTOP10のうち6社に導入されるなど、多数の大手企業様にご利用いただけるまでになって参りました。
高嶋
創業に至った背景についても教えていただけますか。
藤岡様
当社の代表である板谷が、長島・大野・常松法律事務所で弁護士として働く中で、「契約書の穴」が一向になくならないことへのもどかしさを感じたことが始まりです。「契約書の穴」というのは、どちらかの当事者に著しく有利である条項が認識されていない場合や、必要な条項が存在せず、後から解釈が分かれて紛争に至る可能性があるような状況を指します。
長島・大野・常松法律事務所には「最高の契約書はこのような条項を含んでいなければならない」という長年の知恵の蓄積があり、これを「ベストプラクティス」と呼んでいます。弁護士たちはこれを先輩から引き継ぎ、契約書の穴を見つけては修正を重ねてきました。
しかし、契約書は企業間取引に必須でありながら非常に難解で、このベストプラクティスはごく一部の専門家のみが持っています。さらに、企業が弁護士に依頼すると膨大なコストもかかります。このベストプラクティスを広く社会で活用し、世の中全体での合意を、よりフェアなものにしていくことを目指して、MNTSQは創業されました。
顧客と共に描く法務DXの未来図、戦略的パートナーとしてのカスタマーサクセス
高嶋
カスタマーサクセスチームの役割について詳しく教えていただけますか。
藤岡様
一般的なSaaSのカスタマーサクセスとは一線を画す位置づけとなっています。当社のカスタマーサクセスは、社内のエンジニアリング、アルゴリズム、リーガルなどの専門家と協働しながら、お客様の業務オペレーションのあるべき姿を最前線で推進していく役割を担っています。
現在、コンサルタント約15名とカスタマー向けエンジニア約5名の体制で、私自身は11社を担当しています。折衝相手は法務メンバーの皆様だけでなく、部長や課長クラスとなる場合も多く、「法務部としてのあるべき姿」に対する示唆出しも行っています。また、お客様との接点は法務部だけでなく、システム部門やDX部門も含まれるため、テクノロジーの知見も自然と身につきます。
藤井様
私が入社した時期は、オンボーディングプロセスが整備され、プロダクトの基盤も出来上がった状態でした。ただ、お客様にはSaaSの利用に慣れていない企業様も多く、SIerの担当者のような質問を受けることもあります。その際、バディのメンバーと協力しながら、最適な提案ができるよう心がけています。
高嶋
組織における位置づけはどのように考えられているのでしょうか。
藤岡様
カスタマーサクセスは社内でも特に重要なポジションとして位置づけられています。顧客コミュニケーションを通して得られた実際の反応や成果、データ、現場の肌感覚をもとに、MNTSQとして目指すべき方向性を社内に還元し続けることが求められます。さらに、MNTSQという組織・プロダクトを通じて、リーガルテック市場そのものに対するベストプラクティスをお客様と共に作っていく役割も担っています。
藤井様
入社時から、お客様との架け橋としてプロダクト改善にも強くコミットするよう求められました。特にお客様の法務領域はDXが進んでいないので、システム化されていない業務をどうシステムで効率化していくか、という課題に向き合っています。そのため、一般的なSaaSでよく見られるチャーンレートのような指標は重視せず、顧客ごとにどういうサクセスを生み出したかという軸で評価されます。
他社のプロダクトと比較した際、当社は運用ノウハウや導入ノウハウ、その手厚いサポートが強みになっています。お客様からも「別のシステムを入れた時はサポートがなく、結局使い方が分からないままだった」というお話をよく伺います。プロダクトだけでなく、付随するサービスとしてのカスタマーサクセスにも大きな価値を感じていただいています。私どもの役割は単なる導入支援や運用サポートではなく、お客様と共にリーガルテックの未来を作っていくパートナーだと考えています。
高嶋
チーム体制の特徴を教えていただけますか。
藤岡様
特徴的なのは「バディ制」という仕組みです。2~3名でチームを組み、お互いの得意分野を生かしながら顧客支援を行います。チームのメンバー構成は、マネージャーたちがそれぞれの個性を加味して決定しています。
藤井様
15人いる中で最初に相談できる相手が明確になっていることは、特に新入社員には心強いですね。私と藤岡さんは得意領域が真逆なので、お互いの強みを生かせています。例えば、藤岡さんはシステム周りが強いので、そこで得意不得意を補い合えています。また、他のチームメンバーに「こういう運用を他社さんはどうされていますか?」と聞くと、みんなで知恵を出し合って答えてくれる文化があります。
大企業の法務DXを先駆けて支援、ナレッジとテクノロジーで確立した圧倒的優位性
高嶋
リーガルテック市場の動向と成長性について教えていただけますか。
藤岡様
リーガルテックは人事給与や会計と比べて、システム化の歴史が浅い領域です。人事給与や会計は数字の計算を行う業務なので早くシステム化されました背景があると認識していますが、契約書は文字の集合体のため、データ化して扱うのが技術的に難しく、それが実現し始めたのがここ5~6年のことです。
その中で、私どもが手がけるCLM(契約ライフサイクルマネジメント)という領域は、2026年には市場規模が3,000億円以上に達し、年平均成長率約12%と予測される急成長市場です。この成長を後押ししている要因は大きく4つあります。まず、電子契約の普及により、企業が契約業務全体の見直しを始めています。また、在宅勤務の広がりで、電子化やペーパーレス化の必要性が一層高まっています。加えて、全体的なDXの潮流の中で、法務部門のデジタル化も課題として認識されてきました。そして、自然言語処理や機械学習の技術革新により、テクノロジーでできることが増えてきたことも大きな要因です。
当社は最初にナレッジマネジメントの重要性を打ち出し、その後、契約業務全体のデジタル化(CLM:コントラクトライフサイクルマネジメント)というコンセプトを日本市場においていち早く確立しました。契約が最初に法務部に相談として持ち込まれ、締結され、その締結された契約の情報が管理され、また次の相談に活用される…というサイクル全体をシステム化する。このコンセプトを打ち出したのは、当社が最も早かったと認識しています。
高嶋
他社様も機能拡充を進める中で、御社の先行優位性についてどのようにお考えですか。
藤岡様
CLMというコンセプトでの先行優位もありますが、より重要なのは大企業にナレッジマネジメントのシステムとして入り込めているという点です。他社のリーガルテック企業は、SMB向けからスタートしてエンタープライズにシフトしようとしていますが、やはり大きなハードルがあるように思います。最初から大企業向けにCLMを提供し、そこからユーザーの声を吸い上げられる状態でマーケットを開拓できたことは、大きなアドバンテージだと考えています。
藤井様
以前は「あの長島・大野が出資している会社だから」という理由で選んでいただくことが多かったのですが、今では「他の大企業が使っている」ということ自体が十分な参照点になっています。創業当時はそれほど競合もいませんでしたが、その理由や、時間と共にMNTSQがここまでお客様を獲得できた背景も、私自身、納得感を持って理解できています。
高嶋
御社の方向性はどのようにお考えですか。
藤井様
これまでは法務部員が30人以上いる超大手企業がメインターゲットでしたが、徐々に法務部員10人程度の一般的なエンプラ企業にも広がってきています。今後はこれから大きくなっていく企業や、人数は少なくてもナレッジマネジメントのニーズがある企業にも使っていただけるよう、プロダクトとカスタマーサクセスのサービスを展開していきたいと考えています。
自由な働き方と個性の発揮を重視、チャレンジを歓迎する組織文化
高嶋
働き方の特徴について教えていただけますか。
藤岡様
月8日の出社を基本とするハイブリッドワークを採用しています。勤務時間も柔軟で、私の場合は10~11時に始業し、19~21時には終業することが多いですが、中抜けも自由です。
藤井様
私は自分のことを”CGO(チーフガヤオフィサー)”と呼んで活動しています。組織を盛り上げていくことに興味関心があり、それが自分の得意分野でもあります。そういった自主的な取り組みも自由にやらせてもらえていますし、きちんと評価してもらえている。給与や評価制度での評価ではなく、「やはりそれは大事だよね」「やってくれてありがとう」というかたちで認めてもらえています。
高嶋
最後に、どのような方に入社してほしいとお考えですか。
藤井様
まだまだスタートアップクロスな状況なので、既に出来上がっているものを求める方には向いていません。この会社、この文化を一緒に作っていくことが面白いと感じられる方に向いていると思います。ないものもたくさんありますし、大変なこともありますが、「こんなことができるようになった!」と周りと一緒に喜べる、ポジティブな方が結果として評価され、自身も楽しめる環境だと感じています。
藤岡様
新しいことをインプットし続ける意欲があり、お客様へのメリット提供にやりがいを感じられる方に向いています。システム導入が強いとか、業務プロセスの改善が得意とか、契約業務に詳しいなども重要ですが、それ以上に学び続ける姿勢を重視しています。