企業に営業活動を行った際、企業の担当者や使用者は欲しいと言っているのに、製品を買ってもらえなかった、という経験をされたことはないでしょうか。こういった場合、彼らの購買意思には何がどのように影響を与えているのでしょうか。
購買にあたっての意思決定関与者のことを「DMU(Decision Making Unit)」と呼びます。そして、このDMUに対して、いかに的確なアプローチができるかがマーケティング上のポイントとなります。例えば住宅を購入する際、家主である主人が購入に乗り気でも、財布を握っている奥様がYESと言わない限り契約には至らないという事もしばしばあるでしょう。また、法人顧客においては複数の部門や人間が関与するため意思決定に至る構造はより複雑になりますし、エンドユーザーと購買意思決定者は異なる場合がほとんどです。
法人顧客におけるDMUは「ユーザー」「インフルエンサー」「購買者」「(購買)決定者」「ゲートキーパー」などに整理できます。
・商品/サービスを実際に使用する人
・営業窓口、製品仕様を決める際に商談に関与する
・多くの場合購買意思決定者ではない
・購買意思決定に影響を与える立場の人
・製品使用の決定や評価の段階での情報提供等で関与する
・技術スタッフ、専門知識を持つプロフェッショナル、特定業務の熟練者が該当する
・商品/サービスの実際の購買者(購買や調達の担当者)
・最終的な意思決定権者
・購入の可否や購買基準や条件、供給業者を選択し、条件を決める正式な権限のある人
・他者への情報の流れをコントロールする人のこと
・秘書や総務部など社長や役員へのアプローチに影響を与える立場の人
・技術情報を取捨選択し購買者やユーザーに伝える人など
このように様々な立場の人が購買に影響を及ぼしますが、商品/サービスの評価基準がそれぞれ異なっていることにも注意が必要です。必ずしも品質が最重視されるわけではありません。価格や納期、品質、信頼性、保守やメンテナンスコストなど立場や状況によって重視されることが異なるので注意が必要です。
次に、法人の購買意思決定プロセスについて少し詳しく見ていきます。
法人顧客の意思決定のプロセスの代表的なものは図のようになります。
製品やサービスを購入することで、解決が可能な問題やニーズを企業内の誰かが認知する段階。
必要とされる製品/サービスの質と量を明らかにする段階。
製品の具体的な仕様書を作成する段階。
適切な供給業者を探し出す段階。
複数の供給業者に対して見積もりなどの提案書の提出を求める段階。
提案書を検討し、供給業者の選定を行う段階。
供給業者の決定にだれがどのような影響力を持つかを的確に把握して、様々な情報提供やアプローチを行うことが必要。
選択された供給業者に対して発注書を作成して契約を締結する。
企業はリスク回避のために複数業者から分割して購入する場合もあり。
取引実績の評価をする段階。
購入した製品/サービスが使用者の様々な要求に適合しているかを検討し、後の意思決定に利用する。
評価基準を把握して購買者の満足度を向上できるようにすることが取引の継続のために重要。
8つの意思決定プロセスのどの段階から顧客と接するかによって、セールス活動やプロモーションの方法が変わります。
初期のプロセスからのセールス活動であれば、顧客のニーズにより的確に対応した提案が可能で、価格競争を避けることができるのです。
例えばシステムインテグレーターの場合、「供給業者の探索」からの参加では価格勝負になりがちですが、「一般的なニーズの明確化」の段階から顧客とともに問題点や解決策を考えることで、よりニーズに的確に対応した提案をすることができ、価格競争は回避できると考えられます。
また、B to Bの購買意思決定者はB to Cの消費者とは異なり、「提案内容が論理的・合理的な視点から判断される」、「継続的な関係の中で情報収集が行われるため、最終的な決定までに時間がかかる」などの特徴があります。
ビジネス活動を効率化する意味でもとても重要なポイントになる部分です。ご自身のクライアントのDMUはどんな方々なのか、今一度整理してみては如何でしょうか?