マーケティング戦略の立案と実行支援の経験を豊富に有し、AIを活用した高度な分析スキルにより、インサイトの抽出から効果的な打ち手の策定、アナリティクス機能・組織の立ち上げまで、企業のカスタマーサクセスの実現を支援するPwCコンサルティングCustomer Transformation(以下CT)内の Customer Analyticsチーム。
今回は、同チームのディレクター伊藤賢様、マネージャー佐藤祐介様より、これまでのご経歴、チームの特長や強み、案件の内容などについてアクシスコンサルティングの井内がお聞きしました。
Customer Analyticsチーム伊藤様、佐藤様のご経歴
井内
まずは、お二方のご経歴からお伺いします。
伊藤様
大学卒業後に化学品メーカーに就職し、工場の労務管理を4年間担当しました。その後、大手コンサルティングファームに約5年間在籍し、最後の1年間は中国に駐在して日系企業の支援に従事しました。
退職後、米国のビジネススクールで学び、帰国後に大手ベンチャーに入社。約10年間在籍するなか、自ら事業を立ち上げる経験もしました。その後PwCコンサルティングに転職し、今に至ります。
佐藤様
私は新卒で外資系の広告代理店に就職したのち、日系の大手広告代理店に転職しました。広告業界ではトータル10年間、主に営業職を経験しましたが、その後大手総合系コンサルティングファームに転職。そして2021年にPwCコンサルティングに入社しました。
井内
お二方とも、事業会社からコンサルティングファームに入られていますが、そのきっかけはどういった点でしたでしょうか。
伊藤様
前職では、会社の成長を間近で見ることができ、とてもエキサイティングな環境でした。しかし、一歩引いて自身の特性を見つめ直した時に、自分が世の中に提供できる価値はコンサルティングなのではないかと思うようになったんです。また、マネージャー以上の世界を知らないままコンサルティングファームを一度離れていたため、自分で仕事を作っていく生き方をしていきたいと決意し、再びコンサルティングファームの扉をノックしました。
佐藤様
私は中学生の頃から広告代理店に憧れていて、在籍時はやりがいも感じていました。一方で、広告代理店ではクライアントに対して提供できるソリューションの範囲が限られてしまうのが課題でした。今から5〜6年前に、大手ファームがマーケティングや広告業界の領域に参入し始めたのを知り、もう少しソリューションの幅を広げていきたいと考え、転職しました。
AIを活用してクライアントの「トップライン向上の切り札」を生み出している
井内
続いて、Customer Analyticsチームの組織内での位置付けを教えていただけますか。
伊藤様
まずPwCコンサルティングの“カスタマー”の仕事を大きく分けると、マーケティング戦略全般を担うチーム、カスタマーサービス(お客様センター)に関わるチーム、Salesforcesなどの導入を手がける営業変革チームの3つになります。そして、その3つのチームを横ぐしで刺す位置づけとして存在しているのがCustomer Analyticsチームになります。私たちはAIを活用して各チームのデータを分析することで、インサイトの抽出から効果的な打ち手の策定、アナリティクス機能・組織の立ち上げまで、クライアント企業のカスタマーサクセスの実現を支援しています。
今、世の中にはデータ分析を行う会社が数多く存在していますが、私たちはただデータ分析で終わらせるのではありません。データを分析した上で、その先に何を見据えていくか、どのように実現していくかまでを視野に入れ、実行支援できるのが特長です。
井内
その他にもチームの強みや特長があれば、教えてください。
伊藤様
私たちの一番の強みは、クライアントを理解し、トップラインの向上にコミットできる点にあります。クライアント企業のマーケティング、営業戦略、営業本部といった各部門の責任者と丁寧に議論しながら支援するため、クライアントからの評価も高く、顧客満足度をしっかり得られている点が強みになります。
ちなみに、PwCコンサルティングにはAIを活用して経営変革をリードするData & Analytics(D&A)チームがあります。私たちは、あくまでもマーケティングやセールスの領域におけるトップライン向上が目的となるため、ITイシューが絡む分析や解析は、D&Aチームが全面的に行います。そして、全体の3〜4割はD&Aチームと一緒になってプロジェクトを推進しているのが特徴です。
井内
御チームでは、皆さんどれくらいの数のプロジェクトを掛け持ちされているのでしょうか。
伊藤様
基本的に掛け持ちはありません。マネージャー以下は1つのプロジェクトに完全にフルコミットしており、クライアントとOne Teamとなってプロジェクトを進めていきます。しかし私たちのスタッフ側にも当然、携わる業界の幅を広げていきたいというニーズはあるため、1つのプロジェクトに携わる期間は最長1年間でローテーションをしていきます。そのため1年間で1つ、または2つの業界に携わることができる仕組みになっています。
井内
お二方の現状の業務を教えてください。
伊藤様
現在は、Customer Analyticsチームの業務をどのように拡大していくかが課題であり、検討している段階です。またクライアントに対しては、PDCAサイクルをしっかり回して戦略策定から実行、分析、改善までを手がけていきます。全体のプロジェクトの6~7割が実行支援まで行っていますね。
他にもクライアント企業のなかで、データドリブンやファクトベースで物事を考えていくことや、PDCAサイクルを回していくというカルチャーを根付かせていくための人材育成にも力を入れています。
井内
佐藤様はいかがですか。
佐藤様
私は現在、営業向けのレコメンドツールを担当しています。レコメンドツールとは、顧客の行動を分析して、顧客に合った施策を提案していくものです。そのツールは、AIではなく一定のルールに基づいて動いているため、そのルールをどのようなロジックで組んでいくかというような施策の検討を支援しています。当然、元となるデータの精度が高ければ、高精度なレコメンドができますが、表面的なデータではレコメンドができません。高精度なデータがない場合は、今あるデータを分析して新たにデータを取り入れていくといった支援も行っています。
“サービスを売る”感覚を持った熟練のメンバーによる戦略立案も強み
井内
他ファームと比べた際の違いについてはどのようにお考えでしょうか。
伊藤様
マーケティングの戦略立案や、実行支援の経験をもとに事業を支援できる点が特長になると思います。マーケティングにおけるインサイトには、どうしても個人の経験やナレッジなどの裏打ちが欠かせません。したがって、コンサルタントが“サービスを売る”という感覚を理解しないまま、営業戦略やマーケティング戦略を作るということは、本来あってはならないと私は思っています。しかし世間一般的には、そういった営業の経験がないコンサルタントが、クライアント先に入って業務を行っているというケースも少なくありません。そういった点で、私たちには実際に営業の経験があるため、トップラインにコミットできるというところで差別化できると思います。
また、PwCコンサルティングでは、組織としてクロスチームを作りやすい点も特長であると言えます。実際、私自身もインダストリー側のメンバーを積極的に巻き込んで、インダストリーナレッジをしっかり得るように意識しています。PwCコンサルティングでは、クライアントの求める成果に向けて、さまざまなプロフェッショナルが関わり、協力をしていくカルチャーが根付いていると思います。
井内
もともと伊藤様は、事業会社、ベンチャー企業など幅広い勤務経験を有しておりますが、それらと比較した場合、Customer Analyticsチームの強みや特長はどのようなところにあると感じていらっしゃいますか。
伊藤様
前職のベンチャー企業では、結果が全てという環境でした。今振り返ると、ビジネスをする上ではあるべき姿なのかもしれませんが、当時はプレッシャーを大きく感じていました。一方、PwCコンサルティングでも売上目標にコミットする必要はありますが、気持ちよく働けています。また、事業会社ではソリューションが自社のプロダクトに限られるケースが多いのですが、コンサルティングファームでは幅広く考えられるので、業界としての違いも感じています。
さらに、事業会社の上場企業であれば株主に対する説明責任があるため、目先の売り上げに強くコミットする必要があり、同時に成長スピードが求められます。一方、PwCコンサルティングでは、人が資産であり、長期的な目線で人材育成に力を入れているため、時間軸の面でも違いを感じますね。
井内
佐藤様は、前職の広告代理店と比べて、現職の雰囲気やビジネスの仕方に違いは感じられますか。
佐藤様
雰囲気は全然違いますね。広告会社はフラットでノリがよい方たちが多い一方、コンサルティングファームはファクトベースでロジカルに考える方が多い印象です。ビジネスのやり方に関しては、広告会社では“メディアバイイングを含めた広告のトータルコミュニケーション”がメインのビジネスになるため、必然的に提供するサービスもメディアを絡めることが多くなります。しかしながら、現在はメディアや広告にとらわれず提案できるサービスの幅が広がったと思っています。またPwCコンサルティングでは、一人ひとりがやりたいことをしっかり聞いてもらえます。キャリアプランに沿ったアサインをしてくれるのもPwCコンサルティングならではのカルチャーだと思います。
デジタルツールを活用した「営業・マーケティング効率化」案件が増えている
井内
続いて、クライアント側のマーケット状況についてお聞きします。どういったニーズが増えていますか。
伊藤様
世の中の変革が加速していくなか、データを活用した営業の効率化とデジタルマーケティングのニーズが増えています。現に私たちのチームでは、どちらかのテーマを扱うケースが多いですね。
井内
具体的な事例があれば教えてください。
伊藤様
直近では、ROI(投資収益率)をベースにマーケティング戦略を立てる案件が増えています。というのも、従来は顧客を面でおさえるような営業が主流でしたが、今は顧客ターゲティングをする上で、データ分析を行い、「どれくらいリソースを投下すべきか」「どれくらいのコストをかければ、どれくらいのリターンが見込めるか」といった観点からROIをベースにマーケティング施策を策定することが求められているからです。
他にも顧客体験(CX)ベースのマーケティング案件も増えています。顧客体験とは、サービス提供を通して、顧客が自社に対してどういった評価をしているのか、つまり顧客の満足度を表すものです。顧客接点となるタッチポイントを設計し、それをどのように収益につなげていくか。そういった施策が多いですね。
そして、先ほど佐藤が申し上げた、営業施策のレコメンドも行っています。例えば「商談でどういう話をするべきか」「どういう接点があれば効率的に受注につながるか」など、営業のプロセスにおいて定量的、定性的な側面から支援していく仕事も多いです。
井内
ちなみに、クライアントはどういった業界の方たちが多いのですか。
伊藤様
最も多いのが製薬業界で、次に金融業界です。他はクライアントのニーズに応じて対応しています。今後の方針としては、全方位に案件を広げていくというよりは、製薬業界や金融業界に特化して案件を広げていきたいと思っています。また、PwCコンサルティング自体のクライアントに対してもしっかり価値を提供していくことが重要だと思っています。
井内
社内やグローバルでコラボレーションするケースも多いのでしょうか。
伊藤様
前述したD&Aに加えて、インダストリー側との連携が多いです。例えば、ヘルスケアを担当するHIA(Health Industries Advisory)チームや、金融機関を担当するFS(Financial Services)チームの組織に入ることがあります。グローバルでは、いろんな国のメンバーと連携しながら営業体制の変革などのプロジェクトを手がけています。
協力を求め、一方で自身のナレッジを提供していく、ギブ&テイクの精神が大切
井内
現在、Customer Analyticsチームにはどのようなバックグラウンドをお持ちの方が在籍していますか。
伊藤様
そもそも私たちは、アンオフィシャルな組織であり、かつアサインメントベースでチームが組成されます。正式にメンバーが所属しているとは言えませんが、常時20人くらいで仕事していますね。
チーム全体では、新卒と中途採用のメンバーが半分ぐらいです。バックグラウンドは、ベンチャー出身者、事業会社でマーケティング経験者、営業戦略経験者、そして私たちのような事業会社プラスコンサルティング経験者などさまざまです。
井内
御チームのカルチャーや雰囲気を教えてください。
佐藤様
基本はフルリモートですが、チーム内では毎日タッチポイントを設けて進捗を共有したり、相談し合ったりしています。フルリモートだと気軽に会話できず、ニュアンスが伝わりにくいと言われることもありますが、私たちのチームではそのような雰囲気はなく、中途入社の方も肩肘張らずにコミュニケーションが取れています。また、伊藤の下にいくつかチームがあるのですが、横連携がとても活発で、資料の共有なども日常的に行っています。
あとは週1回、チーム内でナレッジシェアも行っていますね。プロジェクトのナレッジシェアだけでなく、本の紹介や面白かった映画、旅行の話など和気あいあいとした雰囲気で情報共有を行っています。
伊藤様
あとはPwCグループ全体で“助け合う”というカルチャーがあるのが特長です。当然、自分1人でできることは限られています。自分が得意でないことも、周りで経験している人たちはいっぱいいるので、素直に協力を求めて連携していくことが大事ですね。その上で、自身の専門知識や知見、ナレッジを提供していく。そういったギブ&テイクが強く求められる時代になってきていると思います。
井内
労働時間や休暇制度など、働き方についてはいかがですか。
伊藤様
労働時間は、だいたい9時から18時頃までで、遅くとも19時には皆さん仕事を終えているのではないでしょうか。休暇は、事業会社と比べて取得しやすいですね。自分で仕事の調整ができるので、日常でも用事があれば休むことができますし、プロジェクトが終わった後に1~2週間の休みをまとめて取得される方もいます。
自分でモノやサービスを売った経験が大きく活きる環境
井内
どういった方にメンバーとして入ってもらいたいと思いますか。
伊藤様
「クライアントに対して提供すべき価値は何か」ということを自問し続けられる人がいいなと思います。私たちは対価をいただいて仕事をしているので、対価に見合う、もしくは対価を越えるような価値を提供できなければ、ビジネスとして発展拡大はしていきません。自分の仕事の“質”に対して強い責任を持ちながら、クライアントに価値貢献をしていきたいという考え方ができる人を求めています。
さらに付け加えるとすると、自分でモノやサービスを売った経験がある方がいいですね。それはたとえ学生時代のアルバイトでも構いません。顧客満足を提供する環境に身を置いて経験してきた人であれば、自身で戦略を描いた時に「その戦略であればいける」といったことが肌感覚でわかると思うんです。私たちのチームはあくまでも営業やマーケティングの仕事なので、そういった経験があればご自身もやりやすいと思いますね。
井内
佐藤様はいかがですか。
佐藤様
自分たちはサービスを提供していく側だ、としっかり理解できている方がいいですね。よく「自分が成長したい」「これを成し遂げたい」という強い想いを持って入られる方はいますが、クライアントから対価をいただいている以上は、きちんと成果を出さなければなりません。そのためには手を抜かず、腐らずに謙虚に仕事に取り組める方がいいですね。
伊藤様
そうですね。目の前の仕事を一つ一つしっかりやり切ることが大事だと思いますね。努力を続けていった際に、ラーニング・カーブが急こう配にぐっと上がるタイミングがあります。そこまでしっかり待つことも重要だと思います。
井内
スキル面では、アナリティクスをやられてきたけれど分析にとどまっていた方や、逆にアナリティクスに関して経験が少ない方もターゲットになりますか。
伊藤様
はい。チャレンジできる環境はあります。
井内
事業会社出身者で、コンサル未経験者の方はいかがですか。
伊藤様
コンサル未経験であっても、事業会社出身であれば活躍していただけると思います。やはり戦略は、ただ描くだけでなく、組織として実行できなければ1円も利益を生み出すことはできません。例えば事業会社ではいろいろな部署やポジションがあります。そして、それぞれどのような関係性があって、どういう順番で決議されていくか。取締役会のアジェンダはどういうものか。経営者に意思決定をしてもらうには何が必要なのか。そういった会社全体の組織感覚力というのは、コンサル経験の方であれば一定のレイヤーになるまではなかなか身に付きません。事業会社出身の方であれば会社全体を見て体感しているので、その経験は充分に活かしていただけると思います。
佐藤様
事業会社というのは、コンサルからするとクライアントという立場になります。そして、クライアントの立場を経験していれば、コンサルに期待したいこともわかると思うんです。コンサルとしてどうあるべきか、という点で考えるとおそらくコンサル経験者だけの方よりも、事業会社出身者の方がより具体的に考えられるのかもしれませんね。