今回は、2021年2月にパクテラ・コンサルティング・ジャパンが新設したビジネスデザイン事業部のインタビュー。起業や大手人材企業のDXチームマネージャーとしての経験を経て、同組織を立ち上げた石川大祐様に、これまでのご経歴や、同組織における事業モデル、今後の展望、求める人物像などをお聞きしました。
ビジネスデザイン事業部を率いる石川様のご経歴
江口
まずは石川様のご経歴についてお聞かせいただけますでしょうか?
石川様
前職は、大手人材会社のIT・エンジニアリング領域に特化した子会社で、DX戦略部門の部長を務めていました。役職はエグゼクティブコンサルタントです。事業戦略、新サービスの開発、デリバリー組織の開発・改善など、クライアントのDX支援と自社のDXの両方を担っていました。
江口
その前は、起業の経験もおありとか。
石川様
はい。通信回線の営業代行会社です。まだ光回線が普及していなかった頃に勢いで会社を起こしました。光回線を普及させたい大手通信会社様から仕事を受注し、営業して、コールセンター業務までまるごと引き受けていました。
江口
なぜITエンジニアにキャリアの軸をずらしたのですか?
石川様
友人と会社を経営していたのですが、大きな会社ではないので潤沢な人的リソースはありません。そこで、Illustratorを買ってチラシを作成したり、民間企業や一般家庭に通信回線を理解し、契約してもらうための80ページほどの小冊子を作成したりしていました。また、会社のホームページにしても、簡単に安く発注できる時代ではなかったので、自分たちで作成していたのです。
ホームページを作るうちに、プログラミングや自分でサービスを作ることに興味を持ち、勉強を始めたのがきっかけで、起業した会社を友人に譲り、エンジニアにキャリアチェンジしました。
江口
その後、エンジニアからITコンサルタントに転身したきっかけはどのようなものでしょうか?
石川様
国内大手製薬会社のプロジェクトがきっかけですね。製薬業界は特殊なシステムが多いのですが、それらの導入や運用を手掛けました。自分で導入コンサルティングを行い、システム開発プロジェクトをリードし、ヘルプデスクまでやっていました。そこで長くやっているうちに、コンサルタントの仕事に楽しさを覚えたのがきっかけでした。
江口
それは前職でのことですか?
石川様
そうです。前職は10年ほど在籍していて、入社して間もない頃の話ですね。入社当初はメンバーとして現場に配属され、そこから1年で現場のリーダー、そしてプロジェクトマネージャーになりました。プロジェクトマネージャーとして成果を出せたので、1つのプロジェクトだけではなく、複数のプロジェクトを統括するマネージャーに昇進しました。
それからデリバリー部門の責任者として、デリバリーのマネジメントをしていました。デリバリーそのものに自分が入る立場ではありませんでしたが、合間を見てデリバリーもやっていました。そこからDX戦略部門を立ち上げました。最後の2年間は、どっぷりコンサルティングをしていました。
割合としては、自社のサービス企画や開発とデリバリーを紐づけるファシリテーターとしての動きは多かったですね。例えばAIの知見が社内にあり、それをクライアントに提案できる営業もいる。でも「それを何に使うか?」「それを使って、どんな良いことがあるか?」というのがわからず、今一つ顧客の業務とテクノロジーを結び付け切れていない。そこをコンサルタントとして私のチームが入り、デジタルコンサルティングやプロジェクトリードをしていました。
江口
営業、起業、エンジニア、そしてコンサルタントと異色の経歴をお持ちの石川様ですが、パクテラ・コンサルティング・ジャパンの代表を務める杉山様との出会いは、どのようなものだったのでしょうか?
石川様
ヘッドハンティングですね。最初は「ちょっと会話してみようかな」という軽いノリで、パクテラ担当のヘッドハンターの方とカジュアルに情報交換をしました。代表の杉山からは、デリバリー、マネジメントの経験を持ち、かつ新規事業を自分で立ち上げ、リードできる部分を買われ、入社に至りました。
江口
前職との環境を比べた際に、最も違いを感じる点はどこでしょうか?
石川様
その活動が価値を生み出すのに最適であれば、「今すぐやろう、」となります。大きな意思決定から小さなタスクに至るまで、スピード感が全然違いますね。
江口
それは貴社の文化によるところが大きいのでしょうか?
石川様
そうですね。大きな金額が動く場合は社長決裁が必要ですが、採用やプロジェクトの提案は、私のところでできるようになっています。メンバーの評価や昇格の査定も社長ではなく事業部長がやっています。比較的現場で意思決定できるベンチャー気質を持っている会社だと考えます。
2021年2月に”デザインコンサル”を手掛けるビジネスデザイン事業部を新設
江口
石川様が御社にジョインしてから、ビジネスデザイン事業部が新たに立ち上がったのですね?
石川様
そうです。2021年1月にジョインし、2月1日に事業部を新設しました。
江口
ビジネスデザイン事業部のプロジェクトについて、ぜひお話を聞かせてください。現在、石川様は同事業部で、『PacteraX(パクテラクロス)』を活用したコンサルティングを推進されているとお聞きしました。こちらについて具体的に教えていただけますか?
石川様
PacteraXは、AIやSTT技術などを独自のアーキテクチャで構成した、Pacteraのデジタルソリューションプラットフォームです。例を挙げますと、一般的なナレッジマネジメントシステムは、いかにドキュメントを管理するかという視点で作られたものが中心ですが、PacteraXの場合、動画を活用したナレッジマネジメントシステムが実現できます。
歴史の長い会社であれば、どのような会社にも、知見を持っている熟練の社員の方がいるものですが、業務が忙しくて中々若い人に手取り足取り指導する時間が取れない。そのような方達のMtgや講義などを録画し、それをPacteraXで解析して動画ナレッジにする。さらにそのナレッジをUI/UXを考慮したWebサイトやモバイルで提供することで、若い社員が多様な熟練者のナレッジ動画を見られるという様な事ができます。業界を問わず、必要とされるシステムです。
江口
今はミッション遂行のためにどのようなことをしていますか?
石川様
立ち上げたばかりですので、戦略策定やデジタルテーマのPoC、採用活動や外部との連携強化などが中心です。今のPacteraに必要なサービス戦略を試行錯誤していくのと並行し、メンバーを増やしていかなければと考えています。並行して、従来の発想にとらわれない、画期的なサービスを目指したR&Dプロジェクトも始めています。
江口
組織ビルディングにあたり、石川様がベンチマークしている企業はありますか?
石川様
あるデザインコンサルティングファームを参考にしたりしています。もちろんデザインコンサルティングファーム自体を目指しているわけではありません。ただビジネスをデザインする感覚で、新しいプロジェクトなりサービスなりを作れるような組織に育てたいと考えています。
会社全体でデザインコンサルティングファームを目指すのは難しいですが、まずは部門としてとがった存在になり、ゼロベースで新たな価値を作り出せる集団になりたいという想いを持っています。
江口
デザインコンサルティングというキーワードが出てきましたが、やはり昨今、ニーズは高まっているでしょうか?
石川様
はい。数年前から、マッキンゼーやBCGなどの大手コンサルティングファームが、さかんに優秀なデザインコンサルティングファームを買収しています。
我々もデザインコンサルティングファームを買収するという選択肢はありますが、いきなり買収するというよりは、まずは自分たちで型を作りたい。その型を作っていくところが課題です。
江口
なるほど。クライアントからのニーズも高そうですね。
石川様
そうですね。ただ、頼み方がわからないというクライアントが大半ではないでしょうか。
江口
石川様は「頼み方がわからないクライアント」に対して、どのようにアプローチして、潜在的なニーズを顕在化し、案件創出につなげていくのでしょうか?
石川様
おそらく待っていても依頼が来ない領域ですから、インサイトセールスとデザインシンキングをかけ合わせたような発想が必要になりますね。
例えば今、コロナ禍における巣篭もり需要の増加により、物流業の需要が伸びています。ドライバーが足りず、オペレーションも回らず、DXの推進もなかなか進まないといった課題があるところに対して、「その課題を解決するプラットフォームが必要ではありませんか」「このような会社と組めば、物流の効率が良くなるのではありませんか?」とこちらから提案します。
まずは一緒にワークショップをやりましょう、取り組みたいテーマについて、我々がファシリテートしますので、企画から一緒にしませんか、と。そこでもし共感してもらえたなら、実際にフィーをいただき、プロジェクトとして実際にやりしましょうと、一つの具体的なプロセスを提示します。
江口
既存のコンサルティングビジネスよりも、さらに幅広く多角的なアプローチで案件を生み出していくと。
石川様
そうです。もちろん難易度は高いですし、その業界に対して、知見を持っていないとできないことですが、チャレンジしていきたいですね。
ローコードプラットフォームに着目し、短期的に複数のビジネスを創造していく
江口
ITを入れていこうというような、長期スパンの案件ではないため、デザインファーム単体でいきなり大きな売上を作るのはなかなか難しいという声もお聞きします。そのあたり、どのようにお考えですか?
石川様
鋭いご指摘ですね。まさに私が今言っているようなビジネスデザインの領域は、中長期的に作っていくものです。いきなりは儲かりません。これを全員でやってしまうと、おそらく会社は潰れてしまうでしょう。ですので、投資の原資となるデジタルソリューションモデルも並行して進めています。
今考えているのが、ローコードプラットフォームの活用です。 例えば、ExcelやVBA、Accessで開発したものがいっぱいあって、困っているクライアントは数え切れません。担当者は、「もっとこうした方がいい」というのはわかっています。課題感はあるのですが、予算を取らないと何もできません。 そのようなところに、ローコードプラットフォームを紹介するわけです。自社でライセンスをあらかじめ持っておくことで、「こんな感じで課題解決できますよ」と提案書と一緒にモックアップを出せます。また、クライアントとワークショップ形式でミーティングをしたときに、高速でアプリを作って確認してもらうことも可能です。ローコードプラットフォームを起点として、業務改革のお手伝いをさせてもらい、そこから縁が続いて新たなコンサル業務が生まれることもありますね。
ローコードプラットフォームについては、既に提供している会社があり、それを使わせてもらっています。市場には色々なプラットフォームがありますので、我々はあくまでベンダーフリーで、クライアントに合わせてどのようなプラットフォームでも支援できるようにしていきたいと考えています。
江口
なるほど、今後を見据えた質問ですが、石川様がパクテラにジョインして「これを成し遂げたい!」というものがあれば教えていただけますか?
石川様
「石川って、あのサービスを作った人だよね」と言われるようなヒットの実績を作ることです。自分の部署のキックオフミーティングでも、同じことを言いました。
もちろんこれまでの仕事でも、色々幅広くやらせていただき、やりがいも感じていました。
ただ、ふと振り返ったときに、「尖った何か」「これ1つを説明すれば、自分の実績を理解してもらえる何か」というものがなかったのです。それをパクテラでやりたい。
一言で自分の実績を説明するのって、難しいですよね。何分か語る時間があれば喋れるのですが。ですから、「あれは僕が作りました」と言えるものを作りたいです。
今、求めるのはWebアプリやサービスの知見を持つ、マーケティングに強い人材
江口
石川様のところは現在10名規模の組織ということですが、その中で既存のメンバーは何名くらいいるのですか?
石川様
私ともうひとりが新たに入社、あとは既存のメンバーです。業務コンサルタント、DXコンサルタント、事業企画、Web開発のディレクション、インフラのコンサルタント、セキュリティの専門家など、様々な得意領域を持つメンバーが集まっています。
江口
今後の1年間で、どれくらいの規模にしていきたいですか?
石川様
今年中に、30人規模の組織にしていきたいですね。
江口
現状足りていない人材はどういったスキルの方でしょうか?
石川様
足りていないのは、マーケティングの専門家、Webアプリの知見がある人、あとはデータサイエンティストといったデータの活用に強い人ですね。これらの実績を持っている方に、ぜひ即戦力として来ていただきたいです。
江口
教えていただいた中で、今一番欲しいバックグランドの方はどういう方ですか?
石川様
マーケティング戦略に明るい人ですね。
江口
それはなぜでしょうか?
石川様
仮にクライアントが、かなり規模の大きなアプリを企画して、ベンチマークしたい巨大アプリがあっても、マーケティングの知見がなければ支援が難しいからです。ユーザーが数百万人いるようなアプリの広告費について、立ち上げ当初はいくらぐらいかかるかとか、どういう広告媒体が成功して、逆にどういう広告媒体が失敗するとかの裏側を知らないと、「結局何にいくらかけるのが、無難な戦略なのでしょうか?」「BPOの体制って、どういうロールの人が何人くらい必要でしょうか。いくらかければいいでしょうか」と聞かれたときに、具体的な数字を提示できません。
今お話したのはアプリのことですが、サービスを作ったり、Webサイトを作ったりする場合も同じです。今、オウンドメディアを作る企業は多いですが、そこにも必ずマーケティングは絡む。マーケティングは、ビジネスとして成立するかどうかに直結します。ですから、ビジネスデザインのワークショップをするときに、ぜひマーケティングのスペシャリストにいてほしい。そこがまだチームに足りない部分で、今はパートナーの人にお願いすることもありますが、できれば採用したいと考えています。
江口
データサイエンティストといったデータを活用して示唆出しできるような人材に関してはいかがですか?
石川様
データ活用に関しては、現時点でサービスとして何かを具体的にしているわけではなくて、まだまだこれからですね。4月あたりから本格化させたいと考えています。
なぜ4月からなのかというと、まずはターゲットと考えるクライアントのデータの流れをきちっと設計してから、そのデータを最終的にどう活用すべきかを考えたい。そのときに、データ活用のアーキテクトにいてほしい。
例えば、BIツールを入れてデータの流れを見えるようにしたけど、社員がみんな規則正しく入力してくれず、使えないデータばかりになる。まずはインプットの業務改革が必要、というケースがあります。ただ、それをするには全体をきちんと見て、どういう仕組みを作るかを考えなければいけませんし、リソースの問題もあり、単純にはいきません。それに、データ入力が増えるのをいやがる人は多い。ですから、データの設計を理解した上で、一緒に業務改革してくれる人が必要です。
「優秀」だけでは足りない。自分から動ける人であれば大きな裁量を持って働ける環境
江口
パクテラのビジネスデザインチームで働く魅力はどこだと思いますか?
石川様
自由に仕事できることだと思いますね。興味のあるテーマや領域に集中して提案したり、新しいプロジェクトを作ったりしても構いません。私の部署は、この業界を開拓しろという縛りがないです。
江口
事業企画としての動きができるわけですね。
石川様
はい。裁量が大きく、企画段階から実際のデリバリーまで、好きなように進められますし、私自身起業家としてのキャリアを持っているので、そういった動きをメンバーにも求めています。
江口
お話を聞いていると、「手を動かせる」メンバーを増やしていきたいという印象を受けます。逆に例えば戦略や分析だけを行ってきたようなコンサルタントは求めていないのでしょうか?
石川様
はい、あまり求めていません。もちろん、彼らがものすごくコンサルタントが優秀だというのはわかります。ただ、うちは戦略だけを考える仕事を沢山やっているわけではないので。
江口
幅広く仕事ができる人よりは、マーケティングやSEなど、事業やプロダクトを生み出すために必要な何か1つのスキルを極めた方の方がいいということですね。
石川様
そうですね。あとはセールスに強い人も活躍しやすい職場です。もちろん、営業ばかりずっとやれというわけではありません。最初に実績を出してもらえれば、予算を自由に使って好きなことをやってほしい。「お金ください!この構想に2億出してくれれば、僕10億稼ぎますから!」と言われても、巨大企業ではないので出せませんよね。逆にいうと、数字の見込みをとってしまえば、とやかく言われることはありません。
江口
ありがとうございます。最後に候補者の方にメッセージなどありますでしょうか。
石川様
世の中には、コンサルタントとして活躍したいと考える方は大勢います。そして、その受け皿も多くあります。ただ、資本がしっかりした企業のグループかつベンチャーさながらの少人数のファームで自由にチャレンジできる環境は、なかなか無いのではないでしょうか。大きくなってくると、どうしても縛りが出来たり、スコープが細分化されたりします。先ほど挙げた魅力はパクテラの、今のこのフェーズでしか味わえません。バックグラウンドがあるベンチャーという環境で、ぜひやりたいことを実現して欲しいなと思います。