今回は、パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社のマネージャーとしてメンバークラスの育成を担う坂本怜様より、ベンチャーファームだからこその魅力や成長環境、活躍するために求められるスキル・マインドなどついてアクシスコンサルティングの江口がお聞きしました。この記事は2019年8月時点のものです。
設立4年・人員100名規模のベンチャーファーム
江口
まず、パクテラ・コンサルティング・ジャパンのご紹介をお願いいたします。
坂本様
まずはパクテラグループについてご紹介すると、60カ国でサービスを提供しているアジアを中心としたグローバルファームになります。金融・保険、エレクトロニクス、自動車、医療機器、小売・流通、通信などFortune500企業のうち140社以上の顧客として様々な業界のデジタルトランスフォーメーションを支援しております。
その日本拠点である弊社は、次の9月で設立丸4年になり、組織としては100名近くまで成長したベンチャーファームになります。 特徴としては、様々なインダストリーの案件を手掛けておりますが、社長の杉山をはじめ今の保険事業本部長の佐藤などを中心にリレーションが強いことから特に保険業界の案件が得意で、実際にクライアントからも信頼を得ています。
新卒3年目でもSCに昇格など、裁量の大きさゆえの成長環境
江口
最初に、御社を志望されるコンサルタント~シニアコンサルタントクラスの候補者様は、特に「御社は非常に裁量が大きい」という話が決め手で入社される方が非常に多いのですが、「裁量がある」ことの具体的な事例を何かお伺いできますでしょうか。
坂本様
例えば現場の状況について直近の事例ですと、普段は私だけでデリバリーしていたクライアントのオペレーション戦略をシニアコンサルタントのメンバーと一緒に取り組みました。実際、クライアントの評価が高く、ほとんどそのままシニアコンサルタントが考えた案を採用していただきました。
また、私が担当している保険会社の案件では、マネージャーの私ではなく、シニアコンサルタントもしくはコンサルタントのメンバーで業務を回しています。ですので、現場作業に関してはシニアコンサルタントを中心にした運営ができていると思っています。
そうなると、現場において如何にクライアントに認められるかといった考え方やスキルはもちろん、それだけではなく、シニアコンサルタント中心に下のメンバーの面倒を見るというマネジメントスキルも現場感を持って身につけることができます。
これは大手ファーム出身のマネージャーも語っていたことですが、大手ファームであればシニアコンサルタントクラスに任せる仕事を、弊社の場合はコンサルタントクラスでもチャレンジさせています。背景として、会社自体がまだまだ成長期ですので、上のレイヤーが行う仕事を任せることで会社として発展してゆこうという狙いがあるのです。できるだけストレッチさせた業務にアサインさせるようにしています。そのため、結果が出れば新卒から3年でシニアコンサルタントに昇格するケースもあります。
江口
新卒3年目、25,6歳でシニアコンサルタントは非常に早いタイミングでのプロモーションですね。
坂本様
そうですね、ディレクターやマネージャーがプロジェクトのトップにいますが、抱えている案件も多く毎日現場に来ることができないため、マネージャークラスの手が回らない際はシニアコンサルタントがリーダーとしてプロジェクトを推進し、代役となることも珍しくありません。裁量が多く、また活躍するフィールドも多いので、自分を成長させ、アピールするための機会に溢れていますね。
また、役職が人を育てるという方針もあり、SIerから転職してきた30代前半の社員は2年でマネージャーにプロモーションしました。
江口
育成の観点で坂本様が大切にしていることはございますか。
坂本様
コンサルファームの若者のフラッグシップになるような人を育てたいという思いは強いです。
コンサルタントをシニアコンサルタントが面倒を見て、シニアコンサルタントをマネージャーが面倒みるような形に出来ないかと考えています。
そうなってくると強いシニアコンサルタントがいてくれれば、その人がフラッグシップになってくれて、その下にいるコンサルタントとかアソシエイトはそのシニアコンサルタントを見て育ってくれるかなと。そしてシニアコンサルタントはシニアコンサルタントでマネージャーを見て育ってくれる体制づくりをイメージしています。
ベンチャーファームだからこそ”組織を作り上げる経験”ができる
江口
他にも若手から裁量のある仕事に触れられる具体例などございますか。
坂本様
組織という観点で考えると、まだまだベンチャーなので大手ファームではコーポレートが担うような仕事でも、コンサルタントが率先して進めています。
例えば、会社をPRするためにLinkedIn、Wantedlyに掲載するメディアの原稿を作成したり、そのための取材をしたり、企画を考えたり。他にも、社内SNSの運営事務局も基本的には若手中心にやっていますし、会社説明といった採用イベントにも参加してもらっていますね。最近だとIT業界の中途転職フェアで、1年目2年目の若手が来場者に対する会社説明もしています。社内ポータルの刷新も、若手中心にやっています。
会社そのものをつくり上げる過程に関われる点もベンチャーファームとしての魅力だと考えています。
江口
業務内外で幅広く様々な経験を積めるのですね。
坂本様
そうですね。今まで私自身、エンジニアリングやコンサルティングとしてサービスに関わることはありましたが、社内の物事については一部の人が勝手にやっている感覚がありました。でも、パクテラでは、手を挙げれば当事者として組織を変えていくことができるので、会社そのものを作る経験ができています。
江口
大手ファームでは、コーポレートの人たちがそういったことを担当しますよね。
坂本様
弊社はそういう規模ではないですから。逆に何かやりたかったら自分たちでやらなければいけないという側面はあるのかもしれないですね。これは大手ファームから来たマネージャーも語っていたのですが、大手では評価基準として数字へのプライオリティが高く、自分がいくらの稼ぎを生んでいるかが評価指標のポーションを多く占めています。確かに、稼がないと給料が払えないのでどれだけ稼ぐかはもちろん重要ですが、一方で、弊社は立ち上げてまだ4年程ですので、数字だけを単に追うよりは、数字を生むためにどれだけ行動できるか、そのための組織を作れるかを重要視しています。
若手がアグレッシブに案件を担当し、手が空いたマネージャーがもっと面白い案件を取ってくる
江口
他ファームから入社される方は、どのような点を魅力に感じて入社されるのでしょうか。
坂本様
確かに条件面でいったらBig4などの大手ファームには敵いませんが、ただ、やりたいことができる。若いころから手挙げれば裁量権持って仕事ができるのは、ひとつのメリットだと思います。
転職される方に話を聞くと、やっぱり上司に自分の意志が通らなかっただとか、私は前からいたのにあとから年次が上の人がきたらすべてをその人が牛耳って面白くないとか。
江口
よくありますよね。
坂本様
そういう理由での転職は多い印象です。ただ、パクテラの場合は、ベンチャーなのでむしろ若手に裁量を持たせてリードしていかないと会社全体の成長に繋がらないので、先ほども申し上げましたが、メンバークラスの育成体制やキャリアパスへの柔軟性は充実していますし、若い子はとても大事で貴重な存在なので、そのメンバーをないがしろにするようなスタイルのマネージャーはいないです。
実際に、他ファームから来たメンバーも「同じシニアコンサルタントでも自分の意見を受け入れてくれる度合いが違う」「案件をリードしていく経験が積めて充実している」といった声をよく聞きます。
江口
ありがとうございます。クライアント様の大手企業というと、Big4とかとあまり変わらない規模のクライアントの方が多いですか。
坂本様
そうですね。コンサルを使う会社は、他ファームも同時に使うケースが多いので、隣の島を見れば他ファームの方がいることはよくありますね。
江口
大手ファームと変わらない規模の案件で裁量を持って関われるのは魅力的ですね。
坂本様
そうですね。会社規模はまだまだですが、若手中心に結構アグレッシブな楽しい人たちが多いですし、会社としても若手からどんどん突き上げていくのを良しとしているので、チャレンジの場はどんどん提供したいというのがマネジメントの立場の本音ですね。どんどん若手がマネージャーの動きをして、マネージャーの手が空いて、マネージャーが次の案件を探しに行くといった動きができたほうが会社の成長にも繋がると思うんですよね。
その結果としてマネージャーが探してきた案件のほうが、今アサインされている案件よりも面白そうだと思ったら、ちゃんと自分の仕事を次に引き継いで、その案件に動けばいいとも思っています。こういう動きを繰り返していったほうが組織が活性化されると思うのです。
「コミュニケーションスキル」と「積極性」のある方が活躍しやすい
江口
現在、中途で入社されている方を中心に、どのようなバックグラウンドの方が入社されていますか?
坂本様
やはりIT系が多いですね。ビジネスとITは切っても切れない関係になりつつあるので、もちろんIT系のバックボーンがあるとすごく助かります。
弊社もITの基本的知識が大切という考えが浸透していて、シニアコンサルタントへのプロモーションの条件として基本情報処理の資格を持っていることを掲げることで、ビジネスに必要最低限のIT知識は必要だよということを明確にしています。
江口
そういったケイパビリティを持った方々がご活躍できる環境なのですね。ITでも具体的に求める領域や経験などで絞った採用をしているのでしょうか。
坂本様
ITと言っても様々な案件がありますし、本人の努力次第でもありますが、入社時点で領域や経験はそこまで具体的に絞っていないです。 例えば「ITの開発をやっていました」と言っても、10人いれば10人とも経験したことはバラバラです。私も、9年半ほど保険会社のシステム開発をしていましたが、チームリーダーとして働いている時にはビジネスユーザーの要件を書いたり、ビジネスユーザーと一緒に外部ベンダーとのやりとりを直接やらせてもらったりしていました。「SE」とか「システム開発のチームリーダー」という文字だけでは表現しきれない様々な仕事をしてきました。どの経験も弊社に来てからすごく活きていると思っています。
江口
ありがとうございます。御社の中でご活躍される方のマインド面での特徴について伺ってもよろしいですか。
坂本様
コミュニケーションスキル、積極性でしょうか。「指示待ち」だと厳しいですね。あとは責任感があるかどうかも重視しています。ある程度の年齢になると感じることかと思うのですが、クライアントは安くはないお金を私たちに支払ってくれています。そうなってくると、そこに見合う仕事をしないといけないと思うのです。そういうビジネス感覚があるか、責任感があるかは、おそらく何か仕事を振られた時に最後までやりきるかとかいうところに関わってくると思います。
あとは、弊社では別に1人のスーパーマンを量産しようとは思っていなくて、チームで戦っていこうと思っているので、チームメンバーやクライアントといったステークホルダーとコミュニケーションを円滑にとれるかという点も意識しています。何かやらなきゃいけないことがあった時に、自分から手を挙げて動ける人のほうが比較的目立った活躍はしているかなと思いますね。
中途で入ってきた人は、コンサル未経験だからということで不安を感じていたり、一歩引いてしまうところはあると思いますが、でもそうやって引いていたところでいつまで経ってもできるようにはならないので、そこはちょっと厚かましい挙動をとっても良いと思っているんです。
うまく周りに甘えることができて、その間に自分ができることが少しでも増えていけば、それでいいのです。それを許せないほど心の狭い人は弊社にはいないと思っているので、安心して甘えてほしいですね。もちろんいつまで経ってもずっとそのままだと、いつまで甘えてるんだという話になってしまうので、そこはちょっと頑張ってもらいたいところですけどね。
個々が抱えるハードルも「チームとして戦う」強い姿勢により乗り越えられる
江口
ITのケイパビリティのある方の採用ニーズが高いというお話でしたが、坂本様自身もSIer出身です。前職との大きな違いや、苦労された点、またその乗り越え方についてお話いただけますか。
坂本様
私はもともとシステム開発を18年ぐらいやっていまして、中でも保険会社でのシステム開発が10年ぐらいあったんですね。そのキャリアを買われて、パクテラに来ました。
保険業界での経歴が長かったのもあって、今後自分がこの業界にどういった貢献ができるかとか、保険業界に対してシステム開発以外の別の角度で関わり合いを持ちたいというところで、コンサルを選びました。
コンサルとSIerの違いですが、よく言われているように「視点の違い」はありますね。もともとはあくまで1サブシステム、1システムの担当として、社員さんや外部ベンダーなどと協業して一緒にやっていたので、どちらかというと指示を受けて作業するというような関わり方が多かったんです。
しかし、今はもっと上流から参画させていただいていて、お客さんがまだ「こういうことやりたいんだけど」というふわっとしたイメージのところから、じゃあ具体的にどうやりましょうっていう提案もこちらからできます。
またプロジェクト自体を回すうえでも、1システムだけじゃなくてプロジェクト全体をコントロールすることができるのは、なかなか面白いなと思います。同じようなIT開発系のプロジェクトに参画することも多いですけど、例えばプロジェクトの体制図の中でもポジションの違うところにいることができるので。
江口
今お話伺った中で、前職と携わるフェーズが異なることでビジネスの視点も変わってくると思いますが、入社されて苦労されたことはございますか。
坂本様
規模感が変わったことと、答えがないフェーズから関わるようになったこと、あとは前職であまりやっていなかった提案活動では苦労しましたね。例えば、今までだとチームメンバーだけの面倒を見ていれば良かったので、自分のチームだとしても10~20人の世界だったんですが、パクテラ・コンサルティング・ジャパンに入ってきて一番大きなプロジェクトではPMとして100人超えのプロジェクトを担当することもありましたし、逆にもっと小さい、5人~10人ぐらいのプロジェクトのときもありました。だとしても、POC、プロトタイプの作成とかで、じゃあ具体的にどういうテクノロジーを使ってクライアントがやってみたいことを表現するかというところに関わらせてもらったり。先ほどフェーズが違うっておっしゃってくださいましたけど、そういったところでの違いは大きいですね。
江口
そこをどのようなかたちで乗り越えてきたのでしょうか。
坂本様
やはり最初は周りの人に助けてもらいながら、でしょうか。有形無形、直接アドバイスとかをいただいたりとかもありましたし、もしくは、例えば成功している人の真似をしたり、提案書であれば、別の人が書いた成功事例みたいなものを参考にしたり、また、話の流れとか表現の仕方を参考にしてアウトプットをして乗り越えました。
あとは、やっぱりコミュニケーションですかね。コンサルの仕事って特に人数が少ないプロジェクトだとそれぞれが一騎当千といいますか、たしかにピンでバリューを出さないといけないところはありますが、でも基本的にチームで戦っていこうという気持ちは大切だと思います。
パクテラでは、上下関係なく助け合って協力して仕事ができています。だから今まで結構若いメンバーに助けてもらったりしたこともありますね。例えば「コンサルとしてのアウトプット」は、元々コンサル業界での経験があるメンバーたちは得意ですが、でも私はもともとIT業界出身なので、「私はこういうことをやりたいんだ」というイメージがあっても、私の手だけではアウトプットはしきれなかったりもするんです。そんな時には、若いメンバーに協力してもらうことも結構ありましたね。
江口
シニアコンサルタント、マネージャークラス以上の方の即戦力層での転職において、「未経験のコンサルとなると助けてくれないんじゃないか」「サバサバしてるんじゃないか」といったところに恐怖心を持たれる候補者様もいらっしゃいますが、そういったところは御社のひとつの魅力ですね。
坂本様
そうですね。そんな冷たい人たちはいないので、「そこは気になさらずに」と思います。
パクテラは、業界の変化にも部門連携・R&D・チームの新設で対応していく
江口
最後にパクテラ・コンサルティング・ジャパンの今後の方針についてお話いただければ幸いです。
坂本様
目先の話と将来的な話とがあると思います。直近で言えば、「作業を簡素化する」という観点でのRPAだったり、あとは最近法律が変わったことによるeKYC(オンライン上で完結する本人確認方法)本人確認の電子化だとかっていうところは、実際ビジネスになってきています。ですがそれはあくまで今のビジネス、今のオペレーションを簡単にする、簡略化するところに貢献はしていると思うのですが、その要素だけでは、業界全体を大きく変えるところまではなかなかいけていないと思っています。
現状は、そこに対して社内でAIを活用したソリューション開発などに力を入れていて、R&D部門との連携を含め、専門のデジタルチームをつくって、そこでいろいろと施策・アクションを打っています。
また、パクテラはアジアを中心としたグローバルファームのため、全社的にはグローバルからもいろいろなナレッジを共有しています。中国やシンガポール、あとはマレーシアのメンバーたちと共同のプロジェクトもありますし、今はアジアも日本以上に先端技術が進んでいるケースもありますので、業界問わずそういったところからナレッジや技術を吸収して日本のソリューション・コンサルティングに生かす機会には溢れていますし、実際に今後もパクテラグループとしてのバックボーンをうまく活かしてサービスを提供していきます。