今回は、PwCコンサルティング合同会社のCustomer Transformation(以下、「CT」)、Operations Transformation(以下、「OT」)両チームのパートナーへのインタビュー。 コロナ禍において、顧客の行動や嗜好が変化する中、カスタマーとサプライチェーンの連動が不可欠となります。その背景を踏まえて、CTとOTでは今後より強固な連携体制を築いていくことが期待されます。
CTパートナー阿部大祐様、OTパートナー田中大海様より、両チームの特長やキャリアパス、連携を強める背景などについて、アクシスコンサルティングの長谷部がお聞きしました。
CTパートナー阿部大祐様、OTパートナー田中大海様のご経歴
長谷部
まずはお二人のご経歴について、阿部様からお伺いできますでしょうか。
阿部様
はい。私は新卒でコンサルティングファームに入社し、メインフレームのスクラッチ開発からキャリアをスタートしました。その後、PwCコンサルティングの前身となるファームへと転職し、会計や人事等、さまざまなパッケージ導入を経験。その後、製造業のセクターチームを経て、現在はCTのリーダーパートナーを務めています。
長谷部
ありがとうございます。それでは、田中様のご経歴もお聞かせいただけますか。
田中様
私は1998年に家電メーカーに入社し、サプライチェーンや情報システムに関わる仕事に従事した後、「いずれは」と考えていたコンサルタントの仕事に移る決心をし、阿部と同じくPwCコンサルティングの前身となるコンサルティングファームへと転職しました。
阿部とは、社内のソリューションコンペで組み、優勝したこともあるので、その時からの腐れ縁ですね。
その後、外の世界も見てみたいと飛び出し、他社で営業、新規コンサルティング事業の立ち上げ、M&A等、様々なことに挑戦しました。
そして、次に何をするべきかと考えた時、当時はモノとカネの連携が大きな広がりを見せ、サプライチェーンの面積を増やすことだけでなく、管理会計や顧客接点、そして経営的な方向性との整合まで踏まえたコンサルティングが急務だと実感するに至りました。そう考えた時、歴史があり、様々な事業範囲を持ち合わせているPwCコンサルティングの現在を知り、古巣とも言える今の部署にジョインすることを決めました。この頃には、社名はPwCコンサルティングになっていました。現在はOTのリーダーパートナーを務めています。
阿部様
田中さんが戻ってきて、約20年振りに再会しました。前もって「田中というパートナーが来る」とは聞いていたのですが、まさかダイミさんだとは思いませんでしたよ。
顧客中心型企業への変革支援を行うCT、ビジネスモデル全体の最適化を行うOT
長谷部
続いて、お二人のチームの役割と、ミッションを教えていただけますか。
阿部様
CTは、クライアント企業に対して、顧客中心型企業への変革支援を行っています。
CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)においては、構想の立案から、導入、開発、定着まで支援し、そこから改善テーマを出して新しい案件へ繋げるなど、まさに「Strategy through execution」を体現しています。
CTのミッションは、全ての顧客接点における「あるべきカスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)の実現」を支援するために、クライアント企業に持続可能な成長を提供することです。PwCは新たな経営ビジョン「The New Equation」の中で、企業・組織が顧客やステークホルダー、社会、また自らのために「Sustained Outcomes」、すなわち現在そして将来にわたって価値を生み出し続けるためのゆるぎない成果を実現することを掲げていますが、短絡的なPLではなく、きちんとBSを見ながら、クライアント企業が緩やかに成長できるよう支援、貢献することに重点を置いています。
田中様
OTは、クライアント企業のビジネスモデル全体の最適化を担い、企業収益のパフォーマンス最大化を支援する組織です。調達や物流といった代表的なサプライチェーンマネジメント(SCM)だけでなく、生産、販売やアフターサービス、更に全体の調整やバックオフィス等を含めた全てのオペレーション改革を担っています。
OTのミッションは、SCMをベースとした総合コンサルティングにより、クライアント企業に貢献すること。また、高いバリューをデリバリーできる組織であるために、サプライチェーンや成長戦略の案件を伸ばすベースとなるSCM基盤を強化したり、PwC JapanグループやPwCのグローバルな拠点のハブとして関連するソリューションとのコネクト活動を促進したり、バックオフィスを含む企業のオペレーションを強化したりすることも、チームの重要な存在意義と考えています。
長谷部
ありがとうございます。では、それぞれのチームの特長などもお伺いできますか。
阿部様
クライアント企業のトップラインを上げることに注力できる点が特長であり、強みでもあります。顧客戦略を見直すところから入っていけますし、クライアント企業へのインパクトにこだわり、絵を描くだけではなく、実体が伴った支援ができるチームです。
田中様
OTは、全社的な戦略領域から個々の業務の現場まで踏み込んだビジネスの効果を実際に創出するまでを支援できる点が特長ですね。
バリューチェーンには「製品開発-調達-生産-在庫管理/物流-販売/アフターサービス」といった繋がりがありますが、通常のオペレーションコンサルティングはこの中の一部分しか支援しないケースが多々見受けられます。しかし私たちのチームは、その繋がりの全てを視野に入れ、改革をサポートしています。結局は繋がる話ですが、どこから始めても対応できるのが強みの1つです。
サプライチェーンが顧客中心へと変化する中、CustomerとOperationsのシームレスな連携が不可欠に
長谷部
今後、CTとOTの連携を強化していくとのことですが、マーケットやニーズの変化等によって、チーム連携の必要性を感じたご経験などがあれば、お聞かせください。
阿倍様
そもそも対象にしている部分に重なりがあります。私たちが対象にしているコールセンターやサービス営業などのカスタマーサービス領域は、OTのアフターセールス領域と被ります。
また、私もERPパッケージを長く経験してきましたが、それに繋がる形でSFAやCRMが存在していて、そこがシームレスにならないと情報の連携が活かせません。当然、こうした情報を互いにリアルタイムで見たいというニーズは、以前に比べると格段と高まっており、そこに対応する必要性に迫られています。
長谷部
DXが進展する現代では、情報の可視化とそれによるバリューアップに対応することが求められているのですね。
田中様
今はモノの売り方が変わってきました。コト売りの拡大や、昨今の供給不足がモノの入れ替えを減少させています。つまり、一度商品を売った後もその顧客を押さえ続けることが重要であり、モノの売り方の主軸がそちらに移行し始めています。今まで何となく読めていた顧客の買い替えのタイミングも、コロナ禍の影響でズレるようになっています。こうした問題に対処する際、CTとの連携は不可欠です。
長谷部
こういった連携による案件について、具体的な例などをお聞きしてもよろしいですか。
田中様
近年増えている、製造企業のクライアントに対する我々の姿勢を例にお話ししましょう。例えば、設置する必要のある商材を取り扱っている企業では、定期的なメンテナンス・保守のための部品を届けることや、それを設置するスタッフを派遣することを定期的に行うことが求められますが、それと同時並行で情報を繋ぎながら継続的にどのようなサービスが必要なのかをモニタリングする必要があります。こういった場合、SFA案件の管理はCTが担いますが、私たちOTは保守部材の在庫管理や供給管理を担います。私たちが一緒に活動をすることで新しいニーズを発見したり、提案を行ったりすることができます。
長谷部
関連する領域が繋がることで、クライアント企業に対する付加価値がより大きくなるわけですね。
では、インダストリーチームとの連携についてもお聞かせください。
阿部様
CTでは、プロジェクトもデリバリーもインダストリーチームと一緒に組んで進めるのが基本スタイルです。やはり、業界やアカウント特有のことは営業フロント周りでは大きく影響するので、インダストリーチーム側の力も必要になります。そこが連携していないと、案件の獲得も高品質なデリバリーもできませんし、連携は当然のことだと思います。 こうしたコラボレーション文化を浸透、進化させるため、当社としても様々な仕掛けを打ってきました。数字的なところだけではなく、スタッフのレベニュー最大化を考えているパートナーなりディレクター、シニアマネージャーは評価される環境が整っています。
長谷部
こうした連携をカルチャーというソフト面、評価というハード面の双方で促していらっしゃるのですね。
田中様はいかがでしょうか。
田中様
OTは、業界に対して濃淡をつけて対応しています。バランスを取るように考えていますね。これはソリューション提供側に立つ私たちの特長だと思いますが、様々な業界を経験するからこそ、業界特有の違いがわかります。
意外かもしれませんが、PwCコンサルティングで金融業界を担当している金融サービス部門(FS)とコスト削減の観点で連携することも多いですね。クライアント企業のバリューアップのためにFSと私たちが組んで提案するといった活動が最近増えつつあります。
「MC・BAミックス」の体制ゆえに、組織内でスムーズなキャリアチェンジが可能に
長谷部
私の認識ですと、お二人のチームはMC(※1)とBA(※2)が渾然一体となっている点も近しいと思うのですが、その辺りのこともお聞かせいただけますか。
※1 MC(Management Consulting):ビジネスの知見を持ったコンサルタント
※2 BA(Business Application):IT・デジタルの知見を持ったコンサルタント
阿部様
そうですね。CTは、そもそもは別々だったMCとBAのチームが合体して組織されました。私はBAのリーダーも兼務していますが、この3年ほど「MC・BAミックス」を掲げて尽力しています。
ただ、MCとBAでは目指すところや評価軸が違うのも事実です。今はMC・BAミックスでの案件も増えており、良いところは残しつつ、チーム運営としても良い成果が出ていると思います。
田中様
OTでは3年前からオペレーションにMCかBAかといったタグ自体をつけないようにしています。業務内容も混ざっているような状態ですね。
長谷部
なかなかMC側に切り込めていないというジレンマがある転職希望者の方には、ぴったりな環境だとお見受けしますが。いかがでしょうか。
阿部様
チャンスはあると思います。リクエストが明確にMCである場合は別ですが、BAの方でもMC案件でアサインされることも、もちろん、その逆のパターンもあります。重要なのは、現状のスキルセットよりも「やる気」や「想い」です。
田中様
MC・BAミックスによる成功例は何人も見てきました。例えば、ITの経験はなかったシニアアソシエイトが、Digital AcceleratorsというPwC Japanグループ全体で行っているトレーニングコースを受講したことによって、BIを活用し業務改善の施策をリードするようになるという変化が起きました。また、反対にIT系出身者が、業務目線で考えながら最後はBIツールを使った帳票で見せることができるようになるなど、クロスした経験を持つメンバーは増えています。
誰にでも壁はあるものです。その壁を越えられるかどうかは、コーチングや周りのサポートもありますが、何よりも大切なのは自分の意思です。そこを頑張ってグッと越えた人は大きく成長しますね。
「やさしい、コンサル。」を体現するオープンな雰囲気
長谷部
コンサルティングファーム未経験の方は、チームの雰囲気なども気になるかと思いますし、経験者の方でも、コロナ禍におけるオンボーディング体制を気にされている方もいると思います。そういった点はいかがですか。
阿部様
「優しい」とか「温かい」というのは、CTの特徴的な雰囲気だと思っています。若干やりすぎではないか、というほど手厚いフォローアップ体制を整備していますし、そういう文化が醸成されやすい空気があります。メンバーが200人弱いますから、意見がぶつかることも当然ありますが、かなりオープンな空気を作っているつもりなので、何かあれば入社したての若手メンバーであっても、気軽に私に相談しに来てくれたりします。
あとは、プロジェクトメンバー以外とも交流の場を広げてもらうために、各自の趣味などに関するアンケートをとって、飲み会のグループをマッチングする企画を何度か実施しているのですが、これがかなり好評でした。リモートワークが続いていましたが、CTではリアルオフィスの日も作るなど、コミュニケーションのための企画を積極的に行っています。
田中様
OTでも、「たまにはオフィスに集まろうか」とか、「一緒に食事をする機会を設けようか」とか、コミュニケーションの機会を取れるように模索しています。
最近は、社員同士をグループ化して繋ぐラウンドテーブルを設けたりもしました。交流をさらに深めるため、CTの取り組みを参考にしている部分もありますね。
長谷部
それでは、お二人が今後どのようなチームを目指していらっしゃるのか、未来への展望などありましたらお聞かせください。
阿部様
コンサルティングファームは全体的に業績が良く、拡大傾向です。それはPwCコンサルティングも同様であり、その拡大を支えるものとしてカスタマー領域は期待されていると思います。先ほどの話のように、CT単独ではなく、インダストリーチーム等との連携を図るためにはその分人員を確保しなければ成り立ちませんし、規模を拡大できればという気持ちはあります。PwCグローバル全体が期待しているフロントオフィストランスフォーメーションに更に注力し、会社の中でそのエンジン的な役割を担うのが、私の目指すところです。
田中様
OTは、この3年間で随分変わりました。私自身、次の世代にどんどん仕事を渡してきました。
今チームに求めているのは、幅広く繋がりを見られるようになることです。サプライチェーンでは何かに特化して詳しい人が多いので、販売や物流といった主軸は持ったままで良いので、「他の領域にまで活動範囲を広げて動き、全体的な観点を持って考えよう」ということをずっと言っています。
長谷部
では最後に、転職を考えている候補者の方にメッセージをお願いします。
阿部様
PwCコンサルティングの特長は、コラボレーション文化にあると感じています。それは、当社の掲げる「やさしい、コンサル。」の精神に繋がるものであり、やはり本質的に優しさが備わっていないと成り立たない。「やさしい、コンサル。」とは優しさが生む強さがある、というところまでを含んで一つのメッセージなのですが、私たちは「心理的安全性が確保されている環境の方が、スタッフやマネージャーが絶対的に力を発揮できる」との信念を持っているので、そういった環境で働きたいと思っている方に飛び込んで来ていただきたいです。
田中様
PwCコンサルティングの中途採用広告に「やさしい、コンサル。」と大きく書かれていますが、私はその下の細かい文章もしっかり読んで、そこに共感できる方に是非来てほしいです。
あとは、最近色々と変革がありましたし、今後も変化は続きますので、今までのPwCのイメージが大きく変わっていくと思います。ですから、「チャレンジングだけど、やる意義がある」という取り組みが増えていくと思います。過去だけで考えるのではなく、先のことを見据えることができる方に来ていただきたいですね。