今回は、先端技術の利用でクライアントのアジリティを向上させ「未来のビジネスアーキテクチャ」を描くPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング) Technology Advisory Service(TAS)へのインタビュー。
同組織をリードする執行役員パートナー 福田健様より、TASチームのミッションや特徴、実際に手掛ける案件や今後目指す姿などについてお聞きしました。
200人を超える多彩なケイパビリティとテクノロジーへの投資で、未来のビジネスアーキテクチャを創造する
井内
まずは、福田様のご経歴についてお聞かせください。
福田様
私は電機メーカーでシステムエンジニアとして販売物流系の仕組みを構築していましたが、外資系コンサルティングファームに転職し、ERPコンサルタントの知見を身に付けました。その経験を活かし、PwCコンサルティングでは、銀行の統合などの大規模プロジェクトやITデューデリジェンス、セキュリティデューデリジェンス、デジタルデューデリジェンス、オペレーショナルデューデリジェンス、IT PMIプロジェクトに従事しています。
井内
ありがとうございます。福田様がリードされるTASチームのミッションや概要についてお聞かせください。
福田様
TASチームは、TDC(Technology & Digital Consulting)に属するチームの1つで、CxOが抱える経営アジェンダをテクノロジーで解決することをミッションとしています。
今期は、「クライアントのアジリティを向上するため、テクノロジーをてこにクライアントの未来のビジネスアーキテクチャを描き変革を実現させる」を掲げて、私たちが持つケイパビリティで、経営課題だけでなく、昨今課題とされる社会課題も解決していくことに優先的に取り組んでいます。
人員は200名を超えていて、TDCの中では一番大きな組織です。メンバーのバックグラウンドでみると、SIer出身の方が多く、次にコンサルティングファーム、シンクタンクという具合です。
井内
チームのオファリングについてはいかがでしょうか。
福田様
今期はプライオリティサービスを、以下の5つのカテゴリーに分け、それぞれの領域におけるソリューション開発に積極的な投資を行っています。
―Digital&ITガバナンス
―IT&Data Modernization
―New Technology Architecture
―Business Agility Transformation
―Tech Lead Business Building
井内
福田様は、どのような領域に注力されていますか。
福田様
私は主にBusiness Agility Transformation領域の2つのソリューションを担当しています。
1つはM&AにおけるITデューデリジェンスです。この業務ではスタートアップ企業の技術レベルの評価や、買収対象となる会社のリスク調査、サイバーセキュリティデューデリジェンスなどを支援します。
PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)にはディールアドバイザリーを専門とするPwCアドバイザリー合同会社(以下、PwCアドバイザリー)がありますが、M&AのITデューデリジェンスのチームがPwCコンサルティング内にあるのは特徴的と言えるかもしれません。
もう1つは、Anything as a Service(XaaS)ソリューションの展開です。これは、モノ売りからコト売りビジネスへの転換を図るソリューションでありビジネスモデルの検討からプラットフォームの構築までを行う、グローバル共通のソリューションです。
サービス企画への申請件数が多いTASでは将来のキャリアを見据えたソリューション開発ができる
井内
TASチームの特徴についてお聞かせください
福田様
PwC Japanでは、人材や資金を投資し、新しいソリューションの開発を積極的に行っています。サービス開発に興味があれば、こうした活動に立候補できるので、クライアントサービスに従事する他に、将来を見据えたチャレンジが可能です。
4半期に1回、投資申請のタイミングがあり、企画を持ち込んで承認されると、誰でもリードすることができます。例えば、私がリードしているXaaSソリューションは、PwC USが開発したもので、それを日本に導入したのですが、日本に適応させるための投資活動をしてからマーケットインしました。
TASを含むTDCはそういった企画の申請件数がPwC Japan内で最も多く、積極的に投資活動に取り組んでいます。
井内
TASチームでも、先端テックを活用したソリューション開発にチャレンジできる可能性はあるのでしょうか。
福田様
その場合は当社で各種テクノロジーに係わる調査から、分析、実証、そして実装まで、企業、大学・研究機関、政府機関を一貫して支援している「Technology Laboratory」にご応募いただいく方がいいかもしれません。Technology Laboratoryの業務にプロジェクトとしてTASメンバーが関わるチャンスはありますし、チーム異動することも可能です。ただ、企業のアジリティ向上が期待できるテクノロジーの活用はTASの領域と考えていますので、経営課題を解決するソリューション開発は永続的に取り組んでいきます。
井内
IT戦略といった上流から携わりたいと思って大手ファームに転職されるエンジニアの方も多いですが、御社はこのようなチャンスも積極的に得られるのでしょうか。
福田様
TASチームが手掛ける案件は、要件が決まっている状態で始まることはほぼありません。クライアントを理解し、課題の解決策を出すという歩みは、どのプロジェクトでも必ず必要になってきます。
ご自身が持っているテクノロジースキルを生かしてアーキテクチャをデザインすることができるようになるために、TASチームではステップを踏みながらアサインする仕組みを整えています。
グループ間のつながりを強化し、新たなコラボレーションを生む
井内
PwCコンサルティング内の他チームとの業務の切り分けや協業体制についてお聞かせください。
福田様
当社にはさまざまなケイパビリティを持った人材が集まっており、各専門チームで自分のスキルを活かすことが可能です。各チームが連携する場面は多く、その状況で重要なのはいかに相手チームを理解し、互いの力を合わせ、協力体制を組んでプロジェクトを成功させられるかだと思います。幸い、TASチームにはそういう考え方ができる人達がそろっているので、あえて色んなチームに踏み込んでいって、コラボレーションを促進する方針をとっています。
井内
専門性が高いところでの切り分けがある一方で、協業も頻繁に行われているのですね。
福田様
はい。常にインダストリーチームや他ソリューションチームと協業し、テーマに合わせて最適な提案体制、デリバリー体制を組成します。
井内
グループ間での連携がうまくいっている秘訣を教えていただけますか。
福田様
PwCは多岐にわたる分野の多様なプロフェッショナルがスクラムを組むことで、持続的な成長と信頼構築を支援する‟The New Equation”という成長戦略を掲げています。PwC Japan内のさまざまなチームと、部門や組織の壁を越えて「協働」することも多く、グループ間の横の連携を重んじるようになっています。
実際、私たちも、前述したPwCアドバイザリーと連携して支援をすることも多いです。
また、交流を推進するプログラムもあります。例えば、PwC Japanのさまざまなパートナーが集まってPwCの未来を語り合い、議論して、それを自分のチームに還元していく機会が多く設けられています。
このような機会は全スタッフ単位、チーム単位で盛んに行われており、気心が知れた信頼関係作りにしっかりと取り組んでいます。
だからこそ、コラボレーションの際にはかなりフランクに声を掛け合えます。
今後は、エンタープライズアーキテクト集団として成長を牽引するチャレンジングな取り組みの基盤を作る
井内
マーケットの状況を鑑みて、TASチームの中長期的な目標について教えていただけますか。
福田様
当社は数年後にビジネス規模を倍にするという中期経営計画があり、これをドライブするのがTDCだと言われており、その中でTASチームの役割は大きいと感じます。ビジネスモデル、データ活用、アプリケーション、インフラを語れるエンタープライズアーキテクト集団として成長を牽引するチャレンジングな取り組みの基盤を作っていくのが、私たちのこれからの役割の1つと考えています。
先端テクノロジーをどんどん取り込んでビジネスと掛け合わせ、お客様に提供し、TASチームも成長していく。そんな未来を見据えて動き出しています。
「自分の人生」を「長い目」で見てキャリア設計するように働き掛けている
井内
TASチームにおける課題についてお聞かせください。
福田様
まずこの領域のビジネスの需要が急速に増加していますので、それに対応すべくチーム規模を拡大するということが大きな課題ですね。これは本当に、候補者様のご協力がないと解決できないと思っています。
もう1つは、COVID-19の影響で一緒に集まって何かを共有する機会が減り、一人一人の状況を把握してよりモチベートしていくためにはどんなことができるか、というマネジメント上考えていかなければならない課題があります。
井内
そういった課題解決のため、施策やすでに取り組みをしているものがあれば教えていただけますか。
福田様
PwCにはキャリアについてアドバイスをするため、個々に担当のマネージャーやシニアマネージャーがつくコーチ制度があるのですが、TASチームでは、本人がぜひ相談したいと思える人をセカンドコーチとして指名する仕組みを独自に作っています。新卒入社の職員には週1回くらい、その他の職員は必要なタイミングで面談をリクエストしてもらい、キャリアについてだけでなく、普段の生活の変化についても気軽に相談できる場にしています。
井内
その他にも、TASチームならではのフォロー体制はありますか。
福田様
PwCコンサルティングとしてコンサル未経験の方を対象にした1カ月間の研修を用意していますが、それに加え、プロジェクトに入ってもう一度基礎から学びたいという人のためにも、私たち独自の研修プログラムを用意しています。なお、各サービスラインに合わせた研修、ソリューションやコアコンサルスキルに特化した研修もあります。
井内
手厚いサポート体制ですね。マネジメントやコミュニケーションの面で工夫されていることもありますか。
福田様
TASチームは200人超えの大きなチームですが、30人単位ぐらいの“ピープル”という観点で小集団に分け、それぞれメンバーがコミュニケーションを円滑に取れるような取り組み行っています。その中で、今後のキャリアについてみんなで相談したり、最適なプロジェクトアサインをするためにはどうしたらいいかを議論するなど、一人一人に目を向けたケアをすることに力を入れています。
井内
働き方についても独自のサポート体制があるのでしょうか。
福田様
プロジェクト以外の教育に自己投資することをKPIに設定して、限られた時間を有効に活用できる仕組みがあります。
あとは、AIを使ってパソコンの稼働時間からタイムチャージの時間をしっかり管理しています。プロジェクトの状況によっては業務量が増えることもありますので、そういう場合は躊躇なくサポートを入れるなど、徹底して行っています。
井内
育休の取得状況ですとか、そこから復帰した後のご家庭とのバランスなどはいかがでしょうか。
福田様
男性の育休率は、現在60〜70%の間で、年々伸長しています。育休取得の申請もフランクにできる環境ですし、アサインの調整も頻繁に行い、家庭の状況に合わせた対応をしています。
若手の時はやっぱり、「負けたくない」という気持ちも大事だと思いますし、そういった気持ちも尊重しますが、PwCではもっと自分の人生を長い目で見てキャリア設計をするように働き掛けています。
PwCにはこのように、個々のワークライフバランスを大切にする環境が整っています。
企業の“俊敏性”と“弾力性”を確保し、不確実性が高まる世界を生き抜くための変革支援にご興味のある方にはぜひ当社を挑戦してほしいですね。