今回は、2022年7月に新しく立ち上がったPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング) Enterprise Transformationの Cloud Transformationチーム(ET-CT)へのインタビューです。
アジャイルとクラウドの知見を軸に、クライアントに合わせたオーダーメイドなソリューションを提供することで、企業にDXを根付かせることをミッションとしています。
今回は、Cloud Transformationチームを率いる、中山裕之様(パートナー)、鈴木直様(ディレクター)、岡田裕様(シニアマネージャー)に、ご経歴、同チームを立ち上げた経緯、チームの特徴や手掛ける案件などについてお伺いしました。
Cloud Transformationチーム 中山様、鈴木様、岡田様のご経歴
井内
まずは、皆様のご経歴と現在の業務内容からお伺いできますでしょうか。
中山様
大学卒業後、外資系コンサルティング会社、外資系ITコンサルティング会社でERPを中心にAIビジネスの立ち上げに携わっていましたが、多くのデジタル企業がクラウドを活用してビジネスを成長させていくことに興味を抱き、エンタープライズ向けの事業開発責任者として2017年に外資系クラウドベンダーに転職しました。
ところが、クラウドの普及に務める中で、クラウドの効果を最大限享受するためには、人材や組織、文化の面でも変革が必要という想いが強くなってきたのです。そこで、企業の組織や文化の面からも変革支援をしていきたいと考え、PwCコンサルティングに入社し、2020年4月にCloud Transformationのイニシアチブを立ち上げ、2022年7月にCloud Transformationチームを設立しました。
鈴木様
新卒で外資系大手IT企業にエンジニアとして入社し、その後、アーキテクト、プロジェクトマネージャー、部門のマネジメントなどロールを変えながら19年間在籍しました。トラディショナルなシステム開発をある程度経験できたと思い、次はモダンな領域にチャレンジしようと考え、2016年にクラウドサービスを提供する外資系企業に転職し、クラウドを活用した企業変革を推進するコンサルタントを経験しました。
その後、事業会社である出版大手のIT部門に転職し、組織変革業務にも携わった後、PwCコンサルティングに入社しました。ベンダー、事業会社、それぞれの立場を経験したことで知り得た気づきを活かしてお客様に伴走し変革を支援していきたいと思ったのが入社の理由です。
現在の業務は、提案業務とプロジェクトデリバリー業務がだいたい半分ずつぐらいです。クラウドとアジャイルをキーワードに組織変革を進めるための提案活動やプロジェクトのアドバイザーとして従事することが多いです。最近ですと、某企業様のグローバルのクラウド活用におけるガバナンス統合案件や、サービス業のクライアントに対するアジャイル開発の導入支援をさせていただいています。
岡田様
私は2011年に新卒で外資系パッケージベンダーに入社し、ITコンサルタントとしてシステム導入のプロジェクトを多数経験しました。上流工程から下流工程まで一気通貫で支援をしていたのですが、多くの企業がシステムを導入しても使いこなせていないことに課題を感じていることに気が付きました。そのため、よりクライアントに近い立場でビジネス変革を支援するため、日系のコンサルティングファームに転職し、IT戦略やマネジメントなど改革を専門とした部隊に入りました。新しい経験を積む中で、今後、日本企業のDXを支援していくためにはより先進的かつ幅広い視点でのインプットが大事だと考え、グローバルのナレッジを持ち、かつ総合系ファームのPwCコンサルティングに入社しました。
現在の業務内容は大きく2つの側面があります。
1つはジョブマネージャーとして、自チームの強みであるクラウドとアジャイルのケイパビリティを活かしながら、複数プロジェクトをリードすることです。直近では、ある企業様のグローバルIT基盤統合や、IT組織変革に関わるプロジェクトを支援させていただいています。
もう1つは、ITモダナイゼーションをテーマとするオファリングのリードとして、ITシステムの実装方法、組織やプロセス、人材など幅広い観点で企業内のITの近代化を図っていくソリューション開発を行っています。
Cloud Transformationチームの概要・組織・特徴
-クラウドを活用した企業変革でビジネスチャンスを逃さない-
井内
Cloud Transformationチームの概要を教えてください。
中山様
チーム名にもある通り、私たちはクラウドを活用した企業変革を行っています。一般的にクラウドはインフラの話だと理解されてしまいがちですが、実は多くのユニコーン企業が、単にクラウドをインフラとして使うのではなく、それをビジネスの中心に据えることで柔軟な事業展開を可能にし、日々事業を変化させながら企業を成長させていることがあります。 私たちもクラウドを活用した企業のデジタル変革を目指し、以下の5つの観点をそれぞれの企業に合わせてカスタマイズしながら、日本の大手企業向けに支援を行っています。
①インフラの観点:オンプレミスからクラウドへの移行
②アプリの観点:アプリケーションのクラウドネイティブ化
③プロジェクト推進の観点:ウォーターフォール型からアジャイル型への移行
④組織およびプロセスの観点:IT部門組織およびそれに関するプロセスの再定義の構築
⑤人材の観点:デジタル人材の育成および自走化の支援
井内
Cloud Transformationチームをこのタイミングで立ち上げた背景を教えていただけますか。
中山様
「日本企業を元気にしたい」という想いが発端です。近年、世の中の動きが加速する中、市場の変化に素早く対応することは重要な経営課題の一つとなっています。そこでITは重要な役割を担います。
ここ数年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による急激なITの需要増加に企業内の対応が間に合わず、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまうケースも発生していました。一方、急増した需要に対して、ITがスムーズに対応でき、順調にビジネスを拡大させている企業も存在しています。
本来ITは、ビジネスのスピードを加速させるものであるはずです。しかし、現実は過去から積み上がってきたシステムが複雑化し、それがビジネスのスピードを落とす要因になっていると感じることもあり、その問題意識がチームを組成したきっかけとなっています。
井内
Cloud Transformationチームは、どういった組織で構成されているのでしょうか。
中山様
まず、PwCコンサルティングのサービスラインにおける大ユニットの1つで、かつ私たちのチームの上位にあたるEnterprise Transformation(ET)が、2022年7月に新設されています。ETには、基幹システムを活用し企業変革を実施するEnterprise Solutionチーム、多くのテクノロジー企業との強力な連携を推進するGlobal Allianceチーム、そしてクラウドを活用した企業の俊敏性を高めるCloud Transformationチームから構成されており、適時連携しながら企業の変革を実現しています。
その中でも、我々Cloud Transformationチームは、テクノロジーアドバイザリーサービス(TAS)チームから独立して立ち上がったチームであり、Enterprise Solution、Global Allianceチームと連携しながら企業の変革を実現しています。
井内
組織の強みはどこにあるとお考えでしょうか。
中山様
昨今ではビジネスとアプリケーションが表裏一体となっており、ビジネス支援のためのアプリケーション開発時にクラウドを有効に活用し、それに合わせて組織やプロセスを変えていくことが重要になってきています。
私たちCloud Transformationチームは、前述したように「インフラ」の変革をメインにしておらず、人材や組織も踏まえて「企業の俊敏性を向上させる」ことを目的としていますので、適宜Enterprise Solutionチームと連携して支援ができることは強みと言えるでしょう。
なお、PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)には、監査、税務、法務、ディールアドバイザリーといった法人があり、グループ内の連携も活発です。例えば、M&Aを機にDXを加速するケースでクラウドを活用したり、セキュリティに関する懸念に関しては、監査チームと連携したりすることでリスクを低減することができます。
鈴木様
特に日本の大企業のお客様は、基幹系システムをはじめ膨大なシステムがあり、ここが変わらなければ企業はスピーディーなビジネスを実現することはできないと考えています。私たちとしては、新しいサービスの提供に加えて、モダンなアーキテクチャやアジャイル開発などを適用し、企業の俊敏性を上げていく支援に取り組んでいますので、それも特徴的ですね。
Cloud Transformationチームが立ち向かう課題・手掛ける案件
-アジャイル、クラウド活用を徹底させ、日本企業にDXを根付かせる―
井内
続いて、Cloud Transformationチームが立ち向かうマーケットの課題をお聞きしてもよろしいでしょうか。
中山様
はい。実は、2022年8月に日本企業のDX意識調査の一貫として、売上高500億円以上のさまざまな業種の企業を対象に、2022年DX意識調査―ITモダナイゼーション編(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/it-modernization-survey2022.html)を実施し、524社から回答をいただくことができました。本調査では、「パブリッククラウドの活用状況」「クラウドネイティブ技術の活用状況」「アジャイル開発の推進状況」に関する質問を行い、それらを全社的に活用している企業を‟先進企業”、一部活用している企業を‟準先進企業”、それ以外を‟その他”としました。その結果、2022年度は先進企業が7%、準先進企業が29%、その他が64%となり、残念ながら2021年度とほとんど変わらない結果となってしまったのです。日本企業においてはまだチャレンジングな局面であると認識しています。
井内
昨年とほとんど結果が変わらないという実情に対して、その要因は何だと思いますか。
鈴木様
DXでは「何をやるか」というディスカッションが多い一方で、「どうやるか」という議論が不足していることも要因だと考えています。一時の成功だけでなく、継続的に成果を出し続けていくためには、働き方、プロセス、組織構造などを根本から変え、本当の意味でトランスフォームする必要があります。繰り返しになりますが、アジャイル開発やクラウド活用など、俊敏性を上げていくための仕組みを企業に根付かせていくことが大事なんだろうと思います。
中山様
実はデータを個別で見ると、例えば「クラウド活用」では全社で活用している企業は2割にとどまるのですが、特定のシステムにおいて個別で利用している企業が8割ほどいたり、「アジャイル開発」も4割ほどが使っていたりと、個別のプロジェクトでは使われている印象です。現時点で日本企業では、クラウドなどのツールの利便性に気づき、動き出しているものの、うまく使い切れていないのではと推察しています。
岡田様
インフラのクラウド化は進んできていますが、当初の想定よりビジネスの効果が出ていないといった声をよく聞きます。効果を出していくためには、アプリケーションのクラウドネイティブ化や、組織やプロセス変革、人材育成まで必要と認識しており、そこを私たちが支援できればと思います。
井内
コロナ禍でDXが加速化したことも、現状の課題につながっているのでしょうか。
中山様
そうですね。これまではDXに関しては「デジタル技術を使って何をやるか」という議論ばかりで、市場への変化への対応力について「どのように実現するか」という議論が足りていなかったのだと思います。例えば、IoTで工場をスマート化しようだとか、ARで遠隔治療をしようなど、業務をデジタル化するという動きにフォーカスをしていました。一方で、今は市場の変化に対し自社サービスをいち早く提供し、顧客もしくは従業員に選ばれ続ける企業になることが大きなテーマとなっています。
市場ニーズに対応できる柔軟なシステム作りが大切
井内
続きまして、Cloud Transformationチームが手掛ける案件の事例を教えていただけますか。
中山様
長年使用していた膨大な基幹システムの更改に多くの時間を要しているという課題について支援させていただきました。このクライアントの業界はCOVID-19で大きな影響を受け、さらに急激な円安や地政学リスクも重なり、すぐにでも環境の変化に対応しなければならない状況でした。そこで企業の俊敏性を確保するため、従来のパッケージを使ってシステムを作り込む仕組みに対し、パッケージ以外にもクラウドを活用して柔軟に対応できる新しいアーキテクチャの構築で進めました。
鈴木様
今まさに企業の俊敏性を確保するためのプロジェクトを進めています。例えば、商品の口コミが広がっても、企業に在庫がなかったり、システム連携がリアルタイムにできていなかったりすることで、ビジネスチャンスを逃してしまうことがあります。これは基幹システムの複雑性やその周辺のプロセスが足かせになっているケースが少なくありません。そういった市場の変化やニーズに合わせ、俊敏かつ柔軟に対応できる基幹システムをデザインしています。
求める人物像について
-トラディショナルな領域とモダンな領域の知見を組み合わせられる人材のニーズが高い-
井内
続いて、現在のコンサルティング業界で貴重だと感じる人材について教えてください。
中山様
やはり、企業を変革に導いていくためには、新しいテクノロジーやトレンドだけではなく、トラディショナルなものも理解していることが大事です。そういった人材は希少な存在だと感じています。
鈴木様
従来のコンサルティングは、お客様の課題を解決するために要件確認や業務分析をし、しっかりと計画を立てて各種プロジェクトを進めていくのが一般的でした。しかし、今の世の中のスピードに、そのような進め方が合わなくなっているのを感じます。時には実際にものを作りながら見せて、お客様の要求や潜在的なニーズを確認していくアプローチをしていく必要があります。そのためには、単に新しいテクノロジー技術を知っているだけでなくトラディショナルな領域の知見とモダンな領域の知見を組み合わせることができる人材が必要になってきていると考えています。
中山様
そうですね、そのような知見を併せ持った人材は希少な存在だと感じています。
岡田様
私たちは事業会社出身の方を積極的に募集しています。事業会社出身の方は、トラディショナルなことを知りつつ、新しいことにチャレンジする意欲があり、かつ組織や人材育成の面でも、推進主体の視点で強く課題意識を持たれている方が多くいらっしゃると思っているからです。
井内
では、Cloud Transformationチームが特に求める人物像を教えてください。
岡田様
昨今の不確実性の高い時代において、クライアントにスピーディーに価値を提供していくためには、ビジネスからエンジニアリングまで幅広いケイパビリティを持つコンサルタントが求められていると感じています。
私たちは、自らの専門であるクラウドとアジャイルを軸に、分からないことがあれば積極的に学びながら、他の領域の専門家と連携してクライアントに価値を提供していくことができるコンサルタントを求めています。
中山様
知的好奇心が高く、新しいことにチャレンジできる人を求めています。またチームで動くことが好きな人とは、ぜひクライアントの「コア」な部分を変革するような業務で一緒に取り組みたいですね。
井内
新しいソリューションを作るにあたって、自分で開発に携わっていきたいという方もいます。開発にチャレンジできる環境もCloud Transformationチームにはあるのでしょうか。
中山様
アジャイル開発にチャレンジできる環境があります。開発工程の企画、設計、実行、検証をスピーディーに進めていくために、企画と実行はある程度同時並行で動いていきます。アジャイル開発にチャレンジしたい方はお待ちしております。
井内
Cloud Transformationチームでは、クラウドやアジャイルがキーワードになりますが、そういった領域が未経験の方も採用の対象になりますか。
岡田様
未経験であっても、資格取得をしたり、セミナーに参加したり、ユーザー会に参加したりと、自発的に知的好奇心を持って取り組まれている方であれば、ぜひチャレンジしていただきたいです。
チームのカルチャー・雰囲気・働きかた
-カジュアルなコミュニケーションが尊重されるカルチャー-
井内
Cloud Transformationチームに在籍されているメンバーのバックグラウンドを教えていただけますか。
中山様
バックグラウンドは多種多様です。コンサルティングファーム出身者、ITベンダー出身者、DX系スタートアップ企業出身者など。もちろん新卒で入社したメンバーもいます。
井内
Cloud Transformationチームの雰囲気を教えてください。
中山様
リーダー陣とは毎週会って話をしており、チャットベースの気軽なコミュニケーションも活発です。このような日常の会話からコラボレーションが実現することも多いです。
岡田様
他のコンサルティングファームと比べてパートナーとの距離は近いと思います。チャットでパートナーに「こちらを見ていただけませんか」とお願いすることもありますが、いつも快く対応してくださいます。リーダー陣がビジネスのスピード感を重視しており、これがカジュアルなコミュニケーションが許容される背景にあるのだと感じています。
鈴木様
役職にとらわれず、クライアントや組織に対して共通の価値観で動いていれば、無駄な気配りはいらないと思っています。普段のコミュニケーションにおいてもそういったところは気を付けています。
また現在、組織内のすべての情報を可視化できるように進めています。人事評価のようなセンシティブな情報を除き、メンバーがどういう活動をしているかが見える化されれば、コミュニケーションコストは下がり、また心理的安全性が向上すると考えており、その結果、生産性向上にもつながると考えています。
井内
Cloud Transformationチームならではの研修やトレーニング制度はありますか。
鈴木様
会社としての研修もありますが、私たちのチームとしてはアジャイルやクラウドを組み合わせたオリジナルな研修も用意しています。他のチームメンバーも参加可能で、組織の壁を感じることはありません。またそれをオファリングとしてクライアントに提供することもあります。
井内
Cloud Transformationチーム内での働き方について教えてください。
中山様
「よく働き、よく学んで、よく遊ぶ」というのが私たちのベースにある考え方です。もちろんピーク時には残業が発生することはありますが、プライベートも大切にしてほしいと思っていますので仕事と休みのメリハリは大事にしています。
岡田様
チーム内には、ワーケーション制度を取得しているメンバーは一定数いますし、旅行へ出かけてリフレッシュして仕事に臨んでいるメンバーも多いですね。従業員の声に耳を傾けて、休職の新しい制度づくりなどにも取り組んでいます。
井内
それでは最後に、Cloud Transformationチームに興味をお持ちの方にメッセージをお願いします。
岡田様
できたばかりの新しい組織なので、組織運営に関われることも豊富にあるかと思います。そういった面も含め、いろいろ学ぶ機会は多いチームなので、ぜひご興味ある方は応募していただきたいです。
鈴木様
まだ正解がないところにわくわく感を感じながら、ベストな答えを一緒に作っていくことに楽しみを覚える方には、ぜひ来ていただきたいと思います。
中山様
新しいテクノロジーで日本の企業を元気にしていきたいと考えています。VUCAの時代、どのように企業の俊敏性や弾力性を高めることができるか。それは決して一筋縄ではいきませんが、一緒に挑戦してくれる仲間を私たちは求めています。