三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(以下、MURC)の社会共創ビジネスユニット(以下、BU)は、社会課題解決と事業化(収益性)の両立にこだわりを持つユニークな組織です。社会課題解決は多くの企業が掲げるものの、事業化に至らず絵に描いた餅で終わることが少なくない中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の金融機能とシンクタンク機能の調査・分析力とコンサルティング機能を組み合わせることで、社会課題の解決を、持続可能な事業として実現しています。
今回は、同BU長兼イノベーション&インキュベーション(以下、I&I)部長の渡邉藤晴様、ヘルスケアコンサルティング室長の外石満様、グローバルコンサルティング部長の東條恵明様に、MUFGの社会課題解決アプローチと総合力を生かした取り組み、目指す組織の将来像をお聞きしました。
※内容は2024年11月時点のものです
外資ではなくMURCへ―社会変革を志した3人の経歴と決意
田中
皆さまのご経歴をお伺いできますでしょうか。
渡邉様
外資系コンサルなどを経て2013年に戦略コンサルティング部門立ち上げメンバーとしてMURCに入社しました。入社当時は他の外資系ファーム出身者と共に、オーソドックスな大企業向けコンサルに従事しておりましたが、通常の戦略コンサルアプローチでは大手外資系ファームには勝てないため、弊社の強みであるシンクタンクやMUFGの協業が武器になると考え、2018年にI&I部を立ち上げました。
当初は私を含めて数名の部でしたが、現在では60名弱の組織に拡大し活動を広げていく中で、本年4月にヘルスケアコンサルティング室、グローバルコンサルティング部と共に社会共創BUを立ち上げました。
田中
御社にご入社された決め手を教えてください。
渡邉様
私がMURCへの転職を決めた理由は2つありました。1つは、前職を辞めてコンサル業界から離れて事業会社やベンチャーに転職しようと考えていた際に、MURCなら事業開発の視点で新たなコンサルティング市場を開拓できるという魅力的な機会があったからです。
もう1つは、私が新潟県佐渡島の出身で、当時30歳くらいでしたが、何かしらの形で地方の活性化に貢献したいという想いがあり、シンクタンクであれば地方創生に関わる機会も多いと感じたことが最後の決め手となりました。
田中
前職との違いや、魅力に感じる点があれば教えていただけますか。
渡邉様
1番の違いは、「日本のため、日本の社会課題解決のため」「産業インパクトを作るため、産業創造のため」といったことを恥ずかしげもなく言える環境と、その“想い”を持った方がたくさんいる点です。
われわれはコンサルタントなので自己の成長はもちろん大切ですが、それよりもわれわれが社会課題や産業に与えるインパクトを起点に考える方が多い点に、外資系ファームとの違いを感じます。
田中
外石様のご経歴をお伺いできますでしょうか。
外石様
私は新卒でソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)に入社し、ライフサイエンスや医療機器分野への参入を目指す新規事業の先駆けメンバーとして、事業開発を実施し、アメリカ企業のM&AやPMIまで手掛けました。その後、外資系コンサルファームなどを経て、2016年にMURCに入社しています。
当初は中堅企業向けの経営課題を解決するコンサルティング部署に所属しましたが、ヘルスケアの専門性を生かし、3年前に同じ志を持つメンバー数名とヘルスケアコンサルティング室を立ち上げました。現在は15名体制となり、MURC唯一の業界特化型のコンサル部門として、MUFGのグループ各社とも連携しながら、医療・ヘルスケア分野の社会課題解決に取り組んでいます。
田中
最終的に御社にご入社された決め手をお伺いできれば幸いです。
外石様
MURCであれば官との連携による事業提案も可能であるためコンサルの幅が広げられる点と、やはりMUFGとの連携に魅力を感じました。三菱UFJ銀行はもちろんのこと、ベンチャーキャピタルや証券会社、信託銀行もあります。大企業だけではなくスタートアップなどあらゆるチャンネルを持ち、金融事業を絡めたいろいろな提案ができる点が魅力的です。
この分野は他業界からの参入の検討も盛んであり、自動車部品などものづくり産業から新規参入などが検討されております。製薬企業や医療機器メーカーなど従来のヘルスケア関連企業だけでなく、手掛けられる業種が多い点も魅力に感じました。
田中
前職との違いや、魅力に感じる点があれば教えていただけますか。
外石様
医療ヘルスケア業界は医療や介護など市民の健康に影響を及ぼすため、製品事業化には承認申請などが必要となることもあり、官との連携が重視されます。シンクタンク部門を持つことにより、そこを主導できる点は魅力的ですし、民間企業に提案できる範囲も広がります。政策面にリーチできて事業展開できる点が重要で、違いを感じている部分です。
田中
東條様のご経歴をお伺いできますでしょうか。
東條様
私は新卒で当社に入社し、今年でちょうど30年で、一貫してコンサルティングをしています。入社当初は国内の戦略系コンサルティングを中心に携わっていましたが、2006年頃から「グローバル」を軸にコンサルティングを手掛けるようになり、その後はグローバル特化のコンサルティングを続けて現在に至っています。
田中
東條様が新卒からコンサルタントとして御社で長く働こうと思った魅力をお伺いします。
東條様
やはり「グローバル」に軸足を置いたコンサルティングに従事するようになったことが、理由としては大きかったと思います。グローバル案件は、エリア一つをとってもその対応範囲が広いので大変なこともありますがわれわれ自身がグローバルコンサルタントとしてさまざまなことに取り組める面白みや醍醐味もあります。弊社にもタイとインドネシアに海外現法(ベトナムに駐在事務所)がありますが、グローバルファームでも、日本勤務の方は国内案件を担当するケースが多いとよくお聞きしますので、知的好奇心を満たすフィールドの広大さという意味では、恵まれている面が大きいと思います。
シンクタンク機能×MUFGの総合力で実現する社会課題解決のビジネスモデル
田中
社会共創BUについてご紹介いただきたいと思います。
渡邉様
社会共創BUは、MUFGとシンクタンクの力を生かし、社会課題の解決と経済性の両立を目指しています。社会課題解決は多くのコンサルティング会社が掲げていますが、われわれは事業化との両立に徹底的にこだわっているのが特徴です。
社会共創BUは「新テーマ開発」「社会課題解決手法のグローバル化」「注力セクター深耕」をユニット戦略の柱としております。
1つ目の「新テーマ開発軸」は、主にI&I部が担当します。社会課題へのアプローチをシンクタンク部門と連携しながら、社会実装に必要な「半歩先」のテーマを開発・提案します。
2つ目の「社会課題解決手法のグローバル化」はグローバルコンサルティング部が担います。世界中に点在するMUFGのグローバルネットワークを活用し、社会課題解決手法はもちろん、日本の強みとなるサービスや技術のグローバル化を提案します。
3つ目の「注力セクター深耕」ですが、他ファームと違い社会共創BUではセクター部隊は持たず、MUFGのセクター調査部門と連携する中でケイパビリティを補完しております。その中で、社会課題や官民連携と密接かつ専門性が求められる「メディカル・ヘルスケア領域」については、MURC内がヘルスケアコンサルティング室として内製化しております。
田中
御社が経済との両立を実現できている背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。
渡邉様
社会課題の解決と経済性を両立できている背景には、2つの強みがあります。1つは、シンクタンク部門が長年にわたって官と連携し、社会課題を把握・分析してきた知見であり、もう1つは民間企業との豊富なネットワークとマネタイズの視点を持つMUFGの力です。
具体例を挙げると、カーボンニュートラルに代表されるGXは、ここ数年で社会実装のフェーズとなり多くの民間企業や自治体が脱炭素に向けた取り組みを開始しております。
MUFGは、脱炭素で最も影響を受ける業界である火力発電所や内燃機関自動車メーカーなど、炭素を排出する多くの企業と取引関係があり、脱炭素化に向けた取り組みはMUFGにとっても喫緊の課題でした。
MUFGにとって脱炭素化の実現は企業の生命線を担うものであり、絵に描いた餅の戦略では困ります。そこで、シンクタンク部門が10年以上前から調査研究を続けてきた脱炭素化に関する知見を活用しながらわれわれがMUFGの一員として戦略を策定し、その戦略をMUFGは取引先にとって現実的かつ最善な施策か否か、事業化につながる戦略か否かを検証します。
このように、政策を担う官との連携を持つシンクタンク部門の知見と、実際に産業化につながる≒資金調達が必要になるレベルまで具現化するMUFG、特に銀行との両者の橋渡しをすることがわれわれ社会共創BUの役割であり、社会課題の解決と経済性の両立にコミットできる強みだと考えます。
業界全体の発展を見据えた独自のアプローチ―MUFGならではの「1対N」の視点
田中
日々業務をされていく中で、MUFGの基盤を生かすことで感じるメリットをお伺いできますか。
渡邉様
MUFGとの連携の強みを、先ほどご紹介したGXプロジェクトを例にご説明します。通常の戦略コンサル案件は3-5名程度の体制ですが、このプロジェクトには総勢200名以上が関わっていました。社会共創BUからは3-5名の関与であり、メンバーの中心はMUFG側で顧客企業に対面している営業担当者と、そのフォローにあたる専門家集団となります。
やや極端に言えばコンサルティングの成果は質と量の掛け算で表すこともできます。200名の営業担当者が対象企業の中枢から情報を集めることで、圧倒的な質と量の情報収集が可能になります。通常のコンサルファームであれば自力または調査会社に依頼するようなリサーチが、一瞬で完了するのです。(もちろん利益相反がないように情報管理は徹底します)
また、その情報は業界横断での集約が可能となるため、最終的な戦略は個社ごと、業界ごとの個別最適ではなく、業界横断の全体最適な戦略となります。脱炭素はA業界にとって良いことでもB業界にとって厳しいことも多々あります。社会課題は複合的な論点が多いからこそ、業界横断的な視点が重要になります。
さらに重要な点は戦略実行のフェーズでの強みです。GX戦略策定に関わった200名の営業担当者たちが、その戦略に基づいて一斉に各担当企業に提案・実行に移ります。これにより、スピーディーかつ大規模な社会課題解決が可能になるのです。
外石様
われわれは事業戦略策定にとどまらず、その実行段階まで深く支援しています。医療・ヘルスケア業界への新規参入支援では、臨床試験や医師へのニーズ確認なども必要となる場合もあり、より専門的な視点からの支援が必要となります。また、実行支援の手段としてMUFGのリソースを活用してM&Aなど外部連携による成長戦略の立案から、候補企業の選定、まで携わります。
また、新規の開発案件におけるコンソーシアムの運営や、スタートアップ投資は三菱UFJキャピタルなどMUFG内のベンチャーキャピタルとの連携も可能です。海外展開でも、MURC現法のあるタイとインドネシアをはじめとして、MUFGは中国やアメリカ、EU各国など世界中にネットワークを持っています。このようにMUFGのグループ企業のさまざまな機能を活用することで、戦略の実行面でも幅広いサービスを提供できるのです。
東條様
グローバルコンサルティングの観点から見ますと、やはりMUFGのグローバルなプレゼンス・リソースは大きな特徴、強みかなと思います。海外での事業開発やローカル企業とのアライアンス、地政学リスクへの対応など、グローバル課題は多種多様ですが、世界中にあるMUFGの海外拠点とのコミュニケーションや協働の基盤は大きな支えとなります。
渡邉様
他ファームとの根本的な違いは、MUFGの顧客との関係性は基本的に1対Nである点です。通常、われわれコンサルティング会社はフィーを頂く方がお客さまになるため、基本的には1対1の関係性になります。
個社にとって最善の戦略・ソリューションを考えることは、必ずしも業界全体の最適化にはつながりません。なぜなら、個々の会社の最適化を積み上げても、それがそのまま業界全体の最適な解にはならないことがあるからです。いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう) 」です。その点、MUFGは業界全体を見据えたマクロ的な視点からお客さまと向き合え、近視眼的になることを避けられます。これは前職のコンサル時代には得られなかった視点であり、MURCの非常に良いところだと感じています。
田中
市場環境の変化や、それに伴う御社の役割の変化についてお伺いできればと思います。
渡邉様
2つの大きな変化に直面しています。1つは市場の不確実性の高まりです。従来の戦略コンサルティングでは、2~3カ月で仮説立案、検証、報告という流れが一般的ですが、今は1週間で顧客側の状況が激変します。そのため、シンクタンクの政策動向分析やMUFGの業界動向を軸に、環境変化を常に先読みしていく必要があります。
2つ目はセクターの垣根の消滅です。スマートシティーに象徴されるように、もはやセクター単位でのアプローチは通用しません。そのためわれわれは、セクターではなくエリアやテーマ、またセクターの中でも社会課題との紐づきが強いメディカル・ヘルスケアを軸に展開しています。
外石様
製薬業界では「Beyond the pill」という考え方が広がっています。従来の医薬品だけでなく、スマートフォンを活用した生活習慣の改善など、デジタルを活用した治療方法などが広がっており、IT企業によるデータ解析などを活用した参入も盛んになっており、産業の広がりが顕著になっています。
宇宙からヘルスケアまで―200名規模のプロジェクト事例に見る組織の総合力
田中
差し支えない範囲で、象徴的なプロジェクトをお伺いできれば幸いです。
渡邉様
宇宙プロジェクトの事例をご紹介します。宇宙産業は「宇宙村」と呼ばれる限られたプレーヤー、つまり重工系や技術系のロケットや衛星を作る企業とJAXAを筆頭とした技術者たちだけの世界が主流でした。ただ、NASAも同じですが、事業として成立しにくい現実があり、事業としての「宇宙」の定義が課題でした。
そこでわれわれは、JAXAと商社を中心にESG×宇宙開発プロジェクトを立ち上げました。JAXAが持つ衛星データを活用して環境価値を可視化し、それを必要とする企業に提供するモデルです。このプロジェクトでは、MUFGが接点を持つさまざまな企業とのネットワークを活用し、多様な業種の参画を実現。その出口戦略の確かさが評価されました。
さらに特徴的なのは、MUFGがスタートアップに出資して宇宙事業に参入するなど、事業主体として深くコミットしている点です。コンサルティング会社はあくまで助言が中心で、事業そのものにコミットすることは稀ですが、MUFGとして捉えれば、そのようなリスクを取って事業に参入することも可能になります。
また、JTBと協業する宇宙事業もユニークなのでご紹介いたします 。宇宙と聞くとどうしても技術や産業寄りになりますが、ロケット発射場のある和歌山や大分などの自治体にとっては、「まちづくり」の視点が入ります。そこで、われわれはJTBと組んで宇宙×地方創生のプロジェクトも立ち上げました。
このように、「宇宙」をテーマに、技術、産業、地方創生など、さまざまな視点で支援ができることが、MUFG、シンクタンク部門を有するMURCの強みではないでしょうか。
※参考:MURCとJTB、宇宙産業参入支援に向けたサービスのトライアルを開始
~「宇宙の街づくり」の支援を通じ、産業構造変革や関係人口の増大をめざす~
https://www.murc.jp/news/news_release/news_release_230824/
外石様
医療機器産業における重要な社会課題をご説明します。日本の医療機器市場は約30万点もの製品があり、製品の中ではほぼ輸入に頼っているような医療機器もあります。たとえば心臓ペースメーカーは400億円の市場規模がありますが、ほぼ全てを輸入に依存しています。
これは医療安全保障の観点から大きなリスクです。実際、コロナ禍では人工呼吸器がアメリカの政策で入手できなくなり、国内で一部の治療が困難になるという事態も起きました。このように医療機器の過剰な輸入依存は患者さんの命に関わる問題であり、経済産業省も重要課題として取り組んでいます。
この課題解決には、国内でのサプライチェーン構築が不可欠です。われわれは官民連携のハブとなり、各地方の大学医学部や中核病院を核とした医療機器産業の育成に取り組んでいます。たとえば大阪市、名古屋市、宮崎県など、それぞれの地域におけるものづくりの強みを生かしたサプライチェーンの構築なども進められています。
渡邉様
コンソーシアム組成支援は他のコンサルティングファームも行っていますが、通常、コンサルやシンクタンクの立場では基本的に黒衣としてPMOを担当します。しかしわれわれの場合、MUFGとして参画できる点が大きな強みです。
これは、単なる黒衣としての関与ではなく、MUFGとしてリスクを取り、責任を持って事業にコミットするということです。コンサル業界ではよく「絵に描いた餅」と言われがちですが、われわれはMUFGとして事業主体となってお客さまをサポートします。
田中
プロジェクトの中で、MUFGやMURCは各フェーズのどの部分を担うのでしょうか。
渡邉様
新規事業は「ゼロイチ(0→1)」「イチジュウ(1→10)」「ジュウヒャク(10→100)」という3段階で展開します。まず「ゼロイチ(0→1)」の段階はMURCのシンクタンク部門が担当し、「イチジュウ(1→10)」の段階は社会共創BUが担います。そして「ジュウヒャク(10→100)」の段階では、ファイナンス面はMUFGや大手金融メガバンクが、コンサル面ではBIG4などが担当する、という役割分担を想定しています。
実際に、われわれはBIG4とも協業することがあります。われわれの組織規模では対応できない大規模な社会課題解決に対するソリューション提供は、規模の大きいファームに担当していただく。このように、それぞれの強みを生かした役割分担ができればと考えています。
田中
他ファームとの分業も多いのでしょうか。
渡邉様
実際に外資戦略ファームやBIG4とも協業する機会がありますが、他社にはおそらくMURCのシンクタンクとしてのユニークさ、MUFGとしての立ち位置を理解いただいていることで協業できていると考えます。われわれとしても、コンサルティング会社、シンクタンク、MUFGのそれぞれの顔を使い分けて連携できることが協業において強みになっております。
社会変革への強い想いとプロフェッショナリズムの共存―組織が求める人材像と将来展望
田中
社会共創BUの雰囲気や求める人材像についてお伺いできますか。
渡邉様
社会共創BUに入社いただく方は BIG4内での選択とは異なり、「シンクタンク×コンサル」という選択を意識的にされています。特に新卒採用では顕著で、最近は中途採用でもそういった方が増えています。共通しているのは、「日本のため、社会のため」という想いを第一に考えているということです。そしてそういった志を持った方こそが、われわれが本当に求めている人材なのです。
「社会のために働きたい」という想いを持った人材は、大企業、特に社会インフラ系の企業に多く在籍しています。実際、われわれの会社に入社された大手重工系や大手通信系出身の方々も、元々の会社に新卒で入社した時からそういった想いを持っていました。
しかし大企業では、意思決定ができる立場になるまでに45歳くらいまでかかってしまい、若いうちから自分の思い描く社会貢献を実現するのは難しい現実があります。そのため、もっと早く社会課題の解決に携わりたいと考える方々が、われわれの会社に向いているのではないかと思います。
コンサルティングのスキルがまだ十分でなくても構いません。社会をより良くしたいという強い想いがあれば、スキルは入社後に身につけていけば良いのです。われわれのBUが最も重視しているのは、そういった志の高さなのです。
外石様
当社の特徴的な点として、コンサルタントやシンクタンクの研究員など、それぞれが強い専門性を持っていることが挙げられます。その専門知識を社内で積極的に共有し合う文化があり、誰かに聞かれれば、自分の知見を惜しみなく提供します。
さらに、セクターを超えたさまざまな知見を探求したり、それを共有したりすることで、新しい価値を生み出そうとする意識が強いのです。そのため、自分が知らないことを気軽に尋ねられる一方で、自分の知見も積極的に提供する。このような知の共有と創造の文化が、社員一人一人に根付いています。
東條様
当部のメンバーは、単にコンサルティングの仕事をしたいというだけではない、より深い志を持った人が多いと感じています。特にグローバル分野への関心が強いのが特徴です。
海外で事業経験を積んだ中途入社の方々は、日本企業の存在感が徐々に低下していく状況を目の当たりにし、「なんとか自分の力で貢献できることはないか」という強い想いや危機感を持つ方も多いですね。新卒入社の方々も同様ですが、「グローバル」という切り口から、日本に貢献したいという志を持って入社する方も多いと思います。
田中
中途入社の方のバックグラウンドで特に多い業界などありますか。
渡邉様
I&Iの中途採用の特徴をお話しします。コンサル出身者は非常に少なく、キャリアで言えば全体の2割程度です。多くは通信や製造など、大手企業の出身で、元々の会社に入社した時点で社会に貢献したいという想いを持っていたものの、なかなかそれが実現できず、当社への転職を決意されたケースが多いです。
また最近では、アカデミアからの採用も積極的に行っています。芸大で研究員や助教として活動されていた方や、海外の大学や研究所で研究をされていた方など、企業での就業経験がなくても、社会課題を解決したいという強い思いを持つ方々の採用にチャレンジしています。年齢は30代以上の方も多いのですが、コンサル経験の有無や年齢にはこだわらず、社会をより良くしたいという志を何より重視しています。
外石様
ヘルスケアコンサルティング室のメンバー構成をご紹介します。医療機器メーカーや製薬企業の出身者が多く、精密機器メーカー出身のデータサイエンティストや、食品メーカー出身者、さらには官僚出身者など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが在籍しています。
年齢層も幅広く、たとえば40代で入社したメンバーもいます。大手医療機器メーカーで企画業務を経験した医療機器のエキスパートなど、事業会社で製品開発や企画業務の経験を持つ方であれば、年齢は問いません。
また新卒採用では、医療経済や法律など、ヘルスケア分野に関連する専門性を持った人材も迎えています。
東條様
グローバルコンサルティング部の中途採用者は、事業会社でグローバルビジネスを経験された方が中心です。たとえば、大手通信会社の出身者や、大手銀行・証券会社で海外駐在経験のある方など、メーカー、通信、金融といったさまざまな業界から来ています。
特徴的なのは、コンサル未経験でも、事業企画などの立場でグローバルビジネスに携わった経験があれば、直ちに即戦力として全員が活躍できているということです。ただし、特定の国の専門家というよりも、事業企画的な視点でグローバルビジネスを経験された方の方が、よりなじみやすい傾向にあります。
田中
御社のカルチャーで、社内コラボレーションを活発に実現できている背景をお伺いします。
渡邉様
われわれのBUに「共創」という言葉を含めたように、組織として最も大切にしている考え方があります。それは「われわれだけでは何もできない」という前提です。お客さまや社会にインパクトを与えるためには、必ず誰かと組む必要があります。この考え方は、I&I部だけでなく、他の部室も同様です。
もう1つ大切にしていることは、「ナレッジを独占しない」という姿勢です。特にI&Iでは、リサーチで得た知見は即座に解放します。社内はもちろん、場合によってはお客さまや競合他社とも共有します。そして、共有した後は、さらに上の価値を生み出すために自らも学び続けます。
この文化を定着させるため、外石がリーダーとなり、ナレッジマネジメントの仕組みを整備し、BU全体での知見の横展開を進めています。
田中
御社で働くやりがいや実現できること、御社の今後についてもお伺いできればと思います。
渡邉様
最大の特徴は、社会にインパクトを与えたい、社会課題解決の一歩を踏み出したいと考える企業と共に仕事ができることです。そして、MUFGとシンクタンク、双方のケイパビリティを活用してコンサルティングができる点は、非常に魅力的でやりがいがあります。
一方で、業界全体の発展のためには、時として厳しい決断を迫ることもあります。たとえば業界再編の中で、お客さまに不利な立場になっていただくケースもあります。このように、個社の利益だけでなく業界全体を見据えた提案ができることも、当社の特徴です。
さらに、同じ志を持つ企業、銀行、シンクタンクの方々と協働できることで、われわれ自身の視野も広がります。
外石様
当室に応募される方々の多くが興味深い志望動機を話されます。たとえば製薬企業や医療機器メーカーの方、あるいは他のコンサルファームで製薬分野を担当されていた方から、「薬や医療機器など従来の医療行為では解決できない課題が多くあり、日本の医療システム自体を変革したい」といった高い志を持って応募される方もいます。
他の規模の大きいコンサルファームでは、製薬企業専門の部隊があり、業界やソリューション特化していることも多いのですが、われわれは十数名の小規模な組織だからこそ、薬、医療機器、介護、病院など、ヘルスケア産業の幅広い領域に携わることが出来ます。
これにより、病気の治療だけでなく、健康維持や予防医療、健診などでの早期発見、さらには社会復帰後の支援や介護に至るまで、患者さんの人生全体を見据えたソリューションを提供できます。このような幅広い視点でヘルスケアに取り組めることが、われわれの強みになっています。
東條様
われわれのグローバルコンサルティング部では、個別クライアントの支援だけでなく、業界や日本全体の課題に取り組むプロジェクトが多くあります。たとえば、米中対立による原材料調達の問題など、地政学リスクへの対応を考える機会も多いです。
そのため、単に自社製品だけを見るのではなく、より広い視野で社会貢献を考えたい方との親和性が高いと思います。
渡邉様
現在、われわれのBUは約100名の規模ですが、MUFGの規模感からすると全く足りていません。MUFG視点で考えるのであれば、過去のMUFGの買収案件、たとえばモルガン・スタンレーと比較しても、そのレベルの規模感が必要なのです。
MUFGが社会から求められている期待に対し、われわれが担えているのは全体の5%にも満たないでしょう。そのため、まずは倍の200名規模を目指していますが、それでも十分とは言えないかもしれません。規模を拡大することで、われわれの担当フェーズから、他のファームが担当するフェーズへの橋渡しもよりスムーズになると考えています。
一方で、いたずらに規模を拡大すれば良いわけではありませんので、規模拡大と同時に「質」の担保も重要になります。そのために、2つの側面で取り組みを進めています。1つは「マインド面」です。コンサルタントのあるべき姿や、BUとしての存在意義を明確にすることが最も重要だと考えています。もう1つは「スキル面」です。コンサルタントに必要なスキルは本部で基礎を作り、各部門でOJTを通じて育成します。育成に関しては、他のコンサルファーム出身者が関与した育成モデルがあるため、他ファームに見劣りするものはないと思われます。なお、マインドとスキルは、特にマインド面を大切にしておりますので、OJTでもスキル以上にマインド面の育成を重視しています。
田中
最後に御社にご興味を持った方、候補者へメッセージをお願いします。
渡邉様
お伝えしたいのは、「社会のため、日本のため」という想いを声高に語れる方々と、ぜひ一緒に仕事をしたいということです。われわれの会社もBUも、そういった志を持つ方々を受け入れる土壌が十分にありますので、想いに共感いただいた方は、ぜひともご応募いただければ幸いです。