今回は、パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社 代表取締役CEO 杉山周平様、事業戦略室 事業部長 渋谷尚様へのインタビュー。2019年にCEOに就任後チーム制に移行された背景や、チーム制の仕組み、今後の同社の目指す姿などについてお聞きしました。
チーム別の独立採算制、採用の裁量権もチーム単位のため「商感覚」が身に付きやすい
江口
まずは、杉山様のご経歴について伺ってもよろしいでしょうか?
杉山様
私はアメリカで大学を卒業し、インターンシップを経て米系大手証券会社に入社しました。その後IT業界にキャリアチェンジをして、米系ITベンダーで5年、仏系Slerで4年従事したのち、2015年10月にパクテラ・コンサルティング・ジャパンに入社しました。入社後は主にIT戦略立案やリスク分析、ITシステム導入、グローバル展開支援などを手がけ、2019年10月より当社の代表取締役社長を務めております。
江口
ありがとうございます。次に、渋谷様のこれまでのご経歴をお話いただけますでしょうか?
渋谷様
私は一貫してコンサルティングファームでキャリアを築いてきました。新卒で日系の大手コンサルファームに入り、Big4系ファームにシニアコンサルタントで入社しました。その後マネージャーに昇格し、ある程度成果を上げましたが、大規模であるがゆえに会社の組織が見えにくく、今後キャリアを築く上では組織運営をダイレクトに経験したいと考え、パクテラ・コンサルティング・ジャパンに入社しました。その後、一度日系ベンチャーファームを手がける先輩の事業を支援するために転職し、1年半後に再びパクテラに戻りました。
今は、主に人材開発、採用、マーケティング・ブランディングのマネージャーを務めています。今後、組織が拡大しても、個人が薄まらないよう強い会社にしていくことが私のミッションです。
江口
杉山様が代表に就任後、チーム制を敷いていらっしゃるとのことですが、1チーム何名ぐらいいらっしゃるのですか?
杉山様
1チーム10名前後です。
江口
チーム制によるメリットは何だとお考えでしょうか?
渋谷様
当社ではチーム別に独立採算制をとっていますので、他の会社のコンサルタントよりもコストや売上等の会社の数字に対する意識は高いと思います。加えて採用の裁量権もチームにあるので、例えばメンバーを採用するのにその費用を考慮して採用の判断をし、チーム全体の利益を見越して考えたりしなければなりません。チーム制のいいところは、自発的に自分たちのビジネスに「こういう人物像が欲しい」と求められること。やりたいことを作っていくために自分たちで仲間を探せるというのがチーム制のメリットです。
一方で、採用となると若手メンバーの中にはコストの大きさに驚いてしまうこともありますね。
杉山様
そうですね、普段使わないようなお金が動くわけですから。例えば「採用に何千万円かかります」と言うと「そのお金で高級車何台も買える!」と思ってしまうかもしれませんが、それが自分たちのビジネスにとって必要なもので、どのようにお金がビジネスの世界で回っているかの“商感覚”の方が大切で、私はその感覚が育って欲しいと思っています。
大きな会社になればなるほど、どのようにビジネスが成り立っているのかが見えにくいものですが、まずは10名単位の組織を運営するにはいくらかかるのか、どういう風にお金が動いているのかを肌感として掴んでもらいたいと思います。
江口
1チームの予算はどれくらいあるのでしょうか?
杉山様
チームによって異なりますが、予算が大きいところだと20代でも億単位のお金の出入りを管理しているところもあります。面白いことに個人の貯金と一緒で、ばんばんお金を使ってしまう人もいれば、予算を貯め込んでしまい、期末になって貯め込みすぎたお金の使い道に迷う人もいます。
江口
チーム制による課題はありますか?
渋谷様
チーム制になりリーダークラスが今まで以上にしっかりしたなという印象があります。一方で、チーム制だからこそ個人やチームという枠でしか見えていないメンバーも少なくありません。もっと視野を広げて「パクテラ全体を最適にしていくにはどうしたらいいのか」とみんなが考えていることをアウトプットできるようになれば、ジャパンという立場で考えられる人間がさらに増えていくと思います。グローバルに対して社員みんなが「こうことをやっていきたい」とアタックできるようになればもっと面白い企業になってくるのではと思いますね。
「新しい世界を創る」ためのビジネスを目指しており、ベンチマークはいない
江口
他ファームと比べてチームによる採算性は御社の特徴だと思います。そもそも他ファームをベンチマークにしようとか、こういう企業のビジネスモデルを取り入れたいというのはありますか?
杉山様
他ファームと比べることはありませんね。生い立ちも規模もそれぞれのファームが違うので、今の我々のサイズでは比較よりも自分たちで考えることを大切にしたいと思っています。また「何か新しい世界」をつくるビジネスは、チャレンジしたいという気持ちと商感覚の2つがなければできません。私たちはチャレンジをするために今、ここにいます。
そもそも、チーム制を敷いた理由は、まず一人一人の夢を実現しやすい組織にするためです。ベンチャーの立ち上がり時期には、夢を実現するために入ってくる人たちがたくさんいます。私自身、子どもの頃からタイムトラベルをしたいという夢を抱いてきました。現実的には不可能かもしれませんが、生きているうちにマトリックスのような仮想現実の空間に入れる世界が欲しい。そういう個人の夢もこの会社なら実現できるかもしれないと思いパクテラ社に入社しました。
同じように夢を実現したくてパクテラに入ってきた人たちの想いを継続するためには、大きな1つの箱の中にいるよりは、小さく分割をした方が、普段のたわいもないコミュニケーションでも重要視され、一人一人の夢を実現しやすい組織にできるかなと思ったことが背景にあります。
もちろん組織は「生き物」なので、5年後も今と同じ体制を続けているかどうかはわかりません。規模が大きくなった時はどういう体制がいいのか、その時に応じて変化させていくのが組織だと思います。
江口
候補者様の中には他の大手ファームを受けられる方もいらっしゃると思いますが、最終的に御社に決められる理由は何だと思いますか?
渋谷様
各自に裁量権があることではないでしょうか。会社の駒にならず自分でビジネスを作っていけることや、若手だろうとクライアントをリードしながらやっていける環境があること。そしてチャレンジしやすい環境であること。というのも私も杉山もお金に執着が全くありません(笑)。
「失敗したら絶対に年収が下がるから」とか「この案件が取れたら給料が1000万円上がるからメンバーを蹴落としも案件を取ってデリバリーでぐるぐる回そう」など、そういった自己利益に走らないので、メンバーもチャレンジしやすい環境なのだと思います。
「ビジネスサービスや商売のネタを自分で考えて作ることができるか」も評価の一つ
江口
メンバーやマネージャーに対する評価制度について教えてください。
杉山様
評価として売上は大事ですが、昨年からビジネスサービスや商売のネタを自分で考えて作ることができたかということも評価の基準を置いています。サービス提供に向けてしっかり計画を立てられたか、きちんとコミュニケーションが取れていたか、採用ができたのか、チャレンジできたのか。我々の商売はボランティアではありません。足元のお金を稼ぎながら与えられた裁量権の中できちんと活動し、きちんとお金を使うことができたのかを評価の軸としています。
江口
評価の割合としてはどれくらいでしょうか?
杉山様
昨年は4:6でした。売上が4で活動が6の割合です。今年は比率を半々にできるよう、チームでマネタイズができているかという点にも注目していこうと思っています。
江口
なるほど、まるで社内で小さなベンチャーがたくさんあるような状況ですね。
杉山様
まさにそうです。会社とは別に、私個人としてはハメを外してお金を使い切って大赤字になってしまったという人が出てきても逆にうれしいですね。赤字で悩んでいる人がいたら助けたくなりますから。つまりそうやってお金の感覚が身につくのは早ければ早い方がいいと思っています。それは個人のお金も同じです。日本では投資などを学ぶ機会はありませんが、当社に所属している他国の同年代は入社時すでに自身の投資ポートフォリオを持っている人がいっぱいいるのです。これからはその感覚を持たなければダメだという気づきが得られることができれば、世界に羽ばたける可能性は広がります。
パクテラ・コンサルティング・ジャパンが目指すビジョンは「変(へん)」
江口
今後のビジョンを教えていただけますでしょうか?
杉山様
グループ全体としては昨年「デジタルでイノベーションを起こす」というビジョンを掲げていましたが、実はパクテラ・コンサルティグ・ジャパンでは必ずしもITにこだわっているわけではありません。そこで昨年の終わりから今年にかけて私たちが決めた目指すべきビジョンは、「変(へん)」という言葉です。当社では次の3つの意味で考えています。
まず1つ目が、組織の中で自分自身を変化させていくこと。私を含めやりたいことをやり自分を成長させていける組織づくりを目指しています。2つ目は、クライアントのビジネスに対して変革を起こし、サービスを提供できる組織になること。そして最後の3つ目は、とにかく変態であれと。傍から見たらちょっと変わっているように見えても、自分が信じた道を突き詰めた世界観を持っている状態はとても強いと思います。その強みを価値としてクライアントに提供していきたいと思います。
またパクテラグループ全体に共通しているのは「変わる」ことに恐れがないこと。常に私たちは変化をしながらグループ全体として3年後に売上や組織を倍に、パクテラ・コンサルティング・ジャパンでは3年後に売上や組織の3倍を目指し、実現に向けて動いております。
江口
あらためて御社の強みについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
渋谷様
1つはプライム案件で大手クライアントとお付き合いがあること。もう1つは技術力があることですね。コンサルティング単体ではなく、同じグループのテクノロジーと共同で進めることができるので、パクテラジャパンとしても大きく投資ができ、チャレンジできる幅が広がるのは当社の強みだと思います。
杉山様
日本だけで物事を見ないという視点も1つの強みですね。コンサルティングを立ち上げて5年、これまで日本でビジネスを確立するために必死に組織を作ってきましたが、グループに所属しながらも自分たちの特徴やカラーを出していくことは必要です。その1つが日本だけの視点ではないこと。私たちには中国をはじめASEAN領域に拠点があり、情報を仕入れることが強みです。それを有効利用し、日本のクライアントに価値を出していくことができれば、きちんとビジネスとしても成り立つと考えています。
江口
最後に、候補者様にメッセージをいただけますでしょうか?
渋谷様
成長意欲は絶対に持っていて欲しいのですが、「昨日より今日」がよくなっていれば、スピードは人それぞれでいいと思っています。何しろトップが楽しんでいますから。トップから刺激を受けて私たちもワクワクとしながら「こういうことをやっていきたい」とメンバーがチャレンジできることがパクテラの魅力だと思います。
杉山様
失敗してもそこで何か学べばいい、何かを学んで変えればいいのです。私は、“世界に羽ばたく夢を見たい”ならば、当社がベストだと思います。