同じ業務を行うにあたり、ある程度回数を経験した後の方が生産性が高まるという事は経験的にご存知だと思いますが、これは「経験曲線効果(Experience Curve Effect)」と呼ばれています。
下記の図は、製品の誕生~衰退までの製品ライフサイクルの図にコストの曲線を加えたものであり、図からは、製品が成長期~成熟期へとライフサイクルを進めるにしたがってコストが急激に下がっていることが見て取れますが、一度に大量に製品を作るほどコストを下げられる規模の経済とは別に、企業がその時点までに作った製品の累積生産数が増加するごとに、製品の製造コストが一定の割合で(20~30%)下がるという現象を表しています。
これは同じ製品を作り続けることで従業員の習熟度が上がり生産性が向上するという学習効果や、生産工程の見直しなどといった様々な工夫やノウハウの蓄積といった要素の組み合わせの結果として生じるものです。
そして同様の現象が、製造業に限らずサービス業でもみられます。
例えばスーパーマーケットを考えた場合、来店数が多くお客様が多いほど店舗では接客の機会が増えるので接客能力や店舗運営の改善など様々な効率化を図ることができるようになりますし、更に他社よりも早く人材を育成することができれば少ない人数でスムーズに店を運営できオペレーション等の無駄も減らせるというわけです。
規模が小さな企業であるにもかかわらず、大企業に対抗してある製品市場で大きなシェアを占めているような場合は、多くの場合この経験曲線効果が関係しています。他社に先駆けて積極的に投資を行って生産量・活動を増加することで、コスト優位性を築いて、市場シェアを増加させ、高い収益を確保する戦略を取ることができるのです。
ただし製品や生産方法が頻繁に変更されるような場合や新技術が頻繁に採用されるという場合、経験曲線効果は働かなくなりますので注意が必要です。
企業がどのような戦略をとってシェア獲得の獲得を行っているのか、その背景などに着目してみてください。