今回は、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)公共事業部(Public Services、PS)のDigital Governmentチームへのインタビュー。
行政や公的機関に対して、デジタル戦略・計画策定や、AI人材の育成・体制構築等、DX推進の支援を行うDigital Government。同チームの谷井宏尚様(シニアマネージャー)、三島明恵様(シニアアソシエイト)、榎園りか様(アソシエイト)に、ご経歴、チームの強み、実際の案件内容などについてお聞きしました。
※本インタビューは2022年5月時点の内容です
PwCコンサルティング PS Digital Governmentチーム 谷井様、三島様、榎園様のご経歴
長谷部
まずは、皆様のご経歴をお聞かせください。
谷井様
私は、新卒で総合コンサルティングファームに入社し、約8年間、中央省庁に関わる大規模プロジェクト等を経験しました。
その後、監査法人系コンサルティングファームに転職しました。コンサルティング事業が立ち上がって1年ほどで、まさにスタートアップのように組織が拡大していくフェーズでした。当時、公共案件とは別に採用も担当しており、従業員数約300人から1,100人まで拡大することができ、まさに組織として直面する1,000人の壁に大きく関わることができたと思います。
大きな達成感を得て今後のキャリアを見据えた時、さらに世の中に対し価値のある仕事がしたいと考えるようになり、PwCコンサルティングに転職しました。
最初に在籍していたのはTC(テクノロジーコンサルティング)でしたが、2021年のデジタル庁発足のタイミングでPSのDigital Governmentに移籍しました。
三島様
私は、新卒でシステムベンダーに入社し、政令指定都市や中核市の基幹システムの設計から導入・運用までを担当しました。しかし、「ベンダーという立ち位置ではなく、もっと上流から業務に携わりたい」と思うようになり、コンサルティングファームへの転職を決めました。
そのなかでもPwCコンサルティングは、公共のクライアントを支えるだけでなく、社会課題そのものの解決をミッションに掲げており、さらに、自社だけではなく民間企業を含め広く協業しながら解決を図る考え方に共感し、入社を決意しました。
榎園様
私は新卒でPwCコンサルティングに入社し、今年で3年目になります。もともと「幅広く経験を積んで成長したい」という考えからコンサル業界を目指していたのですが、そのなかでも就職活動中に出会ったPwCの方々が魅力的だったので当社に入社を決めました。
入社後の約1年間はOJT研修で多くの業務に携わりましたが、その後PSのDigital Governmentチームに入り、現在は主に中央省庁に関わるシステム案件を担当しています。
中央省庁や地方自治体、独立行政法人に対する「DX推進」に特化
長谷部
続きまして、Digital Governmentのサービス内容やミッションをお伺いしてもよろしいでしょうか。
谷井様
Digital Governmentでは、主に中央省庁や地方自治体、独立行政法人に対し、民間企業や大学と連携してDX支援を行っています。デジタル庁が掲げる公的機関のクラウド化などを背景に、PwCの知見を活かしながら日本全国のDX支援を推進しています。
また、システムに関する法令や調達のルール策定の支援をすることもあります。
長谷部
さまざまな取り組みをされていらっしゃいますが、Digital Governmentの強みや特徴を教えてください。
谷井様
大きく3つ挙げられます。1つ目は、官公庁や地方自治体、公的機関のDX案件の実績が多いことです。多くの経験や知見を有しているため、複数のコンサルティングファームとのコンペティションでも当チームは自身を持ってアピールすることができます。
2つ目は、民間企業や大学と協力体制で提案できることです。私たちはシステムを構築する部隊を持っていないため、例えばシステム構築を専門とする企業と共同で地方自治体のDX推進を行ったり、さまざまな専門性を持った外部ベンダーと一緒に組んで提案したりするなど、他社とコラボレーションしながらクライアントにサービス提供できることが強みです。
3つ目は、リスク領域の専門組織であるPwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)のシステム・プロセス・アシュアランス(SPA)チームと連携して提案ができることです。特にクライアントがデジタル庁の場合、リスクマネジメントに対する知見がより深く求められます。そのためSPAチームをはじめ、各分野の専門家と連携してサービスが提供できるところは強みです。
地方自治体が「継続的にデジタルを活用・運用できる体制づくり」
長谷部
マーケットのトレンドについて教えていただけますか。
谷井様
これまで地方自治体のデジタル案件といえば、システムの入れ替えに関する案件が大半でした。もちろん今でもそういった需要はありますが、現在はクラウドを活用したビジネストランスフォーメーションなどの案件が急増しています。
長谷部
基幹システムのマイグレーションやリプレースといった案件以外にも、DXの構想策定から入る案件が増えているのですね。
谷井様
そうですね。ただし、DXはあくまでも業務を高度化させるための手段に過ぎません。本当に大事なことは、地方自治体が継続的にデジタルを活用し、運用していけるかどうか。それには既存のやり方を変え、クライアント自体がレベルアップをしていただかなければなりません。ですから、私たちもやみくもにDXを推し進めるのではなく、「本当にDXは必要ですか」という話を最初にさせていただき、DXの必要性をご自身で判断していただくようにしています。
長谷部
Digital Governmentが手掛けた実際の案件事例についても教えていただけますでしょうか。
榎園様
例えば、デジタル化が遅れていた自治体のDX支援が挙げられます。未来を描くために、どのようにDXを推進していくかということで数カ月にわたって自治体の方と膝を突き合わせながら議論を重ねました。
三島様
一般的に国から紹介される最先端なDX事例は、自治体からするとトップに理解があるか、企業投資があるかといった例外的なケースでない限り、そのまま真似するのは難しいです。しかし、この案件では、クライアントの状況に合うDXが提案でき、私たちにとっても良い経験になりました。
具体的には、ただ戦略を説明するだけではなく、オープンデータに取り組む他の都道府県の方との交流接点を設けたり、私自身が参加しているイベントの情報提供をしたりしました。またPwC内で、自治体のCDOを行っている方の協力を得て、念入りな活動を通してDX推進を着実に行ってきました。
谷井様
この案件はDX戦略策定以外の案件にもつながり、その取り組みが思わぬ注目を浴びて、現在、他県の自治体からもお声が掛かっている状況です。
長谷部
なぜ、今回のDX案件が上手くいったとお考えでしょうか。
谷井様
さまざまな業界や分野へ横展開できたからだと思います。クライアントからすれば、私たちコンサルティングファームに対し、初めはどこまでやってくれるのかという懐疑的な部分があったと思います。一方、私たちはなんとかクライアントの課題解決のために貢献したいという強い想いがあったため、言われたお題に対して全部答えるようにしていました。例えばクライアントが興味を持たれている内容にきちんと対応できるよう、社内の専門部隊を連れて行ったり、名産品の生産管理の話題になれば、PwCの海外メンバーファームのソリューションを提案したりしました。クロスボーダーで提案できたことが成功につながったのだと思います。
長谷部
公共の領域では、どうしても国内だけに閉じてしまう印象がありますが、グローバルとの連携もあるのですね。
谷井様
税の仕組みなど、特に国の政策や制度に関するものに関しては、クライアント自身が海外事例を参考にしたり、私たちもグローバルのネットワークに問い合わせたりするケースが多いですね。
逆に、以前私が担当していた地方公務員向けの労災管理システムについては、他国のPwCメンバーファームから「セキュリティはどうしていますか」といった問い合わせもありました。
PwCでは、「コラボレーションで相乗効果が期待できる」と判断した場合は、各分野の専門家とシームレスに連携してクライアントにサービス提供しています。
「社会的に意義があるか」を追求したプロジェクト選択
長谷部
今後のビジョンやチームとしての方向性について、どのようにお考えですか。
谷井様
大きく2つあります。1つは、新たなバリューを出せる領域を見つけることです。中央省庁や、地方自治体、独立行政法人に対してDX推進を支援することは変わりません。しかし、今までの大型なPMOや要件定義、クラウド移行というキーワード以外でも価値が生まれる可能性があると考えています。
もう1つは、人材育成に注力していくことです。PwCの財産は“人”です。引き出しを増やすためにも、メンバーがさまざまな経験を積むことが重要です。メンバー一人一人が最大限に力を発揮できるチームマネジメントを重視しています。
長谷部
榎園様ご自身では、実際にいろいろな経験が積めていると感じていらっしゃいますか。
榎園様
Digital Governmentに入って1年ほど経ちますが、自分にとって成長できる機会をいただけることが多いです。もともとシステムやデジタル領域は未経験でしたが、1つ経験したことが次の案件に活かされることが多く、次につながる喜びと大きな学びを感じています。
システムやデジタルのバックグラウンドがなくても、興味関心を持って意欲的に取り組める人であれば、どんどん活躍できる環境です。
長谷部
谷井さまはアサインを考える上で、どのようなことを意識されていますか。
谷井様
個人の成長や今後のキャリアを見据えた案件に入ることを勧められたり、シニアマネージャーやディレクターであれば、パートナーになるためにCIOやCDOを経験するようアサインされたりすることもありますね。
また、プロジェクトのアサインは必ずしも1つではありません。自治体と中央省庁の案件同時に従事することもあれば、独立行政法人の案件とCIO・CDOアドバイザリーを任される場合もあります。
長谷部
プロジェクトを獲得される上で、アサインやメンバー育成という視点で意識されていることはありますか。
谷井様
PwCは「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurpose(存在意義)を掲げていますので、このPurposeをもとに案件に取り組んでいます。長期・大型案件においては、メンバーがヘルシーに働け、モチベーションを維持できるかということも大切です。意義を感じづらい内容への長期的アサインはメンバーのモチベーションにも影響し、緊張感が緩んでサービスレベルが低下するリスクもあります。そのため、初動から案件の意義を明確にしてするというのはPwCならではだと思いますね。
風通しのよいフラットな環境で、新しいメンバーを受け入れる土壌がある
長谷部
榎園様からご覧になった組織の特徴は何だと思いますか。
榎園様
Digital Governmentは、メンバークラスからパートナーまでの距離が近く、フラットでオープンです。下からもざっくばらんに意見が言いやすいので、それがチームの強みにもなっていると思います。
また業界柄、綿密なコミュニケーションを希望されるクライアントが多いので、クライアントとのリレーションが強いのも特徴だと感じます。
長谷部
三島様はいかがでしょうか。
三島様
メンバーのバラエティが富んでおり、あらゆる視点を活かして、地域の課題解決ができることが強みだと思います。コンサルティングファーム出身者はもちろん、例えば官公庁や自治体の職員だった方や、自治体向け専門誌を発行されていたメディア関係の方などさまざまなバックグラウンドを持った方がいます。
また、PwCでは日常的に他の部門の人たちと接する機会があり、特にPwCコンサルティング内の全メンバーで、特定のトピックや社会課題、興味関心、ニュースを語り合えるチャットがあり、日頃からコミュニケーションが取れているため、いざプロジェクトをやる時には心理的なハードルもなく、すぐにコラボレーションできるようになっています。
長谷部
三島様からご覧になったチームの雰囲気についても教えていただけますか。
三島様
まさに私が、中途採用でかつコンサル未経験で入社しましたが、私の経験に興味を持って周囲が話し掛けてくれたり、わからないことがあればすぐに聞ける雰囲気があったり、ヘルプを出せる環境があるのが良いと思いました。
長谷部
異なる業界出身の方も多くジョインする中で、オンボーディングで工夫をされていることはありますか。
三島様
PwCでは、バディ制度を取り入れています。特に中途採用で入られる方は同期が少ないため、組織になじめるか不安に思われる方も少なくないです。そのため、同じタイトルで少し先に中途で入った方がメンターとなって、通常のオンボーディングだけではカバーできないサポートをするようになっています。制度を運用する前から行っていたことですが、文化がそのまま制度になりました。
長谷部
谷井様からご覧になったチームの雰囲気についても教えていただけますか。
谷井様
もともとPwCには1on1を大切にするカルチャーがあり、役職に関係なく「何かあれば気軽に話そうよ」という雰囲気があります。また、他の人を受け入れる土壌がしっかりあると感じています。例えば、新しく入ってきた人に対して「お手並み拝見」といった空気はありません。「一緒にみんなでやろう」という空気があるので、新しい方でもプレッシャーを感じることなく、すぐになじめると思います。