PHC株式会社(以下、「PHC」)は、「グローバルの診断・ライフサイエンス、日本のヘルスケアサービスにおいて、ベストインクラスのプレシジョンとデジタルソリューションを提供するリーダーとなる」ことを目指し、ヘルスケア機器・サービスを医療機関や研究機関に提供するグローバルヘルスケア企業です。今回は、同社の取締役およびメディコム事業部長である大塚孝之様より、同社の魅力をアクシスコンサルティングの祝がお聞きしました。この記事は2019年8月時点のものです。
高い市場シェアと開発力を有し、「遠隔医療」「個別化医療」など次世代医療へ貢献
祝
まず改めて御社の概要を教えていただけますでしょうか。
大塚様
PHCの事業としては、糖尿病を含めた診断、ライフサイエンスと、事業ブランドである「メディコム」を掲げるヘルスケアITの事業を軸にしております。親会社であるPHCホールディングス株式会社は、これまで、海外企業を含めた複数の企業や事業の買収を行い、現在は全グループの従業員が約1万人、売上高は約3,200億円の規模になっています。
祝
ヘルスケアIT事業が今戦略として目指している方向性について教えていただけますでしょうか。
大塚様
これから医療は、個別化医療(Precision Medicine)へ向かうと言われています。そのような医療動向の中で、日本においてヘルスケアIT事業のリーダーとしてのポジションを確立することを目指しています。
祝
現在、御社がターゲットにされているマーケットについて教えていただけますか。
大塚様
ヘルスケアIT事業に携わるメディコム事業部の主要顧客は、9万件以上あるとされる診療所や5万件以上ある調剤薬局です。そこで使われているレセプトコンピューターという、診療報酬を請求するシステムや電子カルテと呼ばれている患者の診療録システムが、当事業部の主力商品となりますが、商品を販売するだけでなく、ソリューション提案なども行っています。
祝
現在メディコム事業部で担当されている事業領域と、その事業領域のバッググラウンドになっている市場の動きについてお話しいただけますか。
大塚様
現状、日本の年間の国家予算の約10%弱が医療関連に投じられているわけですが、これからさらに高齢者が増えて医療費が上がっていきます。国は、薬価を少し下げるなどの施策を行っていますが、当然のことながら他の産業と同じように、ITを使って自動でデータを入力してコストを下げ、医療の質を上げていくことなどの生産性向上も社会から求められていくと考えています。
ただ、他の産業が経理システムやEコマースなどITによって変化が進んでいるのに対し、残念ながら医療のIT化はまだ目に見えて進んでいるとは言い難い状況です。医療のIT化として思い浮かぶのは、電子カルテぐらいでしょうか。そのような状況であるからこそ、医療をITで刷新することは社会的な意義があるとも考えています。
例えば、従来、診断に医師の経験が大きく影響していましたが、個別化医療がさらに叫ばれる中で、患者のゲノム情報まで調べて診断する必要性が生まれてきます。このように、医療がより個別化・精緻化されていく流れに応えるためには、ITによる情報管理が欠かせません。医療情報のIT化によって患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がり、無駄な診療や薬の投与がなくなることで医療費が削減できるといった、社会的にも大きな意義が果たせると思っています。
祝
先ほどのお話と重複するかもしれませんが、そういった時代の流れの中でメディコム事業部としては、今どのような事業を進めようとしているのでしょうか。
大塚様
診療所では、患者のカルテは、全体の35%程度しか電子化されていません。ただ、新たに診療所を開業する際に「電子カルテ」という選択肢を選ぶケースが増えると予想されるため、近い将来、カルテの電子化は必ず100%に近づくと思います。このような成長市場である電子カルテを含めたヘルスケアIT事業に、今後も力を入れていきます。
一方で、診療所・病院・薬局、また介護市場では、「地域包括ケア」「医療連携」が盛んに言われるようになっています。当事業部では、例えば「パーソナルヘルスレコード」という、個人でiPhoneやAndroidを通して医療情報を見られるお薬手帳の代わりとなる商品を開発しており、それによって医療の質やQOLを向上させることを目指しています。 同時に、「遠隔医療」「オンライン診療」と呼ばれる領域の事業も少しずつ拡大していきたいと思っています。
祝
成長産業ということで競合他社も多いと思いますが、御社の事業部の強みや競争優位性はどういったところでしょうか。
大塚様
最大の強みは市場シェアの高さです。診療所では約35%、調剤薬局では約25%が当社の顧客です。両市場でこれだけのシェアを保持している会社は、当社以外に現状ないと思います。
二つ目の強みが、全国の販売代理店に300名の営業人員と、700名の技術指導インストラクターを配している、という点です。
また、業界のパイオニアとして他社に先んじて商品を市場導入したことによる先行優位性やユーザーの声を反映したシステムの使い勝手のよさなども強みだと考えています。
祝
データを二次活用したビジネスの展開について、他社とどのような差別化が可能なのでしょうか。
大塚様
データの入手元となる顧客ベースを豊富に保有している点が強みだと思います。従来は、電子カルテや電子薬歴システムをお使いいただいている医療機関から患者データを集めて二次活用することができませんでした。しかし、昨年5月に次世代医療基盤法が施行されたことで、匿名化したデータの二次活用が許容されるようになりましたので、医療データの二次活用に関わる事業も今後、検討していきたいと考えています。
コンサル・IT人材は、医療業界を「アウトサイドイン」の目で見ているところが圧倒的な強み
祝
今、御社でコンサル・ITの人材のニーズが高まっている背景について教えていただけますでしょうか。
大塚様
医療制度の複雑化に伴い、マンパワーでは対応しきれないフィールドが出現し、医療業界でもIT化が求められるようになってきました。その中で、コンサルやIT人材には、医療だけでなく製造、金融など様々な業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)やデータを活用した事業を推進してきた経験者が多いため、医療業界に対して「アウトサイドイン」の目で見ているところが圧倒的な強みであり、期待値として捉えています。
また、当社で長年活躍しているメンバーは、あくまでも「医療IT」のスペシャリストであるため、医療業界のことは詳しいものの、他業界で起きているITの状況については分からないことも課題だと考えています。 コンサル業界で進んでいるIoTなどのデジタルソリューションは、医療業界よりも先端的な事例が多いですし、SaaSビジネスといったソリューションも同様に進んでいます。そういう知見を医療業界に移植してくれることを期待していますし、この分野において経験豊富な方は、活躍の場も多いと思います。
入社後は、遠隔医療やデータ分析を含む新規事業の推進者として活躍の場が広がっている
祝
コンサル・IT経験者が御社で必要とされている理由、背景をお伺いしましたが、これらの人材が御社に入社した場合、具体的にどのようなミッションに携わることができるのでしょうか。
大塚様
一例ではありますが、当事業部では遠隔医療やデータのアナリティクスビジネスを新規事業としてスタートしようとしています。まずは、その立ち上げに関わって頂きたいと思っています。
当社の従業員には、元々医療や薬局の仕事に携わっていたため、業界のノウハウを持っている従業員と、医療については詳しくない他業界出身の従業員がいます。彼らを束ね、新しいソリューションを創造することがミッションです。
祝
新規事業という観点でお話を伺いましたが、既存事業の拡大についてもコンサル・IT人材に任せられるミッションはあるのでしょうか。
大塚様
色々あります。例えば、カスタマーサービスについては、従来、販売後のお客様からの問い合わせやご意見、また、操作指導のご要望を、約700名のインストラクターが受け、それを当事業部へ連絡するという体制でした。 今後は、コールセンターを自社に設置し、そこに課題を集約化し、オンサイトで対応できるものとの切り分けや、お客様が自己解決できるものに対する情報提供を考えており、そのための業務変革などをお任せできると思います。
また、今ではチャットボットやLINEでお客様とやり取りして、バックエンドのAIが自動的に回答するという手法も進んでいますので、当社のサービスに組み込むためのプロジェクトマネジメントもお任せしたいと思っています。
他にも、健康診断や診療所で行う採血等の臨床検査を手掛ける株式会社LSIメディエンスが最近、グループに加わりました。当事業部では薬のデータを扱っていますが、検査データと組み合わせて、新しい事業を創出したいという狙いがあります。このようなシナジーの創出によって、新規事業を生み出すといったチャレンジもお任せしたいと思っています。
今まで買収した企業や事業には、ドイツの製薬企業バイエルの糖尿病ケア事業や、グローバル科学サービス企業の大手であるサーモフィッシャーサイエンティフィックの解剖病理事業、さらに臨床検査事業などに携わる株式会社LSIメディエンスがあり、一口に医療と言っても領域は様々です。その各領域を組み合わせていかにシナジーを創出するかが、事業戦略の中でも問われています。異質なものをITやシステムで1つに連携するといったことが必要であり、ITやコンサル経験者が果たす役割は非常に大きいと考えています。
祝
今後新たな領域での事業や業務に挑戦していくにあたり、それらの領域でコンサル・IT経験者が活躍できそう、ということですね。併せて、既存商品の改善や更新といったフィールドでの活躍の可能性はいかがでしょうか。
大塚様
十分にあると思います。当事業部の主力商品はオンプレミスのソフトウェアですが、時代の流れとともにクラウド化していきます。昨年、当事業部は「Medicom-SK」というハイブリッドモデルのソフトウェアを開発しましたが、ソフトをクラウド化していく中での新規商品の企画・開発といった部分で、特にITコンサルの経験がある方は活躍できると考えています。
祝
事業戦略やデータ分析、ITなど、コンサル・IT人材でも様々なスキルセットを持っている人材が活躍できる可能性が御社にはある、ということですね。
PHC株式会社 大塚孝之様
医療業界ではIT化が喫緊の課題。医療業界には、活躍の機会があふれている
祝
一方で、コンサル・ITの能力を持つ人材は売り手市場でもあり、ポストコンサルと一口に言っても多様な選択肢を取り得る状態です。
そういった方々に、「今この瞬間に医療・ヘルスケアの業界、その中でも御社に飛び込む意義」について教えていただけますでしょうか。
大塚様
最初に、業界の特徴について話すと、医療におけるIT、つまり「デジタルヘルス」は成長産業であるという点が挙げられます。IT業界そのものが成長しているということもありますが、ITを必要とする業界の成長性によって、人材の活躍の機会に違いが生まれます。
次に、ここ5年間の事業および企業買収によって、PHCグループがダイナミックかつドラスティックに変化しています。今年に入って、すでに2つの買収案件を完了し、買収した企業とのシナジーを生み出したり、新規事業を企画したりする機会が生まれやすい環境だと言えるのではないでしょうか。今回縁があってメディコム事業部に入社いただいたとしても、一生そのポジションで仕事をしていくのではなく、別の事業やグループ関連会社で新しいチャレンジをすることも十分可能です。
祝
少し横道に逸れますが、ポストコンサルの転職では「働き方の自由度」についても気にされる方が多い印象があります。御社での働き方について伺えますか。
大塚様
当事業部の群馬事業所のオフィスはフリーアドレス化しています。朝出勤した時に社内のコンピュータシステムで席がランダムに割り当てられるようになっていて、毎日違う人と隣同士になって働いています。あとは服装も自由なので、ジーパンとかTシャツとかで勤務しています。さらにテレワークも徐々に浸透してきましたね。
祝
今まで伺った点以外にも、「医療」という分野に飛び込むことをお薦めできる点などございますか。
大塚様
転職時には様々な選択肢があると思うのですが、医療業界の歴史の中でも、これだけデジタルやITが必要とされる時代は今までなかったと思います。それだけに、デジタルの推進が企業、そして業界全体に与えるインパクトが大きく、この業界に飛び込む方はITの能力を用いて社会的インパクトを与えたいという方が多いと思います。
また、PHCグループは全ての事業が医療、ヘルスケアに関係していますので、そういった社会的意義の大きな仕事をしたいという人のニーズにもマッチした会社だと思いますね。
祝
社会的意義がある事業にやりがいを感じながら働ける喜びも、御社の従業員の皆さんにとっては大きいのでしょうね。
大塚様
その通りです。
自分が知らないことを認識し、「だから、勉強しなきゃいけない」と自覚して動く人が活躍できる
祝
実際にITやコンサル経験者の採用を始められていると伺っておりますが、入社後に活躍されている方の実例を伺えますでしょうか。
大塚様
例えばIT業界から入社された30代後半の方は、入社して約1年半の間に、IT業界で培った経験を活かしてコールセンターの立ち上げを責任者として牽引しています。
また、もう少し若いSIerのエンジニア出身の方は、医療については全く知らなかったものの、ITについてのナレッジや経験を活かして、調剤事業でIT化を推進されています。二人とも事業の企画フェーズから関わりたい、当事者意識を持って事業を推進したいという思いから入社され、実際に機会を活かし、入社目的を実現されています。
祝
お二人のように、他業界・他職種から御社に転職して活躍できる方には、大塚様からご覧になって何か共通点があるのでしょうか。
大塚様
自分が分かっていないことを認識されていて、「だから勉強しなければいけない」という自覚のもと、自発的に色々な学会に参加したり、ユーザーを訪問し、話を聞く、という共通点があると思います。そして、そこで得た知識や経験を基にして商品を開発して活躍されています。
祝
自分が分かっていないものを認識してキャッチアップし、自分の強みを活用しながら働くことのできる方が活躍されている、ということですね。そして、そういう働き方を希望される方には、成長産業である医療業界の中でも、特に成長を加速している御社であれば、多くの機会を提供でき、会社と求職者が共に「Win-Win」で成長できる環境がありそうですね。本日はありがとうございました。