ある特定の業界内にいくつもの企業がビジネスを展開している場合、マーケットシェアの大小、経営資源の保有量や質などに応じて業界内の立場の強弱、立場の違いが生じます。競争地位とは、それらの量的経営資源と質的経営資源から企業を以下のようにリーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つに類型化し、業界内でのポジションに応じて企業が取るべき戦略目標を提示したものです。
量的経営資源:投入資金額、販売拠点数、営業担当者数、生産規模、生産能力等
質的経営資源:技術力、マーケティング力、ブランドイメージ、経営者のリーダーシップ等
業界内で卓越したマーケットシェアを持ち、価格決定権や技術的な方向付けを行う立場にあります。
業界によっては、数社の企業がシェアトップを争い、リーダー企業群を形成することもあります。
【基本戦略】
その市場の最大シェアを有しているため、収益性向上につながる規模の経済や経験曲線効果の恩恵を
もっとも強く受けることができます。よって、トップシェア維持と市場拡大がリーダーの戦略目標となります。
低価格戦略で最も利益損失を被るのもリーダーであるため、製品の高品質化等により低価格化を避け、
利益を安易に下げないことも重要な戦略となります。
-フルライン戦略
あらゆる顧客のニーズに応えるために製品の幅を広げ、あらゆる分野でライバル企業に対抗できるようにする。
-同質化戦略
他社の差別化した新製品・サービスを真似た製品・サービスを出すことにより、差別化を無効にする。
-非価格戦略
安易な低価格化をしない。
量的経営資源には優れるが、質的経営資源がリーダー企業に対して相対的に劣る、ないし、異質な企業を指します。一般的には業界二位~三位までのシェアを持ち、リーダーの地位を脅かそうとする立場の企業です。
【基本戦略】
リーダーに対抗する市場シェアの獲得が戦略目標となるので、リーダーが強化していないエリアに注力してリーダーのシェアを奪う戦略と、自社よりもシェアの小さい企業を攻撃して業界内のシェアを拡大する戦略を取ります。
-差別化戦略
リーダー企業が同質化戦略をとれないような差別化を図ってシェアを奪う。
-弱い者いじめ戦略
自社よりも弱い企業やフォロワー企業を攻撃して、シェアを奪う。
質的経営資源には優れるが、量的経営資源がリーダー企業に対して相対的に劣るような企業を指します。
規模は大きくはありませんが、独自の技術、ブランド、仕組み等の強みを獲得し、特定市場におけるリーダーを目指します。リーダーやチャレンジャー企業が進出し難い、狭い特定の分野に絞って強みを発揮する企業が該当します。
【基本戦略】
ニッチ市場でのリーダーとなり、ターゲットニーズに適切にこたえることで、高い収益の獲得やブランドイメージを高めることを狙います。
-集中化戦略
独自性を活かして特定市場に集中化、製品やサービスを専門化して、大企業にとって魅力的でない狭い市場で高収益を得られるよう、独占的地位を築く。
量的経営資源にも質的経営資源にも恵まれない企業を指し、特定領域での地位もない、業界内では三位、あるいは四位以下の大多数の企業群のことを言います。既存顧客の維持とリーダー企業の製品の模倣、リーダーが興味を持たない市場への参入が基本戦略となり、リーダー企業に報復されないように注意して、リーダーと同じような製品を安く提供することが方針となります。
チャレンジャーの攻撃をうけるので、製造コストを低くおさえ、利潤を確保する必要があります。
【基本戦略】
存続のために着実に収益をあげ、経営資源の蓄積に努めて、将来的にニッチャーかチャレンジャーの地位を目指します。
-模倣と低価格戦略
リーダーやチャレンジャーのヒット製品を真似て、低価格で顧客に提供する。
低価格化のための合理化が必要となる。大企業との競争を避けるため、中低価格志向の市場をターゲットとする。
このように、業界内における企業のポジションによって、取るべき戦略は大きく変わってきます。
自社の戦略に当てはめるのはもちろん、競合分析にも活用してみてください。