データ、アナリティクスにまつわる戦略~実行支援まで包括的にクライアントの抱える課題解決に取り組むPwCコンサルティング合同会社 D&A(Data&Analytics)チーム。
今回は、同チームを率いる上席執行役員パートナー 藤川琢哉様に、D&Aチームの強み、手掛ける案件の特徴、組織の未来や、カルチャーなどについてお聞きしました。
「データ、アナリティクスを起点とした新しい価値創造」のスペシャリスト集団
井内
まずはD&Aチームを率いる藤川様のご経歴についてお聞かせください。
藤川様
私は東京工業大学大学院でAIを専攻していたため、その知見を活かしPwCコンサルティングで十数年にわたりデジタル領域のコンサルティング業務に従事しています。
井内
PwCコンサルティングでの業務内容についてもお聞かせください。
藤川様
デジタル先進企業のアカウントリードを7年ほど経験し、DXにおける先進的な取り組みや課題についての知見を培ってきました。現在はPwCコンサルティングにおけるデータアナリティクスチームの責任者を務める傍ら、クライアントのCDOを中心としたエグゼクティブに対してDXに関するアドバイスを提供しています。
井内
D&Aチームの組織概要についてお教えください。
藤川様
D&AチームはAnalytics&AI、データマネジメント、データ駆動型新規事業のそれぞれに対し、構想・実装・運用まで一貫したサービスを提供しています。
メンバーは、コンサルタントのチーム(100名超)とエンジニアのチーム(数十名程度)に分かれています。バックグラウンドは、コンサル出身、SI出身、事業会社出身が同数程度います。
井内
D&Aチームのビジネス上における特徴についてもお教えください。
藤川様
100名を超える大所帯ながら、Analytics & AI、データマネジメント、データ駆動型新規事業の3つのサービスラインをOne Teamで運営しており、クライアントにも一貫したサービスを提供できることが、大きな特徴です。
特に半数以上のメンバーがデータサイエンス系のスキルをベースとしており、Analytics & AIには強い自負がありますし、それと同時に、全員に全ての領域でスキルを付ける事を推奨しており、キャリアの選択肢にも富んでいます。
さらに、X-LoS(Cross Line of Services)という、Assurance、Deals、Tax、Forensicsなどの部門や組織の壁を越えたコラボレーションも盛んで、総合力で勝負できる点や、産官学で推進する社会課題解決を伴う新しいマーケット創出にも強みを持っています。(データ流通ソリューション、AIガバナンス導入支援など)
井内
3つのサービスラインがOne Teamでサービスを提供することの強みについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
藤川様
One Teamの強みの1つは、お客様の課題に対し提言する内容が、多面的な視点から捉えた上での最適解にできるという点です。お客様は自分がどうしたらいいか幅広い観点で相談できる相手、つまり真のパートナーを求めていらっしゃいますから、One Teamによって多面的な視点を持ったコンサルティングという付加価値が生まれています。
もう1つは、提供価値を最大化できるという点ですね。分業を行うと、それだけコミュニケーションコストも増えます。その点、私たちはアナリティクスもデータマネジメントも新規事業系も分かりますので、1人で生み出せる価値を最大化できると考えています。
井内
PwCコンサルティングのTAS(Technology Advisory Service)やTechnology Laboratoryにも同様の領域でサービスがあるかと思いますが、業務の切り分けや協業によるシナジーなどについてもお聞かせください。
藤川様
TASとはデータマネジメントの領域で共同のチームをつくり、役割分担などはせずに一体運営をしています。私たちはデジタル推進部門やCDOをカウンターに、デジタル戦略のためのデータ活用やデータ基盤をどうするかというビジネスを構築しているのに対し、TASは主にIT部門をカウンターにして、デジタルのアーキテクチャの見直しといった文脈で案件を扱っています。ですから、私たちはデータの専門家として、TASはデジタルアーキテクチャの専門家として、お互いに協力し合う体制を取っています。
産官学で社会課題解決を推進していくような案件では、Technology Laboratoryが非常に高度な知見を持っています。中央官公庁からのお仕事で政策づくりやマーケット創出をする時は、Technology Laboratoryのメンバーと一緒にプロジェクトを組んで産官学推進の知見をもらいながら進めています。
(参考)
■データアナリティクス | PwC Japanグループ
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics.html
■テクノロジー最前線ーデータアナリティクス&AI編ー
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/technology-front-line.html
産官学連携を強化し、産業横断でのデータ流通を実現させ、日本人のQOLを高める
井内
藤川様の視点から、D&Aチームを通してマーケットにどのような価値を提供したいか教えてください。
藤川様
社会・企業両面で価値を創造していきたいと思っています。
社会に対しては、中立的立場を活かし、産官学連携により、産業横断でデータ流通を実現させ、課題先進国である日本特有の課題を解決しながら、日本人のQOL(Quality of Life)を高め、ひいてはそのソリューションを通じて日本企業の国際競争力も高めていきたいです。
企業に対しては、先行きが不透明で、将来の予測が難しい、VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)と呼ばれる時代、中期経営計画のシナリオ通りに進む事は少ないですし、年次計画すらも正確に予測する事は困難なため、アジャイル経営が必要です。そのためには予算に対する達成状況をモニタリングする内向きの経営管理では限界がきており、世の中の動向をAIでセンシングし適時に計画修正するAI経営を浸透させていきたいです。
井内
先程も産官学で推進する社会課題解決に伴う新しいマーケット創出に強みがあるとおっしゃっていましたが、現在のビジネス状況やHOTな案件事例について教えていただけますか。
藤川様
好調な状況が続いています。AI・データサイエンティストのコモディティ化が進む中、コンサルファームならではのビジネス理解に基づく企画能力や、One Teamでの統合ソリューションの提供で、マーケットの中でもHigh Valueを維持できています。
HOT案件としては、熟練技能者の判断をAI化する案件を推進しており、日本の失われゆく技術継承を目的にした社会的意義の高い案件だと感じています。
また産官学に関する案件では、脱炭素社会へのシフトに対応したAI活用の取り組みなどもあります。
(熟練技能者の判断をAI化の例として、ヤンマーエネルギーシステムの取り組み、東京ヴェルディeスポーツがあります。
脱炭素社会シフトの例としては、大阪ガスUSAがあります。)
デジタルプロダクトの開発で人数に頼らない成長を
井内
D&AチームではSaaS型で提供するプロダクト開発にも力を入れているとお聞きしました。その背景について教えてください。
藤川様
私たちがデジタルプロダクトを推進する理由は2つです。1つは、再利用性が高いコンサルのノウハウをプロダクトとしてつくってしまうことで、お客様にできるだけ安価にサービスを提供するため。
もう1つは、コンサルマーケットがどんどん拡大し、コンサルのポテンシャルが高い人材の確保が難しくなってきた中で、さらなる成長を実現していくためです。デジタルプロダクトによって、人数に頼らない成長を目指しています。
井内
プロダクト開発において、メンバーの企画を採用する機会もあるのでしょうか。
藤川様
はい。当社にはD&A Incubation Programというアイデアソンがあり、希望者は新卒1年目から参加することができます。彼らが出したプロダクトアイデアを私たちパートナー陣が審査して、評価を受けたアイデアは社内の投資をもらって開発していきます。
現在開発中の原材料価格を長期予測するサービスも、このアイデアソンから生まれました。そのアイデアの企画者は、他のプロジェクトにはアサインせず、プロダクト開発に100%時間を使ってもらっています。
つながることでより大きな価値を生み出す
井内
D&Aチームのフォロー体制についてもお教えください。
藤川様
特に中途の方が苦しむコンサルティングのベーススキルを養うため、「今更聞けないシリーズ」というトレーニングを定期的に提供しています。また、データサイエンスの技術力については7カ月間のDigital Acceleratorのプログラムで初心者でもキャッチアップ可能ですし、ベンダートレーニングについても資格取得のための勉強会をアライアンスパートナーから無料で提供していただいています。他には、週に1回シェアリングセッションを1時間設定し、その枠で2本のプロジェクト事例を共有してもらっています。そこで、他のプロジェクトでどんな課題があって、どういう風に解決したのかを、同僚のメンバーから聞くことができます。
朝活として有志の勉強会も進めています。コンサルティングのベーススキルを養うため、経営学部の学生が学ぶような経営学の教科書を10人程のメンバーで輪講したり、品質の高いAI開発ができるようにAIの品質管理についてのガイドラインを同じく10人程度で輪講していたりしています。
井内
OJTのようなフォロー体制についてはいかがでしょうか。
藤川様
制度としてキャリアコーチが付きますし、中途の方には同じタイトルの方がバディとして付き、相談役となります。普通の会社だとキャリアコーチは同じスキルセット、同じケイパビリティでチームラインをつくると思うのですが、私たちはあえてケイパビリティを別の人にすることでスキルの幅を広げ、さまざまな専門家と交わる機会をつくるようにしています。
また、当社はつながることによって価値を生み出すことを重要視していますから、一般的なプロジェクトのつながりの他にも色々なコミュニティを構築しています。
例えば、D&Aのイニシアチブという取り組みでは、ビジネス開発をしていく単位でチームをつくっています。自分のケイパビリティとは関係なく、興味のあるチームに属して経験を積むことができます。
あとは、希望した方だけが属するファンクションのチームもあり、それぞれがリクルーティングやマーケティング活動、社内のイベントなどのバックオフィス業務を担当しています。
井内
他ファームでは業務が忙しくて勉強会やフォローができないといったお話も聞くのですが、そういった組織運営ができている要因はどこにあるとお考えですか。
藤川様
先程ご紹介したトレーニングや勉強会はすべて任意のものですが、自ら手を挙げるような人が多いので、自分たちでどんどん企画してくれます。もちろん、忙しくて今のプロジェクトにフォーカスしたいという方もいますし、それで評価が下がるようなこともありません。勉強したい人が勉強しやすい環境がありますね。
週1回のシェアリングセッションも発表枠を設定するだけで、勝手に発表者が手を挙げて枠は埋まっていきますし、シェアする文化が根付いていると思います。転職してきた方はよく周りがサポーティブで助かると言ってくれます。皆いろんな人からサポートしてもらって一人前になってきた経験があるので、還元しようというカルチャーがありますね。
井内
御社のカルチャーからは心理的安全性の高さを感じますが、自分がやってもらったことを下に返していこうというイメージなのですね。
藤川様
つながりが非常に強いことと、評価制度の良さが心理的安全性につながっていると思います。定量的な数字のKPIとしてもちろんあるのですが、それだけでなく、その人がそこで何を生み出したのかという中身を重視するインパクト評価を採用しています。おかげで数字を取り合うようなカルチャーはありません。サポーティブなことをすればするほど評価は上がりますし、そこがギスギスしないポイントなのかもしれません。
井内
キャリアという観点で、グローバルのオポチュニティについても教えていただけますか。
藤川様
米国などの先進国とのサービス連携や、シンガポールを中心としたアジアでの日本企業の支援を各国のメンバーファームと連携して推進しています。
現在米国に1名駐在中で、シンガポールへ2名の駐在予定もあります。
井内
どういった志向の方が選ばれているのでしょうか。
藤川様
一般的にグローバルで仕事をしたいという方は、日本が遅れているから海外に行って先端のことがやりたい、という志向の方が多いような気がします。ですが、日本はまだまだ世界をリードできる存在だと思っています。世界をリードしたい、日本が持つ知見で世界の発展に貢献したい、という気概を持っている方とは、このデータアナリティクスという領域で世界のデジタル化を一緒に推進してもらいたいと思っています。
多様な個性が混ざり合い化学反応を起こす
井内
PwCコンサルティングの中でD&Aチームは女性や外国籍の方が多いとお聞きしていますが、ダイバーシティがチーム内で進んでいる背景について教えていただけますか。
藤川様
まずは、「入社後にスキルアップできること」が大きな要因だと感じています。D&Aにテクニカルスキルを学ぶ体系的なプログラムがあり、7カ月でeラーニングとOJTによる集中的なスキルアップを図っています。さらに、プロジェクトリーダーや組織のチームリーダーといった新たな役割にチャレンジする機会も性別問わず平等に存在し、チームもそのチャレンジを最大限にサポートしています。
また、「時間と場所を問わず柔軟な働き方ができること」も要因の1つです。D&Aは、仕事と家庭を両立させながら男女共に長く働き続けられる職場環境の維持に努めています。女性だけでなく、男性メンバーの育児休暇取得率もほぼ100%ですし、家庭環境や生活状況を理解し、柔軟に対応することができるので、男女問わず「働きやすい」との声を多く聞いています。
多国籍なメンバーについても、D&Aには共通のゴール・目標に向かって協働し、切磋琢磨することで、互いの個性や価値観を理解・尊重する風土が醸成されています。私たちは日本で働きたい外国籍の方を歓迎していますし、多様な個性が混ざり合うことでさらなる化学反応を起こしていくことを期待しています。
井内
ダイバーシティ&インクルージョンを実践した働き方について、具体的な事例があれば教えてください。
藤川様
子育て中の女性コンサルタントの中には、7時から12時の時短勤務をしている方もいます。そういったご家庭との両立を図られる人たちにも働く機会をつくろうと、アサインメントのタイミングから色々と考えてチームを上げてフォローしています。あとは、懇親会が夜に限られていると参加できない方もいるので、昼と夜の2回開いて好きな方に参加してもらうなど、皆さんの意見を聞いて新しく取り組んでいます。
何が負になっているのか分からないので、その都度発見して、学んで、変えていく方針で良い環境づくりを心掛けています。