アメリカのマーケティング学者D.A.アーカーは、事業の前提として、「『顧客は誰なのか、顧客は何によって動機付けられるのか、顧客の満たされないニーズは何か』を分析して明らかにする必要がある」と論じました。
この分析を行うための考え方を「顧客分類」といい、「採用者カテゴリー」はその中の分類法の1つです。
採用者カテゴリーを提唱したアメリカの社会学者、ロジャースは、新製品を購入するタイミングは収入の多寡よりも、むしろ「あたらし物好き」「保守的」といったパーソナリティに依存すると考えました。
そして、その考え方のもと、購入者を製品のライフサイクルの時間軸に沿って、「革新的採用者」「初期少数採用者」「前期多数採用者」「後期多数採用者」「採用遅延者」という5カテゴリーに分類しました。
この分類を時間軸に沿って並べると、以下の図のような分布で示されます。
最初のうちは新規採用者数は少ないものの、時間の経過と共に急速に増加します。
その後、普及率が高くなるにつれて新規採用者数自体は減少し、最後は0に近づいていくことになります。
つまり、新規採用者のカテゴリー毎の分布は、採用時刻の平均値を中心とした正規分布となり、きれいな釣鐘状の曲線として描かれることになります。
採用者カテゴリーが正規分布すると仮定すると、標準偏差を求めることで、ある採用者の採用タイミングが早いか遅いかを偏差値の形で論じることが出来ます。
また、ロジャースは実地での調査をもとに、それぞれのカテゴリーに属する人の特性も以下の表にまとめています。
この特徴は、現実の事例にもよく当てはまるものです。
例えばパソコンなどの耐久消費財はまずマニア層に買われ、100万台(全国4500万世帯に対し2.2%程度の普及率)が売れると、初期少数採用者層に売れ始めることが分かっています。
世の中にあふれる新商品に対して、その企業のターゲットとなるカテゴリーを考慮に入れ、何故このような商品を販売しているのか、更に効果的に売るにはどうすればよいかを考えることは、1つのケースの訓練になるかもしれません。