今回は、コンサルティング事業を柱に、IT・人材教育・エンタメ事業など幅広い実事業を子会社で展開している株式会社MOVER&COMPANYへのインタビュー。代表取締役社長 篠﨑元彦様、シニアマネージャーの山根征典様より、同社立ち上げ・入社までのご経歴やビジネスモデル、具体的なプロジェクト事例、求める人物像などについてお聞きしました。
株式会社MOVER&COMPANY篠﨑元彦様 ご経歴とMOVER&COMPANY設立まで
安形
まずは、篠﨑様のこれまでのご経歴を教えていただけますか。
篠﨑様
2000年に新卒でアクセンチュア(当時 アンダーセン・コンサルティング)に入社し、製造・流通業向けの業務改革やシステム導入を中心としたコンサルティング業務に従事しました。
もともと、実家が家業を営んでいたこともあり、経営に興味があったため、最も経営に関われる機会が多そうなコンサルティングファームに新卒で入社したのですが、入社3年目で携わったプロジェクトは、アクセンチュアが200人ほど、大手ベンダーも何百人単位で入るような大きなプロジェクトでした。しかし大規模なプロジェクトのため、ディレクタークラスの人たちですら皆エクセルで進捗管理をしている姿を目の当たりにした時、このまま大手ファームにいても経営に携われないのではと疑問を抱き2004年にアクセンチュアを退職し、もう少し手触り感のある会社で経営に関わりたいと思いアニメやオンラインゲームを手がける社員数200程度のベンチャー企業に転職しました。
最初の2年間はホールディング(親会社)の経営戦略室で、後半2年間はオンラインゲーム運営を手がける子会社の執行役員兼開発責任者としてオンラインゲームの立ち上げをリードしてきました。
その後、“コンサルティングファームの良さ”と“事業会社の良さ”の両方を併せ持つ会社をつくりたいと考えMOVER&COMPANYを2008年に創業しました。
安形
コンサルティングファームの良さと事業会社の良さはどういったところだと思いますか。
篠﨑様
コンサルティングファームの良さは、ワークスタイルを確立できることです。仕事では目標に向けてマイルストーンを設定し課題管理をしながら、場合によっては目標自体のスケジュールを組み直したり、スコープを変更したりが求められます。そういったワークスタイルを新卒でコンサルティングファームに入れば早い段階から身に着けることが出来ます。
一方、事業会社の良さは、PDCAを回しながら事業部目線で売上/利益/コストに第一人称としてコミットができることです。コンサルティングファームがどんなにいい提案をしても受け入れてもらえるかどうかの最終的な判断はお客様側に委ねることになりどうしても第一人称にはなれませんが事業会社ではその経験を積めます。
篠﨑元彦様
株式会社MOVER&COMPANY山根征典様 ご経歴と入社理由
安形
続いて、山根様のご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。
山根様
私は2003年にアビームコンサルティングに新卒で入社し、3年半SIとしてフルスクラッチでシステム構築する業務に従事していました。クライアントと向き合い、彼らの方向性に影響を与えられる事にコンサルティングの魅力を感じていたのですが、いつまで経ってもSIの仕事をしていることに疑問を感じ、クライアントと直接打合せが出来るファームにいきたいと思い転職しました。
転職後は国内のブティック系ファーム2社を経て、2014年に日本マクドナルドに転職しました。マクドナルドでは財務本部のシェアドサービス部門に所属しました。店舗建設に伴う固定資産管理やFC請求、賃料支払などの経理業務、FCオーナーや貸主/地主さんとの契約管理、財務システムのリプレイスなど様々な業務やプロジェクトを経験したのち、2018年1月にMOVER&COMPANYに入社し現在に至ります。
安形
MOVER&COMPANYへ入社を決めた理由を教えていただけますか。
山根様
MOVER&COMPANYでなら、事業会社での経験を活かしたコンサルティングが出来ると考えたのがきっかけです。コンサルティングファームから事業会社に入り気づいたことは、事業会社の現場は特別なソリューションを求めているわけでなく、日々の業務をいかに少ない工数、少ない負荷で、正しくこなすことが出来るかを求めているということでした。
今まではベストソリューションを提案することがコンサルタントとして重要と考えていましたが、ベターでいいから確実に実現でき、少ない工数で継続的に実行できるソリューションの方がより重要と考えるようになりました。この経験を活かしてもう一度コンサルタントとしてクライアントの成功に貢献したい、それを実現する環境がMOVER&COMPANYにあると考えたために入社を決意しました。
山根征典様
コンサルティング事業を主軸に、多角的にリアルビジネスを展開
安形
続いて、MOVER&COMPANYの会社概要をお伺いしてもよろしいでしょうか。
篠﨑様
弊社はコンサルティング事業をはじめ、フリーランス向けのプロジェクト斡旋やマッチング支援を行っております。
また、子会社として株式会社Reevonを立ち上げ、B2B向けの開発支援やB2C向けの自社Webサービスの企画・運営などシステムエンジニアサービスを提供できる環境を整えました。それによって、経営戦略からマーケティング戦略、IT戦略などの上流から、業務構築・改善、システム導入・運用といった下流までグループ全体で一気通貫でのサポートが可能となりました。毛色は違いますが、子会社のTOiRO株式会社では人事や教育を軸にスポーツ選手のキャリアトレーニング事業や女性に特化したコミュニティ運営事業を展開しております。
他にもB2B、B2C向けの謎解き、脱出ゲームの企画制作運営を行う株式会社TERANOVAを展開しております。直近では、日本全国の水族館で謎解きを通じて海洋問題を学べるサービスをお届けしています。
安形
コンサルティングを軸にお客様のニーズや社会のニーズに対して柔軟にビジネスを広げられていらっしゃるのですね。今までのコンサルティング経験を生かしつつ、そこから広がる形でサービス企画をしていきたいという方にとっては非常にいい環境ですね。
篠﨑様
そうですね。社内ではコンサルティング事業部に所属しながらTOiROやTERANOVAの事業をサポートできる環境を用意しています。但し、それは強制ではなく、あくまでも挙手制です。コンサルタントとして突き詰めたい人は、コンサルティングに特化すればいいですし、コンサルティングだけでなく事業運営にも興味がある人は、事業運営にも手を挙げればいいという考え方です。
コンサルティング事業部のメンバーと子会社のメンバー間でのコミュニケーションが徐々に活発になる中で、自発的なコラボが生まれ始めています。
もともと弊社はコンサルティングサービスだけを提供する会社にしたいとは考えていません。変化し続けるビジネスの世界では、自ら目標を立ててマイルストーンを設定し、課題を解決しながらひたすらPDCAを回し、ゴールに導ける「MOVER(自走型)」な人材がビジネスマンとして成功するための必要な要素だと考えています。弊社はそういったMOVERを集め、コンサルティング事業と事業会社のいいところをうまくスパイラルアップしながら、コンサルティング事業を主軸に、今後も多角的にリアルビジネスを展開していきたいと考えています。
将来的には、マネージャークラス以上の方がコンサルティングをしながら「こんな事業を立ち上げたい」と提案し、5年後10年後には子会社がたくさんできている状態が理想ですね。
大手ファームとの違いは「クライアントとの距離感」、コア事業のコンサルティングでは「社員代替」として主体的に動ける
安形
コンサルティング事業の具体的な案件例を教えていただいてもよろしいでしょうか。
篠﨑様
ITに関わるプロジェクトが多いです。業界では保険や金融が半分で、残りはメーカーやサービス業が中心ですね。
例えば、保険や金融のクライアントにおける社内DX化プロジェクトでは、社員代替としてPMOの立場からサポートします。社内DX化でタスクフォースが組まれる際、通常クライアントのメンバーは自分たちの仕事を兼務しながらプロジェクトを回さなければなりません。中にはプロジェクトを回したことがない方も当然いらっしゃいますので、そういったプロジェクトを円滑に回すためにサポートさせていただくことが多いです。
大手コンサルティングファームでは大規模プロジェクトが多いため、PMOというとどうしてもファシリテーションや進捗管理がメインとなってしまいがちですが、我々は「プロジェクト管理」を中心に「業務」「システム」の3つに軸足を置き、プロジェクトによってはビジネスアナリスト的に業務ユーザーの立場に立って業務改善を行ったり、ITの立場に立ってベンダーとうまく調整したりしながら各人がPM代替となってプロジェクトを進めています。
安形
山根様も以前はコンサルティングファームにいらっしゃいましたが、実際に働かれて前職との違いを感じる部分があればお伺いしてもよろしいでしょうか。
山根様
大手コンサルティングファームとの違いは、プロジェクトメンバーとクライアントとの距離感です。大手ファームになると200人、300人規模のビッグプロジェクトも多く、クライアントとのセッションに出られないメンバーが8割くらいになります。プロジェクト進行の準備タスクをこなすことが多く、自身が作成した成果物に対するクライアント評価を直接聞くことが出来ないため、本当にクライアントのためになっているのか、プロジェクトのためになっているのかがどうしてもわかりづらいところがあります。
一方、弊社のプロジェクトは、クライアントの反応を直接感じることができる距離感の規模が多く、常に共同でプロジェクトを推進していきます。なので、自分が目指すコンサルタント像に向かって自分自身の何を伸ばしていけば、よりパフォーマンスの高いコンサルタントとして活躍できるのかを考えたり取り組んだりできる環境が整っているところが大手ファームとの違いです。
安形
PMOと言ってもただプロジェクトを管理するのではなく、課題解決に向かって推進していけるところが魅力になるんですね。他にも案件事例があれば教えていただけますか。
篠﨑様
直近の案件事例のトレンドとしてはAIソリューションです。2020年末に、AI/機械学習を提供するアップデータ株式会社と鉄板製造の老舗メーカーである東洋鋼鈑株式会社と、弊社の3社で業務提携し、製造業の生産性向上につながるAIソリューションのサービスを開始しました。
今後はサービスを通して、メーカーを中心にDX推進に貢献していきたいと考えております。
プロアクティブに「コンサルティング+α」のことをやっていきたい方を求めている
安形
御社が求める人物像についてお伺いしたいのですが、まずは御社の雰囲気を教えていただけますか。
山根様
メリハリがしっかりとしている非常におもしろい雰囲気ですね。また部門間のセクショナリズムがないのも1つ特徴です。セクショナリズムがあるところだと、自分たちの部門を守るために「利益にならないことに対して足を突っ込むな」という風潮が往々にしてありがちですが、弊社では困っているところに対し自ら近づき、サポートをするメンバーが多いです。それくらい、日頃からコミュニケーションがしっかり取れています。
篠﨑様
バックグランドはさまざまですが、共通して言えるのは、みな明るく、性善説に基づいて積極的に行動出来る人が多いです。会社として「あれやれ、これやれ」というのは言いたくありませんし、私自身言われることは嫌なので。気持ちよく「自分はこれがやりたいです」と言えていろんなことができる組織です。
実際に活躍している者は、例えばデジタルとビジネスを両輪で回し、ビジネスを推進してきた人材です。特に、デジタルの対抗勢力が多い会社の中で、自分で企画を立て導入し社内で啓蒙活動をされてきた方は、まさに社内コンサルになりますので、弊社のDXコンサルティンググループでご活躍になれる方だと期待しております。
安形
具体的にどういった人物像を今は求められていますか。
篠﨑様
弊社の特徴は、コンサルティング+事業会社というよりは、コンサルティング+ベンチャー企業なところにあると思います。将来的に事業を立ち上げたい方には会社として人もお金もサポートしますし、他の人をサポートしたいのであれば手を挙げればいくらでもできる環境なので、プロアクティブにコンサルティング+αのことをやっていきたい方を求めています。
山根様
積極的に手を挙げたり、目立ったりしたい人であることが大前提ですが、手を挙げたからには最後まで責任を持ってやりきろうとする人です。自分自身の目標に向かって、いろいろな工夫をしながら前向きにチャレンジできる人が向いていると思います。また、管理・業務・ITどれでもいいので自信を持てる領域があり、それを軸にコンサルタントとして成長していきたいと考えている人がマッチすると考えています。
安形
ありがとうございます。最後に、御社のこれからのビジョンをお伺いしてもよろしいでしょうか。
篠﨑様
我々のビジネスモデルはMOVERな人材を集めることです。MOVERが集まることでいろんな科学反応が起こる。社員が一桁の時と50人を超えてきた今とでは科学反応が起きるスピードは桁違いです。これから100人、1000人と増えていけば当然違う規模で科学反応は起こりますし、私はそれをこれからもスピードを上げて起こしていきたいと思います。